2012年1月31日火曜日

バナー広告のサイズとCTRと視認性を考えてみる




ComScore が発表したvCEとはなんなのか
ComScore が発表したvCE(Validated Campaign Essentials™)という指標によって、オンライン広告の視認性についての議論がにわかに盛り上がっています。

vCEとは何なのかを知るにはComScore のプレスリリースを読めばいいのですが、これが結構長いので、必要な部分を以下にかんたんに抄訳します:


ComScore のプレスリリース:
comScore Introduces Validated Campaign Essentials™ (vCE), a Holistic Measurement Solution That Validates Advertising Impressions and Audiences Reached with Digital Advertising Campaigns - comScore, Inc

vCE enables a holistic view of campaign delivery and a verified assessment of ad-exposed audiences via a single, third-party source. Unlike existing single-point solutions, it provides an unduplicated accounting of impressions delivered across a variety of dimensions, such as ads delivered in-view, in the right geography, in a brand safe environment and absent of fraudulent delivery.
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"vCEは、キャンペーン配信の全体的な視野に立ち、広告が表示されたオーディエンスを実証的に評価することができます。既存の調査と違い、「in-view」配信かどうか、意図した地域に配信されているかどうか、ブランドの安全が確保されるような場所かどうか、不正な配信がないかどうかなど、さまざまな指標でインプレッションを重複なく測定することができる製品です。"

ちなみに、「in-view」とは、ざっくり言うと1秒以上見たかどうかという4MSという業界団体が決めた指標です。

To better understand the quality of ad delivery today, comScore conducted a U.S.-based vCE Charter Study, which involved 12 national brands, 3,000 placements, 381,000 site domains and 1.7 billion ad impressions. Select advertisers from the charter study include Allstate, Chrysler, Discover, E*TRADE Financial, Ford, General Mills, Kellogg’s, Kimberly Clark, Kraft, and Sprint.
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"広告配信の質をより一層理解するため、ComScore は北米を拠点に、全米12のブランド、3,000プレースメント、38万以上のドメイン、17億の広告インプレッションを含むvCE調査を実施しました。この調査に選ばれた広告主は、Allstate(オールステート)、Chrysler(クライスラー)、Discover(ディスカバー)、 E*TRADE(イー・トレード)、Financial(ファイナンシャル)、Ford(フォード)、General Mills(ゼネラルミルズ)、Kellogg's(ケロッグ)、Kimberly Clark(キンバリークラーク)、Kraft(クラフト)Sprint(スプリント)です。"


  • Across all charter campaigns measured, 69 percent of the ad impressions were classified as being ‘in-view.’* The remaining 31 percent were delivered but never seen by a consumer, a likely result of a consumer scrolling past the ad before it loaded or a consumer never scrolling the ad into view. In-view percentages varied by site and ranged from 7 percent to 91 percent.

  • An average of 4 percent of ad impressions were delivered outside the desired geography, but individual campaigns ran as high as 15 percent. In many cases, ads were served in markets where the advertised product is not sold, meaning wasted ad spend and sub-optimal effectiveness results.

  • 72 percent of Charter Study campaigns had at least some ads running next to content deemed “not brand safe” by the advertiser, meaning that the content is deemed objectionable by the brand. This type of unsafe delivery has the potential to damage the brand, creating a difficult situation for all members of the digital advertising ecosystem.
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  • "調査したキャンペーンのうち、インプレッションの69%は「in-view」に分類されました。残りの31%は、配信されたが消費者が全く見なかったもので、消費者は広告が読み込まれる前にスクロールしてしまったか、広告が表示される部分までスクロールしなかったと思われます。「in-view」な広告の割合はサイトによって7%から91%にまで幅がありました。"

  • "インプレッションの平均4%は、望ましい地域以外に配信されたものの、個々のキャンペーンは15%程度展開されました。多くの場合、製品が販売されていない地域に広告が配信されていましたが、これは広告費の無駄遣いで最適な配信とは言いがたい結果あることを意味しています。"

  • "調査したキャンペーンの72%には、広告主から"ブランドにとって安全でない"と見なされるコンテンツに広告が配信されているものが含まれていました。こういった安全ではないタイプの広告配信は、ブランドを毀損する可能性があり、デジタル広告のエコシステムを形成する全メンバーにとって難しい状況を生み出すことにつながります。"


  • プレスリリースでは他にもこの調査に参加もしくは賛同したお偉い方々のメッセージが続くのですが、ComScore がこのリリースの目的としてもっとも言いたいことは、同社CEOのDr. Magid Abraham氏の以下の言葉に集約されると思います。

    “The display advertising market today is characterized by an overabundance of inventory, often residing on parts of a web page that are never viewed by the user. This dilutes the impact of campaigns for advertisers and represents a drag on prices to publishers,” said Dr. Magid Abraham, President and CEO of comScore. “Conversely, some ads below the fold are quite visible and deserve more credit. comScore’s introduction of vCE signals an evolution in digital advertising that will bring greater transparency and accountability to the market. Ultimately, this type of third-party validation will help identify and appropriately price the proportion of online ad inventory that delivers value, improve buying and selling decisions, and instill more confidence and trust in the industry.”
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    "昨今のディスプレイ広告市場は、広告在庫が過剰であることが特徴であり、それはユーザーが決して見ないようなウェブページに多くの広告枠が貼られていることが原因です。これが広告キャンペーンのインパクトを希薄化し、同時に広告を掲載するパブリッシャーにとっても価格面について障害となっています。一方で、Below the fold(スクロールしないと見れない場所)にある広告がよく閲覧され、もっと評価されるべき場合もあります。弊社のvCE調査サービスは、デジタル広告を進化させ、一層の透明性と説明責任を市場にもたらすでしょう。vCEのような第三者による評価指標は、オンライン広告在庫の判別と適切な価格設定の一助となり、より大きな自信と信用を業界にもたらすことになるでしょう"

    氏はリリースの中でも、「Below the fold(スクロールしないと見れない場所)にある広告がよく閲覧され、もっと評価されるべき場合もあります。」と、必ずしもAbove the fold(ノンスクロールで見れる場所)でないとダメだとは言っておらず、バランスをとった発言をしています。

    しかしながら、微妙なニュアンスが伝わらないのは洋の東西を問わずなのか、どうしても「31%は配信されたが消費者が全く見なかった」という刺激的な部分が誇張され、AdAgeでは「あなたは誰も見ていない広告にお金を払うというムダ使いをしている」と扇情的なタイトルの記事が挙がったり、ClickZ では「メディアを買い付けているヤツらがサボっていたことが証明された」という釣り記事が軽く炎上したり、C3 Metrics のCEOが議論の尻馬に乗っかってきたり(でもいい記事です)と、議論百出というか、なかなか熱い盛り上がりを見せているようです。



    バナー広告が効くサイズを考える
    vCEのレポートの全容を知るには3月に発表される白書を待つしかないのですが、やはり気になるのは「Below the fold(スクロールしないと見れない場所)にある広告がよく閲覧され、もっと評価されるべき場合もあります。」という部分をどう掘り下げ、施策に繋げるかだと思います。

    広告は見てもらうために掲出しているので、CPMで広告を配信している場合には広告が見られない可能性についてある程度重く見積もる必要があるでしょう。Google のディスプレイネットワークであれば、AdWords の管理画面で、「ネットワークの除外設定」に、「Below the fold」を追加することで、Above the fold にのみ広告を配信できます。また、アドエクスチェンジを通じて配信される広告は基本ノンプレミアムなので、プレミアム枠と比較するとどうしてもBelow the fold の可能性は高まります。(だからこそRTBで毎回インプレションの価値を算出している意味があるのですが)

    CPCで配信している場合はどうか。クリックされなければ課金が発生しないことを考えると、(視認の率が100%に近づくに越したことはないとはいえ)よりクリックされてサイトにトラフィックをもたらす広告が良い、とシンプルに考えることもできます。一般的なオークション型のネットワークであればクリック率が上がることでCPCが下がる可能性があります(CPMでもそうですけど)。さらに広告が閲覧されたことによっていわゆる態度変容が起こり、その後の検索などの行動につながればなお良しです。

    では、クリックされる広告とはどんなものなのか。バナー広告のクリエイティブについてはアートとサイエンスの領域なので一般的な解は存在しませんが(もちろんiogousC-teamのようなクリエイティブオプティマイズのサービスで成功確率を大幅に上げることは可能です)、バナーサイズについては古典がありますので紹介したいと思います。




    こちらは、Google に買収される前のDoubleClick が2006年5月に出したレポートです。レポートは今読んでも面白いのですが、よく言及されるのはレポート内にあるバナーサイズごとのクリック率をグラフにした以下のデータです。




    これは、468×60(フルバナー/レギュラーバナー)サイズのCTRを100としたときに、他のサイズはどれくらいのCTRなのかを指数で表したグラフです。一番下の300×600はノンスクロール時の画面の半分を占有する昨今ではあまり見ないタイプなので無視すると、300×250のミディアムレクタングルや、336×280のラージレクタングル、160×600のワイドスカイスクレイパーのCTRが高いことが分かります。 一方、728×90(リーダーボード/ビッグバナー)は468×60よりもCTRは高いものの、CTRで見たときには他と比べて突出して高いパフォーマンスとは言えないことが分かります。





    せっかくなのでもう一つ。Marketing Sherpa が2008年に発表したデータです。こちらでは具体的にCTRが出ていますが、平均が0.21%(これでも高いですが)で、平均を上回るCTRなのは300×250(ミディアムレクタングル)と728×90(リーダーボード/ビッグバナー)だということです。

    もちろん、オンライン広告はブランディングのツールでもあるので、クリックが少ないことがすなわち広告が効いていないことにはならないよとMarketing Sherpa のリリースには書いてあります。


    これらの結果をどう捉えるべきか、そのヒントがGoogle AdSense のヘルプページにあります。

    (日本語のヘルプはこちらです。画像がもう少し具体的に色分けしてあります)


    AdSense のヘルプなので、Performance(収益性)という言葉が使われています。これはCTRとほぼイコールだと受け取って問題ないと思います。CTRが最も高い場所が濃いオレンジ色、最も低い場所が白と、グラデーションで表されていますので、スクロールされるかされないかギリギリの位置、もしくは記事のフッターに近い部分の色が濃いことが分かります。

    日本語のページには、以下のような記載があります。

    ユーザーが記事を読むページでは、記事の末尾の真下に配置した広告は効果が高い傾向にあります。記事を読み終えたユーザーが、次の動作を探して視線を記事の下へ自然に移動させるためです。的確にターゲットを絞った広告をその位置に配置することで、ユーザーを確実に広告へと導くことができます。

    記事下の広告のサイズは、記事が多いブログやニュースサイトだと336×280(ラージレクタングル)が多いと思います。これらはコンテンツから直帰するなどしてスクロールしないユーザーには視認されることはありませんが、記事を最後まで読んだユーザーにはかなり高い確率で視認されます。先ほど紹介したDoubleClick とMarketing Sherpa のデータがアドサーバーのリクエストを分母にしているのか、それともViewのみを計算しているのかによって結果の受け止め方が若干変わりますが、少なくともダイレクトレスポンスをバナーに求める場合、バナーサイズのファーストチョイスとしてはレクタングル(ミディアム/ラージ)となりそうです。

    では、その他のサイズは要らないのか、という話になりそうですが、そうではないと思います。160×600(ワイドスカイスクレイパー)のような縦に長い広告のCTRは平均かそれ以上、かつほとんどの場合ページの右カラムに設置されるのでスクロールするユーザーの視認性も比較的高く、Above the fold の率もレクタングルに比べて高いというオールマイティなバナーサイズと言えるでしょう。

    また、ビッグバナーのような横に長いサイズの場合、多くがページのヘッダー付近に設置されるため、Above the fold の率は他のバナーに比べて非常に高くなります。また、728×90のような大きなサイズの場合は、プレースメントに拠るでしょうが、平均より高いCTRになる可能性もあります。

    結局は、広告の目的によって効くバナーサイズというのは異なるから可能な限り種類を増やして運用で最適化しようぜ!という当たり前の話に落ち着いてしまうのですが、Above the fold ターゲットなのにレクタングルしか作っていないとか、リターゲティング広告や検索連動型広告とクリエイティブを連動していないのにビッグバナーのクリック単価が高いから止めてしまうなどといった類の悲しい機会損失が起こらないよう、ディスプレイ広告を配信する際にはメディアやターゲットのプランだけでなくバナーのサイズにも気をつけていきたいですね。



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