2013年12月31日火曜日

アドワーズと私


アドワーズとの出会い

初めて Google AdWords(以下:アドワーズ)の存在を知ったのは2002年の秋だった。

その頃、僕は勘定系のプログラムばっかり組んでいるうだつの上がらない24歳のシステムエンジニアで、たまたま顧客企業のエンドユーザーが使う画面を設計したことがきっかけで HTML や CSS を覚えたことで、漠然と華やかな気がすると勘違いしてウェブの仕事に移りたいと考えていた時期だった。

当時は「ウェブといえば制作」くらいしか頭になかったので、とりあえずウェブデザインの雑誌をいくつか定期購読しては特集されている内容を週末に片っ端からマネするということを続けていた。そんな中、たまたま目にした「Web Creators」の2002年12月号の特集記事は、それまでの制作テクニック的なものとは違って、ウェブサイトをつくった後のアクセスアップについての特集が組まれており、当時 Google Japan の営業本部長だった佐藤さん(現ATARA会長)が見開きでドーンと写真入りで紹介されていた。まだ渋谷のセルリアンタワーの狭い一角を借りていた頃で、社員も十数名だった頃のはずだ。



その翌年に直接佐藤さんにお会いしてから現在に至るまで10年以上にわたり目を掛けて頂くことになるのだが、当時はそんなことが想像できるはずもなく、記事を見た最初の印象は「これがビジネスになるのか〜へぇ〜」というものだった。

記事を見た翌年の2003年3月、あまりのセンスのなさにエンジニアを続けることは諦めて、小さなネットベンチャーというかネット専業広告代理店に転職。そこで数ヶ月前に記事で読んだアドワーズに関わるようになる。

当時はまだネットバブル崩壊の残滓が色濃く残っていた時期で、「ベンチャー」という言葉に対してやや鼻白む風潮があったのだが、SI の業界構造とシステム開発の辛さに嫌気が差していた僕はとにかくインタラクションが起きフィードバックのサイクルが早いウェブという分野に憧れていて、転職する企業も SEM に絞っていたわけではなく「そういえば記事で検索エンジン最適化とかあったな」「ウェブ系の企業はみんなベンチャーみたいなもんだ」程度の認識で、とにかくネットだベンチャーだという感じで転職したのだった。そこでアドワーズに出会い、人生が回りはじめるのだから今思えばラッキー以外の何物でもないと思う。

転職した直後は SEO を顧客企業に提案する仕事をメインにしていたものの、他の社員のヘルプで Overture の DTC(DirectTraffic Center)と Google のアドワーズを触るようになって、徐々にその魅力に取り憑かれるようになった。当時はオーガニックの検索結果の刷新が月1回という牧歌的な時代で、僕がウェブの仕事に求めたフィードバックの早さはそこにはなく、むしろ取ったアクションに対して説明責任がなかなか果たせないことに失望に近い感情を抱いていた頃だったので、設定したすぐ後には掲載が始まり、3時間もすれば実際の数字として管理画面に反映されるというリスティング広告のフィードバックの早さに、それまで求めていたウェブらしいスピードと明快さを感じたのだった。


ユーザーの支持

当時は今より圧倒的に Overture の方が取り扱い高が多い時代だったものの、調べれば調べるほど、使えば使うほどアドワーズの思想や設計の方が優れているように僕には思えた。

Overture の担当営業は毎週の数字のヨミをただ詰めてくるだけだったが、Google の担当営業(この方は後の先輩で、恩人の一人)は、会うたびに新しい機能や目指している世界観を語ってくれた。アドワーズの数字にはほとんど触れず「ユーザーの支持が大事です」と繰り返されていたのが印象に残っている。2週間に一度のミーティングはいつも楽しみだった。

僕自身がアドワーズの設計が優れていると思っていたのはこの「ユーザーの支持」という部分だった。当時、 Overture は上限CPC(クリック単価)だけでランキングが決まる仕組みで、管理画面の DTC は自分が入札しているキーワードの他の広告主の入札単価が見れる仕組みになっていたので、運用のかなりの部分を入札競争が占めていた時代だった。そんな中で「ユーザーの支持が大事」という言葉はとても新鮮に聞こえた。

実際、ユーザーの支持はアドワーズの仕組みに組み込まれていて、広告掲載可否、順位および課金は「広告ランク」というもので決まっていた。(今でもそう)

そして、広告ランクは以下のような式で成り立っていた。



「広告が自分が求めていた情報だと思えば人はクリックする。だからクリック率はユーザーの支持の証明」という理路はとても分かりやすいし合理的に思える。実際にこの説明を聞いた時には「そうだよなー」と思ったのを記憶している。

ただ、このユーザーの支持があったとしても、上位の広告の CPC が低いと儲からないんじゃないかなあと思いつつこの式のメモを取っていた時に、「ああ、そうか」と気付いた瞬間があった。夕方のオフィスで一人稲妻に打たれたように呆然とした。

その時のメモは、今でも若い人に説明する時にたまに使っている以下の式だ。




広告ランクは因数分解するとインプレッション単価になる。つまり、アドワーズは表示する広告としての収益性が高い順にランキングしていくということだった。ユーザーの支持=クリック率を順位の決定式に組み込むことで、広告を掲載する検索エンジン自身の収益が最大化する仕組みになるのだ。

このことは今ではアドワーズに関わる人なら誰でも知っていることで、常識である。でも、2003年の時点では常識ではなかったと思う。僕は初めてこのことに気付いた時「天才っているんだな」と思ったことを覚えている。ユーザーの支持と収益性を無理なく両立させるなんて、なんて美しいんだと。その時に走った衝撃が10年以上経った今でも似たような仕事を続けている原点になっている。


フェアなモデル

一方で、反論もあった。式の構成要素が上限CPCとクリック率だけなので、仮にユーザーの支持が得られなくてもお金さえたくさん払えれば上位表示が可能ではないかというものだ。これにもアドワーズは順位の仕組みと課金の仕組みを分けることで回答を提示していた。





計算の分母が自分のクリック率で、分子はライバル企業の広告ランク(上限CPC×クリック率)なので、クリック率同士で約分できることになる。単純な算数だが、分母である自分のクリック率が高ければ高いほど、割り算の商である CPC は低くなる。逆に自分のクリック率が低ければ CPC は高くなるということだ。

クリック率が低い、つまりユーザーの支持が低い広告はそもそも相当上限CPC を積まないと広告が表示されないか、クリックにかかるコストが極端に高くなって広告の費用対効果が見合わなくなるため、必然的に市場から退場するかもしくは広告の品質を上げるためキーワードや広告の見直しをせざるをえなくなる。ユーザーの支持が高い広告であればあるほど、廉価に集客できるモデルになっており、かつ出稿側の自浄作用が働くのである。僕はこれを知った時、何てスマートでフェアなモデルなんだと、鳥肌が立ったのを憶えている。
(ちなみに、広告の掲載順位は広告ランクが高い順に並んでいるので、割り算の商が自分の設定した上限CPCを超えることはない)

この2つの式を知ってから、僕の仕事へのモチベーションは大幅にアップした。自分の仕事にはきっと意味があると感じることができるようになり、Google の社員でも何でもないのに、このフェアなプラットフォームはもっと世の中に広まるべきだと勝手に思うようになった。結局、最初に稲妻が走ってから3年半後に巡り巡って Google の社員になることができ、それからさらに5年後に Google を辞して今の仕事に就いて2年半が過ぎたのだが、この時から今まで、このフェアなプラットフォームがもっと世の中に広まるべきだという考えはほとんど変わっていない。


品質、予測の精度、ディスプレイネットワーク

話は少し戻るが、2003年にパブリッシャー向けの広告ネットワークとして AdSense(以下アドセンス) が始まって、検索クエリだけでなくコンテンツにもマッチングさせることが可能になった。そのページに記載されている内容(コンテクスト)と、入札された広告をマッチングさせる「コンテンツターゲット」である。Google が発展させてきたウェブサイトのインデックスの仕組みを広告にも応用させたものだ。

最初はテキスト広告だけだったが、後にバナー広告、動画広告、ガジェット広告などのフォーマットの充実が図られ、プレースメントターゲットやオーディエンスターゲットなどのターゲティングメソッドの追加につながっていく。

広告ランクの計算式もクリック率から広告の品質に変わり、単純なクリック率だけでなく、広告との関連性、リンク先のページの中身や過去のアカウントの履歴、そのクエリでのこれまでの世の中実績などを考慮するようになった。考えてみれば当たり前で、「ユーザーの支持」が収益の最大化とエコシステムのフェアネスを担保していると考えれば、広告品質とは、その指標自体をブラックボックス化したかったのではなく、予測の精度を上げるために変数を増やしたと理解することができる(そして、それを人間が理解できるように10段階にしたのが品質スコアだ)。

クリック率はインプレッションが出た結果なので、その瞬間のクリック率を算出することはできないわけだから、クリックされる可能性としての予測クリック率(pCTR)の精度を上げるためにあらゆるシグナルは使われている。

※この辺は以前に書いた記事もご参照下さい
http://www.admarketech.com/2013/08/adwords-quality-score.html


ちなみに、GDN(グーグル ディスプレイ ネットワーク)は検索よりも考慮しなければならない変数が多い。検索の広告品質は Google プロパティ内での結果に限られるが、ディスプレイ広告では掲載されるサイトやページが無数にあり、広告枠や入札に参加する広告フォーマット、ターゲティングメソッドなど、考慮しなければならない要素が検索とは比べものにならないほど存在するからだ。それらの変数を考慮して瞬時に計算し広告を配信することは一朝一夕にはできない。ディスプレイ広告の進化として RTB が語られるようになって数年が経っているが、Google は自社の構築したネットワークでの RTB に既に10年の歴史を持っている。

ディスプレイのカオスマップを読み解くのはなかなか一苦労だという人も多いと思うが、アドワーズとアドセンスの関係を理解していると、カオスマップ内の各構成要素のほとんどを Google のプラットフォームが持つ各機能の直喩として表現することができる。リスティング広告に長けている人が DSP の運用にもすぐにキャッチアップできると時折言われるのは、このことに無関係ではないと思う。





まとめのようなもの

2006年に入った Google は世界を変えたいと思う人たちの集まりだったが、僕自身はそんなことを口に出すのもおこがましい単なる一小市民だったから、Google に入った当初は勢いで入っちゃったものの一体何ができるのかと途方に暮れた。

そんな時、Google に入ってから上司(の上司)になった佐藤さんが「一人ひとりが Google のエバンジェリストだから」と言って下さり、僕自身は世界を変えていける当事者でもなんでもないけど、少なくともアドワーズで僕自身の世界は変わったことは確かであるわけだから、変わったよと他の人にも伝えることはできるんじゃないかと思った。そして、アドワーズの営業とは、「変わったよ」だけじゃなくて、「変わったからこうした方がいいよ」と伝える仕事だと理解してからは、スムーズに自分の役割を理解できるようになった。

Google を卒業してから3年目になるが、立場は変わっても、役割は変わっていないと思っている。Google が変化の重要な旗振り役であることに変わりはないが、変化は Google 以外でもあらゆるところで同時多発的に、速度を増しながら起き続けているので、「変わった」と発信し続けられるように、「こうした方がいい」と伝えられる何かを持ち続けられるように、変化している個人や企業を応援できるように、自分自身が変化し続けていかなければならないと思っている。



2013年12月17日火曜日

一人だからこそ、自分で考えなければ進めない − 株式会社LIG 小林享平氏 #State-of-AdOps Vol.9


「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

※過去の記事はこちらから。

第9回は、『リスティング広告担当者がチェックしている運用に役立つサイト10選』 という記事でadmarketechをご紹介頂いたことがきっかけになり、株式会社LIG(リグ)でリスティング広告を担当していらっしゃる小林享平(きょーへい)さんにインタビューさせていただくことになりました。


ウェブ制作会社でありながら自社サイトのメディア化に成功され、エッジの効いた情報発信をし続けているLIG。ウェブサイトをつくる制作会社の中で、集客を担うリスティング広告を担当することの醍醐味や、LIGのリスティング広告が有名になった「LIGLIS」の裏側など、忌憚のないお話をお聞きしました。


# インタビューは 2013年12月某日に行われました。



LIGLISが想定外にバズりました(笑)


きょーへいさんが現在のお仕事に就かれるまでの経緯と、具体的な業務内容を教えて下さい。

LIGの小林享平(きょーへい)と申します。LIGには2012年の新卒で入社しています。大学4年生のころは普通に就職活動をしていたのですがなかなかうまくいかなくて、卒業後に人材紹介会社の第二新卒インターンのプログラムに参加して、そこでLIGを紹介してもらったのが最初のきっかけです。

当時のLIGは社員が7−8人で今よりだいぶこじんまりとした会社でした。インターンをはじめてから半年後に正社員に登用してもらったのですが、ちょうどその頃に「リスティング手伝ってくれない?」と当時リスティング担当だったジェイに声を掛けられてリスティングを手伝うようになりました。その後、ジェイが転職することになり、そのまま私が引き継いで今に至ります。



リスティングを手伝うようになったのはLIGLISをリリースした頃ですか?

リリースの数ヶ月前から手伝っていました。LIGLISを発表する前まではそんなにたくさんお仕事があったわけではなかったので、ジェイがディレクションも運用もほぼ一人で回していました。



ただ、LIGLISがバズってしまって(笑)、非常にたくさんのお問い合わせをいただくようになりました。ジェイ一人では回らないので、この時期から私も一つのアカウントを担当する本格的な運用を手伝うようになりました。とは言っても二人だけだったので、当時はせっかくお問い合わせ頂いてもお断りするケースが多かったのが申し訳ないと思っています。

ジェイから業務を引き継いでからは基本的に私が一人で担当しています。



誰に向けた広告なのかを意識しています。


リスティング広告は最初どのように勉強されましたか?

どんな仕事でも体系的な部分と実務的な部分とがあると思いますが、体系的な部分はリスティング広告がどういうもので、仕組みやお金の流れなど、基本的なところをOJTを通じて教わりました。

OJT以外で一番助かったのは書籍です。振り返ってみると、初心者にとっては細かいテクニックよりまず全体を網羅した情報が役に立つのではないかと思います。書籍は必要な情報がパッケージになっているので、リスティング関連の書籍を何冊か読むことからはじめました。

いくつか読んだ中でも、SEM-LABOの阿部さんが書かれた本『リスティング広告 成功の法則』は特にお世話になりましたね。(注:現在は最新版『新版 リスティング広告 成功の法則 』が出版されています)

実務面では、とにかく管理画面に慣れることでした。運用業務を細かい作業に切り分けて、入札単価の調整、マッチタイプの追加、予算管理など、一つ一つ確実にこなせるようにしていきました。

現在は、先日記事にもさせていただいたブログやウェブサイトを中心に日々情報収集しています。




1、admarketech(アドマーケテック)
2、MarkeZine(マーケジン)
3、Web担当者Forum
4、SEM-LABO
5、Google AdWords Lab(グーグル アドワーズ ラボ)
6、listhing labs(リスティング ラボ)
7、Inside Adwords Japan
8、Yahoo!プロモーション広告 公式ラーニングポータル
9、でぶててWEB録
10、日刊リス男TIMES~リスティング広告news~

それ以外でも参考にしているサイトはたくさんあります。挙げるとキリがないのですが、例えば SEM HACKsSEMカフェ なども参考にさせていただいています。SEMカフェは Facebookグループ も活発なのでとても勉強になりますね。




リスティング広告の運用で気を付けていることはありますか?

この広告は誰に向けたものなのか?というのは意識するようにしています。キーワードをたくさん並べればいいというわけではなくて、この企業の想定する顧客はどういった人なのか、俗にいうペルソナのようなものを想定して、この情報を探しているときにこの広告を見たらどう思うだろうかと考えながら作るようにしています。

他の人はどうか分かりませんが、リスティング広告はある程度一人でできるようになると、急に辛い時期がくるような気がします。単純作業が業務の大半を占めていたり、膨大なエクセルやキーワードと格闘する毎日なので、精神的に参ってくることがあるんです。

ただ、そこから一歩踏み込んで、お客様のお客様、つまりユーザーが何を考えてその検索クエリを入力しているのかを想像したり、続々と出てくる機能やツールを駆使して効果が上げられないかを考えていくと、普段の作業への取り組みも変わってきます。自分の中に引き出しを増やしていく感覚です。



一人でやっているからこそ、自分で考えないと進まない。


普段の一日のお仕事の流れを教えて下さい。複数名いると分業ができると思いますが、お一人の場合気を付けていることなどがあれば。

朝出社したら運用しているアカウント全体をチェックします。レポートは週次が多いのですが、週に1回だけの作業だと進捗を把握できなくなるので、日別レポートとして午前中に必要項目を埋めておくようにしています。

あとは、テストや変更後の実績の確認ですね。広告文のABテストをしていることが多いので、その結果を確認したり、十分な量があれば分析結果を出したりします。あとは検索クエリレポートを見て、追加キーワードや除外キーワードを作成します。

情報収集は定型業務が終わったお昼にすることが多いです。

気を付けていることは、効率化でしょうか。広告代理店さんのようにたくさんのアカウントを管理しているわけではないので、何でも自動化するというわけではないですが、定型業務はなるべく簡素化するように心掛けています。一方で、他社がどういうレポートや帳票を出しているのかは分からないので、どうすればもっと良くなるのか知りたいと思うことはあります。


なるほど。一人で担当することの悩みなどはありますか?

リスティング広告に共通する悩みなのかもしれませんが、何が正解なのか分からないのが悩みです。あるアカウントで行った施策がうまくいったからといって、別のアカウントに同じように適用してもうまくいくとは限りません。自分の中の引き出しを増やしながら、柔軟に発想していくことが求められる仕事だからこその悩みだと思います。

あとは、やはり一人なので相談する相手がいないことですね。誰かと意見交換をしながらアイデアが出てくるということってよくあると思うのですが、一人だとそうはいきません。社外の方と話すこともたまにありますが、詳細はもちろん話すわけにはいかないので、どうしても一般論になってしまいがちです。

ペアプログラミングじゃないですが、リスティングの運用でも作業の過程を一緒に見ながら進められたりしたらいいなと思ったりすることがあります。


逆に、一人だからこその良い点などは?

すべてのリスティングのお客さまは自分が担当しているので、自分のやった施策がすぐに結果として表れるので面白いです。どこを改善したらどうなったというナレッジがたまりますし、お客さまからもダイレクトにフィードバックをもらえます。

あとは、逆説的ですが、担当できるお仕事の数が限られていて、情報やツールも限られているからこそ、自分で考えるクセがついたことでしょうか。一人でやっている以上、すべては自分の責任ですし、誰かに言われたからやるのではなく、自分で考えて実行していかないと前に進めません。

リスティング広告の業務を通じて、自ら考えるということの重要さを学ばせてもらっていると思います。



制作会社ならではの強みを出していきたい。


ウェブ制作とリスティングの連携などはありますか?

お客さまの状況によりますが、ランディングページをセットでご提案することができますし、ディスプレイネットワークのバナー制作も社内で連携できます。

あるお客さまでは、他社で運用していてほとんどコンバージョンが上げられておらずLIGにご相談いただいたのですが、移行時に細かいアカウント構成への変更とウェブのリニューアルを同時に行うことによって、問い合わせが急増したという事例があります。

制作を任せていただければちょっとした変更はスピーディにできますし、広告と連携してABテストなどを行うこともできます。運用と制作が近いのはウェブ制作会社ならではの強みだと思っています。


広告運用にメディア運営のノウハウが生きることはありますか?

現在はLIGのブログのバナー広告の管理も担当していまして、頻繁にアナリティクスのウェブテストで出し分けをして効果の確認をしているのですが、着地ページとバナーの表現を合わせたり、LIGのメンバーをクリエイティブに使うとクリック率が高いといったことが分かっています。まあLIGのメンバーを使うというのは社内限定的なナレッジですが(笑)。

LIGではおもしろ記事でもまじめな記事でも、厳しくチェックが入りますので、表現については常に注意を払っています。広告文やバナーなどでもそれは同じですし、お客さまの広告運用を預かっているので、間接的かもしれませんが、メディア運営が広告運用とつながっているなと思います。



ヨコの繋がりを増やしていきたい。


「今後こうしてきたい」といった目標などがあれば教えて下さい。

企業内で一人でリスティング広告を運用している人は多いと思いますので、そういう方たちとヨコの繋がりを作っていきたいですね。一人だと悶々と考えてしまうので、勉強会などを通じていろいろな方々と交流を持っていきたいと思います。


同じように少人数でリスティング担当として現場で頑張っている方々に一言ありましたらお願いします。

一人でリスティングの仕事をしていると、社内でも自分の仕事が理解されていなかったり、結果が出なくて苦しいときに相談相手がいなくて孤独を感じたりすると聞いています。私自身もそういう時期がありました。

でも、施策が結果に繋がるサイクルが早い仕事ですから、一度いいフィードバックを得られればよい方向に動くようになりますし、結果は自信につながります。お互いあきらめずに頑張っていきましょう!


本日は貴重なお話、ありがとうございました!




2013年12月11日水曜日

商品リスト広告のセミナー資料と、ちょっとした補足



先日(2013年12月10日)に行われたフィードフォースさん主催のセミナー「Google商品リスト広告の最適化ノウハウを大公開」でお話しさせて頂く機会を頂きました。

(スライドをつくってから気付いたのですが)40分という短い時間の中で言いたいことすべてを伝えるのは難しかったのと、配布資料を作らなかったためご不便をお掛けしてしまったので、セミナー資料を Slideshare にアップロードしました。せっかくなので、流れに沿って少しだけ補足ができればと思います。




「商品リスト広告」の前に

何を話そうかなと考えたときに、いきなり商品リスト広告の概要を説明する前に、この広告が出てくるに至った背景を説明しようと思いました。商品リスト広告の最適化や活用方法については検索すればたくさん出てきますし、このブログでも以前に触れています。利用が進めば、今後はもっともっと色々な記事が出てくるはずです。

探せば出てくる情報をそのまま伝えただけではわざわざ足を運んで下さる方にお土産が作れない。そこで、他の人があまりしなさそうな話をしたいなと思いました。あとは、勉強や仕事、なんでもそうだと思いますが、単に問題の解き方を暗記していくのと、設題のルールを把握した上で解くのでは、その後の応用や類推で大きな違いが生まれますし、なにより後者の方がやっていて楽しいと思います。

そこで、スライドの3つのパートのうち、最初のパートで「知ってても商品リスト広告の効果は別に上がらないけど、知ってた方があとあと効いてくるかもしれない話」をしました。


Froogle について

Froogle は2002年にスタートした Google の商品情報検索です。スライドにもあるとおり、約2年間のベータのあと残念ながら放置され、2007年に Google Product Search に名称変更、その後の2010年のマーチャントセンターと Google Shopping の開始、2011年の商品リスト広告の開始(日本では2012年)につながっていきます。商品リスト広告のご先祖様みたいな存在です。

Froogle は、Google の通常の検索と同じように、クローラーを走らせて、いろんなサイトに点在する商品情報をインデックスし、Froogle 上で検索結果として表示するというものでした。この発想自体は Google にとって自然なものだったと思いますが、幾つか問題がありました。




例えば、データの鮮度の問題。2002〜2003年当時はまだ グーグルダンスが健在であり、徐々に Everflux だ フレッシュクロールだと言われていた時期なので、Google のクローリングの精度も頻度も、今とは比べ物にならないほど低い時代でした。そのため、表示された情報が古かったり、既に売り切れていることがよくあったようです。

もちろんクローリングだけでなく、当時からデータフィードをマーチャントから受け入れる機能も用意されていましたが、Froogle のユーザー数自体が限定的でしたし、企業側も今ほど商品データを自由に扱える環境になかったため、この仕様が小売企業に普及することはありませんでした。

名寄せ(aggregation)の問題もあります。同じ商品でも、キー項目となりうるIDや商品名がサイトごとに微妙に違って管理されていることはよくあります。あるサイトでは「ABC-001 リストバンド」と登録されているものが、「ABCー001 リストバンド(◯◯社製)」と登録されているような感じです。これは、人間の目で見れば同じ商品だと認識できますが、機会が読み取るときにはまったく違うものになります。

これらを全部別々のものとしてリストしていくと膨大な量となって一覧性が損なわれるため、Froogle のように情報を集約するサイトでは、これらの情報を同じものとして認識させるための処理が必要になるわけですが、どうしても Google だけがそれを担うのでは限界が出てきてしまいます。

そこで、マーチャントセンターという Google が用意した商品データベースに企業側からデータを格納してもらうというアプローチに切り替えました。JANコードなどの共通の仕様があれば名寄せはスムーズですし、鮮度の担保や審査もしやすくなります。商品を親のキーにしてメーカーや店舗名が紐づくので、横断検索や比較もしやすくなります。

2012年に発表され、今月(2013年12月)には日本でも始まった「Google Trusted Stores」プログラムのように、商品だけでなくショップ自体を評価することも、データベースの管理が強固になることで実現できるようになりました。





ユニバーサル検索と商品情報表示オプション

ところで、いくら商品データベースが整備されたとしても、商品情報検索をするユーザーが増えないと、マーチャント(小売企業)側にとって Google にデータフィードするメリットがありません。Froogle にしても Google Product Search にしても、そこが弱みでした。普段使っている検索の画面からわざわざ商品検索用のエンジンに移動して改めて検索するようなユーザーはそれほど多くはなかったからです。

そこで、Google はこれまでのテキスト情報だけの検索結果から一歩進んで、商品情報や動画、地図や画像など、あらゆる情報を一つの検索結果に表示するユニバーサル検索を提供するようになりました。明らかに商品情報を探しているような検索クエリであれば、Product Search の内容を検索結果の一部に表示する仕様です。広告側でも、AdWords の検索連動型広告では商品情報表示オプションとして広告に商品情報をプラスボックスで表示することができるようになりました。

ユーザーに使うエンジンを選ばせるのではなく、知りたいものを察知して検索結果を適切な情報レイアウトにして表示することで、結果的に商品情報の表示機会も増え、小売企業にとってマーチャントセンターにデータを送るメリットをつくりだしたのです。



フラグメンテーションとデータフィード

このあたりからはスライドのままなのですが、メディアやデバイスのフラグメンテーション(断片化)の上昇カーブは、そのまま小売企業にとってデータフィードの必要性のカーブになると思います。断片化しているので一つ一つの接触面積は小さくなりますが、サボっていると総接触面積が減っていってしまう。逆にリアルタイムに情報の同期が確保できれば(さらに言うならそれぞれに情報の届け方を工夫できれば)、接触面積を増やすことができます。

接触面は、比較サイト、商品情報サイト、検索、ディスプレイ広告、ECサイト、ショッピングモールなど、たくさんあります。見るデバイスもマルチスクリーンです。たくさんの接触面のうち、検索についての対策が、商品リスト広告です。




データフィードについては、手前味噌ですがこのスライドにより詳細が網羅されています。このセミナーでも幾つか同じスライドを利用させてもらっていますし、論旨としてはまったく同じです。




商品リスト広告の概要と考え方

3つのパートのうちの真ん中にあたりますが、ここはほぼスライドのまま話しています。

商品リスト広告を実施するうえで最初かつ最大のわかりにくいポイントは、商品ターゲットだと思います。AdWords の運用に習熟されている方にとっては当たり前のような話でも、そうでない方にとってはどうもモヤッとして分かりにくい、というのがこの商品ターゲットなのではないかと思い、通常の AdWords の機能を分解して、商品リスト広告の場合と比較してみました。




AdWords に限らず、リスティング広告の最小ユニットは「ターゲット」と「広告」と「リンク先」です。検索連動型であれば「ターゲット」は「キーワード」になりますし、ディスプレイ広告であれば「コンテンツ」や「プレースメント」や「オーディエンス」になります。

「商品リスト広告はキーワードがない」と言いますが、もう少し細かく言えば、「キーワードや広告やリンク先として機能する情報がみんなマーチャントセンターに入っているので、商品リスト広告では商品ターゲットを使ってその情報の仕切り方を指定する」といった感じです。これさえ押さえておけばあとは特に難しくないと思います。



海外事例について

最後のパートは、アメリカの CPC Strategy という会社の事例を利用させてもらいました。CPC Strategy は太っ腹なので、個人情報等のフォーム入力の必要なしにホワイトペーパーがダウンロードできます。興味ある方は以下からご覧ください。

White Papers | CPC Strategy
http://cpcstrategy.com/resources/white-papers/




この事例が面白いなと思ったのは、いい話じゃなくて悪い話が書いてあることです。事例というと成功事例ばかりが出てきやすいですが、商品リスト広告に慣れてくると陥りやすいワナがしっかり提示されていたので、参考になればと思いました。

検索連動型広告でも、1広告グループ1キーワードにこだわり過ぎてマネジメント不可能な状態になったり、地域ターゲットを細かく分割しすぎて逆に表示機会が減ってしまったりといった陥穽をたまに見ることがありますが、そんな感じかなあと思っています。

ところで、この事例では AdWords の話がメインになっていますが、商品リスト広告で一番大事なのはフィードの中身と正確性です。言い換えれば、フィードさえちゃんとしていれば、AdWords の商品ターゲットは全商品指定にしておいても何となくそれっぽい結果が出てしまうことが多いのも(今のところ)、AdWords 側の運用があまりフォーカスされない理由かなあと思うことがあります。



商品リスト広告の今後について

2013年は商品リスト広告のリリースラッシュの年でした。ここ最近のどの広告商品よりもアップデートが多かったのではないかと思います。

2014年もその勢いはおそらく変わることはないと思います。既に公表されている範囲だと、ショッピングキャンペーン(Shopping Campaigns)がスタートすることが先日発表されています。

Introducing Shopping campaigns: a better way to promote your products on Google
http://adwords.blogspot.jp/2013/10/introducing-shopping-campaigns-better.html



AdWords とマーチャントセンターの管理がしやすくなるほか、現在はかゆいところに手が届いていないレポーティングなども強化される予定なので、マーチャントセンターのデータマネジメントのみならず、AdWords の管理にもスポットが当たることになるのではないかと思います。

商品リスト広告のみならず、動的リマーケティング、ローカルストアフロント(Storefront)など、Google だけでも商品データの活用は今後も広がっていくと思います。個人的にもっとも楽しみにしているエリアです。





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