2011年10月31日月曜日

広告主がビッグデータと向き合うために準備すべきこと



「ビッグデータ」という言葉が広告業界でも頻繁に聞かれるようになってきました。単語として意味が通りやすいせいか色々なところで使われるのを耳にしますが、エンタープライズ業界で使われていたこの言葉、なぜここ最近、広告の文脈でも聞かれるようになったのでしょうか。


ビッグデータとは何か

「ビッグデータ」は、語義どおり大きな大量のデータという意味になりますが、一般的な定義では、Volume(量)、Variety(多様性)、Velocity(速度)、Value(価値)という4つのVで表現されます。

データの「量」だけではなく、データの「多様性」、つまり旧来のリレーショナルデータベースに収められるような構造化されたデータだけではなく、構造化される前のフリーテキストだったり、提供元のデータプロバイダが多種多様にあり、かつ構造がそれぞれ違うといった面倒な問題が存在することが、わざわざ「ビッグデータ」とカッコつきで言われる所以です。また、そのデータの量は加「速度」的に増え、リアルタイムに処理しなければならない類のものである、というのも理由の一つですし、多様な種類のデータがものすごい速度でその嵩を増していくので、当然、有用な情報とそうでない情報が混在してくるため、いかにデータをスピーディに「価値」付けしていくか、という問題もあります。それはそのままリアルタイム処理の負荷分散と精度という課題にもひもづいていますので、とにかくややこしいですね。


ビッグデータとネット広告

ところで、現在のネット広告の主軸である検索エンジンマーケティングでは、この「ビッグデータ」という考え方は比較的馴染みやすい概念だと思います。もともと検索エンジンはユーザーの検索キーワード(検索クエリ)に対して、インデックスした膨大なデータベースからコンマ数秒で適切な検索結果を返すことを生業にしていますし、検索結果に広告を載せる検索連動型広告は、あらかじめ検索クエリを想像して広告主がキーワードをセットし、一致したクエリに対して広告をオークションに参加させ、入札された金額と広告の価値(品質スコア/品質インデックス)をもとに順位と実際の課金額を同じくコンマ数秒で計算するシステムですので、配信側からすればもともとビッグデータを扱っています。ビッグデータの処理で最も使われているHadoop にしろhBase にしろ、もともとはGoogle の処理基盤をベースにしたオープンソースですしね。

ここ最近、広告のタームで「ビッグデータ」にスポットライトが当たっている背景には、近年のディスプレイ市場の変革が深く関わっていることに疑問の余地はないと思います。

検索と違うのは、4つのVでいうところの、データのVariety(多様性)にともなって、Valuation(価値付け)が難しくなり、そこに次の可能性があるということなのだと思います。もう少し言うと、変数の増加がデータの整備と価値付けのための処理を増やし、そのための負荷分散と精度が課題となって浮かび上がっている、ということです。データエクスチェンジなどは、Google が自社のシステムだけで処理を完結させている段階では浮かび上がってこない課題だと思います。

ディスプレイ市場の変革とは、入札が「広告枠」から「オーディエンス」へ移行した、ということに他なりません。広告枠への値付けから、一人一人の属性や嗜好や行動履歴やタイミングに値付けをするという変化です。その値決めのために必要なデータを、媒体社やリサーチ会社、配信事業者自身などのそれぞれ違ったデータプロバイダから集め、その集まった膨大なデータをカテゴライズし、意味づけをして、オークションと配信システムに繋げていくために整備します。広告主が広告を制作し入稿してからユーザーに届くまでの間の処理が複雑になり、処理に使用するデータの種類が増え、膨大になり、かつリアルタイムに変化していくという事実こそが、ここ最近急に「ビッグデータ」と叫ばれる根底にあるのだと思います。LUMA Partners のカオスマップは、その象徴とも言えるでしょう。

カオスマップ(Display LUMAscape)



広告のバイサイドが準備すべき4つのこと

さて、そういった複雑化する環境の中で、広告のバイサイドである広告主、もしくはそれを代理する広告代理店に求められる変化とは何なのでしょうか。ここでは、テクノロジーの活用の前提となる、企業として取り組むべき準備をかんたんに洗い出して、4つにまとめてみました。


1. 人材の育成
自社内にデータ分析の専門家、特にマーケティングの部門に専属の分析家がいる、という企業はまだ少ないと思います。ここでの分析家は、ITやビジネスに明るく、かつ進化の早いアドテクノロジーをキャッチアップしながらデータ分析の結果をキャンペーンにフィードバックしていくという難題が仕事になりますので、まともに一人でこなそうとするとスーパーマンのような能力が求められます。そんなスーパーマンはめったにいませんので、自然と得意分野を分けながら、専門領域に特化したチーム作りが必要になります。


2. 組織づくり
チームを作る上で次に課題に上がるのが、部門間の連携です。自社のログデータはIT部門が管理し、顧客データは営業が管理し、マーケティングで得られた知見はマーコム内のみでシェアされるような場合では、ビッグデータ云々の前にチームが機能しません。そこで部門を水平に横断するような組織づくりが必要になります。大企業であればあるほど組織づくりには人事評価やインセンティブ、目標管理などが必要になってきますので、そういった見えにくい仕組みの部分の整備も必要になるでしょう。タスクフォースにしてしまうと継続性が担保されないので、できればレポートラインがしっかりした組織を作った方が長期的にはいいと思います。


3. 予算の設定
ここでいう予算は広告を含めた企業のマーケティング予算です。リアルタイムに入札や予算を変えていき、トライアンドエラーを重ねながら進めるこれからの広告モデルは、これまでの「上期の予算は2ヶ月前にはほぼ使い道まで決まっている」といった予算の作り方だと間に合わなくなる可能性が高いです。ビッグデータ活用の一つにアトリビューション分析がありますが、分析の結果で予算の配分が変わることが往々にしてありますので、予算の項目を柔軟にしたり、売上データとの繋ぎこみをすることで貢献度をある程度可視化し、固定費を変動費化するなどの変更が必要になるかもしれません。


4. ポリシーや契約の整備
扱うデータが多く複雑になっていき、プライバシーとの兼ね合いも難しくなってきますので、データを扱うためのポリシーや制度を改めて整備することが重要になってきます。また、自社ですべてを抱えるのは難しいので必然的に広告代理店や配信事業者、システム会社などの外部パートナーと契約することが増えると思いますが、データの取り扱いを含め、信頼できるパートナーの選定や、持続可能な契約になっているかを再度見直すことが必要になってくると思います。例えば、広告代理店との契約では媒体費のマージンが代理店の利益になるようなモデルが多いと思いますが、データの分析から広告以外の分野への予算配分を多くすべきという結果が得られた際に、媒体費のマージンで契約している代理店が広告主の味方になるとは限りません。お互いに気持ちよく仕事ができる契約の整備というのも重要な要素になりうるでしょう。


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以上、非常にかんたんですが、ビッグデータと向き合うために広告のバイサイドである広告主が準備すべきことをまとめてみました。技術への投資は前提として、投資からリターンを得るために整備すべきことという意味合いで捉えて頂ければ幸いです。

広告に限らず、テクノロジーの動向を遠近両方の視点で理解する努力は、経営をする上で必要不可欠だと思います。一方で、流行のキーワードに何でもかんでも飛びつく必要もないと思います。世の中の流れと自社のビジネスを俯瞰して、適切なタイミングで投資をしていきたいですね!



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