2011年12月14日水曜日

広告代理店がアーンドメディア・ディレクターを求める背景



少し前ですが、Ad Age に興味深い記事がありました。

リンク:
DigitalNext: A Blog on Emerging Media and Technology - Advertising Age
Why Every Agency Needs an Earned Media Director


タイトルを適当に訳すと、「なぜ広告代理店はアーンドメディア・ディレクターを求めるのか?」です。 LinkedIn やIndeed で求人を見てもドンピシャの職種は見かけませんが、広告会社のメディア系のポジションには、Earned Media という記述がちらほら見受けられます。

「アーンドメディア」とは、ご存知のとおりトリプルマーケティングで言う3つの柱の一つで、4マス広告に代表される対価を払って情報発信する「ペイド(Paid)メディア」、企業サイトやキャンペーンサイトのように自社で所有して情報発信する「オウンド(Owned)メディア」に対して、消費者の自発的な発言や推薦を促すを中心としたメディアを指します。

ここ最近ソーシャルメディアマーケターやソーシャルストラテジストなど、ソーシャルメディアに関わる職に色んな意味で脚光が当たっていますが、ソーシャルメディアはあくまでアーンドメディアの形成要素の一つでしかないと考えると、企業内ではなく、広告代理店の中にアーンドメディア関連の職種が求められる背景が類推できるのではないかと思います。

上述の記事には以下のような記述があります。(太字は筆者注)

Creating compelling content – videos, games, contests, promotions, articles etc. – is just the first step. You then have to use paid media – online, PR, events and other media buys - to encourage the spread of your content. So earned media is not really "free" after all, and it takes a lot of expertise in media planning, buying, and measurement to get it right.

Agencies are understandably getting lots of calls from clients asking to "get on this earned media thing." Now, agencies don't just have to do what they've always done – create ads and buy media – they must also attract, motivate, and engage specific audiences with a brand's content. Agencies have to "earn" media for their clients in addition to buying it. But who is responsible for managing earned media at an agency? Certainly, activating sharing of content is a far different role that just buying media – because it involves identifying, understanding, and measuring social audiences and their sharing patterns.

(抄訳)
競争力のある魅力的なコンテンツを作ることは、あくまで最初のステップでしかない。コンテンツを作った後はペイドメディアを使ってコンテンツを拡散させなければならない。アーンドメディアとは実際には無料ではないのである。そしてアーンドメディアを活用するにはメディアプランニングの深い専門知識や確かな成果指標を持っていないといけないのである。

広告代理店は顧客から常日頃「アーンドメディアの企画よろしくね」などといったリクエストをもらっている。普段の仕事である広告の制作やメディアの買い付けだけでなく、特定のオーディエンスの興味を喚起し、顧客のブランドコンテンツへ誘導しなければならない。メディアを買い付け(Buy)るだけでなく、増やさなければ(Earn)ならないのだ。しかしながら、現在の代理店の職掌の中で、誰がアーンドメディアのマネジメントの責任を負うのだろうか。コンテンツをシェアするのは、ただ単にメディアを買い付けるより難しい。シェアするだけでなく、オーディエンスを定義し、理解し、計測しなければならないからだ。


アドテクノロジー=ディスプレイ広告の構造改革、というある種単純な図式に引っ張られるかのようにネット広告ではディスプレイ広告の取扱高が増えていますが、それにともなって広告がユーザーに届くまでの間に多くのテック系プレイヤーが乱立することになり、間接コストはじわじわ上がっています。つまり、取扱高が上がっても、その増加分ほどの利益が広告代理店側に残るとは限らない状況です。料率でメディアの売買をしている限り、ある程度の出稿規模がある広告主でないと経営的には厳しい、何とも難しい舵取りを求められる局面だとも言えるでしょう。

それは別の観点で言えば、広告代理店の本来の価値である、企業のマーケティング上の課題を解決する企画力と実行力の必要性が改めて前景化しているとも言えると思います。折しも、「無料」という竹槍や、「エンゲージメント」というモヤッとしたキーワードで勝負するソーシャルメディアコンサルタントが企業にプレゼンできるムードがあり、これまでのメディアプランニングだけでは片手落ち感が出てきてしまうところに、この領域に踏み出さざるを得ない代理店の危機感を感じることができます。

一方、ソーシャルメディアという狭義の仕組みの運用や広告を請け負っても、オーダーとしては安いし、手間ばかりかかって正直儲からないのが実情だと思います。特に、運用だけ預かってしまうと、それはこれまでの電話でのサポートセンターをネットに移して受注しただけ、のようになりかねず、そもそも広告代理店がやる仕事ではありません。また、上記の引用にあるように、アーンドメディアは別にソーシャルメディアだけではないですし、ペイドメディアやオウンドメディアも組み合わせて企画しないとある程度大規模なキャンペーンは連動性がなく、単発の「とりあえずやってみた」感じだけが残る仕事になってしまう危険性があります。

今でも、ソーシャルメディアに関わる求人は(特に北米では)たくさんあります。これからソーシャルメディアにトライしたり、社内に知見をためはじめている企業が多いフェーズだからだと思います。一方、基本的に仕事というのは、士業のような非常に高度な専門知識や資格が必要なものを除いて、その範囲を割れば割るほど求められる技能や与えられるポジションはジュニアなものになりますので、広告代理店においては、ソーシャルメディアも含めた総合的な企画や導線設計がつくれなければ顧客から対価を頂戴することは難しくなるため、必然的にソーシャルメディアに限らず、幅広い知識や様々な経験が求められる職として、アーンドメディア・ディレクターという職が定義されているのかもしれません。

実際、デジタルエージェンシーのThree Ships Media にアーンドメディア・ディレクターの募集要項があったので見てみますと、以下のように、何だかいっぱい求められます。

リンク:
Director of Earned Media

Qualifications


  • 4-8 years advertising agency experience, at least 2 years project management.
  • Demonstrated proficiency in copywriting, design and video editing.
  • Strong familiarity with search engine optimization techniques.
  • Proven management track record.
  • Experience working with Photoshop, Illustrator, InDesign, Flash, and PowerPoint.
  • Experience working with HTML, PHP, CSS3, and HTML5 is a plus.
  • Familiarity with marketing concepts across various industries.


  • (意訳)
  • 4年から8年程度の広告代理店での経験。最低でも2年間のプロジェクトマネジメント経験があること
  • 熟達したコピーライティング、デザイン、動画編集等の能力があること
  • 検索エンジン最適化の技術に精通していること
  • マネジメントの経験があること
  • フォトショップ、イラストレーター、インデザイン、フラッシュ、パワーポイントが使えること
  • HTML、PHP、CSS3が理解できること。HTML5が分かるとなお良い
  • 様々な業界のマーケティングに精通していること


  • マネジメント経験を求める割にフォトショップをいじる可能性を示唆される、何とも微妙な応募要項ではありますが。。。

    ただ、前述のとおり、アーンドメディアの企画にはペイドメディアを利用しながらオウンドメディアと連動する、なんてことが頻繁にあることが容易に想像できますので、異なるチームの業務を理解しながら連携させるという舵取りの経験が求められるのだと思います。

    今後も広告代理店内には多くの職種が生まれると思いますが、オペレーション部分はどんどんテクノロジーが入ってきますし、新しい技術はいつしか枯れ、業務の範囲や求められるものの幅・深さは広がる一方なので、全体を俯瞰しそれぞれの局面を判断できるディレクションの能力がより一層重要視されていくのでしょうね。

    大変な反面、面白いことも増えていきそうなので、頑張ってキャッチアップしていきたいものです!



    2011年12月13日火曜日

    そろそろタブレット広告について考えてみてもいい頃





    タブレット端末が強烈に伸びている
    以前、「タブレット広告を理解するためのバイヤーズガイド」というポストでも取り上げましたが、北米の調査会社であるIDC は、約3ヶ月前の9月14日に、2011年の第2四半期(4月−6月)のタブレット端末の出荷台数が1,360万台に達し、前年同期比で4倍、前期(1~3月期)比で89%増になったと発表しています。

    このリリースのすごいところは、この発表の2ヶ月前の7月11日には、2011年の世界のタブレット端末の出荷台数予測を5,350万台としていたところを、わずか2ヶ月間で6,250万台と、一気に900万台も上方修正したことです。iPad2の影響が大きいとはいえ、売れすぎ!です。

    IDC によると、世界のパソコンの総出荷台数は3億5,000万台くらいだそうですから、単純に考えて今出荷されているパソコンの6台に1台はタブレット型端末だということになります。タブレット端末の伸長はユーザーのマルチスクリーン化を促進し、メディアを扱うプラットフォーマーや広告会社はそれらの対応に迫られることになります。



    Google の発表したタブレット用広告フォーマット
    そんな中、検索やディスプレイネットワークでパソコン・モバイルという2つのスクリーンで大きなシェアを誇るGoogle が先日、タブレット端末に対応した新たな広告フォーマット(ベータ版)を発表しました。


    リンク:Google Mobile Ads Blog
    Engaging consumers on tablets: new ad formats


    まずタブレット向けディスプレイ広告ですが、リッチメディア用のテンプレートが用意され、広告主はそのテンプレートを使ってよりリッチな表現の広告を作成することができます。もちろん、タブレット端末だけでなく、パソコン用にも、スマートフォン用にも対応できるとのこと。

    以下の動画で紹介されているように、さまざまなフォーマットが用意されています。

  • Spotlight showcase

  • 360 showcase

  • Swipable gallery

  • Catalog gallery

  • Scatter gallery

  • Stack gallery

  • Slideshow showcase

  • Slideshow banners

  • Locator, for local rich media to drive foot traffic





  • 検索用にも、検索結果に動画を付ける新たなフォーマットが用意されています。これは検索結果が重くなりそうですが。。。





    検索やディスプレイマーケットでトップのシェアを誇るGoogle がタブレットに最適化された広告フォーマットを投入してくるということは、IDC の発表を見るまでもなく、今後、第3のスクリーンであるタブレットが無視できない規模まで成長してくるということに他ならないと思われます。



    タブレット広告について考える
    新たなフォーマット投入の伏線として、Google はこれまでにデバイス別、特にタブレットに焦点をあてたデータを少しずつ出してきています。ちょっと見ていきましょう。

    まず、ユーザーがタブレットで検索する時間帯です。デスクトップ、モバイルと比較すると、タブレットは夕方から真夜中にかけて検索数が上がっていることが分かります。夜にかけて盛り上がってくるのはモバイルも同じですが、日中の利用率はモバイルの方が高いため、タブレットは帰宅後に使われることが多いことが類推されます。




    続いて、タブレットを使ってどんなタイミングで何をしているのかという調査です。縦軸にタブレットで何をしているのか、横軸にタブレットを使いながら何をしているのか、いわゆる”ながら”のクロス集計です。



    これを見ると、「テレビ見ながらメールチェック」、「お茶をしながらメールチェック」、「料理をしながら音楽を聴く」、「テレビ見たり待ち合わせのときにゲーム」などの利用法が多いことが分かります。テレビはどの活動とも相性がいいですね。

    ちなみに、上記の表だとタブレットの主要な用途の一つであるニュースチェックがありませんが、Pew(Pew Research Center)の調査によると、タブレットユーザーの活動のうち、メールチェックの次に多いのはニュースチェックだそうです。また、タブレットユーザーの方が一般の人よりもニュースコンテンツに接する時間が長いとも言われています。




    ComScore によると、インターネット上のトラフィックのうち、タブレット端末の比率はまだ2%程度だとされています。正直まだメインストリームであるとは言えないと思います。ただ、これまで見てきたような特徴を持つ端末ですので、あくまで例ですが、新聞社が自社の電子版ニュースを告知するために、夜中にテレビを見ながらニュースを見たり検索するユーザーに対して広告したい、とか、ゲームプロバイダがグラフィックのしっかりしたソーシャルゲームアプリの販促を行いたいなど、あまり広いリーチを求めるではなく、濃いユーザー層に集中的にプロモーションしたいと思ったときには、活用する価値があるのではないでしょうか。

    Google の新しい広告フォーマットで表現の可能性は広がりましたが、現在でもAdWords でタブレットに配信することはできますし、特別な設定をしていなければ、タブレット端末にも広告は配信されています。タブレット端末にどれくらい配信されているのか知りたい場合は、AdWords の管理画面から「分割」を押して表示されるドロップダウンリストから「デバイス」を選択すれば見ることができます。





    スマートフォン対策はしていても、タブレット対策をしていないサイトはまだ多いと思います。タブレットからのトラフィックはまだまだ多いとは言えない一方で、その成長率は目を見張るものがありますし、AdWords などの広告プラットフォームでは、キャンペーンを分けさえすれば、デバイスごとにそれぞれ違った広告クリエイティブをそれぞれ違うタイミングで、さまざまな方法や価格によって出すことがすでに可能です。

    どこまでキャッチアップするかは、ウェブサイトの対応状況や広告予算、業界特性やプロモーションの優先順位などさまざまな要素があると思います。ただ少なくとも、タブレット端末を対象にした広告は、キャンペーンの内容に合わせていつでもアカウントプランニングに入れられるよう、今後の成長分野として動向を押さえておいた方がいいのは間違いなさそうですね!



    2011年12月7日水曜日

    師走なので2012年の広告市場を予想する(会社が多いです)



    早いもので、色々あった2011年も残り3週間ほどになりました。毎年のこの時期は過去1年の振り返りや翌年の予測などがメディアを賑わしますが、広告市場においても続々とそういった発表が行われています。

    欧州最大の広告会社である仏Publicis 傘下のZenithOptimedia と、世界最大級の広告会社である英WPP 傘下 Group M が揃って来年の広告市場の予測を発表しました。

    2012年の各地域ごとの予測はZenithOptimedia 、 Group M のどちらも出していますが、 ZenithOptimedia は様々な指標で思い切って2014年までの予測を出していますので、ここは彼らの意気込みを買って、Zenithを中心に紹介していきたいと思います。


    ZenithOptimedia
    Quadrennial events to help ad market grow in 2012 despite economic troubles

    Group M
    Press & News Details | GroupM (PDFはこちら



    地域別の広告費予測
    まず、Group M の地域別予測から。

    2010年の結果、2011年の着地予想、2012年の予測と3年分を並べています。




    続いてZenithOptimedia です。こちらは2010年の結果から2014年の予測まで、5年分を並べています。



    どちらを見ても、2011年は2010年からの成長率は鈍化したものの、2012年は一層伸びるであろうと予測しています。要因としては、ヨーロッパ各国の財政危機問題はありつつも、ロンドンオリンピックやアメリカの大統領選挙などの大きなイベントが続くことや、日本も3月の大震災のダメージから早急に回復しつつあり、以前よりポジティブに見てよいのではないかと伝えています。

    両者のレポートを比較すると、Group M の方がアジアや南米、東ヨーロッパなどのエマージング・マーケットの成長率を高く評価していて、2012年はどれも昨対比で10%以上伸長するであろうとしています。一方、ZenithOptimedia はどの地域も比較的惰性の強い変化率を提示しており、ここ最近のデジタル領域における東南アジアや中国などの隆盛を考えると、ややコンサバティブな印象があります。



    国別の広告費予測
    続いて、各地域の構成要素である各国の数字を見ていきたいと思います。Group M は地域別のデータのみ公開しているので、ここからはZenithOptimedia のリリースをもとに進めていきます。

    まず、近年注目のエマージング・マーケットですが、「Beyond the BRICs」と謳っているとおり、これまでの成長ドライバーだと見られていたBRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国) だけでなく、多くの新興市場が立ち上がっていることが分かります。



    特に、図中でも太字で表記してあるインドネシア、南アフリカ、アルゼンチン、トルコ、メキシコ、韓国などが2011年と比較して大きく伸びる市場として認識されています。インドネシアは人口も世界で4番目に多いですし、モバイルマーケットを中心に既に東南アジアの主戦場と目されているので、外資の進出も目覚ましいですね。


    次に、上位10カ国の状況です。見てすぐわかるように、2014年の上位10カ国に、上記の新興市場と言われている国のうち3つがランクインしています。3年後には日本は中国に追いつかれているという予測です。ZenithOptimedia のこれまでのレポートによると、2005年では中国は日本の4分の1のマーケットサイズしかなかったのが、2011年には3分の2まで急伸し、3年後には追いつくペースで成長しているとのこと。ブラジルも2014年には全体の6位にまで順位を伸ばし、ロシアも9位まで伸びるとのこと。





    メディア別の広告費予測
    国別の次はメディア別です。ここではやはりインターネット広告の伸びと、新聞広告の厳しさが数字にも表れています。



    個人的にはテレビが伸びている(シェアを維持している)ことが少し意外でした。レポートによると、

    The amount of time viewers spend watching television has increased, and even though viewers are presented with a wider choice of channels than ever, the biggest television events are attracting record audiences. We expect the popular televised quadrennial events to lift television’s share to 40.4% in 2012. but beyond that we forecast a very slight decline to 40.3% in 2013 and 2014, as often happens after a quadrennial year.

    (テレビを見る人は増えていて、チャンネルが増えて選択肢が増えたものの、オリンピックや大統領選挙など、4年ごとのイベントが2012年のテレビのシェアを引き上げる、その後は反動でシェアは落ちる)

    とありますが、シェアは落ちると伝えているものの、広告費の伸びは2011年から2012年にかけての上昇分よりも、2012年から2013年、2013年から2014年の上昇分の方が大きくなっていて、やや説得力に欠ける説明になっています。


    そして、インターネット広告の伸びを分解すると以下のようになります。ただ、こちらは詳細に検討するにはざっくりしすぎているので、IAB のレポートを見ることをお勧めします。メディアごとの比率もIAB が半期毎に提示しているものとほとんど変わりません。



    最後にプレイヤーごとのランキングですが、Google がほぼ独占状態というデータが出ています。うーん、ただこれもちょっと。。。Google が圧倒的に強いのは認めますが、ディスプレイ市場は複雑で単純に各社が発表している広告費で趨勢を判断できるものでもないと思いますので、参考程度で見ておく、というのがこういった数字への構え方なのかなと個人的には思います。





    以上、ZenithOptimedia のレポートを中心にご紹介しました。

    これから年末年始にかけてまだまだ多くの予測が出てくると思いますので、また面白いものがあれば随時紹介していきたいと思います!



    2011年12月6日火曜日

    コンバージョンを伸ばすための9つのステップ



    個人的に更新を楽しみにしているブログ、Conversion Rate Experts に、「Infographic: Nine steps to better conversions」(インフォグラフィック:コンバージョンを伸ばすための9つのステップ)という記事が載っていました。その名のとおり、コンバージョンを伸ばすためのステップが載っているインフォグラフィックが紹介してあり、ウェブサイトのコンサルティングファームである Conversion Rate Experts と、ウェブサイトの分析ツールを提供する KISSmetrics が共同で作成したものです。

    マーケティングや広告に関わる人にとって、「コンバージョン」という言葉は見聞きする時と場所、文脈によってさまざまに変化すると思います。

    企業の広告やダイレクトマーケティングの担当者にとってはその率や数が常に頭をもたげている喫緊の課題ですし、広告代理店にとっては成果を測る優先順位の高い指標であり、一方でそれ自体に振り回されやすい、あまり心地よくない響きのする言葉でもあるかもしれません。

    言葉の定義が発する主体によって変化することも、この言葉の特徴です。ウェブマーケターにとってはチャネルに限らずウェブサイト経由での購買数を指す一方で、リスティング広告を請け負っている広告代理店からすれば、コンバージョンというのはあくまで "リスティング広告経由" という前提で使われることがほとんどです。コンバージョンの種類も、購買もあれば申込や問い合わせもありますし、問い合わせと最終的な購入までを紐付けて計測することもあれば、フォームに限らずフリーダイアルなどの電話だったりすることもあります。

    世の中にはコンバージョンの向上を謳った記事があふれていますが、コンバージョン向上のための施策は100社あれば100通りのやり方があり、時期や手法、業界や規模など、前提となる環境変数が非常に多く、なかなか施策の細部を紋切り型に一般化することはできないと思います。ですので、このインフォグラフィックも個別のテクニカルな手法に焦点はあてず、どちらかというと最大公約数的な、心構えのような内容を、実行する順番に紹介しています。

    心構えというのは、日々の忙しさに埋もれてしまい、自ら意識しないことにはなかなか前景化しないものだと思います。そういった意味で、この資料は(彼らのツールや手法の提灯用資料とはいえ)師走の忙しいこの時期に企業のウェブ担の方々がこれまでの施策を振り返るのにちょうどよいものだと思いました。以下、順を追って紹介します。


    リンク:
    9 Steps to Better Conversions - The C.R.E. Methodology



    1. ゲームのルールを決める
    • 長期的な目標や、成功の定義など、戦略を練ることに時間を使いましょう
    • 憶測に頼るのはやめて、成果の出ていない分野は何で、なぜなのかを見極めましょう
    • ウェブサイトの訪問者の思考プロセスを理解し、訪問者の身になって、訪問者の視点で自社サイトを使ってみましょう




    2. 現在のアクセス状況を理解する
    • ウェブサイトを鳥瞰する視座を育てましょう。訪問者がどこから来て、どのランディングページに到達し、どのように遷移しているかといったコンバージョンファネルを理解し、どこに宝が眠っているかを発見しましょう。




    3. 訪問者を理解する

    憶測や決めつけをせず、なぜ訪問者はコンバージョンしないのか、その理由を探りましょう。探り方は、以下の3つの考え方があります。
    • これまでの顧客とは違った目的や志向を持つ訪問者の存在を理解すること
    • ユーザー体験に問題がないかを確かめること
    • 訪問者の不満や意見などを集めて、なぜそうなのかを理解すること




    4. マーケットを知る
    • 何もないところにビジネスは起こりません。競合、専門家、顧客、顧客がソーシャルメディアやレビューサイトで言っていることなど、マーケットを知りましょう。そして、自社の強みを生かし、マーケット内のポジショニングを強化するための可能性を探りましょう。




    5. 自社の隠れた魅力を掘り起こす
    • 見込み顧客に対して説得力のある自社の魅力は何なのか確かめましょう
    • 購買プロセスの中で、見込み顧客に対してタイミングよくその魅力を提示してみましょう
    • 自社の(説得力のある)魅力を集め、伝えることに時間を費やしましょう




    6. アイデアを試す
    • リサーチから得た仮説を試してみましょう。壮大で思い切ったアイデアは、短い時間で多くの利益をもたらしてくれるでしょう。




    7. 実験可能なサイトにする
    • これまでのステップをもとに、新しいページの骨組みやページエレメントを作りましょう。新しいページは、現状より説得力があってユーザフレンドリーなものにしましょう
    • 新しい骨組みに沿って、複数のユーザビリティテストをしましょう。そしてどのパターンが顧客の共感を得るのか議論しましょう




    8. ページ単位で実験する
    • 7. で作成した実験可能なページでA/Bテストをしましょう
    • チームメンバーに、このテストの目的や意義、やり方やビジネス上のゴールとの整合性、どうやって成果を測るかを理解してもらいましょう
    • A/Bテスト用のソフトを利用して、どのパターンがよいのか検証しましょう




    9. 他のメディアにも展開する

    これまでのプロセスで得た知見を、他のマーケティング施策に生かせるかどうか検討しましょう。例えば以下のような方法があります。
    • もっとも効果がよかったLPテスト見出し文章をAdWords などの検索連動型広告に使ってみましょう(逆もまた然り)
    • もっとも効果がよかったLPテストのデザインをオフラインのメディアにも適用できないか模索してみましょう
    • もし、ある訴求内容が効果が良かったとすれば、同様の効果が販売代理店やアフィリエイトでも適用できないか勧めてみましょう





    最後に、まとめです。

    資料自体がConversion Rate Experts の販促用であるため、彼らの提唱している「C.R.E. Methodology」の説明になっていますが、いいこと言ってます。基本は反復であり、以前のテストの上に、新しいテストがあり、コンバージョンの向上には以前の成功の上に実験を積み重ねることが肝要であると。これはウェブ以前のリニューアルの概念とはまったく違った考え方ですね。また、テストの後には、一度視点をミクロからマクロへズームアウトし、コンバージョンファネルの全体像に目を向けるという、木と森を同時に見るようなアプローチが重要であるとも言っています。

    個人的には、6. で敢えて「Bold changes gives you more profit」と挟んでいるところに、改善が小さくまとまらないように配慮している姿勢が好きですね。



    余談ですが、今回紹介した資料の作成元の一つである KISSmetrics はインフォグラフィックがとてもお好きなようで、これまでにも数々のインフォグラフィックを作っています。それらがアーカイブされているページがありますので、インフォグラフィックマニアな方はぜひご覧ください!

    リンク:
    Infographics from KISSmetrics



    2011年11月22日火曜日

    エージェンシートレーディングデスクとは何か?



    ディスプレイ広告についての記事やレポートを読むと、「Agency Trading Desk (エージェンシートレーディングデスク)」という単語に出くわすことが多いと思います。

    この単語、語義から何となく意味が想像できそうな反面、結局どんなものなのかイマイチよく分からないという方は多いのではないでしょうか。私もDSP との違いがいまひとつ分からずもやもやとしていたところ、北米の広告事業者団体である ANA (Association of National Advertisers) が簡潔にまとまった資料を出してくれていました。


    リンク(PDF): Agency_Trading_White_Paper.pdf


    ANA のVPであるBill Duggan氏は、AdExchanger.com のインタビュー記事「ANA Exec Duggan Reviews Whitepaper For Marketers On Agency Trading Desks」の中で、" この資料を作ったきっかけは? " という質問に対して以下のように答えています。

    What were the triggers for the ANA creating this white paper?

    A member of our Board of Directors came to us in the summer and said, "What's ANA's perspective on agency trading desks?" And people like myself said, "What's an agency trading desk?"

    So, I asked our Marketing Knowledge Center to do a little due diligence to see what we could find about agency trading desks, and we found a couple of articles that were somewhat inflammatory about agency trading desks.

    Then we found this great link to a YouTube video where there was a moderator at a conference, and three panelists. The moderator said to the panelists, "What's your view of agency trading desks?" and all three said, "What? Huh? Um?"

    Then, in the committees that I manage - over the course of a month and a half, five or six different committees - I asked the question, "Do you know what an agency trading desk is?" 80% of the audience did not. 10% did, but it was kind of fuzzy. Another 10% did, and had some more intimate knowledge.

    Part of our first step was an education process, where we ran two committee meetings where the purpose was to invite in experts on agency trading desks to help educate us. Those people were recognized in the acknowledgments of the white paper.

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    " この夏に、あるANAのメンバーから「ANA のエージェンシートレーディングデスクに対する展望は?」と問われて、「エージェンシートレーディングデスクって何?」と聞き返してしまいました。

    これではまずいと思い、ANA のマーケティングナレッジセンターに調べてもらったところ、エージェンシートレーディングデスクに関するいささか扇動的な記事を見つけることができたのです。

    その中には、あるカンファレンスでモデレーターが3人のパネリストに「エージェンシートレーディングデスクについてどう思う?」と質問したところ、パネリスト全員が「えっ、なにそれ?」と困惑しているYouTube のビデオも含まれていました。

    私が運営しているいくつかの委員会でも「エージェンシートレーディングデスクを知っているかい?」と質問したところ、80% は何も知らず、10% は知っているが曖昧な理解で、残りの10% だけある程度理解している、という状態でした。

    ANA がするべき最初のステップとして必要なのはエージェンシートレーディングデスクに関して知ることだと思い、専門家を招いて勉強会を開催し、この資料を作ることになったのです。 "


    このインタビュー記事でも語られているとおり、エージェンシートレーディングデスクに関しては、北米でもまだまだ理解が進んでいる状態と言えません。ANA の作成した本資料は、エージェンシートレーディングデスクが生まれた背景も含めて簡潔にまとめられており、まずは全体を大づかみするには丁度よい文献だと思いますので、以下、雑な訳で恐縮ですが抄訳し紹介してみたいと思います。





    エージェンシートレーディングデスクとは何か?
    エージェンシートレーディングデスクには色々な定義があります。

    フォレスターリサーチ社は、「エージェンシートレーディングデスクは、DSP やオーディエンスターゲット技術の上位レイヤーにあたり、入札ベースのメディアやオーディエンスの広告在庫を管理するシステムを広告会社内で集中的に運用する組織や機能の総称である」と定義しています。

    その他にも、エージェンシートレーディングデスクは以下のように表現されることがあります。

  • オーディエンス情報やメディアをリアルタイムで売買する方法

  • 株式市場のように検索連動型広告だけでなくディスプレイ広告もリアルタイム取引を可能にするシステム

  • オーディエンス情報を購入する商社のような役割

  • データとテクノロジーによって広告主がオーディエンス情報をもっと効率的に購入することを可能にするプラットフォーム




  • メディアへのインパクト
    エージェンシートレーディングデスクは、Google のDoubleClick Ad Exchange や、Yahoo! のRight Media Exchange をはじめとして、DSPを通じてRTB取引を供給するサプライヤーの動きに合わせるように、まずはオークションベースのAd Exchange に代表されるディスプレイ広告市場で最初に適用されました。一般的には、これらのサプライヤーによって売買が可能になった広告在庫は、アドネットワークにある種売れ残りとして渡していた広告在庫でした。

    さらに、最近ではディスプレイ広告だけでなく、オンライン上のビデオ、モバイル、ソーシャルメディア、そして検索連動型広告も扱えるようになってきています。また、一部の事例としては、デジタルサイネージのようなOOH広告や、ネットTVのような媒体も扱うようなケースも出てきています。



    どんなプレイヤーがいるのか
    エージェンシートレーディングデスクには、大きく分けて、大手広告会社と独立系ベンダーの二種類に分かれます。ほとんど全ての大手広告会社はエージェンシートレーディングデスクを保有していて、それ以外に大手の傘下でないいくつかの独立系のベンダーが存在している、という感じです。



    大手広告会社
  • Havas – Adnetik (spun off as an independent company in 2010)

  • IPG – Mediabrands Audience Platform (includes Cadreon)

  • MDC – Varick Media Management

  • Omnicom – Accuen

  • Publicis – Audience on Demand

  • WPP – Xaxis



  • 独立系ベンダー
  • Accordant Media

  • The Trade Desk




  • ちなみに、日本ではプラットフォームワン社の提供するMarketOne が代表的なところでしょうか。




    なお、プラットフォームワン社は2011年4月にAdmeld社の「米国のRTB(リアルタイム・ビッディング)取引の現状と今後の展望について」というレポートを日本語訳したものをリリースしています。エージェンシートレーディングデスクを理解する上でも有用なレポートなので、併せてどうぞ。

    USマーケットアップデート:アドメルド社提供「本格化するRTB取引」
    (PDFはこちら



    エージェンシートレーディングデスクの起こり
    北米では、2007年から2008年頃に以下のような理由からエージェンシートレーディングデスクが誕生したと考えられています。


  • 高い労働コスト

  • デジタルメディアの配信や売買の業務は、伝統的なこれまでのメディアのそれと比べて3倍以上のコストがかかると言われており、広告代理店はデジタルメディアの隆盛に併せてより効果的で効率のよい方法を常に模索する必要があったこと。


  • 新しいテクノロジーの出現

  • 新しい広告テクノロジーやターゲティングツールが普及するにつれ、広告代理店はデータを管理しターゲティングを可能にするプラットフォームに投資を続けてきたこと。また、オーディエンスターゲティングが一層自動化されたことによって、複雑なオペレーションにかかる業務負担が劇的に改善されたこと。


  • 高いマージンと中間事業者の介在価値の低下

  • 複雑なデジタルマーケティングの環境により、アドネットワークのような多くの中間プレイヤーが登場し、それらが恒常的に高いマージンを得ていたこと。広告代理店は介在価値を出すためにそれらをまとめつつ、再分配することでアドネットワークのマージンを代理店自身と広告主に還元する必要があったこと。


  • 無駄の削減

  • 広告主と広告代理店は、無駄を削減しキャンペーンのパフォーマンスを向上させるためによりよい方法を常に模索していたこと。ちなみに、ある広告代理店のシニアエクゼクティブは「コンテンツターゲットは本質的に無駄である。この方式でターゲットされたユーザーの90%は広告主の製品を欲しがっていない」と言っているそうです。(それを言ったらほとんどの広告が…)


  • 新しい人材の確保

  • デジタルメディアのプランニングや売買は、複雑で、単純労働に多くの時間を割くことを強いられ、管理上の負担が非常に大きいものだったこと。ある広告代理店のエグゼクティブが「複雑な広告運用は社員を死に至らしめてしまう」と言っているように、デジタルマーケティングの運用負担はどの国でも深刻なようです。オーディエンスターゲティングはこれらの負担から代理店を解き放ち、データやテクノロジー、自動化は新しい才能を広告業界に呼び込むと言われています。



    エージェンシートレーディングデスクのメリット
    エージェンシートレーディングデスクは以下のような利益をもたらすと考えられます。


  • より精緻なターゲティング

  • エージェンシートレーディングデスクは個々人にターゲットするシステムのため、従来のパッケージされたインプレッションと比べ、よりユーザーの興味関心に則した広告表示を可能にします。広告代理店はユーザーの行動様式を定義したリストを作成し、独自のアルゴリズムと入札機能を持つDSP を使ってリアルタイムにキャンペーンのパフォーマンスを最適化することができるようになります。


  • より深いインサイト

  • エージェンシートレーディングデスクは、キャンペーンの成果や効率に影響する要因が何なのか、オフラインキャンペーンがオンラインにどのような影響を与えるのか、といったデータの深い分析を可能にします。


  • より良いサービスの統合

  • エージェンシートレーディングデスクが大手広告会社のグループ傘下でのデジタルエージェンシーとして機能している場合、サードパーティ製のサービスを利用するよりサービスや機能の統合を推し進めることができます。広告代理店は個々のアドネットワークや広告媒体、DSPを通じて売買するよりも予算のコントロールがしやすくなり、一つのシステムにより多くの情報を入力することが可能になります。


  • より一層のROIの向上

  • エージェンシートレーディングデスクは、CPA、CPL(Cost per Lead)、低いCPMなどで、キャンペーンのより良いROIの実現を可能にします。



    どうやって利潤を得るのか
    エージェンシートレーディングデスクのビジネスモデルは広告会社によってまちまちです。しかしながら、多くは業務の対価としてのフィー(人件費など)、もしくはデータ分析やモデリング、システム利用料などの技術的なフィーとして計算されます。

    WPP のXAXIS の例を取ると、エージェンシートレーディングデスクは純粋にメディアフィーの増加分として利益に加算されます。XAXIS はいくつかのメディアを自身のリスクを負って買い付け、広告主にプレミアムを付けて再販します。プレミアムの根拠として、より精緻なターゲティングをするための様々なデータを付加し、トレーディングデスクの持つフリークエンシーキャップやアトリビューションモデリングなどのテクノロジーで最適化することによって再販するインプレッションの価値を高めています。そうすることで、広告主も結果的にアドネットワーク経由で出稿するよりよいインプレッションを買うことができ、キャンペーンの効果が向上します。

    ちなみに、XAXIS はこのビジネスモデルは透明性の確保のために広告主に提示するが、メディアから幾らで買い付けているかは、リアルタイム取引であるので提示が難しいことと、メディアパートナーとの契約により開示できないとしています。



    エージェンシートレーディングデスクへの批判
    エージェンシートレーディングデスクには以下のような批判があります。
    # (カッコ)内は私のツッコミです。



  • 透明性の欠如

  • 広告主は時々エージェンシートレーディングデスクを通じてメディアを買い付けているという認識がない場合があって、広告代理店からの説明が充分ではないのではないか。
    (ちなみに、この項目の根拠としてANA の会員が誰もエージェンシートレーディングデスクについて知らなかったから、と書いてあります。しかし、それは単なるキャッチアップ不足では…)


  • 二重の支払いが起きているのでは?

  • 広告主の中には、我々は広告代理店にメディアの運用を委託しているのに、代理店内の運用のために使うエージェンシートレーディングデスクのフィーも重ねて払っているのは納得がいかないという懸念を示す意見がある。(このあたりは以前から検索連動型広告の自動入札ツールでも同じような話がありますね)


  • 利害の不一致はないのか

  • エージェンシートレーディングデスクは構造的にメディアの買い付けとメディアの販売の両方を演じている。(どんな企業でも仕入れて販売するのは同じでは…)


  • メディアを値上げしているだけ?

  • エージェンシートレーディングデスクは自らのリスクでメディアを買い付け、プレミアムを付けてから販売する場合が多いが、プレミアムの値付けはシンプルなマークアップ(一律に一定の率を掛け合わせる方法)なのは単なるメディアの値上げであり、この方式では広告代理店は真のクライアントエージェントになることはできないのではないか。(これは日本でもよく「フィーかコミッションか」という議論になる部分ですね)


  • 運用委託されているだけ?

  • 大手広告代理店は、自社の傘下にあるエージェンシートレーディングデスクを利用するが、そのトレーディングデスクを利用するという決定は、自社の利益のためなのか、広告主のために最適な選択なのか、一体どっちなのだという疑問がある。(代理店傘下でないDSPを使ったほうが透明性が担保しやすいのではないかという意見ですね)


  • リベートの問題

  • メディアの買い付けを値引きするためや、リベートを得るために、メディアにアドサーバーのような技術インフラを供与しているのではないか。(これは鶏か卵か、みたいな議論ですね。広告の配信管理を自前でしっかりできるメディアばかりとは限らないですし)



    広告主はどうすべきか?
    エージェンシートレーディングデスクは多くの利益をもたらす一方で、広告主は自社の予算がどのように使われ、どのプレイヤーにどう分配されているかをもっと知る必要があります。

    広告会社(のエージェンシートレーディングデスク)も、独立系ベンダーも、それぞれ違ったビジネスを志向しています。エージェンシートレーディングデスクを通じて広告出稿をする広告主は、以下のようなステップを踏んでいくことが大事であると考えられます。

  • 広告代理店とちゃんと話し、エージェンシートレーディングデスクがキャンペーンに利用されているか確認すること。(代理店は逆にトレーディングデスクを利用する前に広告主に説明すること)


  • 利用している(していた)トレーディングデスクのビジネスモデルを理解すること。「ビジネスモデルはどうなっているのか?」といった質問や、技術コストなのか、分析コストなのか、それともデータ供与のコストなのかをはっきりさせる。


  • どのメディアがエージェンシートレーディングデスクを通じて買い付けられているのか理解すること。ディスプレイ広告だけでなく、動画やモバイル、ソーシャルメディアや検索連動型広告なども含まれる可能性がある。


  • 測定基準を明確にすること。量なのか、質なのか、効率なのかをはっきりさせて、その指標において、トレーディングデスクでの売買と旧来の方法で比較してどちらがパフォーマンスがよいか把握すること。


  • 広告代理店は敵ではなくパートナーなので、データから得られる洞察やレポートをお願いするなどして、これまでより一歩進んだ関係性を構築すること。


  • 広告代理店が自社の傘下のトレーディングデスクしか使わなく、それが自社にとって最良の選択ではない場合は、直接DSP と取引することも代替案として考えておくこと。


  • トレーディングデスクを使っていない場合、トライアルをしてみること。アドネットワークのようなこれまでの方法と比較してどのようなパフォーマンスになるのかベンチマークを得ること。





  • まとめ
    ANA のエージェンシートレーディングデスクに関するレポートは、ANA が広告主の団体であるということもあって、広告主側からの視点に立って記述されている箇所が多く見られます。批判的な記述が含まれている理由の多くは情報不足から発生していると考えられますが、一方で広告代理店側は新しいモデルに対応し、複雑化するデジタルマーケティングのオペレーションをどのように効率化して利益を出していくかという部分に腐心しています。

    各々の立場を尊重しながら、お互いにパートナーシップを深めていくことで、デジタルマーケティングの環境はより洗練を増していくのではないでしょうか。今後どういった流れになるのか、日本ではどうなのか、引き続きウォッチしていきたいと思います!



    2011年11月15日火曜日

    AdWords(検索)のしくみを一枚絵で眺めてみよう



    世の中に登場してから早10年が経ち、ディスプレイネットワークやモバイルやYouTube やらとその守備範囲を拡大し複雑化を続けるGoogle AdWords ですが、すべての基本は今でも検索にあると思います。

    AdWords の基本は、ユーザーの検索クエリ(情報ニーズ)に対して企業の適切な広告を掲示(情報提供)するしくみで、広告の反応に合わせて適切なレートで料金が加算されるシステムになっています。検索連動型広告の進化というのは、この適切な情報に対して適切に課金するために、情報提供の手段と課金システムの安定稼働とフェアネスの精度を担保するというところにその理由が収斂されていくように感じています。

    ですので、ここ最近さまざまなかたちで提供されているAd extension(広告設定オプション)は企業の情報提供の手段の多様化と理解できますし、広告のフェアネスの精度を担保するために広告の順位付けや課金のしくみがあると思えば、その計算方法は頭に入りやすいのではないかと思います。

    オーストリアのデジタルエージェンシーであるPulpMedia社が発表している "How Do Google AdWords Work?" というインフォグラフィックは、AdWords の基本である検索連動型広告のランキングの仕組みや課金方法、広告設定オプションの解説や簡単なチューニングの方法が一枚にまとまっています。基本に立ち返るという意味でとても大事ですし、きれいにまとまっていて図も多く分かりやすいので紹介します。


    リンク:
    How does Google AdWords really work?

    How does Google AdWords work? - infographic
    Infographic by Pulpmedia Online Marketing


    サッと眺めてみて、視覚的にとても分かりやすく作られていますね。
    印刷して机の前に貼る、なんてのもいいかもしれません。

    個人的にいいなと思った点は、以下の、実際の課金のしくみについて解説している部分です。




    俗に「品質スコアが上がればCPC が下がる」と言われる根拠ですね。逆に品質スコアが低いと上限CPC に限りなく近い金額が加算されたり、順位が著しく下がったり、広告が出なくなったりします。

    課金額の計算は AdWords を普段から使っている方なら常識のレベルでも、AdWords のヘルプの記述が以下のような曖昧な書き方になっていることもあって、意外とご存じない方もいると思います。

    実際のクリック単価(クリックに対してお支払いいただく料金)は次のような仕組みで決定されます。

    実際にお支払いいただく金額は、品質スコアと設定したクリック単価で獲得できる最上位の掲載順位に広告を表示するのに必要な最低限の金額となります。この金額を算出する際は、まず、お客様の広告の下に表示される広告の広告ランクが参照されます。その広告ランクを上回るために最低限必要な入札単価が、お支払いいただく料金となります(1 円単位で端数が切り上げられます)。

    ちなみに、上記の図は簡略化されていて、実際は「直下の広告ランク ÷ 自分の品質スコア + 通貨の最小単位」になるので、最下位の広告以外は日本であれば1円、アメリカであれば1セント加算されます。

    そこで、ボストンのSEMベンダーであるWordStream 社が作成したインフォグラフィックでは、このあたりがもう少しだけ細かく解説されているので併せて紹介します。


    リンク:
    How the AdWords Auction Works | WordStream

    © 2011 WordStream - a certified AdWords partner.



    なお余談ですが、Google が提供している AdWords の設定方法やしくみを解説した「AdWords スターターガイド(日本語)」という資料も分かりやすいので、はじめてAdWords を開始する方にはお勧めです。併せてどうぞ!

    AdWords スターターガイド(PDFです)
    http://www.google.co.jp/adwords/adwords_handbook.pdf



    2011年11月10日木曜日

    続:グーグルのマーケ資料をダウンロード



    だいぶ前に、"グーグルのマーケ資料をダウンロード" という記事で紹介した Think Insights with Google というサイトですが、「ガンガン更新していくぜ」と当時のGoogle のオフィシャルブログで公言していたとおり、ベータ版を卒業し、本リリースとなった模様です。


    リンク:
    Think Insights with Google


    以前までは、Google がよく企業のマーケティング担当者や広告業界の方々を集めて開催しているThinkシリーズの資料の公開が中心でしたが、今回は本リリースということで、これまでそれぞれバラバラに公開していた ”Zero Moment of Truth” や、”Our Mobile Planet” などの独立したサイトもThink Insights のカテゴリ内部の一つのコンテンツとして紹介されています。






    サイト自体は大きく分けて以下の4つのカテゴリに分かれており、

    LATEST INSIGHTS (最新動向)
    RESEARCH LIBRARY (リサーチ資料)
    PLANNING TOOLS (プランニングツール)
    FACTS & STATS (事実と統計)

    これに THINKING AHEAD という未来を考えるコラムのようなコンテンツがついています。

    これまでGoogle がリリースしてきた多くのデータやサイトが一同に介していて、かつ紹介ページ「Think Insights はデジタルのチートシートだ」と言っているとおり、今回の正式リリースは、Google が持つマーケティングに関する公開可能な資料を集めたポータルサイトという位置づけなんでしょうね。

    Here you will find a selection of the research, insights and ideas — from both inside and outside of Google — that informs our strategies, decisions, and products. There are videos, articles, interviews, and studies designed to bring you everything from high-level inspiration to deck-ready data points. Consider this your digital cheat sheet.


    新しく出た "Real-Time Insights Finder " という仰々しい名前がついているツールもありますが、これも結局はGoogle の各製品内にある便利な機能の紹介だったりするところも、このサイトの立ち位置を象徴的に表していると思います。



    いずれにしても、「ここに行けばとりあえずOK」というサイトができたのは、特にデジタルのマーケターとってありがたいことです。これから企画を練る際には、使えるデータやツールがないか、一度目を通しておきたいサイトですね!



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