2013年12月31日火曜日

アドワーズと私


アドワーズとの出会い

初めて Google AdWords(以下:アドワーズ)の存在を知ったのは2002年の秋だった。

その頃、僕は勘定系のプログラムばっかり組んでいるうだつの上がらない24歳のシステムエンジニアで、たまたま顧客企業のエンドユーザーが使う画面を設計したことがきっかけで HTML や CSS を覚えたことで、漠然と華やかな気がすると勘違いしてウェブの仕事に移りたいと考えていた時期だった。

当時は「ウェブといえば制作」くらいしか頭になかったので、とりあえずウェブデザインの雑誌をいくつか定期購読しては特集されている内容を週末に片っ端からマネするということを続けていた。そんな中、たまたま目にした「Web Creators」の2002年12月号の特集記事は、それまでの制作テクニック的なものとは違って、ウェブサイトをつくった後のアクセスアップについての特集が組まれており、当時 Google Japan の営業本部長だった佐藤さん(現ATARA会長)が見開きでドーンと写真入りで紹介されていた。まだ渋谷のセルリアンタワーの狭い一角を借りていた頃で、社員も十数名だった頃のはずだ。



その翌年に直接佐藤さんにお会いしてから現在に至るまで10年以上にわたり目を掛けて頂くことになるのだが、当時はそんなことが想像できるはずもなく、記事を見た最初の印象は「これがビジネスになるのか〜へぇ〜」というものだった。

記事を見た翌年の2003年3月、あまりのセンスのなさにエンジニアを続けることは諦めて、小さなネットベンチャーというかネット専業広告代理店に転職。そこで数ヶ月前に記事で読んだアドワーズに関わるようになる。

当時はまだネットバブル崩壊の残滓が色濃く残っていた時期で、「ベンチャー」という言葉に対してやや鼻白む風潮があったのだが、SI の業界構造とシステム開発の辛さに嫌気が差していた僕はとにかくインタラクションが起きフィードバックのサイクルが早いウェブという分野に憧れていて、転職する企業も SEM に絞っていたわけではなく「そういえば記事で検索エンジン最適化とかあったな」「ウェブ系の企業はみんなベンチャーみたいなもんだ」程度の認識で、とにかくネットだベンチャーだという感じで転職したのだった。そこでアドワーズに出会い、人生が回りはじめるのだから今思えばラッキー以外の何物でもないと思う。

転職した直後は SEO を顧客企業に提案する仕事をメインにしていたものの、他の社員のヘルプで Overture の DTC(DirectTraffic Center)と Google のアドワーズを触るようになって、徐々にその魅力に取り憑かれるようになった。当時はオーガニックの検索結果の刷新が月1回という牧歌的な時代で、僕がウェブの仕事に求めたフィードバックの早さはそこにはなく、むしろ取ったアクションに対して説明責任がなかなか果たせないことに失望に近い感情を抱いていた頃だったので、設定したすぐ後には掲載が始まり、3時間もすれば実際の数字として管理画面に反映されるというリスティング広告のフィードバックの早さに、それまで求めていたウェブらしいスピードと明快さを感じたのだった。


ユーザーの支持

当時は今より圧倒的に Overture の方が取り扱い高が多い時代だったものの、調べれば調べるほど、使えば使うほどアドワーズの思想や設計の方が優れているように僕には思えた。

Overture の担当営業は毎週の数字のヨミをただ詰めてくるだけだったが、Google の担当営業(この方は後の先輩で、恩人の一人)は、会うたびに新しい機能や目指している世界観を語ってくれた。アドワーズの数字にはほとんど触れず「ユーザーの支持が大事です」と繰り返されていたのが印象に残っている。2週間に一度のミーティングはいつも楽しみだった。

僕自身がアドワーズの設計が優れていると思っていたのはこの「ユーザーの支持」という部分だった。当時、 Overture は上限CPC(クリック単価)だけでランキングが決まる仕組みで、管理画面の DTC は自分が入札しているキーワードの他の広告主の入札単価が見れる仕組みになっていたので、運用のかなりの部分を入札競争が占めていた時代だった。そんな中で「ユーザーの支持が大事」という言葉はとても新鮮に聞こえた。

実際、ユーザーの支持はアドワーズの仕組みに組み込まれていて、広告掲載可否、順位および課金は「広告ランク」というもので決まっていた。(今でもそう)

そして、広告ランクは以下のような式で成り立っていた。



「広告が自分が求めていた情報だと思えば人はクリックする。だからクリック率はユーザーの支持の証明」という理路はとても分かりやすいし合理的に思える。実際にこの説明を聞いた時には「そうだよなー」と思ったのを記憶している。

ただ、このユーザーの支持があったとしても、上位の広告の CPC が低いと儲からないんじゃないかなあと思いつつこの式のメモを取っていた時に、「ああ、そうか」と気付いた瞬間があった。夕方のオフィスで一人稲妻に打たれたように呆然とした。

その時のメモは、今でも若い人に説明する時にたまに使っている以下の式だ。




広告ランクは因数分解するとインプレッション単価になる。つまり、アドワーズは表示する広告としての収益性が高い順にランキングしていくということだった。ユーザーの支持=クリック率を順位の決定式に組み込むことで、広告を掲載する検索エンジン自身の収益が最大化する仕組みになるのだ。

このことは今ではアドワーズに関わる人なら誰でも知っていることで、常識である。でも、2003年の時点では常識ではなかったと思う。僕は初めてこのことに気付いた時「天才っているんだな」と思ったことを覚えている。ユーザーの支持と収益性を無理なく両立させるなんて、なんて美しいんだと。その時に走った衝撃が10年以上経った今でも似たような仕事を続けている原点になっている。


フェアなモデル

一方で、反論もあった。式の構成要素が上限CPCとクリック率だけなので、仮にユーザーの支持が得られなくてもお金さえたくさん払えれば上位表示が可能ではないかというものだ。これにもアドワーズは順位の仕組みと課金の仕組みを分けることで回答を提示していた。





計算の分母が自分のクリック率で、分子はライバル企業の広告ランク(上限CPC×クリック率)なので、クリック率同士で約分できることになる。単純な算数だが、分母である自分のクリック率が高ければ高いほど、割り算の商である CPC は低くなる。逆に自分のクリック率が低ければ CPC は高くなるということだ。

クリック率が低い、つまりユーザーの支持が低い広告はそもそも相当上限CPC を積まないと広告が表示されないか、クリックにかかるコストが極端に高くなって広告の費用対効果が見合わなくなるため、必然的に市場から退場するかもしくは広告の品質を上げるためキーワードや広告の見直しをせざるをえなくなる。ユーザーの支持が高い広告であればあるほど、廉価に集客できるモデルになっており、かつ出稿側の自浄作用が働くのである。僕はこれを知った時、何てスマートでフェアなモデルなんだと、鳥肌が立ったのを憶えている。
(ちなみに、広告の掲載順位は広告ランクが高い順に並んでいるので、割り算の商が自分の設定した上限CPCを超えることはない)

この2つの式を知ってから、僕の仕事へのモチベーションは大幅にアップした。自分の仕事にはきっと意味があると感じることができるようになり、Google の社員でも何でもないのに、このフェアなプラットフォームはもっと世の中に広まるべきだと勝手に思うようになった。結局、最初に稲妻が走ってから3年半後に巡り巡って Google の社員になることができ、それからさらに5年後に Google を辞して今の仕事に就いて2年半が過ぎたのだが、この時から今まで、このフェアなプラットフォームがもっと世の中に広まるべきだという考えはほとんど変わっていない。


品質、予測の精度、ディスプレイネットワーク

話は少し戻るが、2003年にパブリッシャー向けの広告ネットワークとして AdSense(以下アドセンス) が始まって、検索クエリだけでなくコンテンツにもマッチングさせることが可能になった。そのページに記載されている内容(コンテクスト)と、入札された広告をマッチングさせる「コンテンツターゲット」である。Google が発展させてきたウェブサイトのインデックスの仕組みを広告にも応用させたものだ。

最初はテキスト広告だけだったが、後にバナー広告、動画広告、ガジェット広告などのフォーマットの充実が図られ、プレースメントターゲットやオーディエンスターゲットなどのターゲティングメソッドの追加につながっていく。

広告ランクの計算式もクリック率から広告の品質に変わり、単純なクリック率だけでなく、広告との関連性、リンク先のページの中身や過去のアカウントの履歴、そのクエリでのこれまでの世の中実績などを考慮するようになった。考えてみれば当たり前で、「ユーザーの支持」が収益の最大化とエコシステムのフェアネスを担保していると考えれば、広告品質とは、その指標自体をブラックボックス化したかったのではなく、予測の精度を上げるために変数を増やしたと理解することができる(そして、それを人間が理解できるように10段階にしたのが品質スコアだ)。

クリック率はインプレッションが出た結果なので、その瞬間のクリック率を算出することはできないわけだから、クリックされる可能性としての予測クリック率(pCTR)の精度を上げるためにあらゆるシグナルは使われている。

※この辺は以前に書いた記事もご参照下さい
http://www.admarketech.com/2013/08/adwords-quality-score.html


ちなみに、GDN(グーグル ディスプレイ ネットワーク)は検索よりも考慮しなければならない変数が多い。検索の広告品質は Google プロパティ内での結果に限られるが、ディスプレイ広告では掲載されるサイトやページが無数にあり、広告枠や入札に参加する広告フォーマット、ターゲティングメソッドなど、考慮しなければならない要素が検索とは比べものにならないほど存在するからだ。それらの変数を考慮して瞬時に計算し広告を配信することは一朝一夕にはできない。ディスプレイ広告の進化として RTB が語られるようになって数年が経っているが、Google は自社の構築したネットワークでの RTB に既に10年の歴史を持っている。

ディスプレイのカオスマップを読み解くのはなかなか一苦労だという人も多いと思うが、アドワーズとアドセンスの関係を理解していると、カオスマップ内の各構成要素のほとんどを Google のプラットフォームが持つ各機能の直喩として表現することができる。リスティング広告に長けている人が DSP の運用にもすぐにキャッチアップできると時折言われるのは、このことに無関係ではないと思う。





まとめのようなもの

2006年に入った Google は世界を変えたいと思う人たちの集まりだったが、僕自身はそんなことを口に出すのもおこがましい単なる一小市民だったから、Google に入った当初は勢いで入っちゃったものの一体何ができるのかと途方に暮れた。

そんな時、Google に入ってから上司(の上司)になった佐藤さんが「一人ひとりが Google のエバンジェリストだから」と言って下さり、僕自身は世界を変えていける当事者でもなんでもないけど、少なくともアドワーズで僕自身の世界は変わったことは確かであるわけだから、変わったよと他の人にも伝えることはできるんじゃないかと思った。そして、アドワーズの営業とは、「変わったよ」だけじゃなくて、「変わったからこうした方がいいよ」と伝える仕事だと理解してからは、スムーズに自分の役割を理解できるようになった。

Google を卒業してから3年目になるが、立場は変わっても、役割は変わっていないと思っている。Google が変化の重要な旗振り役であることに変わりはないが、変化は Google 以外でもあらゆるところで同時多発的に、速度を増しながら起き続けているので、「変わった」と発信し続けられるように、「こうした方がいい」と伝えられる何かを持ち続けられるように、変化している個人や企業を応援できるように、自分自身が変化し続けていかなければならないと思っている。



2013年12月17日火曜日

一人だからこそ、自分で考えなければ進めない − 株式会社LIG 小林享平氏 #State-of-AdOps Vol.9


「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

※過去の記事はこちらから。

第9回は、『リスティング広告担当者がチェックしている運用に役立つサイト10選』 という記事でadmarketechをご紹介頂いたことがきっかけになり、株式会社LIG(リグ)でリスティング広告を担当していらっしゃる小林享平(きょーへい)さんにインタビューさせていただくことになりました。


ウェブ制作会社でありながら自社サイトのメディア化に成功され、エッジの効いた情報発信をし続けているLIG。ウェブサイトをつくる制作会社の中で、集客を担うリスティング広告を担当することの醍醐味や、LIGのリスティング広告が有名になった「LIGLIS」の裏側など、忌憚のないお話をお聞きしました。


# インタビューは 2013年12月某日に行われました。



LIGLISが想定外にバズりました(笑)


きょーへいさんが現在のお仕事に就かれるまでの経緯と、具体的な業務内容を教えて下さい。

LIGの小林享平(きょーへい)と申します。LIGには2012年の新卒で入社しています。大学4年生のころは普通に就職活動をしていたのですがなかなかうまくいかなくて、卒業後に人材紹介会社の第二新卒インターンのプログラムに参加して、そこでLIGを紹介してもらったのが最初のきっかけです。

当時のLIGは社員が7−8人で今よりだいぶこじんまりとした会社でした。インターンをはじめてから半年後に正社員に登用してもらったのですが、ちょうどその頃に「リスティング手伝ってくれない?」と当時リスティング担当だったジェイに声を掛けられてリスティングを手伝うようになりました。その後、ジェイが転職することになり、そのまま私が引き継いで今に至ります。



リスティングを手伝うようになったのはLIGLISをリリースした頃ですか?

リリースの数ヶ月前から手伝っていました。LIGLISを発表する前まではそんなにたくさんお仕事があったわけではなかったので、ジェイがディレクションも運用もほぼ一人で回していました。



ただ、LIGLISがバズってしまって(笑)、非常にたくさんのお問い合わせをいただくようになりました。ジェイ一人では回らないので、この時期から私も一つのアカウントを担当する本格的な運用を手伝うようになりました。とは言っても二人だけだったので、当時はせっかくお問い合わせ頂いてもお断りするケースが多かったのが申し訳ないと思っています。

ジェイから業務を引き継いでからは基本的に私が一人で担当しています。



誰に向けた広告なのかを意識しています。


リスティング広告は最初どのように勉強されましたか?

どんな仕事でも体系的な部分と実務的な部分とがあると思いますが、体系的な部分はリスティング広告がどういうもので、仕組みやお金の流れなど、基本的なところをOJTを通じて教わりました。

OJT以外で一番助かったのは書籍です。振り返ってみると、初心者にとっては細かいテクニックよりまず全体を網羅した情報が役に立つのではないかと思います。書籍は必要な情報がパッケージになっているので、リスティング関連の書籍を何冊か読むことからはじめました。

いくつか読んだ中でも、SEM-LABOの阿部さんが書かれた本『リスティング広告 成功の法則』は特にお世話になりましたね。(注:現在は最新版『新版 リスティング広告 成功の法則 』が出版されています)

実務面では、とにかく管理画面に慣れることでした。運用業務を細かい作業に切り分けて、入札単価の調整、マッチタイプの追加、予算管理など、一つ一つ確実にこなせるようにしていきました。

現在は、先日記事にもさせていただいたブログやウェブサイトを中心に日々情報収集しています。




1、admarketech(アドマーケテック)
2、MarkeZine(マーケジン)
3、Web担当者Forum
4、SEM-LABO
5、Google AdWords Lab(グーグル アドワーズ ラボ)
6、listhing labs(リスティング ラボ)
7、Inside Adwords Japan
8、Yahoo!プロモーション広告 公式ラーニングポータル
9、でぶててWEB録
10、日刊リス男TIMES~リスティング広告news~

それ以外でも参考にしているサイトはたくさんあります。挙げるとキリがないのですが、例えば SEM HACKsSEMカフェ なども参考にさせていただいています。SEMカフェは Facebookグループ も活発なのでとても勉強になりますね。




リスティング広告の運用で気を付けていることはありますか?

この広告は誰に向けたものなのか?というのは意識するようにしています。キーワードをたくさん並べればいいというわけではなくて、この企業の想定する顧客はどういった人なのか、俗にいうペルソナのようなものを想定して、この情報を探しているときにこの広告を見たらどう思うだろうかと考えながら作るようにしています。

他の人はどうか分かりませんが、リスティング広告はある程度一人でできるようになると、急に辛い時期がくるような気がします。単純作業が業務の大半を占めていたり、膨大なエクセルやキーワードと格闘する毎日なので、精神的に参ってくることがあるんです。

ただ、そこから一歩踏み込んで、お客様のお客様、つまりユーザーが何を考えてその検索クエリを入力しているのかを想像したり、続々と出てくる機能やツールを駆使して効果が上げられないかを考えていくと、普段の作業への取り組みも変わってきます。自分の中に引き出しを増やしていく感覚です。



一人でやっているからこそ、自分で考えないと進まない。


普段の一日のお仕事の流れを教えて下さい。複数名いると分業ができると思いますが、お一人の場合気を付けていることなどがあれば。

朝出社したら運用しているアカウント全体をチェックします。レポートは週次が多いのですが、週に1回だけの作業だと進捗を把握できなくなるので、日別レポートとして午前中に必要項目を埋めておくようにしています。

あとは、テストや変更後の実績の確認ですね。広告文のABテストをしていることが多いので、その結果を確認したり、十分な量があれば分析結果を出したりします。あとは検索クエリレポートを見て、追加キーワードや除外キーワードを作成します。

情報収集は定型業務が終わったお昼にすることが多いです。

気を付けていることは、効率化でしょうか。広告代理店さんのようにたくさんのアカウントを管理しているわけではないので、何でも自動化するというわけではないですが、定型業務はなるべく簡素化するように心掛けています。一方で、他社がどういうレポートや帳票を出しているのかは分からないので、どうすればもっと良くなるのか知りたいと思うことはあります。


なるほど。一人で担当することの悩みなどはありますか?

リスティング広告に共通する悩みなのかもしれませんが、何が正解なのか分からないのが悩みです。あるアカウントで行った施策がうまくいったからといって、別のアカウントに同じように適用してもうまくいくとは限りません。自分の中の引き出しを増やしながら、柔軟に発想していくことが求められる仕事だからこその悩みだと思います。

あとは、やはり一人なので相談する相手がいないことですね。誰かと意見交換をしながらアイデアが出てくるということってよくあると思うのですが、一人だとそうはいきません。社外の方と話すこともたまにありますが、詳細はもちろん話すわけにはいかないので、どうしても一般論になってしまいがちです。

ペアプログラミングじゃないですが、リスティングの運用でも作業の過程を一緒に見ながら進められたりしたらいいなと思ったりすることがあります。


逆に、一人だからこその良い点などは?

すべてのリスティングのお客さまは自分が担当しているので、自分のやった施策がすぐに結果として表れるので面白いです。どこを改善したらどうなったというナレッジがたまりますし、お客さまからもダイレクトにフィードバックをもらえます。

あとは、逆説的ですが、担当できるお仕事の数が限られていて、情報やツールも限られているからこそ、自分で考えるクセがついたことでしょうか。一人でやっている以上、すべては自分の責任ですし、誰かに言われたからやるのではなく、自分で考えて実行していかないと前に進めません。

リスティング広告の業務を通じて、自ら考えるということの重要さを学ばせてもらっていると思います。



制作会社ならではの強みを出していきたい。


ウェブ制作とリスティングの連携などはありますか?

お客さまの状況によりますが、ランディングページをセットでご提案することができますし、ディスプレイネットワークのバナー制作も社内で連携できます。

あるお客さまでは、他社で運用していてほとんどコンバージョンが上げられておらずLIGにご相談いただいたのですが、移行時に細かいアカウント構成への変更とウェブのリニューアルを同時に行うことによって、問い合わせが急増したという事例があります。

制作を任せていただければちょっとした変更はスピーディにできますし、広告と連携してABテストなどを行うこともできます。運用と制作が近いのはウェブ制作会社ならではの強みだと思っています。


広告運用にメディア運営のノウハウが生きることはありますか?

現在はLIGのブログのバナー広告の管理も担当していまして、頻繁にアナリティクスのウェブテストで出し分けをして効果の確認をしているのですが、着地ページとバナーの表現を合わせたり、LIGのメンバーをクリエイティブに使うとクリック率が高いといったことが分かっています。まあLIGのメンバーを使うというのは社内限定的なナレッジですが(笑)。

LIGではおもしろ記事でもまじめな記事でも、厳しくチェックが入りますので、表現については常に注意を払っています。広告文やバナーなどでもそれは同じですし、お客さまの広告運用を預かっているので、間接的かもしれませんが、メディア運営が広告運用とつながっているなと思います。



ヨコの繋がりを増やしていきたい。


「今後こうしてきたい」といった目標などがあれば教えて下さい。

企業内で一人でリスティング広告を運用している人は多いと思いますので、そういう方たちとヨコの繋がりを作っていきたいですね。一人だと悶々と考えてしまうので、勉強会などを通じていろいろな方々と交流を持っていきたいと思います。


同じように少人数でリスティング担当として現場で頑張っている方々に一言ありましたらお願いします。

一人でリスティングの仕事をしていると、社内でも自分の仕事が理解されていなかったり、結果が出なくて苦しいときに相談相手がいなくて孤独を感じたりすると聞いています。私自身もそういう時期がありました。

でも、施策が結果に繋がるサイクルが早い仕事ですから、一度いいフィードバックを得られればよい方向に動くようになりますし、結果は自信につながります。お互いあきらめずに頑張っていきましょう!


本日は貴重なお話、ありがとうございました!




2013年12月11日水曜日

商品リスト広告のセミナー資料と、ちょっとした補足



先日(2013年12月10日)に行われたフィードフォースさん主催のセミナー「Google商品リスト広告の最適化ノウハウを大公開」でお話しさせて頂く機会を頂きました。

(スライドをつくってから気付いたのですが)40分という短い時間の中で言いたいことすべてを伝えるのは難しかったのと、配布資料を作らなかったためご不便をお掛けしてしまったので、セミナー資料を Slideshare にアップロードしました。せっかくなので、流れに沿って少しだけ補足ができればと思います。




「商品リスト広告」の前に

何を話そうかなと考えたときに、いきなり商品リスト広告の概要を説明する前に、この広告が出てくるに至った背景を説明しようと思いました。商品リスト広告の最適化や活用方法については検索すればたくさん出てきますし、このブログでも以前に触れています。利用が進めば、今後はもっともっと色々な記事が出てくるはずです。

探せば出てくる情報をそのまま伝えただけではわざわざ足を運んで下さる方にお土産が作れない。そこで、他の人があまりしなさそうな話をしたいなと思いました。あとは、勉強や仕事、なんでもそうだと思いますが、単に問題の解き方を暗記していくのと、設題のルールを把握した上で解くのでは、その後の応用や類推で大きな違いが生まれますし、なにより後者の方がやっていて楽しいと思います。

そこで、スライドの3つのパートのうち、最初のパートで「知ってても商品リスト広告の効果は別に上がらないけど、知ってた方があとあと効いてくるかもしれない話」をしました。


Froogle について

Froogle は2002年にスタートした Google の商品情報検索です。スライドにもあるとおり、約2年間のベータのあと残念ながら放置され、2007年に Google Product Search に名称変更、その後の2010年のマーチャントセンターと Google Shopping の開始、2011年の商品リスト広告の開始(日本では2012年)につながっていきます。商品リスト広告のご先祖様みたいな存在です。

Froogle は、Google の通常の検索と同じように、クローラーを走らせて、いろんなサイトに点在する商品情報をインデックスし、Froogle 上で検索結果として表示するというものでした。この発想自体は Google にとって自然なものだったと思いますが、幾つか問題がありました。




例えば、データの鮮度の問題。2002〜2003年当時はまだ グーグルダンスが健在であり、徐々に Everflux だ フレッシュクロールだと言われていた時期なので、Google のクローリングの精度も頻度も、今とは比べ物にならないほど低い時代でした。そのため、表示された情報が古かったり、既に売り切れていることがよくあったようです。

もちろんクローリングだけでなく、当時からデータフィードをマーチャントから受け入れる機能も用意されていましたが、Froogle のユーザー数自体が限定的でしたし、企業側も今ほど商品データを自由に扱える環境になかったため、この仕様が小売企業に普及することはありませんでした。

名寄せ(aggregation)の問題もあります。同じ商品でも、キー項目となりうるIDや商品名がサイトごとに微妙に違って管理されていることはよくあります。あるサイトでは「ABC-001 リストバンド」と登録されているものが、「ABCー001 リストバンド(◯◯社製)」と登録されているような感じです。これは、人間の目で見れば同じ商品だと認識できますが、機会が読み取るときにはまったく違うものになります。

これらを全部別々のものとしてリストしていくと膨大な量となって一覧性が損なわれるため、Froogle のように情報を集約するサイトでは、これらの情報を同じものとして認識させるための処理が必要になるわけですが、どうしても Google だけがそれを担うのでは限界が出てきてしまいます。

そこで、マーチャントセンターという Google が用意した商品データベースに企業側からデータを格納してもらうというアプローチに切り替えました。JANコードなどの共通の仕様があれば名寄せはスムーズですし、鮮度の担保や審査もしやすくなります。商品を親のキーにしてメーカーや店舗名が紐づくので、横断検索や比較もしやすくなります。

2012年に発表され、今月(2013年12月)には日本でも始まった「Google Trusted Stores」プログラムのように、商品だけでなくショップ自体を評価することも、データベースの管理が強固になることで実現できるようになりました。





ユニバーサル検索と商品情報表示オプション

ところで、いくら商品データベースが整備されたとしても、商品情報検索をするユーザーが増えないと、マーチャント(小売企業)側にとって Google にデータフィードするメリットがありません。Froogle にしても Google Product Search にしても、そこが弱みでした。普段使っている検索の画面からわざわざ商品検索用のエンジンに移動して改めて検索するようなユーザーはそれほど多くはなかったからです。

そこで、Google はこれまでのテキスト情報だけの検索結果から一歩進んで、商品情報や動画、地図や画像など、あらゆる情報を一つの検索結果に表示するユニバーサル検索を提供するようになりました。明らかに商品情報を探しているような検索クエリであれば、Product Search の内容を検索結果の一部に表示する仕様です。広告側でも、AdWords の検索連動型広告では商品情報表示オプションとして広告に商品情報をプラスボックスで表示することができるようになりました。

ユーザーに使うエンジンを選ばせるのではなく、知りたいものを察知して検索結果を適切な情報レイアウトにして表示することで、結果的に商品情報の表示機会も増え、小売企業にとってマーチャントセンターにデータを送るメリットをつくりだしたのです。



フラグメンテーションとデータフィード

このあたりからはスライドのままなのですが、メディアやデバイスのフラグメンテーション(断片化)の上昇カーブは、そのまま小売企業にとってデータフィードの必要性のカーブになると思います。断片化しているので一つ一つの接触面積は小さくなりますが、サボっていると総接触面積が減っていってしまう。逆にリアルタイムに情報の同期が確保できれば(さらに言うならそれぞれに情報の届け方を工夫できれば)、接触面積を増やすことができます。

接触面は、比較サイト、商品情報サイト、検索、ディスプレイ広告、ECサイト、ショッピングモールなど、たくさんあります。見るデバイスもマルチスクリーンです。たくさんの接触面のうち、検索についての対策が、商品リスト広告です。




データフィードについては、手前味噌ですがこのスライドにより詳細が網羅されています。このセミナーでも幾つか同じスライドを利用させてもらっていますし、論旨としてはまったく同じです。




商品リスト広告の概要と考え方

3つのパートのうちの真ん中にあたりますが、ここはほぼスライドのまま話しています。

商品リスト広告を実施するうえで最初かつ最大のわかりにくいポイントは、商品ターゲットだと思います。AdWords の運用に習熟されている方にとっては当たり前のような話でも、そうでない方にとってはどうもモヤッとして分かりにくい、というのがこの商品ターゲットなのではないかと思い、通常の AdWords の機能を分解して、商品リスト広告の場合と比較してみました。




AdWords に限らず、リスティング広告の最小ユニットは「ターゲット」と「広告」と「リンク先」です。検索連動型であれば「ターゲット」は「キーワード」になりますし、ディスプレイ広告であれば「コンテンツ」や「プレースメント」や「オーディエンス」になります。

「商品リスト広告はキーワードがない」と言いますが、もう少し細かく言えば、「キーワードや広告やリンク先として機能する情報がみんなマーチャントセンターに入っているので、商品リスト広告では商品ターゲットを使ってその情報の仕切り方を指定する」といった感じです。これさえ押さえておけばあとは特に難しくないと思います。



海外事例について

最後のパートは、アメリカの CPC Strategy という会社の事例を利用させてもらいました。CPC Strategy は太っ腹なので、個人情報等のフォーム入力の必要なしにホワイトペーパーがダウンロードできます。興味ある方は以下からご覧ください。

White Papers | CPC Strategy
http://cpcstrategy.com/resources/white-papers/




この事例が面白いなと思ったのは、いい話じゃなくて悪い話が書いてあることです。事例というと成功事例ばかりが出てきやすいですが、商品リスト広告に慣れてくると陥りやすいワナがしっかり提示されていたので、参考になればと思いました。

検索連動型広告でも、1広告グループ1キーワードにこだわり過ぎてマネジメント不可能な状態になったり、地域ターゲットを細かく分割しすぎて逆に表示機会が減ってしまったりといった陥穽をたまに見ることがありますが、そんな感じかなあと思っています。

ところで、この事例では AdWords の話がメインになっていますが、商品リスト広告で一番大事なのはフィードの中身と正確性です。言い換えれば、フィードさえちゃんとしていれば、AdWords の商品ターゲットは全商品指定にしておいても何となくそれっぽい結果が出てしまうことが多いのも(今のところ)、AdWords 側の運用があまりフォーカスされない理由かなあと思うことがあります。



商品リスト広告の今後について

2013年は商品リスト広告のリリースラッシュの年でした。ここ最近のどの広告商品よりもアップデートが多かったのではないかと思います。

2014年もその勢いはおそらく変わることはないと思います。既に公表されている範囲だと、ショッピングキャンペーン(Shopping Campaigns)がスタートすることが先日発表されています。

Introducing Shopping campaigns: a better way to promote your products on Google
http://adwords.blogspot.jp/2013/10/introducing-shopping-campaigns-better.html



AdWords とマーチャントセンターの管理がしやすくなるほか、現在はかゆいところに手が届いていないレポーティングなども強化される予定なので、マーチャントセンターのデータマネジメントのみならず、AdWords の管理にもスポットが当たることになるのではないかと思います。

商品リスト広告のみならず、動的リマーケティング、ローカルストアフロント(Storefront)など、Google だけでも商品データの活用は今後も広がっていくと思います。個人的にもっとも楽しみにしているエリアです。





2013年10月29日火曜日

インハウスの広告運用に大切なこと ー リブセンス 岩崎亮氏 #State-of-AdOps Vol.8


「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

※過去の記事はこちらから。

第8回は、最年少東証一部上場などで注目されている株式会社リブセンスの事業推進部でご活躍されている岩崎亮さんにインタビューをさせて頂きました。「お祝い金」の仕組みで人材メディアに新風を吹き込んだ「ジョブセンス」をはじめ複数のメディアを運営されている企業での広告運用は一体どのようなものなのか、現場で日々実践されている生のお話をお聞きしました。


# インタビューは 2013年10月某日に行われました。



何はさておき、計測の環境を整えることから始めた。


現在のお仕事に就かれるまでの経緯と、具体的な業務内容をお聞かせ下さい。

リブセンスの岩崎亮と申します。リブセンスはアルバイト求人サイトの「ジョブセンス」、転職求人サイトの「ジョブセンスリンク」、賃貸不動産情報サイトの「door 賃貸」などを運営している企業で、現在は各メディアを横断してマーケティングを推進する事業推進部に勤務しています。

リブセンスに入社する前は人材会社で働いていました。そこで子会社の立ち上げを中心にモバイル販促のオペレーションの責任者として約4年務めました。そこでいろいろ検討した結果、リブセンスに移ることになりました。

転職活動では、主にインターネット・IT系企業を中心に探していたのですが、IT企業でも社長や現場がプロジェクトマネージャーの企業が多く、漠然とした違和感を感じていました。一方で、リブセンスは創業者たちが学生の頃からメディアを自社で構築してきたという経緯があり、面接での雰囲気も自分が想像していたITベンチャーのカルチャーがあるような気がしました。

入社してからは、ジョブセンスの広告運用を経て、現在の各メディアを横断した部署である事業推進部で、メディアの運営に関わるマーケティング全般を担当しています。広告でいえば、アフィリエイトやバーティカルメディアアドネットワーク、DSPなどが含まれます。また、広告ではないですが、先日発表があったPtmind社のアクセス解析「Pt engine」なども広告へフィードバックするという意味では含まれますね。


リブセンスが正社員求人サイト「ジョブセンスリンク」のスマートフォンサイトにおいてアクセス解析ツール「Pt engine」を採用
http://www.ptmind.co.jp/corporate/news20131009.html




広告運用で気を付けているポイント、ポリシーなどはありますでしょうか?

色々とあるのですが、何はさておき、判断のベースとなるコンバージョンの計測をしっかりしようという取り組みから始めました。運用型広告に限らず、費用がかかっているものは判断軸がブレてしまうと身動きが取れなくなってしまいますので、計測の環境や構造を改めて見直して、間違いがないかどうかを確かめました。

具体的には、再読み込みしたら重複コンバージョンとしてカウントされてしまう問題や、アクセス解析でも滞在時間や離脱の定義などを厳密に把握する、計測パラメータをリンク先URLにきちんと記載するという部分です。費用対効果の算出に関わる部分はそのまま運用方針に直結しますので、まずはここを丁寧に把握することからスタートしました。計測さえしっかりしていれば、運用でチャレンジできるようになりますので、一旦整理がついたあとは、最新のテクノロジーを積極的に試すことができるようになりました。


新しいことをトライするための情報収集などはどうされていますか?

事業推進部内で役割分担をしていまして、それぞれの担当範囲について自分たちで積極的に情報を取りにいくようにしています。例えば分析の担当者であれば最適化の数理モデルについて勉強会やセミナーに参加したり、広告の最新情報であれば専門の方のブログや Facebook も参考にしますし、実際にお会いして色々とお話を聞くようにしています。


データフィードに伸びしろがある。


現在の施策で特に注力されている分野はどのあたりでしょうか?

投資している金額という意味ではリスティング広告が最も大きいのですが、現在はリスティング以外で伸びしろや工夫のしがいがあるところに力を注いでいます。

具体的には、弊社のメディアへのトラフィックの内訳を見ると、バーティカルメディア(業界別のサイト)の割合が比較的大きいのですが、このバーティカルメディアへ情報を送るデータフィードの最適化に取り組んでいます。「ジョブセンス」でいえばいくつかのアルバイト求人情報メディアにデータフィードを送って情報を更新するのですが、案件毎に獲得単価を設定出来たりするので、「ジョブセンス」における採用率や採用単価を考慮して単価設定したり、職種や地域での単価調整をしたりしています。また、上位掲載ロジックについても CTR や CVR を加味する等メディアによって異なるため、それぞれの仕様を把握してから原因を調査し、最適化を進められる仕組みを整えています。

リスティング広告のように投資金額が大きいからわずかな改善幅でも利益が大きいというものもありますが、投資規模が少ないからといって何もしないというのではなく、「少ないからこそまだまだ伸びしろがある」と考えるようにしています。

メディア運営をしている以上、費用対効果や CPA というのはどうしても設定せざるを得ません。CPA が限られているからこそ、合わせるために無駄を排除していくという考え方だけでなく、どんどん新しいところを開拓していくようにしています。そうしないとすぐに頭打ちになってしまいますから。


データフィードの最適化は大変だと思うのですが、どのように運用されていますか?

各メディアに送るためのフィードの仕様はメディアごとに異なるので、自社のデータを各フィードに変換するツールは社内開発しています。ある CSV を吐き出したら、それを各メディアの仕様に合わせて自動振り分けするようなツールですね。

例えば弊社の賃貸不動産情報「door 賃貸」だと、自社の管理物件とそれ以外の物件(提携している他企業が管理している物件など)で利益率が異なるためおのずと限界CPAが異なりますから、フィードの送信ロジックを変更する必要があります。また、Criteoさんのようにフィードの工夫ができる広告であれば、自社の管理物件だけを広告に表示させるようにすることで限界CPAを引き上げて、その分積極的に出稿する、というような運用もしたりしています。

データフィードには有料のものも無料のものもあって、それぞれにやるべきことが違いますから、まだまだ工夫のしがいがある分野だと考えています。あとは、AdWords の商品リスト広告はまだリテールのみに提供されている商品ですが、今後サービスにも開放されればもっと盛り上がってくるのではないかと思いますね。データフィードに取り組みはじめて思うのは、「取り扱い説明書を読まないでゲームには勝てない」ということです。読まなくても運用はできるかもしれませんが、継続的に闘っていくのは難しいと思いますね。


エンジニアには常にユーザーに目を向けていてほしい。


基本的にインハウスで運営されていらっしゃいますが、運用における外部のパートナーとの取り組みはどのような方針があるのでしょうか?

基本的にはぜんぶ自分たちでできるようにしています。ですが、統一化できない部分、変化が激しい分野はなるべく外部の協力を仰ぐようにしています。社内のエンジニアには、社内ではなく自分たちのメディアに来てくれるエンドユーザーに目を向けてほしいと思っていますので、自社開発したものが自分たちの価値を高めたりマーケットの中で競争力があるものなのかどうかを常に考えて判断するようにしています。競争力があればリソースを注ぐべきだし、ないのであれば外部にお願いして効率化した方がいいですから。

広告やアクセス解析でも同じ考え方です。例えばアフィリエイトであればプロバイダーに一定の手数料を支払わなければいけないですが、普通に考えて有力なアフィリエイターさんたちを自分たちだけで集めるのは無理があります。アクセス解析の Pt engine であれば、トラフィックにおけるスマートフォン比率がどんどん高まってきていますので、アクセスデータがいまいち信用しきれないスマートフォンに対して何とかしっかりとした解析の環境を整えたいのですが、そこで解析ツールを一から開発するのはナンセンスです。だから外部の力お借りしています。

最近の例でいえば、AdWords の品質スコアを定点観測するのにこれまでは AdWords Script を使って自分たちで集計していましたが、かなり手間がかかっていたので現在では TenScores というサービスを利用しています。

Tenscores: The Google Adwords Quality Score Tool
http://www.tenscores.com/



デジタルマーケティングだからこそアナログな部分を大事に。


そういったパートナー企業との取り組みで気を付けていらっしゃることは?

当たり前のことのようですが、自社運用が基本だからこそ、一旦お付き合いの始まったメディアや外部のパートナーさんとは良い関係を構築して一緒に頑張っていきたいと思っています。

例えば広告で言うとリスティング広告やディスプレイ広告の割合が大きいのですが、そういったプラットフォーマーの方々は自分たちのプラットフォームを通じた売上を上げるために営業していらっしゃいます。一方で、我々広告主としては広告費を使うことが目的ではなく、そこから収益を上げることが目的です。ここの利害関係をうまく一致させる方向に関係を持っていくことが大事だと思っています。

プラットフォーマー側の担当者にとっては弊社がクライアントですから広告費を増額すれば評価されます。我々は費用対効果が見合えば投資額を増やすことができる。そのためにはお互いのビジネスを理解して、どういった提案があれば双方がハッピーになれるのかを考えながら仕事を進める必要があります。単なる値引き交渉だけすれば話は止まってしまいますし担当者の評価が下がってしまうかもしれません。併せて相手へのメリットを提示することで、お互いが納得してパートナーシップを結べるのではないかと思います。

デジタルマーケティングだからこそ、ビジネスの構造を理解して、アナログの部分を大切にすべきだと思います。逆に言えば、我々のビジネスを理解した上で話してくれる会社さんとは、積極的に一緒に仕事をしていきたいですね。


高いレベルで切磋琢磨していきたい。


広告運用の現場について、今後の展望などがあればお聞かせ下さい。

弊社は「あたりまえを、発明しよう。」というコーポレートビジョンを掲げています。この達成のために重要な2つのことがロゴマークに込められているのですが、1つ目が何事にも「疑問(?)」を持つこと。2つ目は「雨垂れ石を穿つ」という故事成語になぞらえて、「徹底」して行動することです。小さな努力の積み重ねを徹底することによって成果を出すというのは、広告を含めたデジタルマーケティングの運用にとって大事な考え方だと思っています。

事業推進部のモットーも ”Operational Excellence” なのですが、徹底した改善の積み重ねによってオペレーションを確固たるものにすることによって、中ではなくて外を向くことができるようになります。仕事をしているとどうしても中を向いてしまいがちなのですが、外を向いていくということを意識して、ユーザーに近い位置で仕事をしていくことが結果的に今後につながっていくと思っています。

デジタルマーケティングの変化のスピードが早いのは疑いのない事実です。変化に対して中ばかり見ていては対応できませんから、日々のオペレーションを安定させて、外を見ていく時間を確保していかないと対応できません。もっと言うと、変化を作っていく側に立たないといけませんので。


同じように企業のマーケターとして現場で頑張っている方々に一言ありましたらお願いします。

事業推進部では Livesense Digital Marketing というブログを運営しています。

LIVESENSE DIGITAL MARKETING
http://marketing.livesense.co.jp/


このブログを始めたきっかけは、より現場に近い情報をマーケティングの現場で頑張っている方々とシェアしたいという思いがあったからです。

「◯◯のための10の方法」といったタイトルの記事はたくさんありますが、現場レベルでどうしたら良いかという実践にまで踏み込んだ記事は少ないと思います。マーケターが現場で実践している細部の工夫やアイデアに価値があると考えていますので、そういったものをアウトプットすることによって、デジタルマーケティング業界の事業推進部的な位置づけになれたらいいなと、そう思っています。

日本では事例は外に出したくないという風潮がありますが、個人的にはナレッジをどんどん共有することで、業界全体の底上げに少しでも貢献できればと。自分自身ももっと高いレベルで切磋琢磨していきたいと思っています。


本日は貴重なお話、ありがとうございました!



2013年10月10日木曜日

広告主が考える、広告代理店とのパートナーシップ − カイザークラフト 下川亜希子氏・窪田有希子氏 #State-of-AdOps Vol.7


「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

※過去の記事はこちらから。

第7回は、ドイツに本社を持つ業務用品サイトを運営するカイザークラフト(Kaiser Kraft K.K.)で、オンラインマーケティング事業を推進されている下川亜希子さん・窪田有希子さんのお二人にインタビューをさせて頂きました。

カイザークラフト社は運用型広告(特にリスティング広告)の運用を新宿にある広告代理店のプレシジョンマーケティング社に委託しています。今回のインタビューでは広告運用における代理店との関係性をお聞きするため、プレシジョンマーケティング社の坂萩馨さん、吉成建人さんにもご協力をお願いし、広告主と広告代理店のパートナーシップを中心に、奇譚のないお話を伺いました。


# インタビューは 2013年9月某日に行われました。



いつかは自社メディアのマーケティングを経験したかった。


現在のお仕事に就かれるまでの経緯と、具体的な業務内容をお聞かせ下さい。

下川:現在はカイザークラフトのオンラインマーケティング部でマネージャーをしています。カイザークラフトはドイツで1945年に設立された業務用品のB2B通販企業です。世界30カ国で展開し、日本法人は2002年に設立されました。もともとはカタログ通販に非常に強みを持っている企業でして、近年、新たな市場の開拓としてネット通販をはじめています。

私自身はカイザークラフトに入社する以前まで、広告代理店でECサイトのコンサルティング、オンライン/オフラインを含めたメディアプランニング、リスティング広告をはじめとした運用型広告を経験してきました。代理店として広告主のサイト運営に携わるなかで、外部からのコンサルティングだけではなく、いつかは自分自身が直接ウェブサイトのマーケティングや運営をしてみたいと思っていたところ、縁あって、2011年から日本法人でのオンライン事業の立ち上げに参画することになりました。

数あるEC事業の中でカイザークラフトを選んだ理由ですが、単純に広告を出すだけといった役割ではなく、自社メディアのマーケティングに責任を負えるポジションだったことと、当時のボスから「どうしても日本で成功したい」という熱意が感じられたからですね。本社のあるドイツでの知名度と日本での知名度には大きな差がありますし、外資ということもあって苦労は多いですが、その分やりがいを持って仕事ができています。


窪田:カイザークラフトの窪田です。下川と同じくオンラインマーケティング部に所属しており、カイザークラフトのオンラインのマーケティング全般を担当しています。

私も以前は広告代理店でECサイトのコンサルティングをしていました。もう少し深くECサイトの運営に携わりたいと考えていたところ、ご縁があって入社しました。カイザークラフトでは、単なる広告の出稿だけでなく、ECの運営そのものに関わっていくことが求められるので、刺激を感じながら仕事ができています。



カタログから運用型広告へのシフト


オンライン事業の現状はいかがでしょうか?

下川:もともとドイツではカタログ通販で伸ばしてきた会社なので、オンライン事業の立ち上げの際にもどうしても成功体験のあるカタログ通販の延長のようなウェブサイトになってしまっていて、ECサイトとしての使いやすさを追求できておらず、運営という意味では少々苦戦しています。

一方で、日本でオンライン事業ができてから3年目になりますが、過去2年でオンライン経由の売上は数倍増加することができており、日本はドイツと違ってオンライン中心の戦略にシフトすることができる環境が整ってきました。来年2014年春にはウェブサイトの前面リニューアルが決定しています。

以前は、社内から「ネットでB2Bの商材が売れるとは思わない」と言われたこともありました。実際、ドイツではオンラインの売上はカタログの2−3割程度なので、その成功モデルを日本でも適用しようと考えたのだと思います。それでも、地道に本社を説得し、設定したKPIを繰り返し達成することで、少しずつ本社の認識も変わってきました。代理店の方々をはじめとして、外部からも多くのご支援を頂いているので、まだまだこれからではありますが、風が吹いてきたと感じます。リニューアルのある2014年は正念場ですね。


オンライン事業に注力される中で、運用型広告へはどのように取り組んでいらっしゃいますか?

下川:現在はカタログ通販からオンラインへのシフトチェンジを行なっている最中で、カタログの部数を減らしながら、運用型広告を強化しているフェーズです。内訳としては、大きいのがリスティング広告、次いでDSP、CriteoやDynamic Remarketing などの動的リターゲティングなどになります。

運用型広告は、知名度や企業規模にかかわらず、しっかりとした設計と運用を行えばターゲットとしているお客さまに高い精度でリーチできますので、集客のメインチャネルになります。また、カタログですと同じものを送りつけて終わりですが、運用型広告ではお客さまの関心度に応じてクリエイティブやチャネルを出し分けることができますので、お客さまごとのプロモーションが実際にできるのが強いと思っています。

窪田:カタログの送付数はピーク時の数分の一にまで減りました。オンラインに実績が出てきたことで、カタログを撒くよりネット広告の方がROIがいいことが社内的にも認知されてくるようになりました。


ネット広告を強化される中で、運用はどうされていますか?

下川:私の入社以前からオンラインについては広告代理店さんにお願いしていました。私の入社後も、サイトのオンラインマーケティング全般に関わる関係上、広告だけにすべての時間を費やすわけにはいかないので、インハウス運用ではなく代理店さんとの協働を選択しました。

以前は別の代理店さんと仕事をしていましたが、2013年からはここにいるプレシジョンマーケティングさんと一緒にお仕事をしています。



営業と運用の温度差をなくす経営を目指して


では、プレシジョンマーケティングさんからもお話を伺えればと思います。

坂萩:株式会社プレシジョンマーケティング取締役の坂萩です。2013年よりカイザークラフトさんと一緒にお仕事をさせて頂いています。自己紹介をしますと、私自身は2007年の創業時からプレシジョンに参画していまして、当時はアルバイトでの入社でした。そこから正社員に登用してもらい、現在に至ります。プレシジョンマーケティングで働く前までは、アパレル会社での販売員やASPでマーケティング担当をしていました。

プレシジョンマーケティングは営業した担当者がそのまま担当者として運用やコンサルティングも行う、という前提で経営しています。営業が強すぎると運用が疎かになって結果が出せませんし、運用だけでは事業はスケールしないと考えているからです。経営陣がみな広告代理店出身なので、各々がそれまでに経験した組織運営での弱点を克服する会社を作りたいと思って始めました。最終的には、集客から分析、LTVの最大化のお手伝いを一人のコンサルができるようにするというのが目標です。


吉成:プレシジョンマーケティングの吉成です。カイザークラフトさんとのお取り組みでは、主にサイト周りの改善や分析を担当しています。例えば、オーガニックや広告経由でのユーザーの動きを分析して改善のフィードバックをする、などですね。

前職では制作会社に勤めていましたので、制作サイドと事業者サイド、両方の視点から提案するように心がけています。単純にCPAが上がった下がったではなく、エンドユーザーの視点を持って分析するようにしています。



知識だけではない、運用者ならではの提案


カイザークラフトさんとプレシジョンマーケティングさんの協働のきっかけは?

下川:端的に言いますとコンペの結果です。先ほど、以前は別の広告代理店にお願いしていたと言いましたが、残念ながら結果が出ているとは言いがたい状況でした。結果が出なかったのは弊社にももちろん原因はあるのですが、例えば「コンバージョンが出ないのはサイトが悪い」と言われても、こちらはそのことについては痛いほど分かっているので、それを前提としてどうすればいいのか、アクションを共有できるような関係性ではありませんでした。

その他にも、私も以前は広告代理店にいたので「この設計はマズくないかな?」といった疑問があったり、当時の代理店さんからプラットフォームの最新情報を伝えてもらえなかったり(あるいは知らなかったり)というところで問題意識がありました。他がどうしているのか、本当にこのままでいいのか、第三者機関のアドバイスがほしかったという事情がありました。そこでコンペに踏み切ったわけです。

外資なのでパートナーは英語ができることが望ましいとか、本社の意思決定の問題など、コンペを実施する上でもいろいろな試行錯誤があったのですが、私としては「行動を起こせばもっとよくなるのに、何もしないという選択はできない」という思いで何とか実施にこぎつけました。(オフィスが海浜幕張なので)ダメだったら京葉線に飛び込むくらいの覚悟でやらないと(笑)、会社のためにも自分のためにもならない、そういう思いからコンペを実施しました。結果として現在のプレシジョンさんとご縁ができたかたちです。


プレシジョンさん側で、提案のときに気をつけたポイントなどはありますか?

吉成:事前に頂いたオリエンで、広告側の問題はある程度把握できていました。そこで、現在の広告でのダメなところを指摘するだけではなくて、広告経由でウェブサイトに入ってからの状況を重要視して、広告だけではなく、サイト側の原因も併せて分析していきました。

コンペにあたってはかなり詳細まで開示していただいたので、広告の実績を見ながら、サイト側の原因も同時に探っていきました。例えば、「台車」という訴求で呼び込んでいる広告のCVRがこんなに低いのに、そこでタイトルと説明文を変更しても仕方がありません。トラフィックの質を上げることは大前提で、そこにプラスして、ウェブサイト側でもこういったことをすべきではないかという提案です。

坂萩:誤解を恐れずに言えば、拝見して、改善できる自信がありました。オリエンでお伝え頂いたお悩みは共感できるものでしたし、それに応えるかたちで我々が出した提案が下川さんの問題意識と一致したことが大きかったと思います。


なるほど。カイザークラフトさんとしては、どういったところが決め手だったのでしょうか。

下川:決め手は、知識だけではない運用者ならではの提案だったからです。運用型広告はいくら語れても実際にしっかりとした設計や運用ができなければ机上の空論ですので、プレシジョンマーケティングさんはその運用がしっかりできると判断しました。

本社は英語ができるかどうかも重要視していましたが、英語でのコミュニケーションに問題がなく、英文でレポート作成のご支援をいただけたとしても、それが広告運用の成果につながらないのであれば本末転倒ですので、内容で判断しました。実際にこの方たちなら一緒にやれそうだと思ったところが大きいです。

坂萩:それは我々も同じです。僭越ですが「この人のために頑張ろう」と思えるかどうかは大事だと思っています。下請け業者ではなく、パートナーとして接して下さるのでいい緊張感と責任感を持って仕事をさせて頂いています。



社内・社外問わず、チームとして動けるかどうか。


広告主と広告代理店のパートナーシップについてご意見をお聞かせ下さい。

下川:以前私が広告代理店にいたときは、一部のお客さまではありますが、ほとんど情報がない状態で代理店に丸投げする企業さんがいらっしゃいました。しかもそれが偉い人だったりすると、なかなかその状況を打破できないというか、物申せない雰囲気があり辛い思いをしたことがあります。

現在、広告代理店さんとお付き合いする広告主という立場になって、同じことをしてはいけない、同じことをすると結果的に自分に返ってくると思っています。広告主だから、お金を出しているから偉いとふんぞり返るのではなく、パートナーとして一緒に働いてくれる企業のみなさんが働きやすいように、そして何より結果が出せるように、自分の役割を果たすべきだと思っています。

企業のマーケティング担当者の多くは広告以外の仕事がたくさんあるケースが多いと思います。他に仕事が山積みになっている状況では、自分もある程度内容を理解しながら、外部からご支援いただくのが良いバランスだというのが個人的な意見です。そういった関係性を構築できないパートナーさんとは一緒に仕事ができないですし、何かあったらすぐ言ってもらえる環境をつくるのも私の大事な仕事だと思っています。社内外かかわらずチームとして動ける事が大事ですね。

坂萩:先ほどと同じで、「この人のために頑張ろう」と思える関係性があるかどうかが大事だと思います。あとは、エンドユーザーのために良い広告を出すことができるかどうかが大事だと思います。エンドユーザーの視点を見失わなければ、それは効果として広告主企業へお返しできると思います。選び選ばれじゃないですが、いい商品を世に出すお手伝いをしたいですし、カイザークラフトさんとならそれができると思います。


最後に、今後の展望についてお聞かせ下さい。

下川:2014年の春にサイトのリニューアルが確定しているので、まずはそこに全力を注ぎたいと思います。全面リニューアルはオンラインマーケティング部の第二フェーズの幕開けだと思っています。まだまだカタログ文化の強い会社の中で、日本から本社へ影響を与えることができるまたとないチャンスだと思っています。日本はカイザークラフトのオンライン事業を開拓した国だという認識を全社に与えたい、そう思っています。

リニューアルの後であればもっと積極的なマーケティングができると思いますし、プレシジョンさんや他のパートナーさんとともに、運用型広告をより積極的に活用し、拡大していきたいと思っています。

窪田:今あるサイトは私が入ってきたときには既にあったものですが、リニューアル後は自分たちのサイトなので、何としてでも結果を出したいと思います。

坂萩:今後は今まで以上に分析と改善のフィードバックを強化したいと思っています。活用するメディアも増えていく中で、媒体社やプラットフォーマーとの取り組みの強化やアトリビューション分析の実施、リピートオーダーまで含めたLTVをしっかりと見ていきたいと思っています。

吉成:坂萩と同じですが、加えるなら来年のリニューアルはこのプロジェクトで非常に大事なポイントなので、特にサイト周りは惜しまず協力できればと思います。


本日は貴重なお話、ありがとうございました!



カイザークラフト株式会社(Kaiser Kraft K.K.)
http://www.kaiserkraft.jp


株式会社プレシジョンマーケティング(Precision Marketing, Inc.)
http://precimarke.jp



2013年9月18日水曜日

IABが広告運用者向けの認定プログラムを開始


IAB(Interactive Advertising Bureau) が、2012年6月にスタートしたデジタル分野の営業担当者向けの認定プログラムに続き、広告運用者向けのプログラム「IAB Digital Ad Operations Certification」を2013年10月からスタートすることを発表しました。


Digital Ad Operations Certification
http://www.iab.net/certification/adops/overview



上記のページの冒頭には、以下のようにこのプログラムのねらいが記載されています。

"Digital media is always evolving. The skill set required for Advertising Operations professionals needs to move with these changes. With the proliferation of more and more platforms and channels, ad units and formats, metrics and tools, standardized knowledge is absolutely necessary to perform on the job."

デジタルメディアは常に発展しています。広告運用のプロフェッショナルに求められるスキルは常に変化し、多岐に渡ります。運用業務でパフォーマンスを出すためには、プラットフォームやチャネルの乱立、広告枠やフォーマットの増加、指標やツール、知識の標準化に常にキャッチアップが必要です。

"Now more than ever, Digital Advertising Operations Professionals need to work intelligently in order to make campaigns run efficiently. IAB Digital Ad Operations Certification proves you and your team understand the latest practices, tools and terminology required to succeed in the marketplace."

以前にも増して、広告運用のプロフェッショナルにはキャンペーンで効果を出すために知性が求められています。IABの広告運用試験は、運用者や運用チームが、今日のマーケットプレイスで成功を収めるために必要なツールや専門用語、実践方法などを習得していることを証明するものです。

この試験は広告代理店、パブリッシャー、トレーディングデスク、アドエクスチェンジやDSP/SSP、ブランド広告主などで広告運用に2年以上携わっている人を対象として設計されており、IABの会員は500ドル、非会員は750ドルに加えて諸費用がかかるようです。前回の広告営業向けの試験が350ドル(会員向け)だったことを考えると、試験の制作にかなり手間をかけたことが伺えますね。


試験範囲や概要もPDFで公開されています。

Candidate Handbook(受験者用ハンドブック)
http://www.iab.net/media/file/DAOCCandidateHandbook.pdf

Examination Blueprint(試験の概要)
http://www.iab.net/media/file/DAOC%20Exam%20Blueprint%20FINAL%2008%2022%2013.pdf


試験の概要には、カテゴリ別に必要な知識や試験範囲、用語集的なものも網羅されており、親切なつくりになっています。



2013年は「運用型広告」という便利な言葉も徐々に浸透し、広告の運用についての重要性が再認識された年になるかもしれません。アドテクノロジーの普及によって、デジタル領域、特に広告についてはここ数年で加速度的に複雑になっており、それに伴って広告運用担当者がカバーしなければいけない範囲もますます広がってきています。

このような認定プログラムは、職掌の専門性を証明するという意味でも、非常に意義ぶかいと思います。以前の営業向け試験と同様、1年ごとに更新が必要なようですので、資格の有用性も担保されています。

プラットフォームが増え、SEMやRTBへの投資が増え続けるなかで、その最前線を担う運用者向けのプログラム、ぜひトライされてはいかがでしょうか!金額を考えると、個人では少し高いですが。。。



2013年9月4日水曜日

ローカル(地域)広告の成長は、モバイルが追い風に


2012年2月に 「モバイルの地域検索とローカルビジネス」というポストでモバイルネットワークのxAdが発表したローカル検索(地域検索)とモバイルの親和性についてのレポートを紹介しましたが、あれから1年半が経ち、以前よりさらにローカル検索におけるモバイルデバイスの重要性が鮮明になってきましたので、他のレポートも参考に情報をアップデートしてみたいと思います。


伸び続けるローカル✕モバイル

モバイルコマースの影響力の増大は既に周知のところです。以下のxAdのデータでも、北米では2013年はモバイルコマースがEコマース全体の15%に達し、そのまま堅調に推移して2017年には25%まで増えると予測しています。以前はモバイルコマースについては日本が突出していると言われていましたが、現在のモバイル先進国では傾向の違いはそれほどないのかもしれません。



モバイルと地域情報の親和性が高いのは万国共通です。ヨーロッパでは、2012年にはモバイル広告全体の8%だった位置情報ベースの広告は2017年には19%まで達し、モバイル広告自体も6倍以上に成長すると見込まれています。



Local Search Association と comScore が行なった共同調査によると、Google Map や Craigslist といったいわゆる地域コンテンツは、インターネット全体よりもモバイルの方が伸びが大きいという調査結果を出しており、2012年の1年間で約4倍まで伸びたと報告しています。スマートフォンの普及率の拡大が追い風になっていると考えられますね。

参考: Local Search via Non-PC Devices Quadrupled in 2012 [Study]
http://searchenginewatch.com/article/2266201/Local-Search-via-Non-PC-Devices-Quadrupled-in-2012-Study




ローカル広告に参入を進めるGoogle

こういったデータからも読み取れるように、モバイル✕ローカルは次のフロンティアとして注目されており、各社がこぞって参入/拡大を進めています。

検索の巨人である Google は 今年(2013年)の6月にカーナビアプリを提供するイスラエルの Waze を買収し、Waze の機能をGoogle Map に統合を進めています。日本のようにカーナビが普及していない欧米では、移動する端末であるモバイルとGoogle Map のアプリの併用は非常に高い需要があり、Waze の持つ現在位置に合わせて情報を表示する技術はモバイルのマネタイズに大きな貢献をすると考えられます。

参考: Waze Joins Google! | Waze Blog
http://www.waze.com/blog/waze-joins-google/

実際、以下の xAd の調査では、最もモバイル利用の多いジャンルとして、ガソリンスタンドやコンビニエンスストアを挙げており、車での移動とモバイルの親和性が高いことが指摘されています。


Waze の買収に代表されるように、2013年の Google の地図関連のアップデートは非常にハイペースで、6月に Waze の買収、7月にはその Waze の機能の一部であった事故情報等の表示機能をMapアプリへ追加し、8月にはそのMapアプリの広告表示を刷新して収益化を強化しています。(2013年9月現在)

参考:Inside AdWords-Japan: 最新の Google マップ アプリにおける広告掲載について
http://adwords-ja.blogspot.jp/2013/08/google.html

これまでのデスクトップPCを中心にしたビジネスの考え方では AdWords の住所表示オプションはあまり重要性が高いとは捉えられていない向きがありましたが、ユーザーのモバイル利用/地図アプリ利用が加速していく中で、地図への広告表示に住所表示オプションが必須となると、店舗型ビジネスでの販売促進における AdWords 利用の優先順位は一段上がると考えられますし、それが Google の狙いの一つでもあると思われます。

ちなみに、「シカゴ レストラン」で検索したユーザーのうち、14.5% が右上部の地図をクリックしたという実験結果もあり、デスクトップ検索においても地図へのトラフィックは重要視されています。Googleプレイスも Google+Local への変更されており、ソーシャルとローカルの融合も図りつつあるようです。


参考:Study: Google Local Carousel Results Win 48% Of Clicks, While Only 14.5% Of Clicks Were On The Map
http://searchengineland.com/study-google-local-carousel-results-win-48-of-clicks-while-map-only-earned-14-5-of-clicks-164925


ローカルプラットフォームの競争は激化

Google のみならず、Foursquare も広告プラットフォームを開設し、ローカルやスモールビジネスの開拓を進めています。これまでイエローページが担っていたローカル広告は、モバイルと位置情報という組み合わせで、競争が激化しているようです。

参考: Foursquare Opens Self-Service Advertising to Small Businesses
http://searchenginewatch.com/article/2284910/Foursquare-Opens-Self-Service-Advertising-to-Small-Businesses



北米版食べログである Yelp も位置情報ベースの広告で非常に伸ばしている企業ですが、2013年7月には、お店の検索だけではなく、オーダーができるプラットフォームを発表しました。飲食店検索に一層の利便性をユーザーへ付与すると同時に、プラットフォーム自体のマネタイズを強化させる動きになっています。

参考: Introducing Yelp Platform! Transactions Made Easy, Directly Through Yelp
http://officialblog.yelp.com/2013/07/yelp-connects-people-with-great-local-businesses-giving-users-plenty-of-information-to-make-spending-decisions-and-allow.html




モバイルの利用時間と広告費の関係

ローカル広告が注目される背景には、モバイルとの親和性の高さがあることは間違いありません。以下の図でも分かるとおり、以前よりユーザーがメディアに接する時間と広告費の関係において、モバイルは極端に広告費が少ないとされていました。

参考: Why The Local Digital Ad Opportunity Remains Unsolved
http://www.adexchanger.com/data-driven-thinking/why-the-local-digital-ad-opportunity-remains-unsolved/


この大きなギャップが存在する以上、モバイルへの注目度は途切れることがないと考えられますし、そのモバイルのユーザー行動の中で大きなパイの一つである地域コンテンツの閲覧や検索は、これまで以上に今後も伸びていくと考えられます。

ローカル広告は店舗型ビジネスが主戦場ですが、デジタルに遅れをとっているのもまた店舗型ビジネスです。この分野へのサポートやサービスはこれからも続々と登場し、群雄割拠の様相を呈すると考えられます。引き続き注目していきたいと思います。



2013年8月29日木曜日

海外の Facebook Exchange に関するデータまとめ


Facebook広告と Facebook Exchange


Facebook には通常の広告管理画面を利用して、右サイドバー・ニュースフィード内・モバイルなどに表示する広告と、Facebook 内でリターゲティング広告を表示する Facebook Exchange の2種類の広告があります。

通常のFacebook広告であれば設定方法から事例までたくさんの記事を見つけることができますが、2012年からスタートした Facebook Exchange(FBX) については、2013年に入ってから MarketOne など数社が日本国内での取扱いを始めているものの、まだまだ日本語の情報は相対的に少ないです。

そこで今回は FBX について発表されているさまざまなデータをまとめてみました。データを並べて俯瞰してみることで、少しでも FBX を理解するための一助になれば幸いです。


Facebook Exchange のインフォグラフィック

以下は、広告代理店の MDG Advertising によって作成された FBX についてのインフォグラフィックです。

FBX がどのように動くのか、ニュースフィード(News Feed)と右サイドバー(RHS)の表示方法や効果の違いなどが分かりやすくまとめられています。


参考:A Marketer's Guide to Retargeting on Facebook [INFOGRAPHIC]
http://mashable.com/2013/08/15/facebook-exchange-marketing/



インフォグラフィックの下半分は、特に興味深いデータが並んでいます。以下は、FBX を通じたニュースフィード広告についてのデータですが、右サイドバーの広告と比べると197%も ROI が高いことが証明されています。

また、FBX のニュースフィード広告は、通常のリターゲティング広告と比較して CTR が21倍あり、右サイドバーと比べるとなんと49倍もあるそうです。やるならニュースフィード広告がよい、ということになりそうです。



こちらも FBX でのニュースフィード広告のデータですが、CTR、CPA がそれぞれ通常のリターゲティングと右サイドバー広告より低く、高い CTR が結果的に CPC を低くし、効率を上げることに成功していることが分かります。




濃いオーディエンスの集まるFacebook

ボストンに拠点を持つ代理店である Nanigans の発表したデータによると、FBX でのリターゲティングでは、Facebook外のサイトから収集したリターゲティングリストと比べて、Facebook内で収集したデータを利用したリターゲティングの方が89%も売上が大きかったとのこと。

また、単独で FBX を使うよりも、通常のFacebook広告を併用した方が、39%も購買客が増加することが分かっているそうです。


参考:Why Advertisers Can’t Leverage FBX without Native Facebook Ads API Buys [Study]
http://www.nanigans.com/2013/02/15/why-advertisers-cant-leverage-fbx-alone-study/




同じようなデータが、AdRoll からも出ています。

FBX のニュースフィード広告の CPC や CPA は 右サイドバーや通常のリターゲティング広告と比べてどちらも低く、CVR 自体はやや若干劣る程度のため、総合的に見てニュースフィード広告の優位性が示されています。


参考:Facebook News Feed Ad Retargeting Metrics [CHART]
http://trends.e-strategyblog.com/2013/07/11/facebook-news-feed-ad-retargeting-metrics/12655




Facebook広告自体も昨対比で改善が見られている

一方で、AdRoll は上記のデータを出す半年前(2013年2月)には「FBX は CPC が低いが通常のリタゲに比べるとコストパフォーマンスは悪い」という以下のデータを公開しています。つまり FBX の CTR は、半年前までは「低い」という評価で、2013年の7月には「高い」という評価へ逆転したことになります。


参考:FBX has lower CPCs and CPMs but web retargeting has other benefits, AdRoll finds
http://www.insidefacebook.com/2013/02/21/fbx-has-lower-cpcs-and-cpms-but-web-retargeting-has-other-benefits-adroll-finds/



実は、この CTR の急激な上昇は、ニュースフィード広告の登場が関係しているようです。FBX はもともと RHS のみで始まりましたが、2013年の3月にニュースフィード広告が始まったときから急激に CTR が上がり、一躍 FBX の主役のフォーマットに上り詰めたことが指摘されています。


参考:AdRoll report of FBX News Feed ads: 49x greater CTR, 54 percent lower CPC than sidebar retargeting
http://www.insidefacebook.com/2013/07/02/adroll-news-feed-fbx-report/



CTR の逆転現象は、他のデータでも証明されています。

Marin Software が2012年と2013年の第一四半期(1−3月)を比較したレポートによると、Facebook広告のクリック数は前年同期比で40%増、CTR は100%増(2倍)に急騰、CPC は38%の減少となった模様です。記事では、まさにオンラインマーケターの夢が叶ったかのような数値だと評しています。クリック数が増え CTR が増加した理由として、ニュースフィードの登場に代表される広告の関連性の向上が考えられるとのこと。ここ数ヶ月の間に起きた変化によって、CTR においても FBX 、特にニュースフィード広告に優位性があるのは間違いなさそうです。


参考:Are Facebook Ads Performing?
http://www.adotas.com/2013/05/are-facebook-ads-performing/



ちなみに、AdRoll は、通常のリターゲティングと FBX ではデータの重複が 8.3% しか認められないとしており、併用することによってカニバらずに売上が上がるだろうと発表しています。これは、上述した Nanigans のデータとも平仄が合うことになります。




以上、取り急ぎ FBX について報告されたデータを分かる範囲でまとめてみました。こんなデータもあるよ!というのがあれば、ぜひFacebookページなどで教えてくださると嬉しいです! 



2013年8月26日月曜日

インプレッションシェアは改善すべきなのか?


インプレッションシェアをめぐる言説

リスティング広告の運用者で「何でインプレッションシェアが100%にならないの?」「どうやったらインプレッションシェアが上がるの?」と質問されたことがある方は意外と多いのではないでしょうか。


2012年の11月よりディスプレイネットワークや時間帯別のインプレッションシェアが確認できるようになり、先月(2013年7月)にはキーワードレベルでのインプレッションシェアも確認できるようになって、項目が増えたぶん意味的には随分と分かりやすくなりましたが、それまではとかくインプレッションシェアというと誤解を招きやすい項目の一つでした。

インプレッションシェアを100%にすることが目的になったり、なぜ低いのか理由を求められて冷や汗をかいた経験がある人もいると思います。そこで今回はインプレッションシェアという分かりにくいレポートについて少しだけ考えてみたいと思います。


インプレッションシェアとは何か

インプレッションシェアについて、AdWords の日本語のヘルプには以下のように記載されています。

インプレッション シェアのトラッキング - AdWords ヘルプ
https://support.google.com/adwords/answer/2497703?hl=ja
"インプレッション シェア(IS)は、表示される可能性があった回数(推定値)で実際の表示回数を割った割合です。表示可能かどうかは、現在の広告の掲載対象設定、承認ステータス、入札単価、品質スコアによって決まります。このデータは、キャンペーン、広告グループ、キーワードのレベルで確認できます。"

"インプレッション シェアの意味を理解するには、オンライン広告の市場を 1 個のおいしそうなパイに例えるとわかりやすいでしょう。お客様と競争相手は、そのパイの一番大きな一切れを食べようとねらっています。インプレッション シェア データをトラッキングすることで、自分の一切れがパイ全体に比べてどのくらいの大きさかがわかります。"

このパイの比喩を使わせてもらえば、つまりインプレッションシェアとは、掴もうとするパイの大きさと、実際に掴んだパイの大きさの差を表すものだといえます。

実際に掴んだパイの大きさ(インプレッション)はアカウントで確認できますが、掴もうとしたパイの大きさはどのように考えればよいのでしょうか。以下がインプレッションシェアについての考え方をかんたんな図にしたものです。

参考: Measuring & Improving Lost Impression Share


一番大きな薄いピンク色の円は、業界やマーケット全体のインプレッションです。その中にある円が実際に設定したキーワード等によって表示機会の可能性があるインプレッションで、最後の赤い小さな円が実際に真ん中の円から獲得できるインプレッションシェアになります。

ここで勘違いしがちなのが、一番大きな円と、真ん中の円を混同してしまうことです。真ん中の円(設定したターゲットにとって適切なインプレッション)は、アカウントに設定したキーワードやターゲティングの設定、品質スコアや入札単価、マッチタイプやステータスなど様々な要因によって大きくなったり小さくなったりします。

アカウントに意味の広い大きなキーワードをたくさん入れれば一番大きな円と真ん中の円の大きさは近くなっていきますが、それはアカウントの最適化とは必ずしも一致する行為ではありません(むしろ逆効果なことが大半です)。おそらくインプレッションシェアも少なくなっていきます。

そのため、「インプレッションシェアを100%にしろ」ということは、「真ん中の円を狭めよ(キーワードを限定的にせよ)」もしくは「自社と直接関係ないインプレッションでもどんどん出るように高いCPCと予算を投下せよ」という意味になり、多くの場合最適化とは逆行した行為になってしまいます。

検索連動型広告にせよディスプレイネットワークにせよ、ユーザーが欲しくなるタイミングに適切に広告を出すことが大事ですから、その基本が考慮されずに闇雲にインプレッションシェアを上げようとする行為は予算のムダ使いになってしまう可能性が高いでしょう。インプレッションシェアという数字が意味を持つのには、アカウントの中身がその企業にとって適切なレベルに収まっていることが最低条件だと言っても過言ではありません。


インプレッションシェアを確認する2つのポイント

ではインプレッションシェアを確認する意味はないのでしょうか。

しっかりした構成のアカウントで適切な運用がされていれば、インプレッションシェアを参考にする場面はあまり多くないかもしれません。ですが、以下の2点についてはインプレッションシェアレポートがたいへん重宝されます。

1. 完全一致のインプレッションシェアを調べる場合
完全一致のインプレッションシェアは、設定したキーワードに対して完全に一致する検索クエリで発生した実際の表示回数を、同じく完全一致で表示される可能性があった回数で割った割合です。インプレッションシェアはキーワードのマッチタイプによって当然異なりますが、「完全一致のインプレッションシェア」を参考にすれば、調べたい特定の検索クエリだけで獲得可能な表示回数の実際のシェアを把握することができます。

これにオークション分析レポートを合わせると、実際の競合がどのドメインで、上位掲載率がどれくらいかを把握できるので、ビッグワードやブランドワードに寄りがちなアカウントでは非常に大切な機能となると思います。


2. インプレッション シェア損失率(予算)を調べる場合
もう一つは、予算が原因で広告が表示されなかった割合を調べる場合です。AdWords ではキャンペーンに設定してあるキーワード等のポテンシャルに対して予算が足りない状況が恒常的に続くと、「予算による制限(Limited by budget)」という表示がキャンペーン一覧の画面に表示されますが、ほんの少し足りなかったり、一時的に足りないだけの状況だと、この表示は出てきません。

そのため、予算内の運用がシビアなアカウントであったり、少ない予算でキャンペーンをたくさん切り分けているようなアカウントの場合は、効果のよいキャンペーンのインプレッションシェア損失率(予算)を調べることで、機会損失を最小限に抑えることができます。


インプレッションシェアは改善すべきか

インプレッションシェアを改善するべきかどうかはケースバイケースです。予算が限られているアカウントや、重要なキャンペーンやキーワードが明確なアカウントほど、インプレッションシェアレポートが活躍する場面があると思いますが、ただ単に予算とCPCの引き上げでインプレッションシェアを上げようとする行為は、最適化というよりは絨毯爆撃のようなやり方になってしまうことが多く、関連性を無視してオークションで孤立することになります。

同様に、アカウントの中身の見直しをせず、手許に1,000円しかないのに3,000円のパイを欲しがったり、お店にある全種類のパイを欲しがるような真似をしても仕方がありません。

インプレッションシェアを改善の目標とするのではなく、数字の意味を正しく理解し、踊らされないようにちょうどよい距離感を保って利用することが、このレポートを扱う上で大事なことなのかもしれません。



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