2011年6月9日木曜日

IABがインターネット広告レポートの定義の更新をだいぶサボっている件


IABも無理があるのは重々承知のうえで、定義自体を変更するのは遡って計算しなおさなければならず、いろいろ面倒なのでしばらくこの定義のままでいこうという感じなのかなと個人的には思っております。

IAB Reports Full-Year Internet Ad Revenues for 2010 Increase 15% to $26 Billion, a New Record
(リンク) (PDF)


リリース自体は、インターネット広告費が前年(2009年)対比約15%増の約260億ドルで過去最高、かつ新聞広告費を上回って媒体別でも2位に躍り出たという非常にハッピーな内容です。2011年4月13日に発表されたこのリリースは、その日が ad:tech san francisco の最終日ということもあって、きっと速報が出たときの会場は盛り上がったのではないかと想像します。

しかしながら、言いたいのはそこではなくて、その内訳についてです。

Display-related が好調だったり、Search は伸びたけどトータルでの割合は初めて減ったといった数値上の変遷が問題なのではなく、それぞれ、Search って何なの、Display って何なのという、数字の根拠となる定義が、プロダクトがすごいスピードで変化しているにも関わらず、ここ6−7年ほぼ全く更新されてないことに、一抹の気持ち悪さを個人的には感じています。

Definitions of Advertising Formats(広告フォーマットの定義)
 -Display Advertising
 -Sponsorship
 -Email
 -Search
 -Lead generation
 -Classifieds and auctions
 -Rich media
 -Digital Video Commercials
 -Mobile Advertising


たとえば、今回の「2010 Full Year Results」と、6年前にあたる「2004 Full-Year Results」それぞれにある、「Search」の定義を比べてみると以下のようになります。

2004年の【Search】の定義

2010年の【Search】の定義


テキストにして違いを赤字にすると...

Search
Fees advertisers pay Internet companies to list and/or link their company site domain name to a specific search word or phrase (includes paid search revenues). Search categories include:
• Paid listings—text links appear at the top or side of search results for specific keywords. The more a marketer pays, the higher the position it gets. Marketers only pay when a user clicks on the text link.
• Contextual search—text links appear in an article based on the context of the content, instead of a usersubmitted keyword. Payment only occurs when the link is clicked.
• Paid inclusion—guarantees that a marketer’s URL is indexed by a search engine. The listing is determined by the engine's search algorithms.
• Site optimization—modifies a site to make it easier for search engines to automatically index the site and hopefully result in better placement in results.


なんと、2004年の「on-line」が「Internet」に変わっただけでした!

もちろん、この6-7年、Search の本質は変わってない、と言うこともできるかもしれませんが、さすがに定義の更新がないのはどうかなと思います。

なぜなら、上記の Paid inclusion などは、サービス自体を以前からまったく提供していない Google が検索市場の3分の2のシェアを持っていて、かつシェア2位(15%)の Yahoo! が2009年末で Paid inclusion のサービスを終了している米国という市場で、いったいどれくらい考慮しなければいけない分野なのか、正直理解に苦しみますし、Search の定義に含まれている Contextual search についても、AdWords for Content (コンテンツターゲット)が世に出てまだそれほど経っていない2004年時点であれば、まあ検索に含めるのも仕方ないかなという感じの定義ですが、2010年の市場規模で考えたときに、コンテンツターゲットもひっくるめて全部これ Search ですというのはさすがに厳しいと思います。

例えば AdWords でリマーケティングを使ったキャンペーンでクリエイティブにテキストとバナーとフラッシュとビデオをまとめて設定した広告グループで発生した費用はいったいどれに当たるのか?という質問に、この定義では答えられません。もう少し踏み込んで言えば、レポートの冒頭のサマリーで「digital video and social media, has certainly helped to fuel the continued growth.(動画とソーシャルは持続的な成長に寄与した)」と PwC の David Silverman がコメントしているにも関わらず、それを裏付ける記述も定義も特にありません。Facebook のスポンサー記事広告とかは、どれに当てはまるのでしょうか。

そもそも最大のプレイヤーであり指標である Google が、一つのプラットフォームで過去に IAB が定義した広告フォーマットの定義をかんたんに越境したり組み合わせたりしてしまっているうえ、年次報告書では広告の売上内訳を「Google Network」と「 Members' websites」という定義でしか明確には公開していない以上、この長く更新していない IAB の指標の範囲内で語れることが極めて限定的なのは残念ながら仕方がないことなのだと思います。

もちろん、こういったレポートは定点観測が大事なので、一度決めた指標をコロコロ変えるのは好まれないのである程度惰性が働くのは必要なことですし、これまでの指標でトラッキングしていたレポートを組み直すのは非常に骨の折れる作業ですが、放っておいても資料としての厳密性はますます担保できなくなってくると思います。どこかで指標が更新されることを願います。



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