2011年10月31日月曜日

広告主がビッグデータと向き合うために準備すべきこと



「ビッグデータ」という言葉が広告業界でも頻繁に聞かれるようになってきました。単語として意味が通りやすいせいか色々なところで使われるのを耳にしますが、エンタープライズ業界で使われていたこの言葉、なぜここ最近、広告の文脈でも聞かれるようになったのでしょうか。


ビッグデータとは何か

「ビッグデータ」は、語義どおり大きな大量のデータという意味になりますが、一般的な定義では、Volume(量)、Variety(多様性)、Velocity(速度)、Value(価値)という4つのVで表現されます。

データの「量」だけではなく、データの「多様性」、つまり旧来のリレーショナルデータベースに収められるような構造化されたデータだけではなく、構造化される前のフリーテキストだったり、提供元のデータプロバイダが多種多様にあり、かつ構造がそれぞれ違うといった面倒な問題が存在することが、わざわざ「ビッグデータ」とカッコつきで言われる所以です。また、そのデータの量は加「速度」的に増え、リアルタイムに処理しなければならない類のものである、というのも理由の一つですし、多様な種類のデータがものすごい速度でその嵩を増していくので、当然、有用な情報とそうでない情報が混在してくるため、いかにデータをスピーディに「価値」付けしていくか、という問題もあります。それはそのままリアルタイム処理の負荷分散と精度という課題にもひもづいていますので、とにかくややこしいですね。


ビッグデータとネット広告

ところで、現在のネット広告の主軸である検索エンジンマーケティングでは、この「ビッグデータ」という考え方は比較的馴染みやすい概念だと思います。もともと検索エンジンはユーザーの検索キーワード(検索クエリ)に対して、インデックスした膨大なデータベースからコンマ数秒で適切な検索結果を返すことを生業にしていますし、検索結果に広告を載せる検索連動型広告は、あらかじめ検索クエリを想像して広告主がキーワードをセットし、一致したクエリに対して広告をオークションに参加させ、入札された金額と広告の価値(品質スコア/品質インデックス)をもとに順位と実際の課金額を同じくコンマ数秒で計算するシステムですので、配信側からすればもともとビッグデータを扱っています。ビッグデータの処理で最も使われているHadoop にしろhBase にしろ、もともとはGoogle の処理基盤をベースにしたオープンソースですしね。

ここ最近、広告のタームで「ビッグデータ」にスポットライトが当たっている背景には、近年のディスプレイ市場の変革が深く関わっていることに疑問の余地はないと思います。

検索と違うのは、4つのVでいうところの、データのVariety(多様性)にともなって、Valuation(価値付け)が難しくなり、そこに次の可能性があるということなのだと思います。もう少し言うと、変数の増加がデータの整備と価値付けのための処理を増やし、そのための負荷分散と精度が課題となって浮かび上がっている、ということです。データエクスチェンジなどは、Google が自社のシステムだけで処理を完結させている段階では浮かび上がってこない課題だと思います。

ディスプレイ市場の変革とは、入札が「広告枠」から「オーディエンス」へ移行した、ということに他なりません。広告枠への値付けから、一人一人の属性や嗜好や行動履歴やタイミングに値付けをするという変化です。その値決めのために必要なデータを、媒体社やリサーチ会社、配信事業者自身などのそれぞれ違ったデータプロバイダから集め、その集まった膨大なデータをカテゴライズし、意味づけをして、オークションと配信システムに繋げていくために整備します。広告主が広告を制作し入稿してからユーザーに届くまでの間の処理が複雑になり、処理に使用するデータの種類が増え、膨大になり、かつリアルタイムに変化していくという事実こそが、ここ最近急に「ビッグデータ」と叫ばれる根底にあるのだと思います。LUMA Partners のカオスマップは、その象徴とも言えるでしょう。

カオスマップ(Display LUMAscape)



広告のバイサイドが準備すべき4つのこと

さて、そういった複雑化する環境の中で、広告のバイサイドである広告主、もしくはそれを代理する広告代理店に求められる変化とは何なのでしょうか。ここでは、テクノロジーの活用の前提となる、企業として取り組むべき準備をかんたんに洗い出して、4つにまとめてみました。


1. 人材の育成
自社内にデータ分析の専門家、特にマーケティングの部門に専属の分析家がいる、という企業はまだ少ないと思います。ここでの分析家は、ITやビジネスに明るく、かつ進化の早いアドテクノロジーをキャッチアップしながらデータ分析の結果をキャンペーンにフィードバックしていくという難題が仕事になりますので、まともに一人でこなそうとするとスーパーマンのような能力が求められます。そんなスーパーマンはめったにいませんので、自然と得意分野を分けながら、専門領域に特化したチーム作りが必要になります。


2. 組織づくり
チームを作る上で次に課題に上がるのが、部門間の連携です。自社のログデータはIT部門が管理し、顧客データは営業が管理し、マーケティングで得られた知見はマーコム内のみでシェアされるような場合では、ビッグデータ云々の前にチームが機能しません。そこで部門を水平に横断するような組織づくりが必要になります。大企業であればあるほど組織づくりには人事評価やインセンティブ、目標管理などが必要になってきますので、そういった見えにくい仕組みの部分の整備も必要になるでしょう。タスクフォースにしてしまうと継続性が担保されないので、できればレポートラインがしっかりした組織を作った方が長期的にはいいと思います。


3. 予算の設定
ここでいう予算は広告を含めた企業のマーケティング予算です。リアルタイムに入札や予算を変えていき、トライアンドエラーを重ねながら進めるこれからの広告モデルは、これまでの「上期の予算は2ヶ月前にはほぼ使い道まで決まっている」といった予算の作り方だと間に合わなくなる可能性が高いです。ビッグデータ活用の一つにアトリビューション分析がありますが、分析の結果で予算の配分が変わることが往々にしてありますので、予算の項目を柔軟にしたり、売上データとの繋ぎこみをすることで貢献度をある程度可視化し、固定費を変動費化するなどの変更が必要になるかもしれません。


4. ポリシーや契約の整備
扱うデータが多く複雑になっていき、プライバシーとの兼ね合いも難しくなってきますので、データを扱うためのポリシーや制度を改めて整備することが重要になってきます。また、自社ですべてを抱えるのは難しいので必然的に広告代理店や配信事業者、システム会社などの外部パートナーと契約することが増えると思いますが、データの取り扱いを含め、信頼できるパートナーの選定や、持続可能な契約になっているかを再度見直すことが必要になってくると思います。例えば、広告代理店との契約では媒体費のマージンが代理店の利益になるようなモデルが多いと思いますが、データの分析から広告以外の分野への予算配分を多くすべきという結果が得られた際に、媒体費のマージンで契約している代理店が広告主の味方になるとは限りません。お互いに気持ちよく仕事ができる契約の整備というのも重要な要素になりうるでしょう。


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以上、非常にかんたんですが、ビッグデータと向き合うために広告のバイサイドである広告主が準備すべきことをまとめてみました。技術への投資は前提として、投資からリターンを得るために整備すべきことという意味合いで捉えて頂ければ幸いです。

広告に限らず、テクノロジーの動向を遠近両方の視点で理解する努力は、経営をする上で必要不可欠だと思います。一方で、流行のキーワードに何でもかんでも飛びつく必要もないと思います。世の中の流れと自社のビジネスを俯瞰して、適切なタイミングで投資をしていきたいですね!



2011年10月27日木曜日

モバイルの今が痛いほどわかるインフォグラフィック


インフォグラフィックは、そのオシャレさゆえにさらっとナナメ読んでしまうので結局頭に残らないことが多いのですが(自分だけかもしれませんが…)、先日、ウェブホスティングの WebHostingBuzz という会社が発表した ”BROWSE'n MOVE – The State and Trends of MOBILE INTERNET(モバイルインターネットの情勢と傾向)” というインフォグラフィックは、モバイルが今もっとも熱いトピックであるということを改めて気付かされた興味深い内容でしたので、かんたんですがご紹介します。


リンク:
Browse ‘n Move – The State and Trends of Mobile Internet
(From: Official WebHostingBuzz Company Blog)


モバイルユーザー数

まず、全世界70億人の人口のうち、75%以上にあたる53億人がモバイルのユーザーであるという事実から。
自分が小学校の頃は社会科の授業で「世界の人口はもうすぐ50億人に達するであろう」と教わったのですが、あれから20年で、すでにモバイル人口が当時の全世界人口を超えてしまっています。併せて、モバイルネットワークのカバレッジは全体の90%に達するとも書いてあります。なお、ここでいうモバイルはタブレットデバイスも含んでいるようです。




モバイル上でのアクティビティ

モバイル上でのすべての活動において、フィーチャーフォンよりスマートフォンの方が多く時間を割く傾向にあるようです。このデータを信じるのであれば、地図や旅行のようなローカル系、ニュースや金融のようなサービスは2倍近くの開きがありますから、スマホのシェアが3割を超えた時点で、そういったサービスを展開している企業のモバイル対策は今までと逆の舵切りをしなければいけないという皮算用になりますね。それ以外の企業でも、アプリはなくても、せめてCSSをスマホ用に設定するなどの最低限の対応はやっていないといけないと改めて思います。




モバイルだけの世代

次は、先進国と新興国でインターネットへ接続するデバイスがまったく違う、というデータです。新興国の多くがPCではなくモバイルのみでインターネットに繋がる層が25%以上、特にエジプトでは70%、インドは59%、ナイジェリアでは50%と高い比率を誇っています。eMarketer のデータを見ても、これを補完するかのようにBRICsアジアのモバイル成長率はとても強気な予測なっています。逆に、北米でのモバイル比率は25%、イギリスは22%と相対的に低い推移となっており、このデータには載っていませんが、日本は総務省のデータに従うと、8%程度になります。




スマートフォンのマーケットシェア

2010年10-12月期のデータになりますが、android の伸びが強烈です。日本でも今年の夏にandroid のシェアがiOSを抜いたというリリースがコムスコアから出ていました。モトローラの買収で特許対策も整備されてきたandroid の伸長はしばらく続きそうですね。なお、メーカー別のシェアは、モバイルのアドネットワークを運営するMillennial Media のリリースにもあるとおり、Apple(iPhone) が引き続き優勢で、次いでSamsung、HTC、RIM、Motorola、LG と続くようです。




OSと性別

OSごとに男女差があるのかどうか、というデータです。android の男性比率が高いのは日本でも同じで、Yahoo! Japan の調査資料(PDF)でも同じ傾向が見て取れます。BlackBerry は女性ユーザーの方が多いというのは少し意外でした。




モバイルユーザーの行動

2010年のモバイルのページビューの半分はソーシャルネットワークのサイト上で発生していたとのこと。Twitter のモバイルトラフィックは350%近くの成長率を示し、Facebook は2億人のモバイルユーザーを抱え、YouTube は毎日モバイルで1億回再生され、アプリはこれまで50億ダウンロードされているとのこと。どれもものすごい規模です。




モバイルがPCを超える

最後は、2010年のモバイル:PCの比率は 28:72 だったのが、2015年には 52:48 と、シェアが逆転するであろうという予測です。先進国は概ね人口は減少傾向にあり、新興国の人口増加率が非常に高いことを考えると、さもありなんという感じなのですが、改めて数字で見ると、変化がものすごいスピードで進んでいることを実感しますね。





インフォグラフィックの紹介は、以上です。頭では分かっていたつもりでも、改めて見るとやはりすごいことになっているのだなと感じますね。

なお、このインフォグラフィックを紹介したAdotasの記事 ”Mobile-Only Internet Users Dominate Emerging Markets” では、最後にこう結ばれています。

25% of mobile-only Internet users is going to keep getting bigger. Advertisers, make sure your ads are optimized.

現在の25%のモバイルのみでのインターネットユーザーは、今後どんどん増えていくでしょう。広告主のみなさん、自社の広告がモバイル向けに最適化されているか、確認してみてくださいね。


「ウェブサイトをスマホ対応すべきか?」や「モバイルをプランニングに含めるか?」という問いが行われるフェーズはとうに過ぎたんだなあと、この資料を見たときに感じました。企業のモバイル対策は広告に限らずたくさんありますので、本当にやることが多くて大変だと思いますが、伸びるのが分かっている分野は考えるのも楽しいですよね。というわけで、がんばっていきましょう!



2011年10月24日月曜日

インハウスSEMの組織運営を考える



先日「インハウスSEM 5つのメリット・デメリット」という記事を書きましたが、今回はインハウスSEMを実施する際の組織図について考えてみたいと思います。

実際の商流はどうであれ、インハウスのSEMを強化しようと決意した場合、どんなスキルセットのメンバーが必要でどんなチーム体制にすべきかは、非常に悩ましい問題です。これまで専門家が社内にいない場合や、他の仕事との兼務であまりSEMまわりにリソースを割いていない場合は特に難しいと思います。

そこで、まずはチームのメンバーをマネージャーを含めた4つの職種に大雑把に分けて、それぞれどんなスキルセットが望ましいのか、どのように連携するとよいのかを、以下にかんたんに図にしてみました。


インハウスSEMのチーム体制
(クリックすると拡大します)

# 上の図はPDFも作りました。もしご利用であればどうぞ。



マーケター(リス男)

まずは、図の右上にあるマーケターです。SEMのチームなので、マーケターはリスティング男子、いわゆる「リス男」的な人物を想定しています。(リスティング女子でもいいです)

# 「リス男」については、sembear氏のブログが詳しい(というか語源)なのでご参照下さい。
# ただし全体的にやや暑苦しいのでお読みの際はお気をつけ下さい。

リス男は、ドラクエ3で言うところの勇者のような存在です。それはヒーロー的存在という意味ではなく、パワーでは戦士より劣り、呪文では魔法使いに劣る、なんとも中途半端な立ち位置、という意味になります。その代わり、チームのハブ的存在となり、先頭に立ち、オールマイティな能力を発揮することを求められます。

実際の現場では、大量のキーワードやクリエイティブを扱い、毎日数字と格闘し、ネットマーケティングの最新情報や風向きを常に捉え、自社の事情と折り合いをつけながら、チームの浮沈を担うという厳しい仕事になるので、この仕事が好きで興味をもたないと成り立ちません。もしこのポジションを社内から抜擢するのであれば、必要条件として、ネットマーケが好きであること、十分条件として、SEMをはじめとしたマーケティングの知識や経験、数値や統計などが得意であることが挙げられると思います。また、後述するアナリストやウェブマスターと一緒に仕事をすることになるので、彼らと同じ語彙で話ができる程度の知識を持ちつつ、彼らにしっかり説明できるような表現力が必要になります。代理店やメディア、ベンダーとの渉外なども担うので、そういったことに抵抗がないことも大事です。


アナリスト

次に、左上のアナリストです。データテクノロジストとか、ウェブストラテジストなどと言うケースもありますが、取り急ぎアナリストとしています。

アナリストとはいっても、いわゆる ”分析屋” という立ち位置ではなく、自社の購買データ、リスティング広告のデータ、アクセス解析のデータ、調査や購買が可能な外部データを可能な限りつなげていき、リス男とともにマーケティング活動の最適化や次の戦略をつくることが仕事になります。将来的には、データを統合してダッシュボード化したり、データマネジメントプラットフォームと呼ばれるものを駆使して分析や仮説の検証を行う、といった仕事になるでしょう。一つ一つのデータ(枝葉)をつないで、全体の戦略や個別の戦術(森や木)を作っていくという、遠近両方の視点を持っているということが必要条件になります。また、どうしても大量のデータに潜り込んでいくことが多いため、独自のワールドに入ってしまうことがケースがまま見られるため、得られた知見を他のメンバーが理解できるように加工して伝えられる編集能力が、この仕事の十分条件と言えるかもしれません。


ウェブマスター

その次は、左下のウェブマスターです。ウェブマスターという職種は定義が難しく、ウェブディレクター、ウェブプロデューサー、ウェブデザイナー、インフォメーションアーキテクトなど、その業務内容によって定義もさまざまですが、ここでは、とにかく自社のサイトをいじる権限と役割を担っている人、ということにします。

この仕事は、企業によって扱われ方がかなり違っていて、日本の場合は特に、制作やシステム運用を完全に外注、という場合も多く見られます。セキュアな運用を求められる業界や、データやトランザクションが膨大な場合は仕方がありませんが、そういった場合でも、ある程度までは社内で把握しタイムリーな対応ができるかどうかがポイントになります。求められるスキルはデザインとシステムでまったく違うのでここでは言及しませんが、職務として、デザインをいじれる人は商業デザインに明るく、直感だけに頼らずデータを判断材料に加えられる視野を持った人、システム担当であれば 営業のパソコンの応急処置をついでに任されている、みたいなぞんざいな扱いではなく、アナリストの意図をウェブに組み込み、リス男のアイデアを実現する仕掛けをつくる最良のパートナーとしての存在になるでしょう。リス男とは違った視点で最新情報やツールにも明るいことが必要です。


マネージャー

最後に、右下のマネージャーです。いいチームにはいいマネージャーが不可欠ですね。

どんな仕事のマネージャーでも同じですが、SEMのチームマネージャーは、それぞれ深い知識を要する上述の職務にある程度通じている必要があり、それを会社の方向性とすり合わせながら意思決定をしていくことが求められます。

それぞれの職務に通じているといっても、細部まで詳細に把握し、マイクロマネジメントをする必要はありません。「何をしたらどうなる」ということが分かっており、特にこの分野においては、末端のインプットの些細な違いがアウトプットに大きな違いをもたらす、という理解があることが重要です。また、常にトライアンドエラーを繰り返していかなければ成功しない業務であるため、「失敗は即ペナルティ」という文化ではなく、「失敗は成功の糧」と捉えられる環境をいかにして作れるかがマネージャーの最も大事な仕事になります。そのためには、ある程度経営層から権限を移譲してもらっていたり、直属の組織であったりと、経営と実務をつなぐ社内でも指折りのキーパーソンであることが望ましいでしょう。



最後に

今回のチーム体制は、ある程度の規模のデータ量があり、SEMがマーケティング活動や売上に占める割合が比較的大きく、事業がそれほど多数の部門に分かれていない場合を想定して書きました。理想もたぶんに含まれています。

現実はいろいろなパターンがあると思います。リス男だけじゃなく、純広買い付けの純男(すみお)、マスメディア男子(ますお)、ソーシャル男子(シャル男)、メール男子(メル男)、他にもCRM、ブランドマネージャー、製品ごとのマーケ担当などもありますし、販促と広告宣伝でお財布が違うとか、企業ごとに事情はさまざまだと思いますので、ぜひぜひ、それぞれの企業文化に沿ったチーム作りを目指して頂ければと思います!



2011年10月21日金曜日

節度あるリマーケティングのためにすべき3つのこと



「リスト枯れ」という言葉


最近、ネットサーフィンしていて、なんだか同じ広告ばかり見ているな、と感じている方は多いと思います。その場合、広告を出稿している企業のバナーの投下量が多いという可能性もありますが、もしその広告が最近訪問したことがある企業のものであれば、おそらくそれはAdWords のリマーケティング広告でしょう。


2010年の春にリマーケティング広告が登場してから、企業はこぞってこの手法を採用し、今ではSEMにある程度力を割いている企業であればデフォルトに近いほど使われていて、多くの企業で成果が上がっていると聞いています。

が、ここ最近は「リマーケ枯れ」とか「リスト枯れ」という言葉をたまに耳にするようになりました。AdWords のリマーケティング広告を開始してからディスプレイネットワーク経由でのコンバージョン数や率が劇的に向上し、しばらくアゲアゲ状態を堪能したのちに、クリック率が徐々に低空飛行となり、コンバージョンも尻つぼみになってしまう現象を指すようです。ユーザーからしたら「リマーケ疲れ」ですね。

「リストが枯れる」という表現自体が、なんだか焼畑農業的な飛び込み営業感を連想させて残念な気持ちになりますが、枯れているのは、リストというよりも、実際に一つ一つのブラウザを見ている一人一人のユーザーの興味関心です。



リマーケティングとエコシステム


ディスプレイネットワークのエコシステムというのは実にうまくできていて、広告を出稿する広告主からすれば、一つ一つのページに書いてあることをGoogle が自動的に解析して関連した広告を選定するコンテンツターゲット広告と、このサイト(ページ)に指定して出したいという欲求を満たすプレースメントターゲット広告を選ぶことができ、広告を掲載する広告媒体(メディア)からすれば、AdSense枠を一つ用意すれば、純広告用のアドサーバーを用意せずとも先述のどちらかの方式でオークションで選ばれた広告が自動的に出てきてページビューのマネタイズを補完してますし、サイト(ページ)を見るユーザーにとっても、読んでいる記事に関連する広告が出る可能性が高いので、広告がある意味情報としても機能するため、広告主、媒体(メディア)、ユーザーの三者にとって都合のよい、優れたモデルでした。

そこに鳴り物入りで入ってきたのが、枠をターゲットにするのではなく、ユーザーをターゲットにしたリマーケティング広告です。

リマーケティング広告はご存知の通り、一度広告主のサイトを訪れたことのあるユーザーが、その後にAdSenseの枠のあるページを見た際に、そのページの文脈に関係なく、過去の広告主のサイトへの訪問履歴を参考に広告をオークションに参加させるという手法です。

一度訪問したことがあるユーザーへの興味(というか「気づき」や「思い出し」)が促進されることにより、一般的にリマーケティングのクリック率は高いと言われているため、AdWordsの広告ランクが高くなる可能性が高く、結果的にオークションに常に勝ってしまい、ユーザーからすると同じ広告ばかり見る、という現象が発生します。

もちろん、そのこと自体はオークションという形式の中でフェアな競争の結果なわけですから問題ないのですが、要は、そのバランスです。

広告を出稿する企業がみんなこぞってリマーケティングをやることによって、ユーザーによっては広告枠に過去の訪問履歴が並ぶだけ、ということになっている可能性があり、そうなった場合、バナーへの反応が落ちたり、「またこの会社か…」という反応を生んだりします。テレビでも、同じ広告ばっかり見ていたら、しかもその広告が別に好きなクリエイティブじゃなければ、うんざりしますよね。

これだけリマーケティングが普及してくると、先述のエコシステムのバランスにも何かしらの影響があると思います。リマーケティングの掲載率が上がっているということは、そのぶんコンテンツターゲットやプレースメントターゲットの掲載率が下がっているということですし、リマーケティングがそれぞれの枠に掲載するために必要な広告ランクを引き上げているわけですから、相対的にリマーケティングよりクリック率の低いコンテンツターゲットやプレースメントターゲットに求められるCPCは上がってしまいます。最近コンテンツターゲットの成果が下がってきているなんてこと、ありませんか?

リマーケティングの隆盛は、短期的にはプラットフォームであるGoogle も、媒体(メディア)のマネタイズも伸びて潤うと思うのですが、肝心の広告主はリマーケティングに頼らざるを得なくなり、ユーザーは常に同じ広告を見ることになります。しかも、AdWords はリマーケティングをうまく扱えるような広告主ばかりではなく、操作に慣れない初心者のような方もたくさんおられます。AdWords は開始後のデフォルト設定が検索にもディスプレイネットワークにも配信されるような設定になっているので、リマーケティングのみが盛り上がれば盛り上がるほど、新規や初心者の広告主が成功体験を得られる可能性は低減していき、結果的にこのエコシステムから離れていってしまうということになります。そして広告主のバラエティは広がらず、ユーザーはリマーケティングをしている企業の広告ばかりを引き続き見ることになり、クリック率が減少し、CPCは増加し、以下略、という悪いスパイラルになってしまうかもしれません。

インターネット広告は本来とても楽しくフェアな市場です。広告主や媒体(メディア)それぞれの自己利益の追求が、プレイヤーごとのエコロジカルニッチを促進し、結果的に市場のバランスと拡大を担うはずだと思います。

リマーケティングという手法に罪はなく、ユーザーが「枯れ」ないようにオプティマイズを繰り返していくことが、結果的に広告主にとって、媒体(メディア)にとって、そしてユーザーにとって有益な世界につながっていくのではないでしょうか。



節度あるリマーケティングの3つの設定


さて、前置きが長くなりましたが、というわけなので、ここでは広告主側に立って、ユーザーを枯らせない、節度あるリマーケティングの設定とは何なのかをかんたんに(本当にかんたんに)まとめてみたいと思います。

リマーケティングの設定自体はSEM-LABOさんの解説が完璧なのでこちらをご参照いただくとして、ここでは、面倒でも大切な設定について前提1つ、設定3つにまとめてみたいと思います。


前提: リストの設計をする
リマーケティングの成功には、リマーケティングタグの設置位置と種類、その組み合わせ方法が大事です。リストの組み合わせをウェブサイトの構成や購買プロセス、広告の目的に沿わせるということになります。

例えば、携帯電話を売っているサイトで、アクセサリーの携帯ケースがセットで購入されているケースが多い場合、トップページの他に携帯電話のキャリアやメーカーのカテゴリトップごとにタグの種類を分け、メーカー(機種)すべてが同一ディレクトリ内にあるのであれば、そのディレクトリ以下には同じ種類のタグを全ページに仕込みます。もちろんカートの完了ページにも完了ページ用のタグを仕込みます。

そして、新機種があるメーカーはアクセサリも同時に併売したい場合は、AND 条件(新機種 AND アクセサリ :新機種とアクセサリどちらも含む)のユーザーに、NOT条件(新機種+アクセサリ NOT カート完了 : 新機種とアクセサリを含むものからカート完了を除く)という感じで設定します。

リストの粒度をどれくらい細かくすべきかは、ページビューの量と、商品カテゴリや点数によって変わります。ページビューが少なければ、リストを細かく分けるとリマーケティングが発動するまで時間がかかりますし、量が伴わないので努力の割に報われません。仮にページビューが多くても商品点数が多すぎるとリストの管理が煩雑になってしまうので、カテゴリごとに作るなどの気遣いが必要です。

さて、前提のリスト設計が整ったら、次は以下のステップです。

1: リストの保持期間を分ける
同じ位置のタグでも、リストの保持期間を分けることができます。商品によって購買の検討期間は違うと思いますが、どんな商材でも鉄は熱いうちに打った方がいいので、保持期間が短いものと長いものに分け、短いものはちゃんと出るように適度な入札価格を設定します。長いものは自然とクリック率も落ちるので、保持期間の短いリストよりはやや安めの単価を設定すると、効率やユーザー体験的にもいいと思います。保持期間の長い方のリストは、サーチファンネルやアクセス解析や自社の顧客データベースを利用して、何日くらいが丁度よいのか、大体のアタリをつけましょう。

2: 保持期間ごとにクリエイティブを分ける
次に、保持期間ごとに言いたいことを分けます。例えば、保持期間が短いものは猛烈アピールで、保持期間が長いものは色んな角度でアプローチする、みたいな感じです。テキストとバナーはもちろん、パターンも幾つか用意して、「同じ広告ばかりでウザイ感」をなるべく解消します。あと、最適化配信だとCTRがよい広告に配信比率が寄っていってしまうので、もし保持期間が長めであれば、均等配信にします。ランディングページが特別なものが用意できるのであれば、変えてもいいかもしれません。

3: フリークエンシーキャップをかける
最後に、必要に応じてフリークエンシーキャップをかけます。1と2ができていれば要らない気もしますが、リストの分母が多いとやった方がいいと思います。AdWords のフリークエンシーキャップは日や週単位、広告単位でキャップがかけられるので、これを利用します。



ここで迷うのが、結局フリークエンシーは何回にすべきか?というところです。まず、インプレッションとビューは違うということを念頭に置く必要があります。AdSenseで多いフォーマットはレクタングル、イコール記事中とか記事下に置かれる枠が多いことを考え、Above the hold(いわゆるファーストビュー) じゃないからインプレッションとビューには結構な差があるという前提で設定するとよいのではないでしょうか。5回で設定しても、実際のビューは1回みたいなこともあると思います(想像するしかありませんが)。なお、保持期間が長い方のリストは、短い方に比べて抑えめで配信するのが効率としてもいいと思います。その場合、フリークエンシーを広告本数で割った数を意識した方がいいですね。

余談ですが、最近ようやくリマーケティングのキャンペーンでもリーチとフリークエンシーのレポートが見れるようになりました。既にリマーケティングに取り組まれている方はぜひご覧になってみてください。やり方としては、リマーケティングのキャンペーンを選択して、「ディメンション」タブの左上、「表示:」のところをプルダウンすると出てきます。



ちなみに、フリークエンシーはグループごとに8回目までしか見れません。8回目以降は全部8回にまとめられています。データの傾向としては、徐々にCTRが下がっていく一方で、CVRはCTRほど下がっていない、みたいな場合が多いのではないでしょうか(違ってたらすみません)。当たり前ですが一定期間内のフリークエンシーはユーザーによって違うので、リマーケティングのようなオーディエンスターゲティングの商材は、キャップの設定はユーザーごとのアクションに本来結びつけるべき(クリエイティブを変えるとか)だと思うので、その意味でも、せめてリストの保持期間ごとにクリエイティブを変えるというトライはしておきたいものですね。

なお、個人的には iogous*mark のような第三者配信を通じてディスプレイネットワークに配信すれば、AdWords のようにざっくりとではなく、フリークエンシーを含めた広告のコントロールはもう少し面白いことができるのではないかと思っています。その時は、「フリークエンシーは何回が最適」というような議論はなくなっているかもしれません。


終わりに


だいぶ長くなってしまいましたが、以上になります。

リマーケティングは数字が良く見えがちなだけに、何となく現状維持の力学が働くことがあるかもしれません。 が、数字以上に大事なユーザーの信用は、いわゆるブランドイメージは取り戻すのが大変です。

普段から色々と考えて運用されている方からすれば釈迦に説法かもしれませんが、リマーケティングもまたSEMのセオリーに漏れず、トライアンドエラーが必要な手法です。ぜひぜひ実践をし、ブランドを毀損しないように効果の維持向上につとめて頂ければ幸いです!


※この記事は2011年10月に書かれたものです。



2011年10月19日水曜日

YouTubeプロモート動画広告をはじめる際のキーワードの見つけ方


先月(2011年9月)のeMarketerの記事にもありましたが、オンラインの広告フォーマットの中で、動画の占める割合というのは年々大きくなってきています。

現在、広告主が今日から手軽に始められる動画広告といえば、AdWords のディスプレイネットワーク上でのClick to Play 動画広告か、YouTube の検索結果に動画を表示させるプロモート動画広告だと思いますが、前者のClick to Play 動画広告は普通にコンテンツターゲットやプレースメントターゲットで広告フォーマットに動画を追加するだけなのに比べ、後者のプロモート動画はイマイチなじみがなくてよく分からないという方もいると思います。

はじめ方はAdWords アカウントを持っていれば簡単なのでAdWords のヘルプAdWords のブログをご参照いただくとして、ここでは、プロモート動画をはじめる際に迷いがちなYouTube上でのキーワード選定に使えそうなツールをまとめてみました。AdWords やYouTube を利用している方であれば誰もが見たことがあるツールばかりだと思いますが、4つほど挙げてみます。



1. YouTube キーワードツール (ads.youtube.com/keyword_tool)
YouTube には専用のキーワードツールがあります。使い方はAdWords のキーワードツールとほとんど同じで、言語と国を選択し、キーワード、動画のIDもしくはURL、ユーザー層の3種類からキーワードを抽出することができます。(ユーザー層は正直微妙なので最初はキーワードがいいと思います)

ポイントとしては、なるべく分かりやすい誰もが使いそうな言葉を選ぶことでしょうか。トレーラーのプロモーションをしたい配給会社だったら「映画」とか「Movie」でしょうし、健康食品や痩身器具だったら「ダイエット」とか「痩せる」とかになります。関連ワードはYouTube内での検索クエリをもとにリストされるので、意外とまともなものが出てくると思います。軸になるキーワードが幾つか見つかったら、AdWords のキーワードツールも併用して拡げてみるのもいいかもしれません。




2. YouTube サジェスト
これは正確にはツールではなく機能というかフィーチャーですが、意外と重宝します。先ほどのキーワードツールで見つけたキーワードのうち、軸になる大事なキーワード(「映画」とか「ダイエット」とか)を手元に控えておいて、YouTube のトップページの上部にある検索ボックスに入れて、スペースを押してみると、入力したキーワードに関連するクエリがたくさんサジェストされます。

映画であればタイトルや主題歌ですし、ダイエットであれば、エクササイズやダンスなど、具体的に動画と結びつきそうな関連ワードが出てきます。これはYouTube内での検索数が多いものなので、Googleのサジェストよりニーズが絞られている分、使い勝手がいいです。よいものがあれば採用しましょう。




3. YouTube コメントの検索 (www.youtube.com/comment_search)
YouTubeは動画に付いているコメントに絞って検索ができます。YouTube のクエリには「◯◯~な」という形容詞的表現が多く含まれるので、よりターゲティングを精緻にしたい場合は、このコメント検索をザッと眺めるだけでも多くのヒントが得られます。例えば映画だったら「泣ける」「感激」「主人公」「予告」などです。サジェストでヒントが足りないなーと思ったら一度使ってみるといいと思います。




4. YouTube Insight for Audience (www.google.com/videotargeting/ifa/buildQuery)
メディアプランニングで使いそうなツールがYouTube にもあります。いわゆるオーディエンスセグメントという感じで、年齢や性別のようなデモグラフィックデータ、居住している国、インタレストカテゴリと呼ばれる興味関心を選択すると、年齢や性別の分布、他にどんなカテゴリとかぶっているか、検索している代表的なクエリは何か、などが一覧で見れるようになっています。パッと眺めるだけでもなかなか楽しいですが、キーワード選定的な意味だと、結果画面の右下にあるタグクラウド形式で出てくるキーワードリストが使えると思います。




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かんたんですが、YouTube プロモート動画で使う検索キーワード用のツールは以上になります。

YouTube はGoogle 自身が自ら検索エンジンを買った、とも言えるほど膨大な検索クエリを抱える媒体です。動画を探しているユーザーばかりである以上、キーワード選定では通常の検索連動型広告とはちょっと違った気の使い方が必要かもしれませんね。
# ちなみに特定の動画を直接ターゲットする場合は、Video Targeting Tool というのがあります。

余談ですが、プロモート動画の成功の秘訣は、動画そのものの面白さ、動画の静止画、およびキャッチコピーの選定など、キーワードだけでなく、むしろそれ以外が重要なのは言うまでもありません。AdWordsのヘルプには、プロモート動画の最適化ガイドもあります。ここに書いたようなことも網羅されていますし、珍しく実践的な記述なので、プロモート動画をはじめる際には、ぜひ一度ご参照ください。

業界やオークションの状況にもよりますが、プロモート動画は、CPCの高い業界でClick to Play 動画広告をプレースメントターゲットでやるよりはリスクが少なく、YouTubeチャンネルなどと併用すれば色々と面白いことができるような気がします。AdWords のプラットフォームから始められる数少ないYouTube広告の一つですので、もし動画素材をお持ちであれば、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?


(2014年9月 追記)
「1. YouTube キーワードツール」は、2014年8月31日をもって終了しました。今後はディスプレイプランナーを動画用に設定して利用することで代替機能とすることができます。



2011年10月17日月曜日

インハウスSEM 5つのメリット・デメリット


ネットからの集客をSEMに依存している企業は多いと思います。業種や予算規模の大小にもよりますが、一部の大手企業を除いて、広告宣伝や販売促進へのネット割合が大きい企業でよく話題に挙がるのが、SEMを代理店経由で行うか、自社で行うか、という議論です。

広告は一般的に媒体費に対して料率で代理店のマージンが発生しますので、ネットへの広告費が大きければ大きいほど、広告主から代理店への支払いが大きくなり、この議論の温度が変わってきます。SEOも自社でやれば外部に払う金額は発生しません。

広告代理店の影響力が低い地方においては選択の余地なく自社で行うケースが多いと思いますが、首都圏や大規模都市に拠点がある企業が、ある程度の予算をSEMに投下している(しようとしている)場合は、代理店にSEMを任せるべきなのか、自社のスタッフで完結すべきなのか、あるいはその間で自社にふさわしいやり方とパートナーを模索すべきなのか、判断が難しいと思います。

そこで、かんたんですが、自社で行う、いわゆるインハウスSEMのメリットとデメリットをそれぞれ5つずつ、書きだしてみました。本当にかんたんなものですが、何かの参考になれば。


 インハウスのメリット

  • マージンがかからない:
    広告モデル(リスティング広告)であればAdWords のような広告プラットフォームと直接の取引になりますので、広告代理店に払うマージンが発生しません。またSEOも自社で施策することになるので、追加のコストは発生しなくなります。

  • 契約や情報伝達の手間がかからない:
    代理店や契約種別毎にかかる契約書の取り交わしの手間や、自社内情報を外部に出せるようにマスクしたりスクリーニングしてから伝える手間や、思ったように伝わらないすれ違いなどから生まれるコミュニケーションコストを削減することができます。

  • 施策と運用のスピードが上がる:
    知識やリソースの多寡にもよりますが、上述したようなコミュニケーションコストが下がるので、外部情報だけでなく、自社データももとにして必要な時にすぐに施策を行ったり、社内事情を考慮した上で運用を行うことができます。また、代理店が忙しすぎて反応が遅いとか、複数の顧客を持っている担当者だったので後回しにされた、ということもなくなります。

  • ノウハウが社内に蓄積される:
    外部に丸投げしている会社には社内にノウハウがたまりませんが、内製であればノウハウをためないと先が厳しいため強制力が働きます。SEOであれば自社のCMSとどう連携すればいいのか、どの施策がブラックでどれがホワイトなのかなどの判断だったり、リスティング広告であればアカウント構築から細部のキーワード、実際の管理画面やツールでの運用や、分析の技術や考え方などを社内に蓄積し、必要に応じて社内用にドキュメント化したりワークフロー化することができます。

  • 全体最適ができる:
    ネットに限定したとしても、やらなければならないことはSEMに限りません。アフィリエイトやソーシャル対応、メールマーケティングにCRMとの連携、純広告を出すこともあります。事業や手法ごとに代理店を分ければそれぞれのチャネルでの整合性をとることは難しくなりますので、自社化することによって全体のバランスをとりながら施策を行うことができます。


  •  インハウスのデメリット

  • 固定費になる:
    料率でのマージンと違い、社内に担当者を置くことになるので、人件費やシステム、各種経費など固定費的なコストが決まってきます。SEMに使っていた費用がもともと膨大な場合には問題になりませんが、もともとそれほど大きな規模でない場合、固定費がマージンに逼迫、もしくは超える可能性があります。また、自社化が思ったより大変で人件費などのコストがかさむ、ということもあります。

  • 社内調整の手間がかかる:
    中小企業でトップダウン、かつ担当者に大きな権限がある場合は問題ないですが、そうでない場合は製品や部署間、担当者同士の利害が微妙に食い違い、社内で政治が発生したり、調整に思った以上に時間がかかったりすることがあります。外部からの影響がなくなるので、環境の変化に対して対応が遅くなる可能性もあります。

  • 担当者次第:
    担当者次第なのは外部にアウトソースする場合も同様ですが、アウトソースの場合は業者や担当者を変更することができても、社内の場合はなかなかそうはいきません。内部に知識も権限も持った人がいる場合でなければ、担当者によっては、以前より実績が落ちてしまう可能性があります。また改めて担当者を採用するような場合も、社内にナレッジがないと必要なスキルや適性が何なのか判断が難しいですし、本当にいい人材を採用するのは常に難しいので、人的リスクは意外と大きいです。

  • 最新情報から遠くなる:
    情報収集はある程度までは自社でできるはずですが、経験に裏打ちされた重要な情報というのはなかなか外には出てきません。また、業界の最新情報やアイデアは代理店が一次情報を持っているケースが多いですし、媒体へは自分からアプローチしないと情報は出てこない(しても出てこないこともある)ので、情報を享受する機会が減り、施策へのフィードバックが遅れるという可能性があります。

  • 支払いのリスクを負う:
    これはリスティング広告に限ったことですが、ほとんどの場合、自社化すると銀行振込でのデポジットか、クレジットカードでの決済になります。代理店取引の場合は請求書払いで、支払いサイトのリスクは代理店が負ってくれていましたが、それがなくなるため、資金繰りによっては今までより広告が出しにくくなることがあります。またクレジットカードの場合は、限度額に気を付けないと急に広告が止まるようなトラブルが起こることがあります。



  • ----------
    結局のところ、アウトソーシングとインハウス、どちらがいいとは一概には言えず、自社の状況によって判断するしかない、という当たり前の結論になるのですが、どういう方法をとるにせよ、常に外部からの情報を収集し、自社データを分析し外部施策に活かす体制を整えることは、プラスに働きこそすれ、マイナスになることはないと思います。

    予算やアカウント、ウェブサイトの規模がある程度大きい場合は、いきなりドラスティックに自社化せず、自社ですべてを行う必要に迫られた場合にどうすべきかを考えながら、代理店やサードベンダーにしかできないこと、任せるべきことを見極め、うまく外部とのパートナーシップを築いていくことが、結果的に高いコストパフォーマンスに繋がるのではないでしょうか。



    2011年10月15日土曜日

    ツイートガジェット型広告の可能性


    Twitter のつぶやきがそのまま広告原稿になるアフィリエイトサービスが、アクセストレード社から発表されました。

    広告主のツイートを広告原稿として活用する「ツイートガジェット型広告」:MarkeZine(マーケジン)
    インタースペースのアフィリエイトサービス「アクセストレード」で提供を開始した「ツイートガジェット型広告」は、広告主がツイッターで発信するツイートを、広告を掲載するアフィリエイト・パートナーが広告原稿として掲載するサービス。広告主がツイッターで配信している、新着情報やセール情報といったリアルタイム性のある情報を掲載することで、広告成果につなげることが期待できる。

    この記事を見た時に、「ああ、見たことある」と思いました。Google も1年と少し前に、同様のネタを一部の広告主に向けてディスプレイネットワークで実現するテストをしているからです。

    Google Quietly Brings Twitter Feeds to Display Ads | ClickZ
    (訳:グーグルがこっそりとツイッターのフィードをディスプレイ広告に持ってきた)

    このネタは、当時「インターネット広告のひみつ」さんでも取り上げられています。

    このAdWords によるTwitter連動広告は、一部の広告主だけのサイレントローンチだったこともあり、現在もオープンにされていないのか(もしくは終了したか)、AdWords のディスプレイ広告ビルダーにも見ることはできません。(2011年10月現在)

    ディスプレイ広告ビルダーは、4年ほど前にGoogle が発表した「Google ガジェット広告」がやや早すぎたフォーマットだったためあまり広がらなかった反省をもとに進められた(と思う)、静止画だけでない、さまざまな使い方ができるディスプレイ広告のフォーマット集で、AdWords のアカウントさえあれば誰でもかんたんに動きのある広告を作ることができます。

    ガジェット広告が出た当時は、Flashなどのフォーマットとの比較や、ブログパーツやデスクトップガジェットとの比較などの文脈で理解されたように記憶しています。これはおそらく広告主がユーザーとのインタラクションをしたいときに、わざわざクリックしてウェブサイトに飛んでもらわなくても、広告上でコミュニケーションを完結できる、もしくはある程度コミュニケーションを深めた上でウェブサイトに着地させられるということが売り文句の一つだったはずでした。

    しかし、結局その後の数年間で、企業がユーザーと対話する場所は広告ではなくFacebookやTwitter のようなソーシャルメディアが主役になり、ガジェット広告はその後語られることなく、ディスプレイ広告ビルダーのフォーマット増加に反比例するように、静かになくなっていったように思います。

    ところで、ソーシャルメディアの隆盛とともに、近頃は「ソーシャル広告 (Social Ads)」という言葉が聞かれるようになっています。先月(2011年9月)に行われたTechCrunch DisruptでのGokul Rajaram氏(元Googleで、今はFacebookの人)の言葉を借りれば、ソーシャル広告とは

    ”The social ad itself is a brand message paired with a social”
    (ソーシャル広告それ自体、ソーシャルとともにあるブランドメッセージである)

    なので、別にソーシャルグラフをターゲティングに利用とか、コストパーエンゲージメントとか言わなくても、この「ツイートガジェット型広告」も、立派に「ソーシャル広告」だと思います。

    余談ですが、データフィード型の広告には、広告の審査の問題が、普及への一つの課題になる可能性があります。

    どんな広告でも掲載までの審査があります。テキストでもイメージでも動画でも、入稿されたデータに対して掲載基準を満たしているかどうかが審査対象ですが、フィードされるデータがリアルタイムで更新されるような広告フォーマットは、都度の審査が原理的に難しい以上、アフィリエイト事業者と広告主それぞれの、広告に対する節度が問われることになるかもしれません。

    なぜTwitter型のGoogle AdWords広告が広まらなかったのか、それを過去の学びとして考えることで、この「ツイートガジェット型広告」の浮沈も見えてくるのではないでしょうか。



    2011年10月12日水曜日

    タブレット向け広告を理解するためのバイヤーズガイド


    iPad2やSony Tablet など新しい製品がどんどんリリースされ、今年はタブレット端末飛躍の年と呼べる勢いを示しています。世界的にみても、先日IDCが発表したように、2011年の第2四半期(4月−6月)のタブレット型PCの出荷台数は1,360万台に達し、前年の同じ時期に比べ4倍に増えたとのこと。それに合わせるかのようにタブレット端末やスマートフォン経由でのトラフィックが北米全体の7%近くまで達したというcomScoreの報告も出ており、その成長率は注目に値します。

    そんな劇的な成長を遂げているタブレット端末なので、広告主や広告代理店では「タブレット端末ってどうなの?」「で、何すればいいの?」という議論が日本だけでなく世界中で活発に行われているようです。

    PublicisグループのデジタルエージェンシーであるDigitasのVPであるRyan Griffin は、「Where Does The Tablet Fit In The Marketer’s Media Plan?」という記事の中で「"Where should the tablet fit as part of a marketer's media plan?"(タブレットはメディアプランのどこにハマる?)」という質問に対して、以下のように言っています。

    ”Many marketers tend to think of Tablets as machines that simply further power today’s increasingly pervasive 'Culture of Mobility' for consumers – and in turn equip brands with a platform for convenience, utility, and entertainment ubiquity.”

    ”From a planner’s perspective, the Tablet marks a unique intersection of data (context, addressability, and location), portability, and highly engaged media consumption – with scale very much on the horizon. If you are a retailer or financial services company, stake out a dedicated presence, and start measuring engagement and efficacy through this new lens. If you are a CPG company, understand how consumers are spending their time on Tablets, and deliver value (entertainment, coupons, or offers) in those environments.”

    ”多くのマーケターがタブレットを、広く浸透した ”持ち歩きの文化” を一層加速させ、便利で、使い勝手がよくて、どこでも楽しめるプラットフォームとだというブランドを確立しはじめた端末だと感じている。”

    ”プランナーからすれば、タブレットは文脈やターゲティング、ジオなどのデータのユニークな接点であり、持ち運びされ、メディアと相性もよく、これから更なる広がりを見せる兆しもある端末だと感じるだろう。もし小売や金融系のサービスに勤めるプランナーなら、とにかくタブレットは押していかなければならないし、タブレットでのエンゲージメントや効率を測りはじめるべきだろう。消費財メーカーだったら生活者がどれくらいの時間をタブレットに費やしているのか理解すべきだし、クーポンなどの価値をタブレットを通じて届けなければいけない。”

    とはいえ、タブレットの規模感的にどの程度全体のプランニングに盛り込むのかはまだ微妙なところだと思うので、何かしらの指針なりヒントなりがほしいなと思って何かないかと探してみたら、ありました。

    IABがつい先日発表した
    「Tablet Buyer’s Guide: Practical Advice for Advertising on Tablets
    (タブレットバイヤーズガイド: タブレット端末に広告を出すための実践的なアドバイス)」

    という資料です。

    製品のラインナップが揃いはじめ、ユーザーが増えはじめてて選択肢が広がると、エンドユーザーが購買の参考にするのがいわゆるバーヤーズガイド(お買い物カタログ)ですが、このガイドはタブレット端末の購入についてのガイドではなく、インターネットを飯の種にしている人たちのための、タブレット端末に出すための広告やキャンペーンプランニングのガイドになっています。

    リンク:
    Tablet Buyer’s Guide: Practical Advice for Advertising on Tablets (PDF) ※PDFです


    資料の構成は以下のようになっています。
  • Introduction: Tablet Advertising Opportunity(タブレット広告の機会)
  • Starting Points for Tablet Advertising(タブレット広告を始める際のポイント)
  • Tablet Advice(タブレットアドバイス)
    • Planning(プランニング)
    • Design(デザイン)
    • Execution(制作・実行)
    • Measurement(測定)
  • Relationships with Other Media(他のメディアとの関係)

  • 内容の一部を紹介しますと、
    まず最初の「Introduction: Tablet Advertising Opportunity(タブレット広告の機会)」では、タブレット端末のユーザー層の伸びや、タブレットの定義、各プレイヤーの状況など、市場動向について詳細に記載されています。



    次に、「Starting Points for Tablet Advertising(タブレット広告を始める際のポイント)」では、タブレット広告を大きく「アプリ内広告」と「ブラウザへの広告」に分け、それぞれ以下のようにタイプを分けています。

    <<In-app ads(アプリ内広告)>>
    アプリ内広告には、大きく分けて次の5つのタイプに大別されるそうです。

    ・スポンサーシップ
    シェアオブボイスを狙った広告で、時に記事広告のようなものだったり、アプリ自体がブランド用のもの

    ・フルスクリーン
    フルスクリーン、もしくはインタースティシャル(ロード時間に出る広告)で、雑誌型のアプリによくあるもの。静的、もしくはビデオやアニメーション、スライドショーなど、形式は多数。

    ・スタンダード
    アプリ内に現れる、いわゆる普通の広告。レクタングルかリーダーボードの形を取ることが多く、アプリのデザインに合わせて掲出されるもの。

    ・カスタマイズ
    特定のアプリに向けてカスタマイズされた広告。

    ・ビデオ
    動画に特化したアプリによく見られる方式で、その名のとおりビデオ型の広告が、プリロールやポストロールで表示されるのが一般的。

    <<Tablet web ads(タブレットブラウザへの広告)>>
    上述したアプリ内広告のタイプに併せて、以下のことに気をつけるとよいと書いてあります。
    • タブレット用サイトでは時折通常の広告サイズのほかに、カスタマイズされたサイズもある。
    • リッチな広告を作る際にはFlashはAppleのデバイスでは動かないことを念頭に入れる。
    基本かも知れませんが、何事も基本が大事ですね。


    続いて「Tablet Advice(タブレットアドバイス)」の章では、タブレット広告をそれぞれ、「Planning(プランニング)」、「Design(デザイン)」、「Execution(制作・実行)」、「Measurement(測定)」とフェーズを分け、それぞれ項目別にアドバイスしています。結構詳細なので、ぜひご自身でご覧ください。特に広告のサイズの注意点や、「タッチするの前提で作れ」などのアドバイスは参考になると思います。アドネットワークとか、その辺にはあまり触れられてないのが残念といえば残念でしょうか。



    IAB自身も本資料の最後で、
    ”The IAB’s Mobile Marketing Center of Excellence is looking forward to exploring how consumers make tablets a part of their lives and to helping the industry grow faster through education, case studies, best practices and, as the market matures, standards around measurement, creative and operations.”
    と結んであるとおり、引き続きの事例を含めた情報提供を匂わせていますし、タブレットが伸びるといいねとポジティブな感じで結んでいます。

    タブレットへの広告配信については今後も情報が出てくると思いますので、このブログでも継続的にウォッチしていければと思います。タッチポイントがたくさんあって、プランニングする側は大変ですが、うまく吸収していきたいですね!



    2011年10月5日水曜日

    スマホの提案に使えるグラフが自由に作れる、”Our Mobile Planet”


    モバイル、特にスマートフォンの隆盛が叫ばれて久しいですが、先日eMarketerが発表したとおり、北米でのモバイル広告費は 2011年度で12億ドル(約1,000億円)に成長すると言われており、2015年には44億ドル(約3,800億円)まで成長する見込みと言われているほど、市場のモバイルへの傾倒は著しいものがあります。

    参考:
    Smartphones, Mobile Internet Set Stage for Increased Mobile Ad Spend - eMarketer
    2011 Mobile Advertising Expected to Exceed $1 Billion | Search Engine Journal


    モバイル広告の内訳も、これまでのSMSなどのメッセージベースのものから、検索、バナー、動画など、モバイル機器の進化とともに比率は変化していくだろうと予測されています。2015年には検索型広告はPCに近い40%程度まで伸長し、バナーやリッチメディア系広告も36%とほぼ検索と同等のパイを獲得、動画での広告も9%と、かなり増えていくようです。



    そんな劇的な変化を遂げているモバイル広告なので、当然広告主や広告代理店ではモバイルの対応や提案が活発に行われており、そのための資料づくりに追われている担当者も多いと思います。

    そこでタイミングよく登場したのが、Our Mobile Planet (アワーモバイルプラネット)という、Googleと、市場調査のシンクタンクであるIpsos、MMA (Mobile Marketing Association) の3団体が共同で製作したサイトです。

    リンク: Our Mobile Planet

    トップページには、
    ”Our Mobile Planet provides insights into smartphone usage and mobile attitudes. Use it to create custom charts that will deepen your understanding of the mobile consumer and support data driven decisions in your mobile strategy.”

    - モバイルプラネットはスマートフォンの利用状況・態度に関しての情報を提供するサイトです。グラフをカスタマイズし、モバイルユーザーへの理解や、モバイルを利用した戦略や意思決定にお使い下さい。

    と書いてあるとおり、あらかじめ用意されたモバイル用のデータを自由に加工し、さまざまなグラフが作れるようになっており、社内の市場調査資料、モバイルの提案資料を作るときに非常に便利なつくりになっています。

    使い方はかんたんで、
    まず、「Create your chart now」ボタンを押してスタートし、

    データの種類を選択し、

    対象の国を選んだら、

    グラフの完成です!かんたん!
    もちろん、画像のダウンロードができますし、CSVファイルでも落とせます。


    こういったサイトは日本のデータがないこともしばしばですが、今回は対象の国が多く、日本のデータもしっかり入っているので、「どうせ北米とヨーロッパだけでしょ」と思わずに、一度トライしてみてはいかがでしょうか!

    余談ですが、Googleは「ChartTool」というグラフ作成サイトも作っています。
    これには、一般にグラフと呼ばれる種類のものがほとんど網羅されているので、Excelに用意されているグラフは色味がキツくて使いづらいなんて思ったことがある方や、オンラインでサクッとグラフを公開してみたいなーと思ったことがある方にはちょうどよいツールだと思います。併せてどうぞ。


    2011年10月28日 追記:
    日本語も公開されましたね。

    Google Japan Blog: 世界のスマートフォン利用に関する大規模調査サイトを公開します



    2011年10月4日火曜日

    アトリビューションナイトの予習(復習)で使える記事まとめ


    本日(2011年10月4日)は、今年のネット界隈でのホットトピックである「アトリビューション」に特化したイベント、「Attribution Night 2011」が開催されます。 # 開催概要はこちら。(Facebookページです)

    イベントでは、クロスリスティングの熊こと治田 耕太郎 氏、Fringe81のゲバラ隊長こと田中 弦 氏、アタラのカストロ?こと有園 雄一 氏がそれぞれプレゼンテーションをされ、その後鼎談してアトリビューションの未来について語り尽くすという内容になっています。

    そこで、せっかく大きなイベントなので、これまでのアトリビューションに関する記事を読みながら、予習をしつつ迎えられればと思います。
    以下に登壇されるお三方が執筆された記事を抜粋して載せました。予習に、そして復習のお供にどうぞ。


     予習編

    治田 耕太郎 氏(@sembear)
    アシストからアトリビューションへ(1) / 検索エンジンマーケティング考
    アシストからアトリビューションへ(2) / 検索エンジンマーケティング考
    アシストからアトリビューションへ(3) / 検索エンジンマーケティング考
    こちらのアクセス解析イニシアチブでのスライドも必見ですね。

    田中 弦 氏 (@yuzuru_81)
    アトリビューションのメリットと課題と評価手法について | Fringe81 blog
    アトリビューションと態度変容と。 | Fringe81 blog
    トータルCPAとアトリビューションの方法論 | Fringe81 blog
    革命前夜その2 最近思っていることまとめ | Fringe81 blog

    有園 雄一 氏 (@arizono)
    アタラのアトリビューションコンサルティング | Attribution.jp
    アトリビューション分析は認知や態度変容も対象にしているのか? | Attribution.jp
    アトリビューションでより効率的に需要を喚起できるのはなぜか?(1/2) | Attribution.jp
    アトリビューションでより効率的に需要を喚起できるのはなぜか?(2/2) | Attribution.jp
    アトリビューションとメディアビジネス | Attribution.jp

    そういえば、田中氏と有園氏の熱い対談もありました。
    アトリビューション特別対談:Fringe81代表田中弦×アタラCOO有園雄一(1/4) (2/4) (3/4) (4/4)
    今日はこの談義に@sembear氏が加わると思うと楽しみです。

    それでは、本日のアトリビューションナイト、楽しみましょう!!(私も会場におります)




     復習編

    興奮の一夜が明けて、情報が日々続々と更新されてきていますので、復習ということでリンクを貼っておきます。
    残念ながら参加されなかった方も、当日のハッシュタグ #AN2011 で当日の熱気に触れてみてください!

    登壇者の声
    【御礼】アトリビューションナイト2011無事閉幕!【感謝】 / 検索エンジンマーケティング考
    アトリビューションナイトありがとうございました。 | Fringe81 blog

    参加者の声
    Attribution Night 2011 ツイートまとめ - storify.com
    Attribution Night 2011 - Togetter

    メディアレポート
    広告を見てコンバージョンした人の95%は“見ただけ”: 超満員Attribution Night 2011レポート | Web担当者Forum

    当日使われたスライド


    なお、Fringe81の田中さんご自身によるスライドの解説はこちら。
    コンバージョンパス分析のやり方と解説 | Fringe81 blog



    2011年10月3日月曜日

    経営を左右する "データマネジメントプラットフォーム" とは?


    最近しばしば耳にするようになった「データマネジメントプラットフォーム(DMP)」とは一体なんなのか?

    今年(2011年)の夏に米Forrester Research社が出したレポート「The DMP Is The Audience Intelligence Engine For Interactive Marketers. (「データマネジメントプラットフォームは、ウェブ担当者にとって顧客を理解するためのエンジンだ」)」で、データマネジメントプラットフォームとは以下のように定義されています。

    # ちなみにこのレポートはオンラインで$499 するので、ちょっと高いです。。。僕も読んでません。

    “… a unified technology platform that intakes disparate first-, second-, and third-party data sets, provides normalization and segmentation on that data, and allows a user to push the resulting segmentation into live interactive channel environments.”

    "(データマネジメントプラットフォームとは)自社や外部などの様々なデータを抱合し、分割・正規化し、それらをすべてのチャネルに入力する技術プラットフォームである。"


    この定義に疑問の余地はありませんが、一方で、日本に比べて進んでいると言われている北米においても、ほとんどのデータマネジメントプラットフォーム事業者が、このForrester社の定義に沿ったサービスを提供できているとは言えないようです。

    同事業を展開する Aggregate Knowledge社のCEO、David Jakubowski氏は” Defining ‘Data Management Platform ”という記事の中で、「データプラットフォーム事業社のサービスレベルは正直言って各社でまちまちなので、企業がどの事業者と提携してDMPに踏み込むのかを含め、まだまだチャレンジが多い」と語っています。

    ディスプレイ広告に限らず、あらゆるマーケティングチャネルは複雑化し、競争と変化は日増しに激しくなっているので、リサーチデータやリアルタイムで入ってくるオーディエンスデータのような第三者からのソースだけを意思決定の根拠にするのではなく、それらをしっかりカテゴライズし、自社データと統合して最適化、時に自動化する必要があるということですね。

    おそらく、これからの課題は、それぞれ違うデータの構造を持つ第三者からのデータと自社データをどのように整合性をつけて統合し、それらを自動的に更新し活かしていくシステムを構築するか、データ間のギャップをどうやって効率的に埋めて顧客属性やターゲティングの精度を担保していくかということなのだと思います。それはそのまま、マーケティングを行う事業会社と、データプラットフォームを提供する事業者が、共通で解決すべき経営課題になるのではないかと思います。

    Eコマースだけを見ても、

    ・Google ショッピングや比較サイトへのフィード
    ・アフィリエイトエンジンへのデータ提供
    ・アマゾンなどのマーケットプレイスへのデータフィード
    ・検索連動型広告とのAPI接続をした在庫連動入札や動的な広告文の変更
    ・リターゲティングに代表されるオーディエンスターゲット広告の活用
    ・顧客管理やメールマガジンなどのCRM機能との連動

    など、思いつくだけでもデータの統合管理と活用のシーンはたくさんあります。

    プライバシーの管理や企業の各部門間の連携など、解決するべき課題が多いのも事実ですが、分散しているデータをまとめて資産として活用する企業と、日々の生産活動の澱として放置してしまう企業との間には、これから取り戻せないほどの差が出てくるのではないでしょうか。

    北米ではすでに「Council for Accountable Advertising」というアドテクまわりの標準規格を作ったり相互運用の確立を普及することを目的とした業界団体ができていますし、日本でも、オプト社のADPLANワンタグなど、データマネジメントプラットフォームに向けての先鞭となりうるような取り組みは少しずつですが始まっています。

    データがすべてとは言いませんが、扱うデータ構造をどのように設計し、いかに連携させるためのシステムを構築するかが、どの業界においてもカギになると思います。大変な時代ですが、マーケティングを生業にする人たちにとっては面白い時代の到来でもありますね!


    ※この記事は2011年10月に書かれたものです。


    (2012年11月更新)こちらもご覧ください:
    DMP(データマネジメントプラットフォーム)を徹底解説した、IABの白書をまとめてみる




    2011年10月2日日曜日

    アトリビューションは広告代理店を賦活するのか?


    2009年来の不況はまだ完全に回復したとはいえず、特に日本は震災や円高でえらいことになっていますので、まっさきに削られやすい企業の広告宣伝費や販売促進費も、効率がよく結果が厳密に測れる(と言われている)ものに流れていく傾向にあり、その一つがインターネット広告、その中でもラストクリックで結果の出しやすい検索連動型広告だと思います。

    一方、グローバルエージェンシーであるNurunのディレクターであるAmy Manus氏は「Turning Attribution on Its Side」という記事の中で、以下のようなことを言っています。

    “For the past 10 years, looking at the ‘last click’ model may have worked; today, it paints an inaccurate picture given the decrease in clicks, the increase in retargeting and paid search efforts, the impact of social media, and the need to look at a more integrated marketing picture.”

    これまでの10年はいわゆる”ラストクリック”モデルで伸びてきました。不正確広告モデルは減少し、リターゲティングや検索連動型広告、がその成長を担保してきました。しかし今日では、我々広告会社はそれぞれ個別の手法を計測するのではなく、それぞれのマーケティング手法を統合的に見る必要に迫られているのではないでしょうか。


    この、「それぞれのマーケティング手法を統合的に見る」ことを可能にするのがアトリビューションであり、このアトリビューションを遂行することが結果的に広告代理店が広告主と良好な関係を維持するために必要である!と強く主張しているのが、北米を中心にアトリビューション分析を提供するC3MetricsのCEO、Mark Hughes氏です。

    氏は、「Agencies + Attribution = Client Retention」という記事の中で、

    1. マーケティング費用の定量化 (It quantifies marketing spend.)
    2. 価値の定量化 (It quantifies value.)
    3. ナレッジの提供 (It adds knowledge, and knowledge is still king.)

    という3つのキーポイントを上げた上で、以下のように言っています。(※)

    「ラストクリックやラストビューだけでの指標はSEM系の代理店にとっては優位なレポートになりやすいですが、そのレポートだけでは表面的な指標に過ぎないと多くの広告主が気づき出している昨今では、四半期ごとのレビューで、「最近何してくれた?」「これから何をしてくれる?」と広告主に問われることは避けられません。」

    「アトリビューションはクリックやビューというこれまでの広告の評価指標を引き上げ、どの広告やメディアがどれだけマーケティング全体のパフォーマンスへ貢献しているのかを浮かび上がらせ、それぞれの価値を定量化し、どこにどれだけの予算を投下すれば同じ予算で広告主の売上を最大化できうるかを判断するための視点を提供することになります。それは提案とレポートの透明性を担保することにもなり、顧客からメディアを扱うだけの表面的な付き合いではなく、真のナレッジを提供するパートナーだと感じてもらうことにつながると思います。」

    ※ だいぶ超訳してまとめています。。。

    もちろん、Mark Hughes氏がアトリビューション事業者の社長である以上、広告代理店をけしかけてアトリビューションをアピールしているだけではないか?と穿った読み方を避けることは難しいです。

    が、少なくとも、ラストクリックのみの趨勢から卒業し、アトリビューションマネジメントによって様々な媒体を扱い、テクノロジーによって自動化し分析し、人間の叡智であるクリエイティブとキャンペーン構築を今まで以上のスピードを回していき顧客の売上を最大化するという仕事は、コンサルタントでもテクノロジーベンダーでもなく、広告代理店が最も得意とすべき領域で、メインプレイヤーになるべき仕事だということに疑いを挟む人は少ないと思います。

    アトリビューションというキーワードをどのように広告代理店が捉えていくかは分かりませんが、バズワードとして消費していくのか、変化の旗手と浸透させていくのか、いずれにせよ今後を占う重要なキーワードの一つであることは間違いないのではないでしょうか。



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