2013年3月14日木曜日

異業種出身だからこそ、気づくことがある − フリークアウト 時吉啓司氏 #State-of-AdOps Vol.2


「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

第2回は、国産DSPの先駆けであり、海外進出も果たすなど爆速でその成長スピードを高めているフリークアウト社でアカウント・マネジメントを担当されている 時吉啓司(ときよし けいじ)さんに、運用広告の現在をお伺いしました。


# インタビューは 2013年3月某日に行われました。


老舗メーカーから、スタートアップへ。


現在のお仕事内容と、どういった経緯で今の職種に就かれているのでしょうか?

現在はフリークアウトでダイレクトセールスの局長をしています。ダイレクトセールスは広告主様と直接お仕事をさせていただく部門でして、セールスと名はついていますが、プランニング、レポーティング、分析、運用など、いわゆるアカウント・マネジメント的なチームメンバーのトレーダーと協力しながら実行しています。分析から提案の部分に関しては特に力を入れていますね。

フリークアウトへは、約1年半前にCOOの佐藤に誘われて入りました。まだフリークアウトが発足したばかりの頃で、私は5人目の社員です。前職は老舗のアパレルメーカーに新卒で入社し、店舗管理等を担当していました。もともと学生時代からマーケティングには興味があり、企業のマーケティングがやりたくてメーカーに就職したのですが、まずは現場からということで6年ほど百貨店さん向けの店舗管理を経験しました。店舗管理は面白く非常に勉強になったのですが、ウェブマーケティングへの異動希望はずっと出していて、念願かなってウェブマーケティング部への異動の内示が出たという絶妙のタイミングで佐藤から声がかかり、悩んだ末に転職を決意しました。



広告運用そのものがR&Dの起点


フリークアウトの広告運用への取り組みの特徴についてお聞かせ下さい。

デザイナーも含めてですが、社員の約3分の1が広告運用に関わる部門に所属しています。フリークアウトのDSPの運用だけでなく、アドワーズ広告やYahoo!プロモーション広告などを請け負ったり、Google Analytics などのアクセス解析を行うこともあります。

姿勢としては、お客さまのコミュニケーション上の課題解決になることは何でもやろうという感じですね。そのお客さまに必要なソリューションを第一に提案できるようにしていきたいと考えています。DSPだけで解決できないものであればリスティング広告などの他の手法も提案しますし、どのような体制がいいかは企業によって様々なので、とにかくお客さまがやりやすい状況を作っていくことが最優先です。その結果として、運用部門に力を入れていると言ってもいいかもしれません。

私の部門であるダイレクトセールスは、お客さまに最も近く、率直なお声と多くのフィードバックを受けられる場所でもあります。新機能が出た際にはいち早く試して頂いたり、具体的な改善要望やご評価を直接お聞きできます。それによって、エンジニアにフィードバックしたり、発見できた運用ノウハウや必要な機能などを製品やサービスに活かすことができます。

ダイレクトセールスがお客さまと直接の取り組みをしていくことによって、製品力や運用力を上げていき、直接のクライアントだけでなく提供先の広告代理店様、その先にいる多くのお客さまへ価値をご提供することができます。こういった正のサイクルをつくる役割を担っていくのが、弊社の運用体制の特徴かもしれません。

我々にとっては、広告運用そのものがR&Dの起点だと言えますね。ここからスタートしたサービスメニューや機能はたくさんあります。



広告運用をしていく上で、課題や難しさを感じることはありますか?

運用型広告は、やろうと思えばどこまでも追求できます。時間帯別、クリエイティブ別、媒体別、それらをクロス集計したりなど、細かく見ていけばキリがありません。プランニングにしろレポーティングにしろ、粒度を細かくすればするほどカタマリごとの分母は減っていくので仮説の有意性が下がりますし、当然工数もかかります。仮説を持ちながら常にやっていますが、どういうバランスで設定するのか、常に悩んでいますね。

例えばですが、ファーストパーティデータを利用したリターゲティングを行うときに、そのセグメントを過去1カ月以内に3回以上の訪問と3回未満の訪問で分けるとします。そのセグメントごとにさらにリファラーでリンク元のメディアごとに分けたり、回遊率や直帰率ごとにセグメントするなどと考えていくと、とにかく山のように仮説が作れます。

セグメントを増やしすぎることによる技術的な弊害もあって、RTBだとビッドリクエストに対して規定の時間内にレスポンスしなければならないので、1アカウントあたりで参照できるセグメントの量にはどうしても限界があります。各セグメントにどのように優先順位をつけるのかは、期待される効果、そのためにかかる工数、技術的な仕様、すべてを理解していないとできません。

あとは、先ほどアカウント・マネジメントがR&Dの起点だと言いましたが、設計のバランスと同時に、その仮説や分析結果が横展開ができるポイントはどこかを常に考えるのも大事なポイントです。ものすごく細かいレベルで分析することができても、それが他のお客さまや代理店さんにもフィードバックできるような普遍性がなければ、細かい分析にかけたその時間価値は必ずしも高いとは言えません。ある程度普遍的な分析ポイントや最適化ポイントを見つけ出すのも、この仕事ならではの難しさを感じますね。もちろん、面白いポイントでもあるのですが。



データ分析していく中で、新たな気づきがあった、みたいな実例はありますか?

気づきというか、普段から思っていることなのですが、クリック以外の指標を積極的に打ち出せないかなと考えています。CTRばかり見ていくと、究極的には目立ちやすい/面白いクリエイティブのCTRが高くなりやすいので、どうしてもインパクト重視の視点になりがちです。面白いクリエイティブに反応したユーザーがその企業にとっていいお客さんになるとは限らないので、CTR以外の指標に目を向けるようにしていきたいですね。

例えばあるお客さまでは、Google Analytics のデータをマージして、コンバージョンタイプごとに滞留時間や回遊率などを分析してレポートを出したりしています。仮説のロジック別やオーディエンスデータ別に出したりなど、分析するのは大変ですが本来はいろいろあるはずなんですよね。試すたびに、新たな気づきが常にあるといっても過言ではありません。

運用といっても、ビッドに多く時間をかけているわけではなく、仮説立てや分析のための設計や、出てきた結果を分析しレポートに落とすまでの方がはるかに時間がかかります。設計や分析がしっかりしていないと運用は成り立ちませんので、分析で得られる気づきこそが運用の根幹だという気がします。



純粋に、おもしろいですよね。


時吉さんはDSPの業務を始められて1年半ですが、どのように知識や技術を身につけてこられたのでしょうか?

最初はそれこそ右も左も分からない状態だったので、必死にたくさんの本を読みました。一方で、本はたくさんあるので表面的な知識を得るのは比較的難しくないものの、大事なのは、あくまで基本を尊重した上で、旧来の考え方にとらわれないことだと思います。

私はもともとメーカーにいたので、広告主側の気持ちはある程度分かります。サービス提供側だけでなく、自分が以前にいたメーカーの立場に立ってみると、何でこのレポートが必要なんだろう?とか、どうしてこういう手順になるのかといった、本を読んだだけではピンとこなかったことが、体感として分かるようになる瞬間があります。

正直言って、これまでの広告業界やウェブの発展を考えていくと、欲張ってぜんぶ網羅しようとしても学ぶ範囲が多すぎて絶対に追いつけません。私はあとから入ってきた人間なので、これまで所属してきた場所での経験や、実際にフリークアウトで業務を行なっていく中で、「どうしてこうなっているんだろう?」「これはどうすればいいのか?」といった疑問や好奇心を持ったところから拡げていくようにしています。

それはこれまでこの業界を支えてきた方々の学びのプロセスとはもしかしたらずいぶんと違うのかもしれないですが、最低限の基礎は身につけた上で、自分なりに突破する方法を考えていきました。お客さまのことを考えて動けば、おのずと学ぶべきところが分かるというか、そこは別にアドテクノロジーがどうとか関係なく、シンプルに営業としての価値が問われていくのだと思います。

あとは、純粋におもしろいですよね。この分野って。
こんなにいろんなことができて、結果が見える仕事ってなかなかないですよ。普通は複数のデータをつなげて分析してって言われたら面倒くさがる方が多いと思いますが、私はそのデータのおかげで言えること、気づけることが増えるのでむしろ歓迎です。好きこそものの上手なれじゃないですけど、好きだったら覚えると思います。



運用型広告という分野が今後どういう発展を遂げると思いますか?もしくは、どうなってほしいと思いますか?

広告に限らずですが、データや実績を細かく丁寧に見ていく文化ができてくるといいなと思っています。例えば、レポートは結果しか出さない、結果しか見ないってケースは多いと思いますが、データって、本来は視点を変えればいろんな発見があって、いろんな軸で分析することによって仮説や施策はたくさん出てくるはずです。それは我々や広告代理店さんのようなサービス提供者だけで完結するものではなく、お客さま自身も踏み込んできて頂くことで変わっていくはずです。

分析とか設計とか、大変な部分は私たちがやるので、お互いに意見を出し合って一緒に成果を出していけるような、そういう発展の仕方がお互いにできればなと思っています。


そのような発展のためには、何が必要だと思いますか?

何か一つが足りないということではなく、いろいろあると思いますが、まず第一に我々のようなサービス提供側にもっと努力が必要だと思います。複雑な分野なので分かりやすく伝えていくことや、具体的な事例を出していくことなど、細やかな配慮をもっとしていくべきだと思っています。一足飛びには変わらないと思いますが、そういった努力の積み重ねで少しずつ変えていきたいなと。

あとは、矛盾するようですが、分かりやすく伝えていかなければいけない反面、複雑さを受け入れることも大事だと思います。マーケティング・チャネルは複雑化しているので、オンラインだけでなくオフラインやその他の要因を考慮して、因果関係を理解するように努めることです。これは我々だけでなくお客さまと一緒につくっていくムードだと思いますが、出てきた結果だけで判断せず、因果関係と仮説を検討しあえるような関係づくりが必要だと思います。

出てきた結果だけで判断するのは楽なので、どうしてもレポートの数値だけで判断してしまいがちなのですが、数字とか因果関係とかを検証するのを嫌がらずに、一緒に向き合っていきたいですね。



これだけは言っておきたい!みたいなことがあれば教えて下さい

この業界に、異業種の人がもっと入ってきたらいいと思っています。それこそ、メーカーの人が来たら、きっと面白いと感じるんじゃないかと思うんですよね。新しいサービスや仕組みが続々と生まれている分野なので、新鮮な考え方を持ち込んでくる新しい人がどんどん参入してきたらきっと面白いことになるんじゃないかと思います。

例えば、これは私がメーカー出身なのでそう考えてしまうんですが、OOHや雑誌などをディスプレイ広告とすると、検索連動型広告って店頭のPOPのようなものだと思っています。私がメーカーで店舗管理をしていた頃は、店頭のPOPではなく、外にバーンと看板を出すとか、百貨店のディスプレイに商品を使ってもらうといったことを一番重要視していましたが、ウェブの業界にくると、看板とPOPの比重が逆転している。POPはもちろん重要なんですが、これだけ違いがあるのも不思議だなって思うんです。

異業種出身だから気づけることは、いろいろあると思います。ちなみにフリークアウトは異業種からの転職がとても多い会社です。↓絶賛募集中なのでご応募お待ちしております(笑)!


フリークアウト 採用情報
http://fout.jp/recruit/

フリークアウト
http://fout.jp/



2013年3月12日火曜日

データがちゃんと読めれば、予測の精度が上がる − 朝日広告社 湯浅啓子氏 #State-of-AdOps Vol.1


「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

第1回は、アドテクノロジーの分野で近年急速に注目が高まっている総合広告代理店である朝日広告社のアカウントプランニング部で活躍されている湯浅啓子さんに、運用広告の現在をお伺いしました。


# インタビューは 2013年3月某日に行われました。



クライアントの課題を、ちゃんと解決したかった。


現在のお仕事内容と、どういった経緯で今の職種に就かれているのでしょうか?

現在は朝日広告社のIC局アカウントプランニング部で、プロモーションディレクターという、アカウント・プランニングとアカウント・マネジメントの両方を見るような仕事をしています。営業をフォワードだとすると、1.5列目なんて言い方も社内ではしていますね。リスティング広告、DSP、アドネットワーク、純広告、タイアップなど、デジタルに関わることはひととおり扱っています。

朝日広告社の前はネット専業の広告代理店にいて、リスティング広告に従事していました。リスティング広告の仕事をしながら時折ジレンマを感じていたのは、「それだけじゃクライアントの課題解決ができない」ということでした。売りものにこだわらずにお客さまの課題を解決できる環境を求めていたところ、ご縁があって朝日広告社に約1年前に転職してきました。

もともと検索連動型広告の運用からキャリアをスタートしているので、現在取り扱いの多いDSPなど運用型のディスプレイ広告にはなじみがあるというか、自分がこれまで培ってきたスキルを活かしてどこまで最適化や課題解決ができるのか、面白みを感じながら仕事をしています。



朝日広告社としての運用型広告への取り組みと、ご自身の役割をお聞かせ下さい。

一般的に総合代理店はウェブとマスの連携が苦手というイメージがあると思いますし、実際のところ、総合代理店にとってはウェブはやはりまだ異色なメディアなんだと思います。その点、朝日広告社はその連携が比較的うまくいっていると感じています。

具体的にどういう部分でそれを感じるかというと、例えば、アトリビューションを踏まえた提案をするとなったときに、弊社ではマス広告なども扱っているクリエイターにプランニングの段階で入ってもらったりします。キャンペーン全体のコミュニケーションを踏まえた上で、デジタルでのシナリオを設計していく流れをつくるためですね。これまで綿々と培ってきた広告キャンペーンの設計ノウハウと、ウェブのテクノロジーをうまく融合する努力をしていこうという姿勢が、単なる掛け声ではなく実際に現場に浸透してきていると思います。

マスとウェブの融合って、広告主企業様の方が課題として以前から先行していると思っています。企業のご担当者の方は、複雑化するチャネルと、社内外の調整で常にジレンマを感じていらっしゃいます。そのような状況に対して、広告会社の内部でまずはちゃんと連携することで、100%とは言えないまでも、抱えてらっしゃるジレンマに回答を出すことができる。やることがたくさんある大きな企業様であればあるほど、我々の提案に納得していただくことが多いです。

私、というか実際にアカウント・マネジメントを行う担当がやることは、提案の持っているストーリーを現実に落としこむための設計です。運用型広告はもちろん、純広告、サイト内分析も踏まえた設計をしています。特に運用型広告では提案でどんなに明快でわかりやすいプランだったとしても、裏側では細かい分析や入札が発生しているので、それが実現できるような詳細設計ですね。プランの全体を見る役割の人が必ずしもウェブに詳しいとは限らないので、ウェブが主体のキャンペーンであれば、なるべく全体を把握しながら進めるように努めています。



どれだけ媒体や仕組みを知っているか。


運用型広告の課題や難しさを感じることはありますか?

課題とは違うかもしれないですが、理想と現実のギャップを感じることはありますね。例えばですが、すごくキレイに作ろうとするプランってありますよね。初回で印象づけて、2回目3回目で少しずつ目に触れて、4回目くらいから購入促進を訴求して…といったような。でも現実にはそこまで到達するユーザーの母数が実はあまりなかったり、ご予算やキャンペーンの期間が合わなかったりということはよくあります。なので、予想と現実がしばしば噛み合わない。

一方で、面白いのもこの部分で、何回かやっていけばそのお客さまでの傾向が分かってきます。エンドユーザーの時間の流れだったり、経路だったり、どの媒体が効いているのかなどといった情報が、ちゃんとした設計のもとに運用していれば徐々に見えてくるんです。それを次回にフィードバックするとちゃんと結果が出る。

私はよく「データが読める/読めない」とか、「データの読みが甘い」といった表現を使うんですが、同じレポートでも、視点を切り替えることによってたくさんの情報を読み取ることができます。


どうやったら「データを読める」ようになるんでしょうか?

CTRやCVRが高い低いという結果を見て判断するというのは、きっと誰にでもできます。問題は、その結果を次のプランニングにどう活かすかということではないかと思います。例えば、媒体のクセや、ユーザーのこれまでの動き、プラットフォームの仕様など、自分の中にある引き出しの数がどれだけあるかで、次のプランの予測の精度が変わってきます。

すごくかんたんに言えば、現時点のリスティングの予算に対してCTRやコンバージョンの数値がいいからって、予算を倍にしても同じような結果になるかと言えば、余程予算を抑制していない限りそうはならないですよね。でも、リスティング広告の仕組みを知らないとそれは予測できません。同じように、DSPでの配信結果が良かったからといって、別のアドネットワークで似たようなチューニングができるかというと、それもやはりできないですよね。経験値といってしまったらそれまでですが、どれだけ媒体や仕組みを知っているかで、データを読むときの読み方は変わってくると思います。

細かい話ですが、例えばディスプレイの運用をしていて、GDN(Google Display Network)の結果が一番よかったとします。ではそれはなぜなのかを考えると、それは枠の質がよかったり、チューニングの幅があるからなんですよね。もちろん多くのDSPに最適化機能はありますけど、GDNに比べてブラックボックスな部分もあるので、こちら側は詳細設計をしている分、結果的にはマニュアルでできる部分や枠の情報がある程度分かっているからこそ、データも読めるし、次の手も打ちやすい。理想と現実のギャップを運用で埋めていく作業なので、大変ではあるんですが。

本当は、みんながある程度仕組みについての共通理解があった上でコミュニケーションがとれるといいですよね。私自身もまだまだですが、もっと良くなっていくと思いますし、良くなっていく余地があると信じています。



運用スキルや具体的な実績が問われてくる。


2013年は運用型広告にとってどのような年になると思いますか?

これまでのような運用型広告やアドテクノロジー全般への過剰な期待は一旦落ち着いて、現場の運用スキルや具体的な実績が一層問われてくると思います。いろんな事例が出てくるでしょうし、広告主様もよりシビアに実際はどうなのかという部分を見定めていらっしゃるのではないでしょうか。

最初のプランニングどおりに結果が出るのが理想ですが、普通は設計どおりにはいきません。最初の設計はもちろん大事なのですが、運用可能な設計になっていれば、あとはPDCAをいかに短く早く回せるかが大事で、そこの腰が重いと、どんないいツールがあったとしても、どんないいクリエイティブを作ったとしても、うまくいかないと思います。

そういったことは各社さんもちろん気付いていらっしゃるので、それができるかどうかも問われる年かもしれません。


そのような状況の中で、湯浅さんの目指す方向は?

朝日広告社はアドテクノロジー領域について強みを持っている総合代理店ですので、キャンペーン設計→チューニング→再プランニングの流れはもちろんのこと、新しい技術やメニューを貪欲に取り入れる姿勢があります。一方で、新しいものを追いかけ回すだけでは意味がないので、現在あるものを有効に使いこなすための努力と、新しいものを取り入れていくバランスを気をつけていきたいと思っていますし、そのバランス感覚がある会社だとも思っています。

私の上司はこの分野に非常に詳しく理解もあって、部内に対して情報提供も頻繁にしてくれるので、すごく仕事がしやすいです。上の理解があるということは、今すべきこと/やりたいことが目の前にあったときに、それを説明するための準備や労力が少なくて済むということですし、社内じゃなくてお客さまに向かうことができるので。

今後は、今の仕事から少しずつ領域を拡げて、広告に限らずマーケティングをしっかりやっていきたいです。例えばオフラインとウェブの融合、みたいな話がありますが、店舗とEコマースのデータがつながってないケースはまだまだ山ほどあって、この分野には多くの可能性があると思っていますし、総合代理店ならではの強みも出せるのではないかと。やったもん勝ちだと思っているので、チャレンジしていきたいと思っています。


朝日広告社 | Asahi Advertising Inc.
http://www.asakonet.co.jp/



2013年3月10日日曜日

State of AdOps:「広告運用の現在」


「運用型広告」の出現

電通『日本の広告費』2012年版から、新たに「運用型広告」という小分類が新設されました。ご存知のとおり、「運用型広告」は2012年に突然現れた新しい広告モデルではなく、以前からインターネット広告を牽引してきた検索連動型広告を中心に、近年急激に浸透し始めているRTBを通じたインプレッションの適時売買などが含まれています。

JAAA(一般社団法人 日本広告業協会)が2012年9月に発表した「インターネット広告における運用型広告取引ガイドライン」によれば、「運用型広告」は以下のように定義されています。

配信先の端末を問わず、ディスプレイ型(バナー、テキスト等)とリスティング型(検索キーワード連動型広告、コンテンツ連動型広告)ネット広告の出稿・配信・媒体掲載等において、各サービス事業者等が提供する管理画面を用いて「運用」を行う広告業務と商品のこととする。

ここでいう「運用」とは、あらかじめ設定した目標値を達成するために、①媒体やキーワード等の選定、②入札、③広告原稿の入稿、④リンク先、⑤広告配信等の初期設定と柔軟な変更を実施し必要なレポーティングをすることを言い、これは、出稿量および媒体費用、広告効果などの情報を取得し、評価指標と比較しながら各種設定要素を調整し、最適化を行うことで実現させることである。

リンク:http://www.jaaa.ne.jp/2012/09/1619/


上記で「配信先の端末を問わず」とあるように、プラットフォーマーである Google や Yahoo! においては、ターゲティングやデバイスなど、これまでの分類基準を跨いだキャンペーン設計が以前から1つのアカウントで可能になっていました。AdWords が AdSense枠に広告を配信するコンテンツターゲット(今のディスプレイネットワークの前身)を始めたのが2004年、フィーチャーフォン向けのモバイル広告を始めたのは2006年です。現実的に媒体費の総額だけでデバイスやターゲットごとの小分類を分ける正確性も妥当性も薄くなっていることが、今回の「運用型広告」新設の背景としてあるのだと考えられます。

「運用型広告」の中心は、これまでの分類言えばリスティング広告です。IABが毎四半期に発表している「Internet Advertising Revenue Report 」では「Search」と定義されているこの手法は、2012年にはインターネット広告におけるシェアが全体の50%近くに達するほど成長し、名実ともにインターネット広告の中心的存在として君臨するまでになっています。



IAB Internet Advertising Revenue Report
http://www.iab.net/insights_research/industry_data_and_landscape/adrevenuereport


また、近年成長が著しいRTBを通じた広告売買も、「運用型広告」を牽引しています。eMarketer が2012年11月に発表したリリースによると、RTB は2015年にはディスプレイ広告全体の25%を占め、規模としては57億8200万ドルにまで達するとのこと。

RTBが2013年の今から3年後にはインターネット広告の25%以上を占め、残りの50%が検索連動型だと考えると、全体の75%が運用型広告となります。広告に限らず、マーケティング全般で運用が発生する分野は大なり小なり広がっていくものだと考えると、運用負荷の増加に比例して、運用者/分析者の実力によるキャンペーンの結果の振れ幅もますます大きくなっていくでしょう。


Real-Time Bidding to Take Ever-Bigger Slice of Display Pie - eMarketer
http://www.emarketer.com/Article.aspx?R=1009484



運用型広告を支える人々

2000年代初頭に検索連動型広告が登場してからは、望むべきアウトプットや運用方針から遡及的にキャンペーンを設計し、変更と改善を早いサイクルで繰り返していく、いわゆる「最適化(オプティマイゼーション)」が運用型広告の提案のスタンダードになっていきました。それと同時に、デジタル広告の技術進化や、検索エンジンをはじめとして広告のエコシステムを形成するプレイヤーが増えていくにしたがって、最適化のサイクルは早まると同時に複雑さは急激に増していくことになり、市場は自然と自動化への舵を切ることになりました。

一方で、最適化と自動化はイコールでは結ばれません。自動化は、誤解をおそれずに言えば、あくまで最適化のための細部にわたる設計や調整を行なったあとの取引の自動化に過ぎません。取引における事務的な仕事はどんどん自動化されていく傍らで、キャンペーンの全体設計や詳細設計、分析の結果を施策に落とし込める専門人材の需要は高まっています。今後ますます増加していく運用型広告において、キャンペーンの成否を分けるのは機械ではなく、それを使う人だと言えるでしょう。

以前「リターゲティング広告」再考広告オペレーションは競争力の源泉である というポストでも触れましたが、自動化が進めば進むほど「運用や設計ができる人材の採用」と「そういった人材を育てる教育」という、「人」への投資に各プレイヤーの軸がシフトしてくるという逆説性は以前から指摘されています。



広告運用の現在(State of AdOps)

運用型広告は、広告のエコシステムを形成するそれぞれのプレイヤーの中で、キャンペーンを設計し、データを分析し、改善を繰り返していく現場の人々の努力と智慧によって、以前からずっと支えられています。決して、パワーポイントに刻まれる美辞麗句や、メディアが喧伝する夢物語ではありません。


運用型広告においての業務そのものの強化は、業務を支える人材の厚みと、自動化とナレッジをうまく融合させるBPRの強化だと言えます。運用の強化は、PDCAサイクルの迅速化、ナレッジの蓄積をもたらし、広告を出稿する企業だけでなく、広告代理店やシステムベンダー、プラットフォーマー、実際に広告に接触するユーザーといったすべてのステークホルダーにとって共通の恩恵となり得るのではないでしょうか。

これから、不定期ですが「State of AdOps」という、実際の広告運用(AdOps)の現場のキープレイヤーの方々に焦点を当てていくインタビューシリーズをはじめていきたいと考えています。広告運用の最前線を担っている方々の努力と、そういった方々があまねく遍在していく市場の厚みこそが、これからの広告市場を左右すると信じています。現場のキープレイヤーたちが肌で感じていることをご自身の言葉で語って頂くことで、微力ながら運用型広告の現在の輪郭を少しでも明らかにできればと思います。どうぞご期待ください。


→第1回は、2013年3月中旬に公開予定です。



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