2014年5月21日水曜日

広告運用にこれから携わる人への 17 のアドバイス


業務の範囲が拡大していく広告運用という仕事

「広告運用」という業務が単に広告を入稿・配信・レポートするだけの範囲に留まらないことは、現場で仕事をしている運用者の方が一番身に沁みて理解されていると思います。そういった認識は、近年の運用型広告の市場の伸びと、それに連動したメディアの収益構造の変化によって、徐々に経営層にも徐々に広がってきているのかもしれません。

例えば、IAB が主催している広告運用を対象としたイベント「Ad Operations Summit 2013」で最も注目を集めたセッションの一つが「The New Age of Ad Operations (広告運用の新時代)」でした。IABのサイトに当日のハイライトが書かれています。

"The New Age of Ad Operations
Kelly Roark, Vice President, Interactive Sales and Business Development, Scripps Network, discussed the idea that ad ops is now “all ops”—all-encompassing and about much more than implementation. Ad ops teams should be driving the direction of their companies. She also noted the need to keep talent engaged by cross-training and helping them see and understand their role in the big picture."


Scripps Network のインタラクティブセールス・ビジネス開発部門の副社長である Kelly Roark は、広告運用という仕事はもはや「全運用」(本来の実行部隊という業務を超えて、あらゆるものが業務の対象になっている)だという議論を展開した。広告運用のチームは会社を引っ張っていく存在であるべきで、だからこそ部門を超えた研修や大局的な視野をもってもらうように盛りたてる必要があると指摘した。
参考:IAB Ad Operations Summit 2013 Highlights


このサマリーを読む限り、Scripps Network のようなメディア企業において、広告運用は非常に重要な業務として認識されていることが分かります。

以前書いた「Ad Ops Summit 2013 から学ぶ広告運用に必要なこと」にも引用した、Ad Operations Summit 当日の以下の発言も、上記のサマリーを裏付けています。

"The ad operations role has evolved tremendously. Simply among those who took part in the session, we generated a list of 20 responsibilities that now fall onto ad ops. It’s no longer just about doing QA, inventory management, trafficking, reporting and, campaign management. Ad ops now has direct responsibility for technology, vendor management, creative and developers, yield management, programmatic, block lists and change management around new sales structures, ad technology and processes."

広告運用という役割は途方もない発展を遂げました。この間のセッションに参加したメンバーで数えただけでも20ほどの広告運用の職責を挙げることができます。広告運用はもはやQA(品質保証)、在庫管理、広告配信、レポートやキャンペーンマネジメントだけに留まらず、テクノロジーそのもの、ベンダーマネジメント、クリエイティブや開発、イールドマネジメント、プログラマティック、ブロックリストの作成や営業の組織編成、プロセス管理などあらゆる分野に直接的な責任を負っています。
参考: The New Age of Ad Ops | The Op-Ed


Scripps Network のようなメディア企業の多くで、デマンドサイドとサプライサイド両方の業務が発生しています。特にイールドマネジメントはメディアの収益性に直結することから、デマンドサイドが想像する以上に運用チームに多くの業務が発生しているはずです。上記の発言は、ここ数年で加速しつつあるメディアの収益構造の変化が、メディア企業の組織構造にまで直接的に影響を及ぼしていることを示唆しています。

また、少し前のものですが、The Op-Ed が 2012年Q4(10−12月)の広告運用の実態についての調査でも、既に同様の結果が指摘されています。


参考:Poll Results: Q4’s Impact on Ad Ops Professionals | The Op-Ed

"An overwhelming majority of respondents told us that their ad ops team brings more value than just strictly trafficking. This is especially important in today’s ad ops environment, where a blending of ad ops and sales is more commonplace due to the rising emphasis on RTB and technology based ad sales."

大多数の回答者が、広告運用のチームは単なる配信業務を超えた価値をもたらしてくれていると回答しています。これは、RTB の伸長やテクノロジーを前提とした広告営業などによって運用と営業のブレンドが当たり前になってきた現在の広告運用の環境において、特に重要な事実です。

年々キャッチアップが大変になっていく

カバーする範囲が広がり、重要さが増していくに従って、あとから業務をキャッチアップするのは一般的には困難になります。

先ほどの The Op-Ed の調査でも、「自社の広告運用チームは十分に教育され、新しいテクノロジーやプラットフォームについていけているか?」という設問には、半数以上にあたる53.3% が「そうではない」と回答しています。デジタル領域のトレーニングと採用は近年かなり大きなイシューとなってきており、日本でも苦労している企業が多いのではないでしょうか。


参考:Poll Results: Q4’s Impact on Ad Ops Professionals | The Op-Ed


大きな企業であれば分業化が進んでいる一方、 Kelly Roark が指摘するような経営の根幹にまで関わる社員を育てることとのバランスは取りづらくなります。アウトソーシングを推進した結果、実務が分からないまま競争力を失ってしまうことも懸念です。

現場の社員からみても、トレーニングやキャリアデベロップメントはとても気になる問題です。広告運用の仕事の平均勤続期間は15ヶ月(Ad operations employees have an average shelf life of about 15 months per hire)とも言われていることから考えても、決して楽な仕事ではありません。特に未経験でこの分野に入ってきた方にとっては、飛び交う言葉が難解すぎて、どうしていいか分からないことが多々あるのではないでしょうか。


あるインターンに向けた、17のアドバイス

未経験の人材をどのようにプロフェッショナルにしていくかという課題と、新しい成長産業の中でどのように自らの価値を発揮していくかという問題は、経営側と従業員側の視点の違いだけで、共通の問題だと言えます。

OJT中心に実践で慣れていく企業もあれば、細かなワークフローを策定して品質管理を重視する企業もあります。どのような方法で進めるにせよ、習熟のための近道は「ゲームのルールを理解する」ことにあるのかもしれません。

IPG の一員である メディアエージェンシーの UM(Universal McCann)で広告運用担当役員を務める Mitchell Weinstein さんが、「Advice For An Ad Ops Intern(ある広告運用のインターンに向けたアドバイス)」というタイトルで、17のアドバイスを公開してくれています。これから入ってくるインターンのために、あらかじめ「こういうことを伝えよう」と書いたものです。1年前の記事ですが、とてもよい内容だったので抄訳します。


出典:Advice For An Ad Ops Intern

インターンの彼に会ったら、「Lay of the land(状況を理解する)」という話をしたいと思う。私は通常、新入社員には我々の業界がどうなっているのかという概要を伝え、全体像を理解してもらうように努めている。人は、自分が何のためにこの仕事をしていて、自分の仕事が企業の目的にどのように沿っているのかを理解したときに、よりよいパフォーマンスを発揮できるというのが私の信念だからだ。背景を理解することが大事なんだ。

それをシンプルに理解してもらうために、インターンの彼に伝えることを以下の17のリストにまとめてみた。


1. 広告代理店には2つある。広告を作る代理店と、その広告をしかるべき場所へ設置する代理店で、我々は後者だ。


2. 我々はフルサービスの代理店だ。TV放送、紙媒体、デジタル、OOH、メディア戦略など、非常に広範囲のサービスを提供する。これらの中で(今回のインターンで)注力するのは、デジタルだ。


3. UMは素晴らしい場所だ。君がここで受ける教育は、今後のキャリアにとってかけがえのないものになるだろう。ここにいることが幸運で、さらに言うとアドテクの最前線であるデジタルのチームに参加できることは非常に幸運なんだということを知ってほしい。


4. 我々のチームの仕事は、プランニングされたメディアを確保し、設計通りに確実に実行することだ。かんたんに聞こえるかもしれないが、これはとても難しいことなんだ。


5. 我々のチームの仕事は、クライアントにとって新しくて効果的なテクノロジーを探し当て、どれが適切なのか評価することでもある。これは非常に困難であると同時に、楽しくやりがいのある仕事なんだ。


6. 大事なことは、自分のすべての仕事に細心の注意を払うことだ。小さな違いが、キャンペーンの成功に大きなインパクトをもたらしうるからね。


7. 代理店の組織構成で混乱することがあると思う。大きな代理店の多くはたくさんの部門を抱えていて、それぞれの関係はとても複雑だ。だいたいの概要は初めに伝えるが、現時点で気に病む必要はない。どこかで組織がガラッと変わることだってある。


8. 我々はメディアパートナーから広告を仕入れている。メディアパートナーは、パブリッシャー、ベンダー、セルサイド、サプライサイドなどとも呼ばれる。どれも互換性のある言葉だから、同義語だと思ってもらっていい。


9. メディアパートナーには3種類ある。1)自社の保有媒体として運営しているもの 2)多くのサイトから広告在庫を仕入れてまとめているもの 3)アドエクスチェンジを通じて配信できるもの それぞれ重なる部分があるが、それぞれの違いはとても重要だ。


10. デジタルメディアは第三者から広告が配信される。広義の第三者配信にはたくさんのメリットがあって、効果や効率を増加させることができる。このコンセプトを理解するためにたくさんの時間を費やす必要があるが、まずはメリットがあるという事実を押さえておいてくれ。


11. これからきっとたくさんのバズワードや三文字略語を聞くことになるだろう。プログラマティックとかプライベートエクスチェンジ、RTB や DSP、DMP や ATD などだ。この業界の人はみんな話すのが早いし、一日中こういった単語で話している。でも驚く必要はないし、全部覚える必要はない。まずは目の前の仕事に集中しよう。


12. いくつかのカンファレンスに出てみよう。ただ、事前にどれに行くかは話して決めよう。とにかくたくさんのイベントがあるから、大切な時間を有効に使うために、適切なイベントを選択しよう。


13. この代理店にはたくさんの優秀な人がいる。ここで働いている間に、できる限りたくさんの人に会ってほしい。


14. いろんな人が売り込みに来る。いい営業からは多くのことが学べる。彼らのプレゼンを注意深く聞いて、質問してみよう。その製品の本質を考え、クライアントにメリットがあるかどうか判断しよう。すべての製品がクライアントにフィットするわけではないが、すべてのミーティングは君の知識を増やすためのいい機会となるだろう。


15. ランチに連れて行ってくれたり、何かをくれた人には必ず御礼を言おう。君がその御礼に何かをする必要はない。ただ感謝を表現すればいい。


16. 我々は Google や Facebook、Hulu、Twitter などを始めとして、たくさんのクールな企業と仕事をしている。最初は楽しいし、興奮すると思う。でも、インターンを進めていくにしたがって、彼らよりも、まだ誰も聞いたことがないような企業との仕事に一層の興奮を覚えるはずだ。(それが次の Google かもしれないしね!)


17. あとは、AdExchanger を毎日読むことだね。


※フォントサイズや太字はadmarketech.による編集です


このアドバイスは、広告運用に限らず、多くの仕事に共通して適用できる知恵が含まれている素晴らしいアドバイスだと思います。そして、現場を熟知しているからこそ出てくる言葉(「小さな違いが、キャンペーンの成功に大きなインパクトをもたらしうる」とか!)には、耳を傾けざるをえない信頼感があります。

Mitchell さんのような素晴らしい上司や先輩があなたの職場にもきっといると思います。これからのキャリアでたくさんの素晴らしい出会いがありますように。



2014年5月7日水曜日

テクノロジーが、パブリッシャーの武器になる −プラットフォーム・ワン 田辺雄樹氏 #State-of-AdOps Vol.10


「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

※過去の記事はこちらから。

第10回目は、DSP(MarketOne®)、DMP(AudienceOne®)、SSP(YIELD ONE®)など、プログラマティックに関わるプラットフォームを一元的に導入、推進しているプラットフォーム・ワンで執行役員を務められている田辺雄樹(たべ ゆうき)さんに、パブリッシャーサイドでの広告運用やマネタイズの現状について、忌憚のないお話をお聞きしました。


# インタビューは 2014年3月某日に行われました。



サプライサイドの広告運用、3つの機能。


●まずは、田辺さんが現在のお仕事に就かれるまでの経緯と具体的な業務内容を教えて下さい。

新卒ではシンクタンクである日本総合研究所に入り、製造業向け基幹システムの導入コンサルティングや、プロジェクトマネジメントを行っていました。いくつかのプロジェクトを経験する中で、誰かのサービスではなく、自分たちが作ったサービスを広めていきたいという思いが強くなり、ご縁があって2007年に DAC(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム)に転職しました。

当時は、現在の MarketOne® の前身である「アドマーケットプレイス」構想が出ていた時期で、タイミング良くその開発に携わるようになり、2009年にリリースされるまで製品がゼロから産まれていくさまを経験することができました。

その後、2011年より、DAC のアドプラットフォーム事業開発会社であるプラットフォーム・ワンに出向し、プラットフォーム推進統括マネージャーとして、MarketOne® だけでなく SSP の YIELD ONE® を含めた両サービスの運営・事業開発を担当しています。



●デマンドサイドとサプライサイド、両方を経験したことがある人は少ないですよね。

そうかもしれません。メディア企業以外で双方を扱う企業が少ないですし、マーケットの仕組みを理解する上で得難い経験だと思っています。取引を媒介するプラットフォームとして、双方のお客様の利益をどうやったら最大化できるのかを日々考えています。



●アドテクノロジーというとデマンドサイドの視点が多いですが、SSPという視点から見て、現在の運用型広告市場はどう見えていますか?

近年の DSP、RTB などの環境が整ってきた中で、デマンドサイドでの広告運用の重要性は十分に認識されてきていると思いますが、サプライサイドから見ると、デマンドサイドほどには運用という観点で語られることはないように思います。

広告運用という軸でお話すると、サプライサイドでは3つの機能があると考えています。

1つ目はアドサーバーです。ディスプレイ広告のビジネスの基本は広告商品開発、乱暴に言ってしまえば枠づくりですので、純広告であれば予約されたインプレッションをアドサーバーでしっかり管理し、ルールにのっとって正しく確実に広告を配信するというのが「運用」でした。「管理・保守」の意味合いに近い運用です。

その場合、運用で注視するポイントは、収益管理の前提となる配信のスケジューリングです。曜日や一日の中でのピークタイムなど、自社のコンテンツの表示回数の波を捉えながら、広告インプレッションを適切に配信するという役割ですね。

2つ目はサプライサイドプラットフォーム(SSP)です。2000年代後半に、レムナントと呼ばれるような純広告としては取り扱いにくいインプレッションを収益化するためにアドネットワークが出現し、イールドマネジメントという概念がだんだん浸透するようになりましたが、SSP とは、アドサーバーが管理する純広告やアドネットワークなど、さまざまな経路から行われる広告取引を仲介してメディアの収益性を高めるためにイールドマネジメントを担う機能になります。

3つ目はパブリッシャートレーディングデスク(PTD)です。メディアの持つトラフィックのデータというのは非常に資産価値が高く、かつセンシティブなデータですから、それを単純に DMP に預けるのではなく、プライベートDMP を構築して自らそのデータを活用し、クライアントの与件を達成するために DSP などを運用していく機能です。

すべてのパブリッシャーが PTD に向いているわけではないかもしれませんが、デマンドサイドで言われる「広告運用」と非常に近い意味の運用が、パブリッシャーでも少しづつですが始まっているのではないかと思います。


「プログラマティック」の4段階


●今挙げていただいた3つのうち、特に2番目の SSP は多くのパブリッシャーに導入されています。SSP の運用について詳しく教えて下さい。

SSP の運用を考える前に、「プログラマティック(Programmatic)」という概念について改めて整理する必要がありますので、少し説明させて下さい。

下の図は MAGNA GLOBAL が出した調査資料を元に eMarketer が2013年の10月に発表したグラフですが、赤丸で囲った部分を見ていただくと、2013年にアメリカの RTB の市場規模は33億ドル強($3.32B)だと推計されています。

参考:Programmatic Ad Spend Set to Soar - eMarketer (http://www.emarketer.com/Article/Programmatic-Ad-Spend-Set-Soar/1010343)


一方で、同資料の別の図を見てみると、アメリカのプログラマティックディスプレイ(Programmatic Display Ad)の市場規模は75億ドル($7.5B)になり、RTB の市場規模の2倍以上になります。


つまり、一般に RTB と Programmatic は混同されがちですが、上の図の注釈(赤い下線部)に「includes both RTB and other programmatic/automated platforms」とわざわざ分けて記載してあることからも、RTB と Programmatic は似て非なる概念だということが分かります。



●その流れで質問しますが、RTB と Programmatic の具体的な違いは何でしょうか?

Programmatic は、RTB を内包する概念ととらまえています。その範囲は、パブリッシャーのディスプレイ広告取引から見た時、RTB をはじめアドネットワークや時にアフィリエイトで広告枠が埋められる中で、配信される広告がデマンドサイドのデータを活用したターゲティングなど、なんらかの論理を以って取引が制御・自動化される状態を指します。つまり日本市場で言うところの純広告取引以外のすべてが Programmatic と言えるのではないでしょうか。

その Programmatic ですが、取引のやり方として4種類、IAB が定義しています。下の図は、その定義をプラットフォーム・ワンが日本語訳したものの抜粋です。具体的には パブリッシャーから見た Programmatic は以下の4つに分けられます。

(クリックで拡大)

参考:
Programmatic and RTB
プログラマティックと自動取引 -媒体社の視点から


順番に見ていきますと、一番下は「オープン制オークション取引(Open Auction)」と呼ばれるものです。レムナントをリアルタイムで販売する、これがいわゆる狭義の RTB ですね。SSP の視点では、最低販売許容価格(フロアプライス)を設定して、それ以上の価格の入札に対してオークション形式でインプレッションを販売します。オークション形式なのでインプレッション保証はなく、接続されている DSP やアドネットワークと複数繋がっていることからも、オープンな取引形態と言えます。

その次が「招待制オークション取引(Invitation Only Auction)」です。仕組み自体は前述の Open Auction と同じですが、特定の広告主や広告代理店にだけ入札を許可するような、クローズドの形式です。リアルタイムで取引することは一緒ですが、取引先が限定されるため「プライベートマーケットプレイス」や「プライベートオークション」などと呼ばれます。

次に「余剰在庫型固定単価取引(Unreserved Fixed Rate)」です。あるパブリッシャーのある枠のインプレッションを、特定の広告主や広告代理店に対して販売する形式です。Invitation Only Auction との違いは、取引が1対1であるため、オークションではなくあらかじめ決められた価格によって取引される点です。固定CPM がいくらと決めて、優先的に取引する形態ですね。

最後が、一番上の「在庫予約型固定単価取引(Automated Guaranteed)」です。純広告に非常に近い形態です。Unreserved Fixed Rate との違いは、Guaranteed(保証) という言葉のとおり、予約型の取引なので、インプレッションが保証されている点です。「プログラマティックプレミアム」や「プログラマティックダイレクト」などとも呼ばれ、取引形態としては純広告に非常によく似ていますが、「手売り」と表現されるような取引に関わる様々な作業をシステムによって自動化するところが従来の純広告との違いです。

この4つの定義によってプログラマティック取引のグラデーションが表現されています。まとめると、プログラマティックとは、一番下の RTB (Open Auction) も含めた、プログラム化された様々な広告取引を包括する概念だと言えると思います。

ちなみに、先日共同でリリースさせて頂いた日本マイクロソフト様向けの取組み(※PDF:http://www.platform-one.co.jp/pdf/release_20140313.pdf)は、4つの定義の中の上2つ「余剰在庫型固定単価取引(Unreserved Fixed Rate)」と「在庫予約型固定単価取引(Automated Guaranteed)」と DMP とを活用して進めた事例となっており、他の広告主様でのご活用も増え始めてきています。


パブリッシャーサイドの広告運用としての SSP


●最初の質問に戻ると、プログラマティック取引の中で SSP の運用はどのような位置を占めるのでしょうか?

SSP は、これまでお話ししたプログラマティック取引のすべてを対象にできるプロダクトであるべき、と考えています。純広告以外の取引を管理し、収益の最大化を目的としますので、ただ単に「RTB取引できます」といったネットワークやアドサーバーのことを指すわけではありません。

個人的には、SSP とは「パブリッシャーのマネタイズを最大化し、業務効率改善を支援する業務・収益管理運用ツール」だと考えています。だからこそ、SSP はその名のとおりサプライサイドのプラットフォームとして、プログラマティック取引を一元的に管理する役割を担う必要があります。

ですので、媒体社様のご都合があることは理解しながらも、アドサーバーで優先順位をつけて SSP を数珠つなぎにし、フロアプライスごとに切っていくというような運用(メディエーション)がベストだとは思っていません。私は「Programmatic for Publisher」と言っていますが、サプライサイドのプラットフォームは、1つのインプレッション毎に入札される DSP やアドエクスチェンジ、アドネットワーク、プレミアムなどを一律に評価する体制を整えることで、レムナントの RPM の向上だけでなく、プレミアム広告のブランドセーフティ、保証型のインプレッションの管理など、プログラマティック取引を統合的に行える機能として位置すべき、と考えています。

図にすると、SSPの役割は最低限、この赤で囲った部分になると思います。




●そういった先進的なイールドオプティマイズを行っている企業はどれくらい存在しているのでしょうか?

2014年初頭の時点では、今申し上げたような SSP を使った統合的なイールドオプティマイゼーションを行っているパブリッシャーはまだ少ないと思います。また、スケジュール型の純広告は純広告として最優先で配信し、レムナントはレムナントとして運用するという体制が当然かと思います。

RTB のみならず、プログラマティックへのホリスティックな対応は、今後避けられない流れだと思います。パブリッシャーでの広告運用は、これまでの保守としての意味合いから、インプレッションのマネタイズ構造の変化に合わせてメディア企業内での組織運営の変化に至るまで、今までより広く重要な機能へと変わっていっているように思います。



●一方で、ドラスティックに変化することが難しい場合も多いと思います。

ですので、段階を追って変化する必要があると思います。これも IAB の資料になってしまうのですが、パブリッシャーがプログラマティックに対応するための段階を示した図があります。


参考(PDF):http://www.iab.net/media/file/IABDigitalSimplifiedProgrammaticSalesCapability.pdf


この図ではプログラマティック対応を3段階に分けて提示しています。

1. は、「Operation Focused (運用にフォーカスせよ)」です。パブリッシャーにおける広告運用とは何か、プログラマティック取引では何が求められるのかを知ろうということですね。このビジネスモデルをまずは理解しようということです。

2. は、「Developing Internal Sales Capabilities(社内組織を立ち上げよ)」です。ビジネスモデルの次に、プログラマティック取引に対応する組織を立ち上げ、社内的なコンフリクトがない組織体制にしていくという段階です。純広告で収益をあげていた歴史のあるメディアでは、社内的に純広告営業とプログラマティックで組織が分かれていて部門間で対立が起こっていることがあります。それはやめましょうということですね。

3. は、「Internal Consultants for Programmatic(社内のコンサルタントになれ)」です。プログラマティック取引の担当者が社内のあらゆる広告メニューのハブ的役割を担うようになるということです。プログラマティックはプログラマティック・ダイレクトなどの純広告的な取引も含む概念なので、広告営業担当とチームを組んで、プログラマティックに対応した広告パッケージを作るなど、オペレーションを前提にした広告在庫をいかにデマンドサイドにとって価値あるものにパッケージしていくか、営業組織が一丸となって動ける体制をつくり、その中心になりましょうということです。



●そうなると、そういった役割が担える人材や組織の問題にもつながっていきますね。

そう思います。先ほどの3段階の図で言えば、1の段階の企業は多いものの、2や3の段階にいる企業はまだ少ないです。それがダメだという意味ではなくて、まずは1の段階でアドサーバーの保守だけではない、RPM を上げるための運用を行って知見をためていく必要があると思います。

メディアの特性によってパブリッシャーサイドの広告運用の最適解は変わるはずです。例えば、単純に高単価で約定するネットワークを優先しても、フィルレートが低ければマネタイズできるインプレッションは増えませんから全体の RPM は上がりません。オークションを活発にするためにどのように SSP の設定を変えていけばいいのか、オーディエンスや枠ごとにフロアプライスを切り替えたらどう収益が変化するのかなど、データをためていきながらそのメディアなりやり方を見つけていくことが、結果的に次の段階に進むドライバーになるのだと思います。

そして、それを実際に現場で担える人材をどう確保し、組織として伸ばしていくかが今後の課題かもしれません。



●デマンドサイドの課題ともつながっていきますね。

立場は違えど、構造としては似ているのかもしれません。テクノロジーの進化によってパブリッシャーにとっての武器はだんだん揃ってきていると思います。それをどう活用するのかはパブリッシャー次第といいますか。

SSP の選び方や設計の仕方、動画や広告サイズの変更などのフォーマットの拡大もありますし、需要に合わせて広告商品の開発をすることにもつながっていくかもしれません。メディアの特性に合わせてビジネスが変化していくなかで、その中心に広告運用者の価値があると思いますし、パブリッシャーこそテクノロジーを活用すべきだと思います。

プラットフォーム・ワンとしては、パートナーとして選ばれるよう、それらをきっちりフォローさせて頂ければと考えております。


YIELD ONE® が担っていく役割


●ありがとうございます。そのような流れの中で、YIELD ONE® としての方向性などがあればぜひ。

「YIELD ONE®」のポジショニングとしては、パブリッシャーと伴走するイールドオプティマイズプラットフォームです。下の図で表現すると、縦軸にイールドマネジメントとエクスチェンジ、横軸にプレミアムか否かで四象限を作ると、現状お付き合いさせて頂いているシェアの大半が法人優良媒体社様であることもあって、我々は右上に位置し、特にイールドマネジメント機能を提供するサービスに位置付けている、と考えています。

SSP と一言で言ってもイールドマネジメントとエクスチェンジャーがあると思っていまして、単純にレムナントをまとめてバルクでお金に変えるという機能ではなく、パブリッシャーに向き合いながらイールドマネジメント機能を提供していくのが SSP の本来の役割です。そこはブレないようにしていきます。



話しは少し逸れますが、おそらく、ちょうどこのインタビューがオープンになる頃にはDACから新たなリリース(http://www.dac.co.jp/press/2014/flexone.html)を発表できていると思います。その内容は、ここまでお話しさせて頂いたようなレムナント領域に限ったプログラマティック取引のフルサポートをするのみならず、媒体社様にとっての手売り、即ち純広告の配信領域まで含めたイールドオプティマイゼーションをフルサポートするプロダクトに関連するものです。名前は、FlexOne® と言います。ここまででも触れた4段階の「プログラマティック」に純広告の領域まで含め、媒体社様にとってのイールドオプティマイゼーションを、ワンストップで実現できるよう尽力していく次第です。

こういったリリースや日々の活動を通じて、狭義の RTB のみならず、プライベートエクスチェンジサービスなど、パブリッシャー向けのプログラマティック取引プラットフォームとして、高単価で収益性の高い広告販売ができる環境を提供し続けていきたいと考えています。

手前味噌ですが、2014年の1月に発表したリリースでは、2013年10月~12月の3ヶ月間における RTB平均取引単価が前年同期比で約55%向上するなど、結果も明らかに目に見える形で出てきていますので、引き続きプログラマティックの環境を整備し、デマンドサイド・サプライサイド双方の収益が向上するよう支援していきたいと思います。

(PDF)プラットフォーム・ワンの SSP「YIELD ONE®」の媒体社収益は 前年比 55%アップ、DSP「MarketOne®」の取引単価はステイ


●本日は貴重なお話、ありがとうございました!


プラットフォーム・ワン (http://www.platform-one.co.jp/)




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