広告主が考える、広告代理店とのパートナーシップ − カイザークラフト 下川亜希子氏・窪田有希子氏 #State-of-AdOps Vol.7


「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

※過去の記事はこちらから。

第7回は、ドイツに本社を持つ業務用品サイトを運営するカイザークラフト(Kaiser Kraft K.K.)で、オンラインマーケティング事業を推進されている下川亜希子さん・窪田有希子さんのお二人にインタビューをさせて頂きました。

カイザークラフト社は運用型広告(特にリスティング広告)の運用を新宿にある広告代理店のプレシジョンマーケティング社に委託しています。今回のインタビューでは広告運用における代理店との関係性をお聞きするため、プレシジョンマーケティング社の坂萩馨さん、吉成建人さんにもご協力をお願いし、広告主と広告代理店のパートナーシップを中心に、奇譚のないお話を伺いました。


# インタビューは 2013年9月某日に行われました。



いつかは自社メディアのマーケティングを経験したかった。


現在のお仕事に就かれるまでの経緯と、具体的な業務内容をお聞かせ下さい。

下川:現在はカイザークラフトのオンラインマーケティング部でマネージャーをしています。カイザークラフトはドイツで1945年に設立された業務用品のB2B通販企業です。世界30カ国で展開し、日本法人は2002年に設立されました。もともとはカタログ通販に非常に強みを持っている企業でして、近年、新たな市場の開拓としてネット通販をはじめています。

私自身はカイザークラフトに入社する以前まで、広告代理店でECサイトのコンサルティング、オンライン/オフラインを含めたメディアプランニング、リスティング広告をはじめとした運用型広告を経験してきました。代理店として広告主のサイト運営に携わるなかで、外部からのコンサルティングだけではなく、いつかは自分自身が直接ウェブサイトのマーケティングや運営をしてみたいと思っていたところ、縁あって、2011年から日本法人でのオンライン事業の立ち上げに参画することになりました。

数あるEC事業の中でカイザークラフトを選んだ理由ですが、単純に広告を出すだけといった役割ではなく、自社メディアのマーケティングに責任を負えるポジションだったことと、当時のボスから「どうしても日本で成功したい」という熱意が感じられたからですね。本社のあるドイツでの知名度と日本での知名度には大きな差がありますし、外資ということもあって苦労は多いですが、その分やりがいを持って仕事ができています。


窪田:カイザークラフトの窪田です。下川と同じくオンラインマーケティング部に所属しており、カイザークラフトのオンラインのマーケティング全般を担当しています。

私も以前は広告代理店でECサイトのコンサルティングをしていました。もう少し深くECサイトの運営に携わりたいと考えていたところ、ご縁があって入社しました。カイザークラフトでは、単なる広告の出稿だけでなく、ECの運営そのものに関わっていくことが求められるので、刺激を感じながら仕事ができています。



カタログから運用型広告へのシフト


オンライン事業の現状はいかがでしょうか?

下川:もともとドイツではカタログ通販で伸ばしてきた会社なので、オンライン事業の立ち上げの際にもどうしても成功体験のあるカタログ通販の延長のようなウェブサイトになってしまっていて、ECサイトとしての使いやすさを追求できておらず、運営という意味では少々苦戦しています。

一方で、日本でオンライン事業ができてから3年目になりますが、過去2年でオンライン経由の売上は数倍増加することができており、日本はドイツと違ってオンライン中心の戦略にシフトすることができる環境が整ってきました。来年2014年春にはウェブサイトの前面リニューアルが決定しています。

以前は、社内から「ネットでB2Bの商材が売れるとは思わない」と言われたこともありました。実際、ドイツではオンラインの売上はカタログの2−3割程度なので、その成功モデルを日本でも適用しようと考えたのだと思います。それでも、地道に本社を説得し、設定したKPIを繰り返し達成することで、少しずつ本社の認識も変わってきました。代理店の方々をはじめとして、外部からも多くのご支援を頂いているので、まだまだこれからではありますが、風が吹いてきたと感じます。リニューアルのある2014年は正念場ですね。


オンライン事業に注力される中で、運用型広告へはどのように取り組んでいらっしゃいますか?

下川:現在はカタログ通販からオンラインへのシフトチェンジを行なっている最中で、カタログの部数を減らしながら、運用型広告を強化しているフェーズです。内訳としては、大きいのがリスティング広告、次いでDSP、CriteoやDynamic Remarketing などの動的リターゲティングなどになります。

運用型広告は、知名度や企業規模にかかわらず、しっかりとした設計と運用を行えばターゲットとしているお客さまに高い精度でリーチできますので、集客のメインチャネルになります。また、カタログですと同じものを送りつけて終わりですが、運用型広告ではお客さまの関心度に応じてクリエイティブやチャネルを出し分けることができますので、お客さまごとのプロモーションが実際にできるのが強いと思っています。

窪田:カタログの送付数はピーク時の数分の一にまで減りました。オンラインに実績が出てきたことで、カタログを撒くよりネット広告の方がROIがいいことが社内的にも認知されてくるようになりました。


ネット広告を強化される中で、運用はどうされていますか?

下川:私の入社以前からオンラインについては広告代理店さんにお願いしていました。私の入社後も、サイトのオンラインマーケティング全般に関わる関係上、広告だけにすべての時間を費やすわけにはいかないので、インハウス運用ではなく代理店さんとの協働を選択しました。

以前は別の代理店さんと仕事をしていましたが、2013年からはここにいるプレシジョンマーケティングさんと一緒にお仕事をしています。



営業と運用の温度差をなくす経営を目指して


では、プレシジョンマーケティングさんからもお話を伺えればと思います。

坂萩:株式会社プレシジョンマーケティング取締役の坂萩です。2013年よりカイザークラフトさんと一緒にお仕事をさせて頂いています。自己紹介をしますと、私自身は2007年の創業時からプレシジョンに参画していまして、当時はアルバイトでの入社でした。そこから正社員に登用してもらい、現在に至ります。プレシジョンマーケティングで働く前までは、アパレル会社での販売員やASPでマーケティング担当をしていました。

プレシジョンマーケティングは営業した担当者がそのまま担当者として運用やコンサルティングも行う、という前提で経営しています。営業が強すぎると運用が疎かになって結果が出せませんし、運用だけでは事業はスケールしないと考えているからです。経営陣がみな広告代理店出身なので、各々がそれまでに経験した組織運営での弱点を克服する会社を作りたいと思って始めました。最終的には、集客から分析、LTVの最大化のお手伝いを一人のコンサルができるようにするというのが目標です。


吉成:プレシジョンマーケティングの吉成です。カイザークラフトさんとのお取り組みでは、主にサイト周りの改善や分析を担当しています。例えば、オーガニックや広告経由でのユーザーの動きを分析して改善のフィードバックをする、などですね。

前職では制作会社に勤めていましたので、制作サイドと事業者サイド、両方の視点から提案するように心がけています。単純にCPAが上がった下がったではなく、エンドユーザーの視点を持って分析するようにしています。



知識だけではない、運用者ならではの提案


カイザークラフトさんとプレシジョンマーケティングさんの協働のきっかけは?

下川:端的に言いますとコンペの結果です。先ほど、以前は別の広告代理店にお願いしていたと言いましたが、残念ながら結果が出ているとは言いがたい状況でした。結果が出なかったのは弊社にももちろん原因はあるのですが、例えば「コンバージョンが出ないのはサイトが悪い」と言われても、こちらはそのことについては痛いほど分かっているので、それを前提としてどうすればいいのか、アクションを共有できるような関係性ではありませんでした。

その他にも、私も以前は広告代理店にいたので「この設計はマズくないかな?」といった疑問があったり、当時の代理店さんからプラットフォームの最新情報を伝えてもらえなかったり(あるいは知らなかったり)というところで問題意識がありました。他がどうしているのか、本当にこのままでいいのか、第三者機関のアドバイスがほしかったという事情がありました。そこでコンペに踏み切ったわけです。

外資なのでパートナーは英語ができることが望ましいとか、本社の意思決定の問題など、コンペを実施する上でもいろいろな試行錯誤があったのですが、私としては「行動を起こせばもっとよくなるのに、何もしないという選択はできない」という思いで何とか実施にこぎつけました。(オフィスが海浜幕張なので)ダメだったら京葉線に飛び込むくらいの覚悟でやらないと(笑)、会社のためにも自分のためにもならない、そういう思いからコンペを実施しました。結果として現在のプレシジョンさんとご縁ができたかたちです。


プレシジョンさん側で、提案のときに気をつけたポイントなどはありますか?

吉成:事前に頂いたオリエンで、広告側の問題はある程度把握できていました。そこで、現在の広告でのダメなところを指摘するだけではなくて、広告経由でウェブサイトに入ってからの状況を重要視して、広告だけではなく、サイト側の原因も併せて分析していきました。

コンペにあたってはかなり詳細まで開示していただいたので、広告の実績を見ながら、サイト側の原因も同時に探っていきました。例えば、「台車」という訴求で呼び込んでいる広告のCVRがこんなに低いのに、そこでタイトルと説明文を変更しても仕方がありません。トラフィックの質を上げることは大前提で、そこにプラスして、ウェブサイト側でもこういったことをすべきではないかという提案です。

坂萩:誤解を恐れずに言えば、拝見して、改善できる自信がありました。オリエンでお伝え頂いたお悩みは共感できるものでしたし、それに応えるかたちで我々が出した提案が下川さんの問題意識と一致したことが大きかったと思います。


なるほど。カイザークラフトさんとしては、どういったところが決め手だったのでしょうか。

下川:決め手は、知識だけではない運用者ならではの提案だったからです。運用型広告はいくら語れても実際にしっかりとした設計や運用ができなければ机上の空論ですので、プレシジョンマーケティングさんはその運用がしっかりできると判断しました。

本社は英語ができるかどうかも重要視していましたが、英語でのコミュニケーションに問題がなく、英文でレポート作成のご支援をいただけたとしても、それが広告運用の成果につながらないのであれば本末転倒ですので、内容で判断しました。実際にこの方たちなら一緒にやれそうだと思ったところが大きいです。

坂萩:それは我々も同じです。僭越ですが「この人のために頑張ろう」と思えるかどうかは大事だと思っています。下請け業者ではなく、パートナーとして接して下さるのでいい緊張感と責任感を持って仕事をさせて頂いています。



社内・社外問わず、チームとして動けるかどうか。


広告主と広告代理店のパートナーシップについてご意見をお聞かせ下さい。

下川:以前私が広告代理店にいたときは、一部のお客さまではありますが、ほとんど情報がない状態で代理店に丸投げする企業さんがいらっしゃいました。しかもそれが偉い人だったりすると、なかなかその状況を打破できないというか、物申せない雰囲気があり辛い思いをしたことがあります。

現在、広告代理店さんとお付き合いする広告主という立場になって、同じことをしてはいけない、同じことをすると結果的に自分に返ってくると思っています。広告主だから、お金を出しているから偉いとふんぞり返るのではなく、パートナーとして一緒に働いてくれる企業のみなさんが働きやすいように、そして何より結果が出せるように、自分の役割を果たすべきだと思っています。

企業のマーケティング担当者の多くは広告以外の仕事がたくさんあるケースが多いと思います。他に仕事が山積みになっている状況では、自分もある程度内容を理解しながら、外部からご支援いただくのが良いバランスだというのが個人的な意見です。そういった関係性を構築できないパートナーさんとは一緒に仕事ができないですし、何かあったらすぐ言ってもらえる環境をつくるのも私の大事な仕事だと思っています。社内外かかわらずチームとして動ける事が大事ですね。

坂萩:先ほどと同じで、「この人のために頑張ろう」と思える関係性があるかどうかが大事だと思います。あとは、エンドユーザーのために良い広告を出すことができるかどうかが大事だと思います。エンドユーザーの視点を見失わなければ、それは効果として広告主企業へお返しできると思います。選び選ばれじゃないですが、いい商品を世に出すお手伝いをしたいですし、カイザークラフトさんとならそれができると思います。


最後に、今後の展望についてお聞かせ下さい。

下川:2014年の春にサイトのリニューアルが確定しているので、まずはそこに全力を注ぎたいと思います。全面リニューアルはオンラインマーケティング部の第二フェーズの幕開けだと思っています。まだまだカタログ文化の強い会社の中で、日本から本社へ影響を与えることができるまたとないチャンスだと思っています。日本はカイザークラフトのオンライン事業を開拓した国だという認識を全社に与えたい、そう思っています。

リニューアルの後であればもっと積極的なマーケティングができると思いますし、プレシジョンさんや他のパートナーさんとともに、運用型広告をより積極的に活用し、拡大していきたいと思っています。

窪田:今あるサイトは私が入ってきたときには既にあったものですが、リニューアル後は自分たちのサイトなので、何としてでも結果を出したいと思います。

坂萩:今後は今まで以上に分析と改善のフィードバックを強化したいと思っています。活用するメディアも増えていく中で、媒体社やプラットフォーマーとの取り組みの強化やアトリビューション分析の実施、リピートオーダーまで含めたLTVをしっかりと見ていきたいと思っています。

吉成:坂萩と同じですが、加えるなら来年のリニューアルはこのプロジェクトで非常に大事なポイントなので、特にサイト周りは惜しまず協力できればと思います。


本日は貴重なお話、ありがとうございました!



カイザークラフト株式会社(Kaiser Kraft K.K.)
http://www.kaiserkraft.jp


株式会社プレシジョンマーケティング(Precision Marketing, Inc.)
http://precimarke.jp

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広告主が考える、広告代理店とのパートナーシップ − カイザークラフト 下川亜希子氏・窪田有希子氏 #State-of-AdOps Vol.7
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