2012年1月13日金曜日

リスティング広告のレポートをまじめに考える



作業時間の多くが割かれるレポート作成

リスティング広告の誕生時からこれまでで、従事している人の時間をもっとも奪っているのは、提案でも分析でも入札でもなく、レポート作成ではないでしょうか。(テレアポだという噂もありますが...)

リスティングの運用を行う広告代理店の月初の最初の1週間というのは、その取扱いアカウント数が多ければ多いほど、レポートの作成に忙殺される傾向にあります。第1週目はレポート作成と請求書作成しかしていない、なんてこともつい数年前までは当たり前の光景だったように思います。(最近は各社工夫して自動化したりしているので、以前ほどではないかもしれません)

仮に1ヶ月のうち最初の1週間をレポート関連の作業に費やすとすると、リスティング広告の全仕事量のうち2割以上はレポート、つまり報告業務に費やされていることになります。また、レポートは月1回とは限らず、毎週、時には毎日という場合もあるかもしれません。2割どころか半分がレポート作業なんてことも笑い話でなく現実としてあるのではないでしょうか。

また、レポートと一口に言っても、広告主が知りたいことは多岐に渡り、パッケージ化された共通のレポートフォーマットだけではなく、カスタマイズした独自のレポートを作成しないといけない場合があります。また、レポートを出すことが目的なのではなく、そこから変化を読み取って次の施策に繋げていかないと代理店の存在価値が広告主から疑問視されかねないので、レポート作業は本来、分析や次回提案に向けてのアイデアを練る作業でもあるはずです。

とはいえ、よほど大規模な案件の担当者でない限り、どうしても1人で複数の案件を運用することになるため、すべての進捗を確認し、レポートを作成し、そのたびにアイデアを練り、トライアンドエラーを繰り返し、検証と報告を繰り返すというPDCAサイクルを回すのは時間的に難しく、どうしてもレポートは流れ作業で数字の報告に終始してしまうということが多いのもまた現実だと思います。


Acquisio のレポートのレポート

レポートについての悩みごとは洋の東西を問わずリスティング従事者にとって大きなものです。そこで、カナダに本社を置くSEMベンダーの Acquisio がリスティング広告のレポートについてのベストプラクティスを公開していますので紹介したいと思います。

このレポート自体は公開が2010年6月と比較的古い資料になりますが、つい最近まで定期的に Search Marketing Now から「ダウンロードしてね」とのオプトインメール届いていましたので、比較的息の長い汎用的な資料なのだと思います。

もちろん、これを読んだからといってレポートに関する悩みが解決するわけではありませんが、普段漫然と出しているレポートを改めて考えるきっかけになればと思います。


Best Practices in PPC Reporting(PDF)
※SMNだとダウンロード前に個人情報を求められるのですが、こちらからだとフリーダウンロードできます。




同資料では、リスティング広告のレポートについて以下の7つの項目に分類しています。
順を追って紹介します。


1)あらかじめレポートの方針を決める

「そんなの当たり前だ」と言われればそれまでですが、ではそれが明文化され、徹底されているケースがどれだけあるか?と問われると、なかなか難しいのではないでしょうか。

資料では、冒頭を以下のように伝えています。

Perhaps the most critical factor in PPC reporting success is to have a plan that clearly defines the reporting strategy, format, frequency, tracking mechanisms, metrics, accountability and the communication chain of command.
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おそらく、リスティング広告のレポートでもっとも大事なことは、レポートの方針、フォーマット、頻度、トラッキングの仕組み、成果指標、説明責任、連絡手段や伝え方などを明確に定義し、プランに落としこむことだ。

提案や運用に従事するチームの努力が、広告主の目的と一致していることが幸せな案件への必要条件だと思います。上記の作業が必要な理由として、「ときどきあるタスクが他の作業に大きな影響を及ぼし、それが積み重なって意味のない報告やルーチンワークに発展することがあるから」だと書いています。うーん、確かに思い当たりますね。思いつきで頼まれた作業が思った以上に複雑な変更を必要とするものだったり、しかもそれが不要になったあとでも惰性で出し続けてしまうなんてこと、よくあります。

合わせて、「広告主の要求レベルを適切にマネジメントせよ」とも書かれています。一見レポートに関係ないように思いますが、要求の一つ一つは報告業務にそのまま反映されることを忘れてはいけません。決して細部を見過ごさず、それらに潜む作業の連鎖に想像を巡らせることがフロントマンの勤めだとも書いてあります。営業(アカウントエグゼクティブ)はレポートを自分で作らないことが多いですから、ついつい謎のリクエストを二つ返事で受けてしまいがちです。

とにかく、目的を明確化し、それがしっかり網羅されているレポートフォーマットや、適切な作成頻度や連絡手段を整備しましょうということですね。


2)レポートチームを組織する

レポートにはチームで当たるべきだと書いてあります。まずはチームメンバーのスキルセットのアセスメント(査定)をし、適切に業務を割り振ることが大事だと書かれています。もしリソースが足りなかったらチームマネジメントと他チームとのコラボレーションで乗り切り、この作業がどのように業務全体やクライアントの目標達成にとって必要か、意味付けを怠らないことが重要だということのようです。

また、SEM関係のツールを有効に使えとも書いてあります。ビッドマネジメント系の自動化ツールにはじまり、ディスプレイ広告の進化によってリスティングに限らないキャンペーンの全体マネジメントをするツールも出てきていますし、アクセス解析やレポートの自動化ツールもあります。 日本でも、れぽくりLisketLiSPOglu(手前味噌ですが…)など、リスティング広告のレポート自動化ツールはたくさん出てきています。

最後に、検索エンジンやサードパーティのツールベンダーの担当者にも協力を請うのもアリだと書いてあります。つまり Google や Adobe の営業担当ですね。実際、マーケット全体のデータや傾向はプラットフォーム側の方が圧倒的に情報量は多いですし、大きな広告主の場合直接営業担当者がついている可能性がありますので、連携することでレポートや提案のためのいいコラボレーションが生まれることがあると思います。


3)透明性を確保する

ここでいう透明性とは、別に数字をごまかすなという詐欺的な行為を戒めているわけではなく、オープンで正直な姿勢をとりましょうということのようです。

Having an “open-door policy” with clients fosters a culture of conversation where clients feel free to ask questions about your reporting and analysis and you feel more confident about your answers.
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広告主に対して "オープンドアポリシー" で臨むことは、広告主が気軽にレポートや分析結果に対して質問し、自身がそれに答えることによって自信を生み出し、良い関係の促進することにつながる。

本文では、いくつかのステップを提示しています。
まずは、小さな成功を早めに確保すること。広告文の一部を変えただけでアカウントのパフォーマンスを改善させた、なんてことでもOKなので、とにかく小さな成功でいいので良い結果を早めに出し信頼を得ること。

次いで、頻繁に連絡をとること。連絡が頻繁なのは最初だけでだんだん疎遠になっていく担当者が多いですが、頻繁な連絡はそれだけでケアされているという安心感を与えるものです。その後、パフォーマンスだけでなくレポートでも、数字の羅列ではなく的を得たコメントや質問に対して迅速で的確なフィードバックを行うことが何より大事だそうです。

また、何より大切なのはクライアントからのフィードバックを恐れないこと、そして現状に居着かず、よい結果を求めてテストを繰り返すことだと説いています。


4)データを見せるのではなく、分析する

これは本当に大事で、資料でももっとも多くの文量を割いてその重要さを伝えています。

まず冒頭で、「SEMの従事者がもっとも犯しやすい間違いは、キーワードレポートをエクセルに丸写しして提出し、その分析を怠ることだ」と戒めています。耳が痛いですね。

レポートは宝の山で、レポートの分析に時間を割かず作成に時間を割くことは、アカウントの大事な情報を見落とし機会損失に繋がるので、必ず分析の時間を割き、専門用語ではなくわかりやすい言葉でレポートに記載し、クライアントとそれについてしっかり会話すること。

予算設定とキャンペーンの中身を吟味し、時系列に沿って分析することは、市況の変化や表示機会の抑制を発見することにつながりますし、広告グループやキーワード/クエリの実績を分析することは、キーワードと広告文、リンク先のページとの結びつきが、ユーザーと企業の結びつきに直結することを数字だけでなく実感として理解することにつながります。

そして、「データの分析を人任せにするな」とも書いてあります。その通りですが、耳が痛い人も多いのではないでしょうか。


5)細かく、深く

これはそのままの意味ですが、リスティング広告には森と木、枝葉や土を同時に見ていくことでさまざまな発見があるのは間違いありません。例えば以下のような視点で時系列で俯瞰的に見ることを推奨しています。

  • アカウント開設からこれまでの経過



  • 日次、週次、月次での平均の予算進捗



  • 上位のキーワードのボリューム



  • 上位のキャンペーン、広告グループ



  • 重要指標のCPCや平均順位



  • 過去のコンバージョン推移やCPA、カウントのルール





  • 6)最適なレポート頻度を決める

    これはケースバイケースだと思いますが、アカウントの大きさに合わせ、頻度と粒度は変えるべきだと書かれています。また、最低でも週に1度はレポートしたい、と書いてあります。

    おそらく、何をレポートするか、が頻度にも関係していくのだと思います。予算の進捗や ROI はなるべく高頻度でモニタリングしたいですが、キャンペーンや広告グループ、キーワードやクリエイティブ、チャネルやデバイスなどはある程度の量や時系列の傾向がないと意味のある分析ができませんので、何をいつレポートするのかが、最初の「1)あらかじめレポートの方針を決める」で言及している「プラン」につながってくるのだと思います。


    7)クライアントごとにカスタマイズする

    クライアントごとのカスタマイズがリソース的に無理なんですと言われればそれまでなのですが、明らかにテンプレートにはめ込んだだけでインサイトのないレポートではダメな一方で、1から10までフルカスタマイズなレポートは運用が続かなくてすぐに破綻します。

    ここでは、「ある程度までツールなどで自動化・テンプレート化し、クライアントの目標や要求に沿って必要なだけカスタマイズの部分を作ろう」と提案しています。



    レポートは終わらない

    Acquisio のレポートは上記の7つのポイントにとどまらず、エクセルの実用的な使い方や、AdWords の効果的なレポート、キーワードレポートのケーススタディと続きますが、普段からSEMに従事していらっしゃる方であれば既知の内容が多いので割愛します。(ちなみに、AdWords の効果的なレポートは、SEM-LABOさんのこの記事がとても参考になりますので併せてどうぞ。)

    冒頭で書いたとおり、Acquisio のレポートを読んだからといって日々のレポート業務に何か劇的な変化が起こるわけではありません。ただ、いい事言ってるなと思ったのは、「1)あらかじめレポートの方針を決める」でも触れた以下の部分です。

    Perhaps the most critical factor in PPC reporting success is to have a plan that clearly defines the reporting strategy, format, frequency, tracking mechanisms, metrics, accountability and the communication chain of command.
    -
    おそらく、リスティング広告のレポートでもっとも大事なことは、レポートの方針、フォーマット、頻度、トラッキングの仕組み、成果指標、説明責任、連絡手段や伝え方などを明確に定義し、プランに落としこむことだ。


    これは、言い換えればレポート業務に留まらず、リスティング広告の業務全体をデザインすることだと思います。リスティング広告に限らず広告業務の現場では、よく営業と運用、アカウントマネージャーやプランナー、アナリストとそれぞれの間の意思疎通がうまくいかず、ギクシャクしたり妙に仕事が増えたりすることがあります。営業はクライアントの要望をかなえてあげたいし(もしくは断りきれないし)、運用スタッフやアナリストからすると営業の安請け合いがどれだけ業務的に負担になるか文句のひとつも言いたい時があると思います。

    そういったことを未然に防ぎ、チームが一丸となって顧客と共通の目標に向かって仕事を進めるための環境整備が、結果的にレポートの設計につながってくるのだと、何となくそんなことを思いました。

    まだまだ日々の業務に忙殺されてレポートがないがしろというケースもまだまだあると思います。デジタルマーケティングがますます多様化していき、さまざまなチャネルや手法がつながっていく中、それらの現状を把握し、施策に繋げていく根拠として、レポートの重要性は増すばかりです。面倒な作業と忌み嫌わず、改めてまじめにレポートと向き合ってみることで、業務改善のヒントが見えてくるかもしれません!


    ※この記事は2012年に書かれたものです。 



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