2014年12月26日金曜日

検索連動型広告の品質計算、あるいは閾値の違いを表す1枚のスライド


検索連動型広告におけるブランド検索の現在

オンラインでブランド監視サービスを提供している BrandVerity は、四半期ごとに「The State of Branded Keywords in Paid Search」という、検索連動型広告のブランドキーワードについて定点観測したレポートを公開しています。


リンク:BrandVerity's Report on Branded Keywords in Paid Search: Q3 2014
※レポートはメールアドレスの登録だけでダウンロードできます。


このレポートは、家電、アパレル、宿泊、教育など、オークションが活発な代表的な業界ごとに、企業名やサービス名などのブランドキーワードで、各検索エンジンごとに何本の広告が出ているか(≒ブランドごとのDepth)を四半期ごとに調査したものです。

調査対象になっている検索エンジンは、AOL、Bing、Yahoo!、Google の4つに、Googleのモバイル検索の結果を加えた5つとなっています。ちなみに comScore の2014年10月データを信じると、アメリカでの検索シェアはそれぞれ、AOL(1.2%)、Bing(19.5%)、Yahoo!(10.3%)、Google(67.0%)となっており、Googleが圧倒的優位となっています。

このレポートは、検索連動型広告においての「品質」の概念や、順位付けや表示可否のメカニズムである「広告ランク」の閾値について考えるのに丁度よい示唆を与えてくれます。スライド自体はとてもシンプルなので、かんたんにご紹介したいと思います。


Googleと他の検索エンジンの違い

下の図は、検索エンジンごとに、すべての業種でのブランド検索においてどれくらいの本数の広告が表示されていたのかを表しているグラフです。タテ軸が検索結果ページ(SERP)ごとの広告の本数、ヨコ軸は検索エンジンの種類です。


Image:BrandVerity's Report on Branded Keywords in Paid Search: Q3 2014


棒グラフは2色に分かれており、紫色が検索されたブランドが出している自社の広告を指し、オレンジ色は検索されたブランド以外(他社)の広告を指します。つまり、このグラフは検索エンジン平均で自社のブランドワードに他社の広告がどれくらい出ているのか?という指標になります。

ひと目で分かるとおり、ブランド検索では Google は自社(検索されたブランド)の広告のみが掲載されることが多いのに対し、他の検索エンジンでは平均して3本、つまり自社以外に他社が2本ほど掲載されていることになります。

これは、業界ごとに "他社" の構成は違うものの、Google 以外の検索エンジンでは、ブランドワードで検索した際に競合他社やリセラー(販社や代理店)、比較サイトやアフィリエイターなどの広告が掲載されているということです。(ちなみに、業界別レポートではブランド以外にどのような競合が入札してきているのかが分かるように競合の種類も分類されていて興味深いです。)


広告品質の閾値

こういった検索エンジンごとの差を「商標侵害の申し立て」のようなブランド保護の取り組みの差といった視点で捉えるのは早計です。もちろん内部のオペレーションの質は比べる術がありませんが、Bing(および提携先のYahoo!)の知的財産やトレードマークのポリシーは、Google のそれと殆ど同じで、リセラーやまともな情報サイトであれば広告掲載を認める、という部分も酷似しています。

では、なぜこういった差が生まれるのでしょうか? レポートには以下のような記載があります。

"Why were there so many more non-brand ads on these engines? It’s not entirely clear, but it likely has something to do with Google’s Quality Score. Google’s AdWords system assigns a score of 1-10 to advertisements based on their performance and relevance. When an ad’s Quality Score is below a certain threshold (as determined by Google), Google’s algorithms will often opt not to show that ad. A higher Quality Score threshold on Google could account for the relatively low figures of Non-Brand Ads per SERP on Google and Google Mobile compared to AOL. Despite the fact that the ads are all pulled from the same pool (AdWords), Google could be more selective about what it shows."

どうして(Google以外では)競合他社の広告がたくさん掲載されるのだろうか? もちろんすべてが明らかになっているわけではないが、Googleの品質スコアが影響しているということは考えられる。Googleのアドワーズは広告の関連性と実績をもとに10段階の品質スコアを設定している。広告の品質スコアが(Googleの設定している)閾値を下回れば、アルゴリズムによって広告は掲載されなくなる。Googleの設定する高い品質スコアの閾値によって、相対的に低い品質の自社ブランド以外の競合他社の広告はAOLのような検索エンジンと比べると掲載されにくくなる。Googleはより厳選された広告だけが表示される検索エンジンだと言えるだろう。

太字は筆者による強調
※Source: BrandVerity's Report on Branded Keywords in Paid Search: Q3 2014

これは、非常に的を得た指摘です。

検索連動型広告は、広告の品質と入札した単価(上限CPC)を掛けあわせた広告ランクで順位が決まります。(広告表示オプションなども加味)

AdWords の出現以降、「関連性(Relevancy)」という概念がオンラインの広告のエコシステムを司り、ユーザー、広告主、パブリッシャー3者の利益を最大化し適切なバランスを保つために貢献してきました。

この「関連性(Relevancy)」を定量化して広告のオークションの仕組みに取り込んだものが、広告の「品質」で、その複雑な品質の計算を広告主にも見える化したものが、「品質スコア」です。同じ入札単価であれば、品質が高ければ広告は出るし、低ければ出ない/順位が低い ということになります。

Google の品質スコアのページには以下のような記述があります。

参考:品質スコアについて - AdWords ヘルプ
広告の品質による影響

広告ランクの品質に関する要素は、さまざまな方法で使用されており、それらの影響を受けるアカウントの要素は次のとおりです。

・広告オークションの参加資格: 通常、品質に影響する要素が良好であるほど、広告はオークションに参加しやすくなり、単価も低くなります。広告の品質の測定結果は、広告に掲載資格があるかどうかの決定にも影響します。
・実際のクリック単価(CPC) : 広告の品質が高いほど、クリック単価は低くなります。つまり、広告の品質が高いほど、クリックに対するお支払いが安くなります。
・キーワードの First Page Bid の見積もり : 広告の品質が高いほど、First Page Bid の見積もり額は低くなります。つまり、品質に影響する要素(推定クリック率、広告の関連性、リンク先ページの利便性)が良好であるほど、広告は検索結果の最初のページに表示されやすくなります。
キーワードの ページ上部表示の推定入札単価 : 広告の品質が高いほど、ページ上部表示の推定入札単価は低くなります。つまり、広告の品質が高いほど、広告はページ上部に表示されやすくなります。
・広告の掲載順位 : 広告の品質が高いほど、広告の掲載順位が高くなります。つまり、ページ内での広告の表示位置がより高くなります。
・広告表示オプションやその他の広告フォーマットの表示資格: 一部の広告フォーマットは、広告の品質が一定のレベルに達していないと表示できません。また、広告表示オプションやその他の広告フォーマット(サイトリンクなど)を表示できるかどうか判断する際には、広告ランクも考慮されます。広告ランクは品質スコアの関数であるため、広告の品質が高いほど、広告表示オプションやその他のフォーマットを表示できる可能性が高まります。

上記の「広告オークションの参加資格」「広告の掲載順位」は、(厳密には違いますが)ほぼ同じことを言っています。

検索が発生した際に、検索エンジンはクエリにマッチする広告を広告ランクごとにランキングします。AdWordsには世界中の広告主が入札しているので、検索結果には数社しか広告が表示されなくても、裏側ではその何倍〜何百倍もの広告がオークションに参加し、ランク付けされています。

もちろん、検索結果にすべての広告を表示するわけにはいかないので、検索エンジンは品質を計算し、広告表示しても問題ないレベル(閾値)を割り出して、その閾値以上にある広告のみ表示します。閾値は常に再計算され、クエリごとに動的に変動します。検索エンジンとしてユーザーに適切な結果を提供できるレベルを判断しているのです。


表示されている広告は、氷山の一角

この閾値という考え方を図にすると、以下のようになります。



言ってみれば、この閾値の設定の厳密さや、計算の精度が、検索エンジンの品質そのものだと言って差し支えないと思います。Google が自社のブランドキーワードで他社の広告が掲載されにくいのは、この広告ランクの閾値の設定と計算の精度が厳密だから、と言えるのだと思います。

メディアの最重要指標である RPM という考え方(参考:RPM、そのビジネスの中心 | Unyoo.jp)からすると、検索結果1ページあたりの広告本数(Depth)は多いに越したことはありません。

ただ、やみくもに Depth を増やそうとして広告ランクの閾値を下げると、検索エンジンとしての厳密性は下がります。短期的には広告のクリックが増えて潤うかもしれませんが、質の低いクリックが増えて広告の効果は下がりやすくなりますし、ユーザーとしても関係ない広告が増え、検索エンジンへの信頼性は次第に失われていってしまうでしょう。

BrandVerity のレポートは、検索エンジンの品質や、その裏側にある閾値という考え方を知る上で、非常に参考になる資料だと思います。グラフを眺めるだけでも面白いので、興味がある方はぜひご覧になって下さい!

リンク:BrandVerity's Report on Branded Keywords in Paid Search: Q3 2014 



2014年12月19日金曜日

データフィード広告の市場動向と環境変化【セミナー資料】


先日(2014年12月18日)に行われたフィードフォースさん主催のセミナー「リブセンス×アタラが語る!データフィード広告への急激な予算シフトの背景と最新活用事例」でお話しさせて頂く機会を頂きました。



【セミナー開催】2014年12月18日(木)『リブセンス×アタラが語る!データフィード広告への急激な予算シフトの背景と最新活用事例』


昨年も同様のテーマのセミナーを開催していまして、今回はあれから1年経って、商品リスト広告に代表されるデータフィード型の広告の市場環境がどう変化したのか?という問いからスタートしました。セミナーの構成上、あまりテクニカルな部分には触れず、データフィードが対岸の火事的な出来事ではなく、既にスタンダード化しつつある事実についてお伝えしました。

スライドの中身は、先月(2014年11月)から今月(同12月)にかけて Markezineさんで書かせて頂いた以下の連載の内容をセミナーという場で改めて解説させて頂いたような感じです。


データフィード広告を牽引する商品リスト広告へ急激な予算シフトが起きている/その進化の経緯に迫る (1/3):MarkeZine(マーケジン)
 
データフィード広告はフラグメンテーションに対する有効な解決策の一つ/データフィード化が進む運用型広告 (1/3):MarkeZine(マーケジン)


当日は、リブセンスの岩崎さん(インタビュー記事)がデータフィード活用の非常に具体的な事例を示唆に富んだエピソードとともにお話しされ、フィードフォースの川田さん(インタビュー記事)はフィードの中間処理の重要性について強く語られていたのが印象的でした。

データフィード周りの話は、以前は「こういうことができるようになる」とか「こういう取り組みが始まっている」というレベルだったのが、2013年くらいから現実が非常に速いスピードで追いかけてきており、少し前の予測は既に現実のものになろうとしています。

実践してる企業さんは皆さん本当にハードコアで、リスクを適切にテイクして、Low-hanging Fruit をムシャムシャと食べていらっしゃいます。なんでもかんでもやればいいというものではありませんが、カジュアルな挑戦が許容できる文化や体制や意思決定のスピード、そして技術へのオープンな姿勢が、事業の成否を分けるポイントになるのではないか、そんなことを思いました。


前回のセミナー資料も Slideshare にアップロードしたので、今年も公開しようと思います。ご笑覧頂ければ幸いです。



アドテクノロジー市場の資金が動画とDMPに流れた2014年 〜AGC Partners のレポートから


2014年のアドテクノロジー分野のM&Aレポート

ベンチャーキャピタルのAGC Partners が、2014年のアドテクノロジー分野のM&A(企業合併/買収)を取りまとめたレポート『AdTech M&A in 2014 and Beyond: Trends and Drivers in an Evolving Landscape』を発表しました。



リンク:AdTech M&A Update 2014 - AGC Partners
※リンク先からPDFがダウンロードできます


レポートでは、プログラマティックなディスプレイ広告が2013年から2017年までの5年間で年率約36%の成長率を示すだろうという IDC の予測のほか、モバイル広告も同様の年率35%成長を示し、2018年には全世界で730億ドル(約8.6兆円)の規模に達するだろうという Magna Global の予測(※表1)を引き合いに出し、企業買収もその勢いに合わせるように活発化していくと述べています。

※表1 Source: AGC Partners


実際、2014年のアドテクノロジー関連企業の M&A の件数は2013年のほぼ2倍の件数になっており、買収額も1億ドル〜4億ドル規模の案件が多くなっているとのこと。2014年の第三四半期(7−9月)は、「ポスト・ドットコムバブル」と言われた2013年第三四半期の買収総額を超えており、テクノロジー部門全体として見ても3番目に大きな市場になっていたとのことです。


「動画」と「DMP」が投資のキーワード

アドテクノロジーの中では、「動画」「DMP」が M&A のキーワードのようです。

動画は、動画広告市場の成長に伴い M&A の件数が昨年の2倍に伸びたとのことで、Facebook による LiveRail の買収や、Opera による AdColony の買収など、モバイル動画広告ネットワークがその代表例です。これまでテレビなどのオフラインに投資していた大手広告主も動画のモバイル視聴による効果測定や広告展開に可能性を感じており、広告主がついてきていることがベンダーにとっては大きいでしょう。

DMP は、ご存知の通り2014年最もバズ人口に膾炙したアドテクワードの一つですが、Oracle による BlueKai の買収、RocketFuel による [x+1] の買収など、今年もっとも買収の標的になった分野と言えるのかもしれません。広告代理店も含めて、自社で微妙なシステムを構築するよりは、技術のある企業を買収した方が結果的に投資効率がよいと考える向きが大半のようです。(特に上場企業の場合は投資家への印象もいいのではという意見もあります)

動画やモバイルなどの分野に限れば、2005年から2014年の約10年間に M&A に使われた金額は約510億ドルでしたが、2014年だけでこの分野に約150億ドルの資金が投下されており(※表2)、投資のモメンタムが加速していることが伺えます。

※表2 Source: AGC Partners


そのほか、レポートにはこれまでの M&A をまとめたリストや、主要企業の M&A 履歴を表すチャート(※表3)などもあり、かなり興味深い内容になっています。


※表3 Source: AGC Partners


レポートには一部日本の企業も含まれています。英語の文量も少ないので週末にぜひ原文をお読みになって下さい。

アドテクノロジー市場の巨人たちがどの領域を強化しようとしているのか、改めて俯瞰するよいきっかけになるのではないでしょうか!



2014年12月2日火曜日

広告インベントリを生み出せるのは、メディアだけです。 –オールアバウト小林秀次氏 #State-of-AdOps Vol.14


「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

※過去の記事はこちらから。

第14回目は、専門家によるコンテンツが充実し、歴史あるメディアである All About を運営されていると同時に、アドテクノロジーへも積極的に取り組んでいらっしゃる株式会社オールアバウトで広告運用周り全般をマネジメントされている小林秀次(こばやし しゅうじ)さんに、メディアとしての広告運用やマネタイズの現状について、忌憚のないお話をお聞きしました。


# インタビューは 2014年10月某日に行われました。


ちゃんとした情報を、手間を掛けて発信し続ける。


●まずは、小林さんが現在のお仕事に就かれるまでの経緯と具体的な業務内容を教えて下さい。

オールアバウトの小林です。専門家による総合情報サイト All About で広告収益となる商品企画全般を担当しています。

オールアバウトに入社する以前は、インターネットでもメディアでもない、通販企業で雑誌編集の仕事をしていました。取材、撮影、台割、コピーライティングなど、商品を魅力的に見せるという仕事を通じて、編集としてのキャリアを積んできました。

2004年頃になって、通販もインターネットだという流れになり、雑誌だけでなく自社サイトや楽天市場、ヤフーショッピング等に出店するようになりました。私もそれまでの商品コピーを書く仕事から、その売上を伸ばしていくためのメールマガジンやアフィリエイト、SEO、リスティング広告など、徐々に集客や販売促進の仕事を担当するようになりました。

当時担当していた商品が単価の高い「こだわり系グッズ」だったのですが、その商品を対象とした広告出稿で、All About が最も高いコンバージョン率だったことが分かりました。元々は代理店がメディアプランに入れていた程度だったのですが、その結果を知って All About というメディアに興味を持ちました。「メディアが面白いんじゃないか?」と思ったんですね。


●そこから「じゃあ転職しよう」というのがすごいですね。

ECサイトをやっていると、インターネットは様々な数字が見られることを肌で感じることができます。インターネットにはメディアも情報もどんどん溢れるようになる中で、All About は人(専門家)にファンがついているアナログっぽいメディアでした。広告出稿して効果が高かったのも、情報の信用度が高かったからです。ちゃんとした情報を、手間を掛けて発信し続ける姿勢は、情報が爆発する時代だからこそ価値を出し続けられるに違いない。そう思って転職を決意しました。

2006年に転職し、当初は All About が新規事業として運営していたECサイトを任され、5年ほど担当していました。その後、元々メディアで働きたくて転職したこともあって、ECサイトが分社化された2011年に All About のメディア事業部へ異動し、広告周りを見るようになりました。そこで最初に担当したのが運用型広告です。

メディアにとっての運用型広告は、純広告ではない空き在庫をマネタイズする仕事という意味で、当時はYahoo! アドネットワーク(現YDN)さん、マイクロアドさん、Advertising.comさんなど、アドネットワークを活用して純広告以外の枠をいかにマネタイズするかを試行錯誤していました。現在では、純広告、タイアップ型広告など、広告収益がある商品企画全般を担当しています。


●かなり幅広い分野を担当されていますね。

自分の部署の仕事を言い換えれば、広告営業担当のための武器を作る武器屋だと思っています。

武器屋はただ武器を店頭に並べていればOKではなく、武器の価値を伝えないと使い方が分かりませんし、買ってもらえません。武器の種類を揃えるだけでなく、特徴をしっかり伝えることが大事だと思っています。


メディアの広告運用には専任の担当者を。


●オールアバウトさんというと、伝統的メディアであると同時にアドテクノロジーへも非常に注力されている印象があります。メディア側での運用型広告のお取り組みについて、具体的にどのようなことをされているのか教えて下さい。

まず、空き在庫のマネタイズは運用の要素がかなり高いです。そういう意味で運用型広告だと思っています。

我々メディアサイドは、一つのネットワークやエクスチェンジを入れて放置しているわけではないんです。例えば、Googleさん(AdSense / DoubleClick Ad Exchange)を採用したとします。「Google を一度入れてしまえばあとは RTB で勝手にオークションしてくれるからそのままでいい」となるのではなく、データを見ながら毎週・毎日のように運用が発生していきます。

運用とは、データを見ながらフロアプライスを調整したり、タグを呼び出す順番を変えたりするようなことを指します。他にも、RTB に広告在庫を出す前に、ある事業者との固定取引を優先的にオークションし、そのフィラーとして Google を出す、といったようなことです。

これはあくまで単純な例ですが、実際には複数社のネットワークを組み合わせ、All About 内に存在する広告枠ごとに個別に分析し、設定を繰り返して収益の最大化を目指していきますので、かなり複雑な作業です。デマンドサイドから見れば鏡の表裏になるわけですが、業務自体はまさに広告運用と言えるのではないでしょうか。


●非常に興味深いです。ちなみに複数のネットワークを枠ごとに運用していくのは、片手間ではとても難しいのではとお察ししますが、実際に組織としてはどのように対応されているのでしょうか?

以前は固定単価のネットワークが多かったのでシンプルでしたが、現在は日々数字が変わるモデルですので、片手間ではとても無理です。収益に直結する大事な業務なので、専門の担当者がおります。

また、以前のようにネットワーク事業者の担当者とやりとりするだけでよかった時代から、ネットワークの先の DSP などのプレイヤーから直接連絡がくるようになったのも、担当者が必要になった要因の一つです。

例えば、「ある特定のセグメントのインプレッションを確保したいので、個別のタグを導入できないか?」といった問い合わせは、専門の担当者でないと対応できません。純広告に近い考え方の「プログラマティックプレミアム」というモデルが伸びると言われている中で、RTB を通じて買い付ける DSP の動きが活発なため、通常の広告代理店の商流には乗らない取引も増えてきているような印象です。


●なるほど。デマンド側の広告運用からすると、「このドメイン」「このプレースメント(枠)」という指定で買いに行くというよりは、ターゲティング配信した結果を分析していく過程で、よいドメインやよい枠を事後的に「発見」する、というのが感覚として近いのですが、DSP はメディア指定で買い付ける要望が強いということなんでしょうか?

仰るとおり、広告主さんは必ずしも「All About の枠が買いたい」と思っているわけではないと思います。また、ドメイン指定の場合は、「買いに行く」というより「除外する」用途として使われることの方が多いですよね。

一方で、DSP の事業者からすると、需給バランスの問題もあると思いますが、どのメディアの結果が良かったのか把握できる立場にあるので、予約型のようなかたちで特定の広告在庫を抑えたいというご要望が発生するようです。「このセグメントにはこのインプレッションが効果がよい」ということが分かれば、多少単価が高くなってもそれ以上の効果を広告主にお返しできますから。

メディアからしても、もし需要があれば優先的に在庫を抑えることでインプレッションの単価も高くなりますので、収益にもポジティブに作用します。取引形態によってインプレッションの価値が変わることになりますので、やはり専任の担当者は必要ですね。枠を放置することは今のメディア運営ではできません。


テクノロジーが進んでいるからこそ、人が大事です。


●ありがとうございます。次の質問ですが、こういったメディアサイドの広告運用を考える上で、次に発生する問題はブランドとボリュームのバランスではないかと思います。このあたりの調整も専任の方がやられるのですか?

広告のボリュームを加味するのは非常に大事です。細かな個別対応をし過ぎるとタグが増えすぎてしまってサイトパフォーマンスにも影響しますし、社内的にもリソースもかかってしまいます。

そのため、プログラマティックプレミアムのような取り組みの場合は、僭越ながら最低限のラインは設けさせて頂いています。呼び出しの順序なども、経営的な側面を考慮しているのは事実ですし、メディアからすればほぼ純広告なので、配信の審査基準もほぼ純広告と同じだと考えています。


●お話をお聞きしていると、そういった特別な対応ができる DSP はおのずと限られてくるのでは、と思ったのですが。

はい、限られてきますね。DSP さんやアドネットワークさんなど、一緒に新しい取り組み、面白い取組みができる企業さんとやり取りすることが増えてきています。


●一口にメディアの広告運用と言っても、カバーする範囲が実に広い印象です。

プライベートディールのようなアライアンスに近いような仕事もあれば、配信面ごとのタグの順序やフロアプライスの変更など、仕事は多いです。

同じ媒体でも配信面によって結果が大幅に違うということはよくありますし、案件との相性も違います。

また、ある時期に特定の SSP の結果がすごく良かったとしても、単発的に案件が集中しただけかもしれませんし、翌期も同じように結果がよいとは限りません。

短い期間の結果だけを見て SSP やネットワークの判断をすることは、利用するプラットフォームをコロコロ変えることに繋がるため、メディアの運用が安定しなくなり、収益向上のヒントも見つかりにくくなります。SSP やネットワークとしても安心して取引できなくなるデメリットもあります。

そのため、収益性の差異がそれほど大きくなければ、頻繁にスイッチングせず、ご担当者としっかり付き合える企業を選択するよう心がけています。SSP やアドネットワークは、接続している DSP の数で差別化することはもう難しいと思いますので、一緒にパートナーとしてどこまで真摯に向き合えるかが大事ですね。

デマンド側と同じように、メディアの広告枠も PDCA を回していく必要があります。SSP などのメディア側のプラットフォームが安定していれば、デマンド側との相性を確かめたり、昨対での比較もできるようになりますし、協力して新しい取り組みを行うこともできるようになります。対応が場当たり的にならないためには、同じ未来が描ける事業者さんと長くお付き合いすることが大事です。


●メディアの広告運用の最終目的は RPM を上げることだと思うのですが、事業者とお付き合いする上で、RPM 以外に気にかけていることはありますか?

メディアの運用型広告の売上は RPM×インプレッション数 ですので、RPM 以外で挙げるとすれば、広告在庫の拡大に寄与する活動です。

メディア側は出稿された結果は分かりますが、出稿前に広告主側にどのようなニーズや傾向があるのかは極端に言えば知ることができません。逆に、デマンド側のニーズが分かれば、我々メディアとしてはニーズに合ったコンテンツを作り上げることができます。

事業者の方々と情報共有することで、「A という分野の反応が良かったから、もう少し A に関連するテーマの記事を厚くしようか」といった企画につなげることができます。


データを活用した新しい広告メニュー


●メディアとデータの関係についてお伺いします。メディアにとってのデータは、昨今の DMP の盛り上がりや、パブリッシャートレーディングデスクのようなデータドリブンの新たな取り組みにフォーカスが当たるようになって、以前にも増して重要性を増しているように思います。その辺り、オールアバウトさんはどのように取り組んでいらっしゃるのか、可能な範囲でお聞かせ願えれば。

データ活用に向けて具体的に取り組んでいる事例を申し上げますと、『All About ユーザーディスカバリータイアップ』という広告メニューをフリークアウトさんと共同で展開しています。


『All About ユーザーディスカバリータイアップ』
adinfo.allabout.co.jp/download/editorial/userdiscovery.pdf(PDF)



このメニューをかんたんに説明しますと、All About はたくさんのカテゴリに分かれており、どのカテゴリを閲覧したかというデータを持っています。このデータと、広告主さんの持つ訪問データを突き合わせて、既存ユーザーの含有率が高いカテゴリを選出します。

既存の含有率が高いカテゴリは潜在ユーザーも多いということになるので、選出されたカテゴリに対して、まだタイアップページに訪問していないユーザーはタイアップ記事へ誘導し、既にタイアップへの訪問履歴があるユーザーは広告主のサイトへ直接誘導する、というメニューです。


adinfo.allabout.co.jp/download/editorial/userdiscovery.pdfより抜粋


これは、閲覧データをそのままターゲティングに使うのではなく、広告の商品企画に活かしていこうという試みです。

以前は「All Aboutのデータを使いたい」というニーズが多かったですが、単なるデータの提供はビジネスとして成立しません。取引として大きくなりにくいという理由もありますが、単にデータサプライヤーとして提供したのでは、我々にとって非常に大事なデータがその後どう使われているのか分からないからです。


●この『ユーザーディスカバリータイアップ』は、ある意味パブリッシャートレーディングデスクと言えるような取り組みですよね?

そうですね。パブリッシャートレーディングデスクというとメディアが自社でデマンド側の広告運用もすべて担うというイメージですが、オールアバウトですべて賄う必要はないと思っていますし、トレーディングデスクとして他社と比肩できるようなノウハウやリソースがあるわけでもありません。

こういったデータを活用した新しい商品開発を行なっていく上で、信頼できるパートナーとしてフリークアウトさんがいらっしゃったのが、この商品が世に出せた理由でもあると思います。ちなみに、この商品を実際に運用してくれているのは、以前このインタビューにも登場した時吉さんです。

●やはり、運用型だからこそ人が大事ということですね。



広告運用は横展開がしにくいですよね


●広告運用というお仕事、続けてこられてどのように感じていらっしゃいますか?

運用が発生するネット広告メニューはすべてそうですが、やったらやっただけ結果が出て、それが目に見えることがやはり楽しいですね。

以前は通販の仕事をしていましたが、売上という結果はもちろん分かるものの、コピーが良かったのか、写真が良かったのか、タイミングがよかったのかといった売上に繋がった要素を分析することができませんでした。デジタルはそれが分かります。

分かったからといって毎回結果が出るとは限りませんが、何かしらの知見は必ず得られます。知見が得られれば次にするべきことが見つかりますから。

一方で、絶対のセオリーがないことが課題と言えば課題でしょうか。ネット広告は変化がとにかく早い分野ですし、シンプルに横展開できないことが多いです。商品が変われば使うチャネルも結果も変わりますし、ある商品は A という DSP ではいい結果だったけど、B の DSP ではあまり振るわない、ということが頻繁に起こります。アルゴリズムが少し変わっただけで、結果は大きく変わってしまいますしね。


●でも周りからは「横展開しなきゃ」って言われますよね。

言われますね(笑)。

基本となる考え方や、PDCA を回すワークフローは横展開すべきです。ただ、知見や事例がそのまま別のキャンペーンに適用できるかというと、普通それはできません。素材やメニューに合わせて適切な調理方法が選択できるのが運用の価値だと思いますので。

横展開の圧力が強いのは、「運用=オートメーション」と勘違いされているケースが多いことが原因かもしれません。「どうせ空き枠だから自動化しなよ」という扱いを受けることも実際はありますし(笑)。ただ、そこに力を入れるだけ入れられれば得られる情報は増えますし、収益性も上がっていきます。運用がマネタイズにとって重要だということを周りからもっと理解を得られるように、努力を続けていかないといけないと思っています。


インベントリを生み出すことができるのがメディア


●得られる情報が増える、というお話がありましたが、やはり運用とデータは不可分の関係にあると思います。メディアの運用でデータ活用などは進んできていますか?

まさに、これまではメディアが自社のユーザーを把握する方法はアンケートやサンプリングデータが主流でした。最近 DMP が本格的に利用できるようになって、アクセスの全数から類推ができるようになりました。

DMP の導入によって情報の精度が上がりましたので、運用にフィードバックできる情報が増えています。例えば、「データを見ながらユーザーが求めていることを今まで以上に把握した上でコンテンツが作れる」でしたり、「収益性の高いジャンルのコンテンツ作成に力を入れる」といったことができるようになりました。

一次情報をつくり出すのがメディアですから、広告運用の文脈で言い換えればインベントリを生み出すことができるのがメディアです。トレンドに振り回される必要はありませんが、最新の情報やデータをうまく運用に取り入れ、オールアバウトの色に染めていくことで、メディアの価値を上げていくことができると考えています。


●素晴らしいですね。本当はこの流れでキュレーションメディアとかネイティブ広告の話も聞きたいですが、それはまた別の機会に…(笑)。最後に、小林さんから見た運用型広告の展望などがお聞きできればと。

私見ですが、3つの方向性があると思っています。

1つは、より一層のプライベート化です。これは、プログラマティックプレミアムのようなプライベートディールが増えるという意味ではなく、デマンドサイドの広告運用者とメディアが今まで以上に密接に連携していくことで、データの共有、精度を上げていく施策ができるという意味です。

データを活用してターゲティングを今より一層細かくしていこうという意味ではなく、デマンド、サプライ双方にとって有益なクラスタリング(分類)を作ったり、その精度を上げていくことができるのではないかと考えています。全体がそうなっていくというよりは、一部で先進的な取り組みが進んでいくといった流れをイメージしています。

2つ目は、展望というより希望ですが、メディア側のアドテクノロジーに関する取り組みを発信する機会を増やしていきたいと思っています。アドテクノロジーはデマンド側の情報こそたくさんありますが、メディア側はベールに包まれていると言いますか、情報がなかなか出てこないことが多いです。

もちろん、ソーシャルやキュレーションというジャンルでのメディアは事例や情報が出ていますが、我々のような一次情報の発信を行なっているメディアからはなかなか情報が出ていないため、実際にはそうではないにも関わらず、取り組みが遅れているという評価になりがちです。オールドメディアと揶揄されたりもしています。

オールドメディアからの発信が増えた結果、何がどう変わるかは正直分かりませんが、少なくとも情報の非対称性は解消していきたいと思っています。メディア側が遅れているという評価が変わることで、先進的な取り組みも徐々に増えていくのではないかと、そのように考えています。

最後3つ目は、情報を出すだけでなく、繋げる機会を増やしていきたいということでしょうか。個別の情報交換だけでは取り組みは拡がりませんし、一方的な情報発信だけでも不十分です。デマンド側はオフラインのイベントや会合が頻繁に開催されていると思いますが、その場にメディアがいることは必ずしも多くありません。

一人や一社でできることは限られていますので、様々なプレイヤーが繋がることで、メディア側の広告運用にも「場」ができるのではないかと考えています。みんなで盛り上げていきたいですね。


●本日は貴重なお話、ありがとうございました!

All About(オールアバウト)



2014年11月20日木曜日

ショッピングキャンペーンの6つの更新(2014年11月)を考える


商品リスト広告や動的リマーケティングなど、ショッピング周りのアップデートが絶えない Google AdWords ですが、感謝祭からブラックフライデー、そしてクリスマスシーズンに突入する直前の11月下旬という1年で最もEコマースが盛り上がる非常に大事な時期に、幾つかのアップデートが同時に発表されました。

今回は主に分析や指標周りの更新が多い印象です。公式ブログの説明を参考に、今回のアップデートがどのように運用に活かせるのか考えてみたいと思います。


参考:Inside AdWords: New ways to rev up your Shopping campaigns


今回のアップデートは、かんたんにまとめると以下の6つになります。

ショッピングキャンペーン

・「オークション分析」機能の追加
・「検索広告のインプレッションシェア」の精度が向上
・「オークション分析」でデバイスと時間の分割が追加
・「入札単価シミュレーション」項目が追加
・商品グループ単位でのソート機能の追加

マーチャントセンター

・「診断」タブの導入

以下、順に見ていきたいと思います。


①「オークション分析」機能の追加

キャンペーン、もしくは広告グループの「詳細」から「オークション分析」を選択すると、他の検索連動型広告キャンペーンと同様のオークション分析レポートが確認できます。




このオークション分析には「インプレッションシェア」「重複率」「上位表示シェア」という新たな3つの項目が追加されています。

「重複率」は、該当するショッピングキャンペーンの広告にインプレッションが発生した際に、同時に他の広告主の広告が掲載された割合で、「上位表示シェア」は、オークションに参加した他の広告よりも自社の広告が上位に掲載された、もしくは他の広告が掲載されずに自社の広告が掲載された割合のようです。

残念ながら現時点では広告グループより細かいレベルではレポートが出ませんが、商品グループと広告グループがある程度揃っていれば強いカテゴリと弱いカテゴリはある程度分析が可能かと思います。ベンチマークCPCなどと照らし合わせながら、入札とマーチャントフィードの両面から施策を練ることができるようになりました。

また、あとの項目でも触れますが、このオークション分析レポートは期間とデバイスで分割が可能ですので、デバイスごとの成果を見ながら入札の強弱を設定する根拠としても使えそうです。


②「検索広告のインプレッションシェア」の改善

検索広告のインプレッションシェアの項目は、これまではキャンペーンレベルでの確認でしたが、今後はより細かいレベル(IDレベル)での確認ができるようになりました。




通常の検索連動型広告と同様のレベルで確認が可能になります。運用自体はこれまでと変更はありませんが、変化の原因が広告ランクなのか予算なのかが判断しやすくなります。なお、今回の変更によって10月と比較してインプレッションシェアが変化している可能性があります。


③「オークション分析」でデバイスと時間の分割が追加

オークション分析レポートは期間とデバイスで分割が可能になったため、デバイスごとの成果を見ながら入札の強弱を設定する根拠としても使えそうです。

土日にモバイル経由のクリックが増える、といった傾向もより掴みやすくなりますね。



④「入札単価シミュレーション」項目が追加

商品グループタブの表示項目に、「入札単価シミュレーション」が追加になりました。通常はマウスオーバーして表示させる入札シミュレーションが、表示項目として利用できます。

これはちょっと Google にしてはいやらしいというか、外連味のある更新だと思います。商品リスト広告はSERPに表示できる広告ユニット数が限られている広告のため、「インプレッションが出ない」という相談が多いのですが、マーチャントフィードの改善でどれだけインプレッションが増えるかは未知数のため、どうしても入札で補完しに行きがちです。

レポート項目として追加されたことでデータとしては扱いやすくなったので、どうしてもショッピングキャンペーンのトラフィックを増やしたいときには参考になる反面、オークションの加熱を大っぴらに奨励しているようで、ハイシーズン前とはいえ随分とあけすけですなあ、という印象も持ってしまいますね。




⑤商品グループ単位でのソート機能の追加

商品グループ単位の表示形式にフラットビューが追加されました。これを選択すると、これまで項目ごとのソートが階層ごとに表示されていたものが、広告グループ内の商品グループを跨いでフラットに表示されるようになります。

これは表示形式の更新なので直接的にキャンペーンへの影響はありませんが、各項目ごとに該当する商品グループがひと目で分かるようになりますので、これまでより格段に分析がしやすくなります。個人的には一番ありがたいアップデートかもしれません。




⑥「診断」タブの導入

このアップデートだけ、ショッピングキャンペーンではなくマーチャントセンターの変更です。「診断」タブによって、マーチャントフィードや商品アイテムに関するレポートを一覧でき、商品データの不備、有無、重要なエラーへの対処がしやすくなります。

また、商品アイテムのステータスを過去にさかのぼって確認したり、不承認となったすべての商品アイテムとその原因が記載されたレポートのダウンロード、統計情報なども確認できるようです。


参考:Inside AdWords-Japan: Merchant Center の [診断] タブで問題解決がよりシンプルに


他にも、マーチャントプロモーションが米国以外の国(日本は含まれず)にも公開されるなど、2014年の Google のショッピング関連の更新は昨年に続いてかなり頻度が高かった印象です。(まだあるかもしれませんが…)

ショッピングキャンペーンを始めとした商品フィード広告の進化は今後も引き続き続いていきそうです。商品リスト広告の市場規模はこの2年で急激に拡大していますので、今後も重要なアップデートがあれば継続的に記事にしていきたいと思います!



【2014年11月25日 追記】

今回の更新に合わせて、モバイルおよびタブレットでの表示も大胆に切り替えてくるようです。

Inside AdWords: Richer mobile shopping experience this holiday season

具体的には、以下の3点が追加変更されています。

・商品情報の拡張詳細表示(タブレット/スマートフォン)
・ローカル在庫広告の追加表示(タブレット)※12月24日まで
・商品画像の360度表示(スマートフォン)


これだけモバイル推しの変更が追加されると、今シーズンのデバイス別の結果がどう変わるか注視する必要があるかもしれません。なお、モバイルは表示面積が少ないので、オークションはかなり加熱しそうです。掲載の確認は、更新された③「オークション分析」でデバイスと時間の分割で結果を確認しましょう。話が出来すぎで何だか悔しいですが…



2014年11月12日水曜日

AdWordsの共有ライブラリ「入札戦略」レポートが刷新


共有ライブラリの「入札戦略」がアップデート

AdWords の共有ライブラリにある「入札戦略」がアップデートされました。今までより使いやすくなっています。


参考:Better reporting on your flexible bid strategies starts now(Google+)


今回新たに改良された点は大きく分けて以下の2つがあります。


(1)通常のキャンペーンと同様のグラフおよびサマリーが追加

(2)「入札戦略ステータス(bid strategy status)」が追加


今回の変更によって、入札戦略ごとの推移や比較を視覚的に確認できるようになるほか、各入札戦略のステータスが分かるようになるため、特にコンバージョン最適化系の入札戦略(目標CPA、目標ROAS、拡張CPCなど)がどういった状態にあるか把握できます。

ビジュアルで比較できるようになったことも意義がありますが、今回は(2)の入札戦略ステータスの確認ができるようになったことが大きいと思います。例えば、コンバージョンデータが少なく機械学習の途中(最適化がまだ十分でない段階)では、ステータスは「learning」(※)と表示されるため、現在の入札戦略のデータが十分かどうか、最適化された上での結果なのかどうかを判断することができるようになります。

共有ライブラリの「入札戦略」はこれまで積極的に使われている印象がありませんでしたが、今回のアップデートによって使う意味が出てきたように思います!


※ステータスの一覧はこちらのヘルプページにあります。
入札戦略ツールを使用する - AdWords ヘルプ



2014年11月7日金曜日

GoogleがRLSA(検索広告向けリマーケティング)のベストプラクティス資料を公開



RLSA(検索広告向けリマーケティング)資料

先日のアドワーズ入札自動化チェックリストに続き、アドワーズのベスト・プラクティスシリーズに、RLSA が加わりました。

以下の URL から PDFファイルをダウンロードできます。


リンク:
Inside AdWords: Winning the Second Chance with Remarketing Lists for Search Ads (RLSA)

PDF:
services.google.com/fh/files/misc/google-winning-the-second-chance-rlsa-best-practices.pdf


この資料は大きく分けて「設定(Set Up Smart)」「セグメント(Segment Your Prospect)」「入札(Bid For Success)」に分かれており、それぞれに詳細な説明もしくはかんたんな事例がついています。

設定(Set Up Smart):タグマネージャーを利用することによってコードの管理変更をウェブマスターからマーケターに移管し、施策の即時性を上げる有用性が説明されています。Google Tag Assistant も紹介されています。

セグメント(Segment Your Prospect):ディスプレイ向けリマーケティングと違いリストが1000以上必要なことが言及されているほか、代表的なリストである「訪問者全体」「カート放棄」「直近の購入者」について説明されています。組み合わせリストにも触れています。
また、ターゲティングである「掲載先の絞り込みと入札単価」「入札単価のみ」についても、以下のような比較表で使い分けが説明されています。



入札(Bid For Success):RLSA の対象になるリストについては、見込み顧客である可能性が高いことから、入札を引き上げることを推奨しています。また、一般によく言われるように意味の広いキーワードやマッチタイプを広げて入札することも勧めています。


その他の RLSA 関連資料

今回のベストプラクティス資料は、非常にシンプルな作りになっています。正直「もっといろいろやってます」という感想を持つアドワーズ関係者も多いのではないでしょうか。RLSA の応用にはアイデアと戦略が必要なため、どうしても最大公約数的な資料になってしまうのは否めないかもしれません。

RLSA は日本語の事例や資料も充実しています。まだの方はご一読を!


検索広告向けリマーケティング(RLSA)の概要と設定方法 - AdWords ビジュアルナビ

アナグラム株式会社 | 「どのキーワードに出す?」から「誰に出す?」で大きく成果が変わる、検索広告向けリマーケティング(RLSA)の解説と設定方法

Inside AdWords-Japan: 3 つの Google サービスで検索広告を完全自動化 - 運用コストの低減とコンバージョン数の拡大に成功

アナグラム株式会社 | 動的検索広告と検索広告向けリマーケティングを合わせて使って劇的に売上を上げるGoogle アドワーズ運用テクニック


なお、Google はこれまでも幾つかのベストプラクティスを発表しています。こちらのURLに一覧になっていますのでご参照下さい。

リンク:Google Best Practices - AdWords Help



2014年11月6日木曜日

GoogleがAdWordsの入札自動化チェックリストを発表



入札自動化のチェックリスト

Google が以前から定期的に出しているベスト・プラクティスシリーズに、入札の自動化についてのチェックリストが加わりました。完全版とダイジェスト版があり、それぞれ以下のURLからダウンロードできます。


リンク:Inside AdWords: Unlock the Power of Auction-Time Bidding in AdWords  

完全版:services.google.com/fh/files/blogs/google-automated-bidding-best-practices.pdf

ダイジェスト版:services.google.com/fh/files/blogs/google-automated-bidding-checklist.pdf


チェックリストは10項目と非常にシンプルですが、入札の自動化の基本から解説、導入までのステップなどが丁寧に書かれており、非常に親切なドキュメントになっています。

特に考え方から導入までに多くの項目が割かれていることから、入札の自動化における勘違いや不適切な運用が多いことが推察されますね。

以下、ダイジェスト版を抄訳してみましたのでご参考下さい。


すべてのオークションごとへ入札

〜アドワーズの自動入札を導入し、活かしていくためのチェックリスト〜

(1)ユーザーの文脈に合わせて入札すること。つまり、可能な限りオークションが発生するごとに入札するということ。


(2)自動化の本当の価値を理解すること。それによって時間を節約する。


(3)ビジネスの目的に沿った入札戦略を選択すること。


(4)正確なコンバージョンデータを基に入札を自動化すること。


(5)パフォーマンスのあるキーワード群を体系化し、入札ポートフォリオを設計すること。


(6)テストしやすい大きなキャンペーンを選択すること。


(7)これまでの実績(CPA/ROAS)に沿った設定でスタートすること。


(8)テストはシンプルに。一貫した1つのKPIをテストすること。


(9)頻繁にテストや設定を変えないこと。


(10)実績が極端に変化した際は技術的な問題や実装の問題の可能性が大きいので、可能な限り迅速に対応すること。




自動入札について考える

余談ですが、今回の記事では「自動入札」ではなく「入札の自動化」と表記しました。「自動入札」は、一般的にサードパーティのトラッキングシステムから判断したデータに沿ってプラットフォーム側に上限入札単価の変更を自動的に命令する仕組みを指すことが多いですが、このベストプラクティスで表現されている「Automated biddng(Auction-based bidding)」言葉は似ていますがニュアンスが微妙に異なるのではないかと考えています。

わざわざ、「オークションごとの入札変更」と表記していることからも、単に結果だけを見て上限入札単価を機械的に変える一般の「自動入札」とは意味が異なることを示唆しているように思います。オークションごとに判断できる様々なシグナル(デバイス、時間、場所、履歴、ユーザー属性等)に沿ってプラットフォーマー側で実入札を判断する仕組みは、オークションごとの判断である以上サードパーティでは実現不可能なことです。

チェックリスト(完全版)にある図を拝借すると、以下のようになります。正確で充分な量のデータがあるキャンペーンで一定期間 KPI に合わせて実施できれば、単純に CPA に合わせて上限入札単価を上げ下げする運用より成果が出るのは当然のようにも思えます。




一方で、この考え方は精度や頻度は圧倒的に高い反面、プラットフォーマーに異存するというリスクもあります。欧米のような Google が独占的な市場では判断を待たないかもしれませんが、沢山のチャネルを活用している大規模広告主にとっては経営判断が必要な部分でもあります。どちらがいいというものではありませんが、自動化をはじめとして、テクノロジーに寄り添いながら運用効率を高めていくことが今後の運用者には必須の能力になっていくでしょう。

マニュアルの入札業務が減っていく反面、入札ポートフォリオを設計する能力(≒アカウント構築能力)はますます価値が高まっていくと考えられます。


その他のベストプラクティス

なお、Google はこれまでも幾つかのベストプラクティスを発表しています。こちらのURLに一覧になっていますのでご参照下さい。

リンク:Google Best Practices - AdWords Help


AdWords以外のチェックリストは、以前の「リスティング広告(特にAdWords)チェックリストまとめ」もご参照下さい!




2014年11月4日火曜日

IABがプログラマティック・ダイレクト取引の標準APIを公開



OpenDirect 1.0 の発表


2014年11月3日、IAB(Interactive Advertising Bureau)は ニューヨークで行われていた AdOps Summit 2014 の場で、プログラマティック・ダイレクト(プログラマティック・プレミアム)と呼ばれる広告在庫予約型固定単価取引の標準API である「OpenDirect 1.0」を発表しました。



IAB Releases OpenDirect 1.0 For Public Comment of Specification That Provides Publishers Greater Control in Packaging, Buying and Selling Premium Inventory Through Programmatic


「OpenDirect 1.0」は、プレミアム在庫の自動取引のプロトコル(取引手順)を標準化することで、売買を行うセルサイド、バイサイド双方にとって信頼性や効率を強化する目的で発表されたもので、約1年前である2013年9月に AOL、マイクロソフト、ヤフー、Yieldex(後にMediaMathなども参加)によって結成された標準化ワーキンググループの活動が結実したものだと言えます。

この仕様によって、パブリッシャー(メディア)には以下のようなメリットがあるとされています。

・ワークフローの効率化の促進
・広告在庫の配信やプライシングなどの管理強化
・取引自動化の信頼性強化


多くのパブリッシャーが参加することで、代理店や広告主にも以下のようなメリットがあります。

・データの流動性や鮮度の担保
・複数メディアを1つのAPIで取引できることによる効率化
・アドエクスチェンジではアクセスできないプレミアム在庫の予約




APIのドキュメントは既に公開されており、102ページにも及んでいます。


リンク(PDF):www.iab.net/media/file/OpenDirect_V1.pdf

高まるプログラマティック・ダイレクトへの期待



eMarketer によると、プログラマティック・ダイレクトは、ディスプレイ広告のプログラマティック取引の中でも最も伸びる分野だと捉えられており、オープンRTBと比べてまだ規模は小さいものの、年率数倍の成長カーブを描き続けると予測されています。

US Programmatic Ad Spend Tops $10 Billion This Year, to Double by 2016 - eMarketer


プログラマティック取引の種類については、プラットフォーム・ワンさんの以下のページ、もしくは対談シリーズ「State of AdOps」でも詳述されています。ぜひご一読下さい。

プログラマティックと自動取引 -媒体社の視点から- | プラットフォーム・ワン 

テクノロジーが、パブリッシャーの武器になる −プラットフォーム・ワン 田辺雄樹氏 #State-of-AdOps Vol.10 ~ admarketech.


現在のアドテクノロジー分野は、中間のプレイヤーの乱立→合従連衡という過渡期にあることで、プロトコルが複数存在し、スケールメリットが出しにくく事業者の開発工数が肥大しがちなことが、今回の標準化を要請したものと思われます。

この標準化にどれだけのプレイヤーが参加するのか、巨人は動くのか、しばらくは見守っていく必要がありそうです。




2014年10月6日月曜日

リスティング広告をもっとクールな仕事にしていきたい – アナグラム 竹内まさる氏・田中広樹氏 #State-of-AdOps Vol.13


「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

※過去の記事はこちらから。

第13回目は、リスティング広告運用では今や最も有名な会社の一つであるアナグラム株式会社で広告運用の現場を牽引している、竹内まさる(たけうち まさる)さん、田中広樹(たなか ひろき)さんのお二人に、運用型広告の現状や今後の展望について、忌憚のないお話をお聞きしました。


# インタビューは 2014年8月某日に行われました。


正しいことで世の中に影響を及ぼしたければ、それなりの規模でやらないとダメだ。


●まずは、お二人が現在のお仕事に就かれるまでの経緯と具体的な業務内容を教えて下さい。

竹内:アナグラムの竹内です。アナグラムでは、弊社でお預かりしているアカウントの構築から運用までを見る、広告運用全体の責任者を務めています。チームメンバー、社内では「クルー」と呼んでいますが、彼ら彼女らと共にお客さまに成果をお返ししながら、クルーのみんなのスキルアップも同時に実現していくことがミッションです。

現在は23歳で、1年間大学を休学していたので実はまだ大学4年生です。アナグラムには、2012年の夏から参加しています。3年ほど前にTwitterを通じて自分と同じような年齢の人が既に事業をしていることを知って刺激を受けたのですが、多くの学生がやっているソーシャルメディア関連の仕事ではなく、堅調に伸びてきているSEMをやろうと、最初はアナグラムとは別の企業で初めてSEMに触れました。

独学で学んでいた時に参考にしていた「SEM-LABO」という代表の阿部のブログでアナグラムが社員を募集していることを知って、インターンとして働けないかと直談判して、その後社員に登用してもらい、今に至ります。

田中:アナグラムの田中です。アナグラムでは、リスティング広告の運用をしながら、社内のインフラやレポート整備など、クルーがお客さま以外のことで余計な時間を使わなくて済むように支援することを役割としています。

もともとはNHKで放送のエンジニアだったのですが、テレビがアナログから地上波デジタルに移行することで、元々やりたかった放送系の仕事が減ることが分かった段階で、今後30年間もやりたい仕事ができないのであれば自分の興味が湧くような別の仕事をしてみたいと思い、ウェブの業界に転職しました。

2009年にリスティング広告の代理店に入社し、3年ほどリスティング広告の運用や自動入札ツールをはじめとするソリューション周りの導入支援などを経験したあと、縁があって代表の阿部に声をかけてもらい、2012年の1月にアナグラムに社員第一号として入社しました。


●アナグラムさん、ここ最近急拡大している印象があります。

田中:アナグラムが阿部の個人事業から会社としてアクセルを踏んでいく少し前のタイミングで二人とも入社し、3人で業務展開をしていました。今は社員が二桁になったので、ずいぶん増えたなあという印象です。

竹内:気付いたら増えていましたね。以前浅草橋にオフィスがあった頃はもっとマイペースで仕事をしていたように思いますが、阿部がどこかで「正しいことを世の中に広めるには、それなりの規模でやらないとダメですよ」と言われたみたいで(笑)、私も「そうだそうだ」と煽ったせいか、事業のスピードがそのあたりから急に変わったように思います。


10人の頭で、1つのアカウントを見る


●お二人とも他社でリスティング広告を経験した上でアナグラムに参加されていますが、他の会社とアナグラムが違うところってどこでしょうか?

田中:他の代理店さんでも似たようなところは多いと思うのですが、前職では一人で何十アカウントも担当することが常態化していました。寝ている間も休みの日でも常に広告は出ていますし、どうしてもすべてのお客さまへ対応することが難しくなりますので、常にストレスに晒されているような状態になります。「こんなに厳しい業界なのか…」と途方に暮れたこともありました。

一方で、アナグラムであれば、一人で担当するお客さまがある程度絞られるので、1社1社にじっくりと対応することができます。また、周りにプロフェッショナルが多いので、そばにいながら学ぶことができるのは大きなメリットだと思います。

竹内:私も、田中さんと同じく学びが多い環境があることがアナグラムの良さの一つだと感じています。以前から実施しているグロースハックという取り組みがいい例ですが、10人の頭で1つのアカウントを分析したり構築するような試みなので、1人では思いつかなかったアイデアが生まれたりしますし、それだけさらに成果が上がっていく可能性があります。様々なアカウントやビジネスを見る機会に恵まれるので、トレーニングの効率としてもいいと思います。

あとは、その副次効果としてかもしれませんが、業務効率がよくなるので文化的な時間に帰宅できることでしょうか(笑)。

田中:確かに、早く帰れますね。広告代理店の場合、終電で帰るような場面も多いと思いますが、アナグラムでは残業はかなり少なく、定時に帰ることも多いです。

個人ではなくチームで成果を上げるためのグロースハック


●それは一般的な広告代理店からしたら夢のような環境ですよね。ぜひその秘訣を教えて下さい(笑)

竹内:いくつか挙げられると思いますが、まず、「責任の取れる範囲でのみお仕事をお受けしている」のが大きいと思います。他社さんと比較しても、一人が担当するアカウント数は少ないと思います。その分じっくり対応することができます。

田中:よく「PPPPPDCA」なんて言いますが、プランニングにちゃんと時間をかけます。先ほどのグロースハックもしかりですが、しっかり考えぬいた上でアカウントを構築すれば失敗するリスクを抑えられますし、運用もスムーズに軌道に乗ります。

竹内:コミュニケーションを促進するような制度があることも一因かもしれません。社員にはランチ代が支給されるのでみんなで一緒に出掛けることも多いですし、協力する文化がありますね。あと、なるべく上司から先に帰るようにしているのも大きいかもしれません。帰りが早いぶん朝が早いと言われることもありますが、9時までに出勤なので特別朝が早いわけではないです。


ルールを知らないと、戦えない。


●では、少し話題を変えて、リスティング広告とテクノロジーについてお聞きします。リスティング広告に代表される運用型広告は、技術の進化によって自動化できる部分とそうでない部分がはっきりしてきたように思いますが、そのあたりのバランスはどう捉えていますか?

田中:リスティング広告の機能自体が複雑になっているので、人間の頭では追いつかない領域まで達してきているように感じています。プラットフォーム側はテストを繰り返しながらよかれと思って機能をリリースしているはずなので、それを使う使わないは別として、「どういう意図でこの機能があるのか」「どういった仕組みでこの機能は動いているのか」を理解する姿勢が運用担当者には必要だと思います。

新しい機能が出たら、その仕組みや目的を明確に理解した上で使うか使わないかを判断する。その「判断ができること」が非常に大切だと思います。リリースされた機能を無批判にすべて使う必要はないですし、テクノロジーに依存するのではなく、理解した上で寄り添うことが重要だと感じています。

竹内:弊社では新しい機能を積極的に試すことが多いのですが、必ずしも毎回よい結果が出るとは限りません。ただ、試さないと理解できないですし、ナレッジとして溜まっていかないので、今後もお客さまと一緒にトライできる環境づくりを進めていきたいと思っています。


●新しい機能や仕組みが出てきたときは、どのように対応していますか?

竹内:大抵の場合、田中さんが噛み砕いて分かりやすく説明してくれます(笑)。背景や仕組みを理解したうえで、私が現場に浸透させていくことが多いです。

田中:しつこいようですが、知ろうとする姿勢が大事だと思います。「あれ、結構いいらしいよ」と誰かが試すのを待っているのではなく、自分で仕様を理解して、どう設定するとどうなるのか、どういう場面ならフィットするのか、仮説を立てながら自分で試すことですね。「新機能が出ました!」と機能だけを提案してもあまり意味はないですから。


●技術的なバックグラウンドを持たない人も多いと思いますが、まずはどういったところから学んでいくとよいと思いますか?

田中:リスティング広告であれば、まずはヘルプに目を通すことでしょうか。ヘルプはリスティング広告におけるルールブックのようなものなので、新機能やテクノロジーの議論をする前に、ルールを知っておくことが大事だと思います。新しい機能が出た時には、ヘルプを読むだけではなく、ルールをちゃんと理解した上で新しい機能がルールの上でどう作用するのかを確認する、といったイメージです。

もちろん、情報処理のバックグラウンドはあるに越したことはないかもしれません。ただ、順位や課金のような根本のルールは変わりませんから、まずはその根本を正確に掴まないと、テクノロジーの理解だけがあっても、戦えないと思います。

ヘルプ以上のことは世の中に書いてありませんので、ルールを知ることが本質を知ることにつながると思います。その上で、ノウハウやテクニックを乗せていけばいいのではないでしょうか。

竹内:最近はリスティング広告関連ブログも増えてきたので、新機能をレビューしたような記事も多くありますが、単にそれを鵜呑みにするのではなく、自分たちで確かめる習慣をつけるようにしています。

間違った理解のまま発信しないように、アナグラムのブログでもしっかり確かめてから記事にするようにしていますね。

田中:最近は、お客さまとの定例会で月次のご報告だけをすることは少なく、タグマネジメントやアクセス解析など、技術と関わりのある話に時間を割くことが多くなってきました。この仕事は、「リスティング広告のコンサルティング」から、「ウェブ戦略のコンサルティング」のようになるのではないかと思っています。


リスティングを、もっとかっこいい仕事にしたい


●リスティング広告の今後について、展望などがあればぜひ教えて下さい。

竹内:リスティング広告がインターネット広告の中心的な役割であるのは変わらないと思いますし、我々もそこを強みにしていくのは変わらないと思います。

あとは、パイの奪い合いをするのではなく、市場を拡げていく役割を担いたいと思っています。もうすぐリリースになるIMACARA(イマカラ)のように、店舗型ビジネスの力になることもできますし、スマートフォンを利用した集客としても、リスティング広告はまだまだ多くの可能性があるはずだと思っています。

IMACARA(イマカラ) 店舗型ビジネス向けの集客支援サービス


●個人として今後の目標があればお聞かせ下さい。

田中:リスティング広告が来年どうなっているかすら分からないほど、最近は進化のスピードが早まっていると思います。クルーのみんながキャッチアップできるように、社内ではなくお客さまにちゃんと向き合えるように、主に技術面で引き続きサポートしていきたいと思います。

竹内:求められた成果を出していくだけでなく、ご担当者さまが昇進されたり、お客さまのビジネスが弊社とのお取引を通じて伸びていくお手伝いをしていきたいと思っています。

また、リスティング広告は10年以上成長し続けている分野にも関わらず就業環境があまりよくなく、人が集まってくるような状況にないのではないかと感じています。就職希望の学生がひっきりなしに集まってくるとか、あの業界にいけば輝けるらしいとか、とにかく、リスティング広告をもっとクールな、かっこいい仕事にするために、出来る限りの貢献をしていきたいと思っています。


●本日は貴重なお話、ありがとうございました!


アナグラム株式会社
http://anagrams.jp/




2014年10月3日金曜日

リスティング広告(特にAdWords)チェックリストまとめ


運用型広告とチェックリスト

運用型広告の運用者の多くは、単に設定やレポートをするというより「企画→設計→入稿→運用→報告→改善」という一連の業務の流れで主体的な役割を担うことが多いと思います。カバーする業務が多いため、業務上必要なTODOはどうしても肥大しがちです。

広告クリエイティブ、キーワードなどの主要素をはじめとして、多くの設定・入力項目がありますし、CPAやROAS、アトリビューション分析など、数えればきりがないほど様々な要素や指標が分析対象となるため、TODOを確実に実行するためのチェックリストを作成している企業も多いと思います。

こういったチェックリスト化は避けられない一方で、運用型広告の結果は、ある要素が単一的な原因として特定されることはほぼなく、複数の項目が複雑に絡み合った結果であることが非常に多いため、チェックリストは最低限の事故を防ぐ効果はあっても、その導入によってたちどころに成果が上がるということは考えにくいのが現状です。チェックリストによる「形骸化」「思考停止」「硬直化」「ドキュメントや報告業務の増加」といった弊害は、システム開発の現場で時折指摘されますが、運用型広告でもそれは同じでしょう。

とは言っても、始めたばかりの運用者にとってはチェックリストはありがたい存在ですし、ベテラン運用者の慢心を戒める効果もあるかもしれません。企業の体制にあったチェックリストや業務フローの作成は、ある程度の規模のアカウント数を扱う企業には避けては通れない問題であるのも事実です。

そこで、今回は運用型広告の代表格であるリスティング広告(海外のものなので AdWords ばかりですが…)のチェックリストをまとめてみました。何かのご参考になれば幸いです!


(1)Unbounce のアドワーズチェックリスト

The Definitive AdWords Audit Guide [with Interactive Checklist] | Unbounce


A/Bテスト・ツールの Unbounce が紹介しているチェックリストです。ページにチェックボックスがついていて各項目の点数を集計してくれるという仕様になっています。

内容としてはシンプルで、大項目が「キャンペーン」「広告グループ」「キーワード」「ランディングページ」「分析」と分かれており、どれも実用的な項目が揃っています。新しいキャンペーンを配信する前や、誰かのアカウントを引き継いだ際、定期的な見直しのタイミングなどに使いやすいかもしれません。



(2)Google のモバイル広告成功のためのチェックリスト

Inside AdWords: The Google Best Practices Checklist for Mobile Success


Google が以前から定期的に出しているベスト・プラクティスシリーズに、モバイル広告の最適化チェックリストがあり、上記のURLからダウンロードできます。チェックリスト自体は14項目とシンプルですが、各項目の説明にヘルプや便利サイトへのリンクが貼られているので、参照するのに非常に便利なつくりになっています。クリエイティブに多くの項目が割かれており、モバイルにおける広告設定や表現の重要さが強調されていますね。

ちなみに、Search Engine Land と協働した Google AdWords Solution Center - AdWords Best Practices Series というものがあり、こちらにもドキュメントが多数格納されています。



(3)PPC Hero の初心者向けアドワーズ最適化チェックリスト

The Beginner's Checklist for the First Month of Your AdWords Optimization


リスティング広告専門記事が揃っている PPC Hero のチェックリストシリーズです。「The Beginner’s Checklist of What To Do in the First Month of Your AdWords Optimization」という名前のとおり、最初の1ヶ月でやるべきことリストが説明付きで載っています。

記事自体が長いので、以下の全3回に分かれています。

The Beginner's Checklist for the First Month of Your AdWords Optimization: Part 1
The Beginner's Checklist for the First Month of Your AdWords Optimization: Part 2
The Beginner's Checklist for the First Month of Your AdWords Optimization: Part 3

Part1 では「24-Hour Review」と題して、アカウントを立ち上げてからすぐのタイミング(当日ー翌日)の確認事項について細かく触れています。Part2 では、一週間経ったあとのプチ最適化(順位、予算、CPC、広告、除外キーワード等の調整)について、最後のPart3 では、二週間以後に本格的にデータが溜まってきた際の対応が細かく記載されています。



(4)WhiteSharkMedia のチェックリストインフォグラフィック

The Ultimate Checklist on How to Optimize Your Google AdWords Campaign in the First Month [Infographic]


上記の PPC Hero のコラムを書いている White Shark Media が提供しているインフォグラフィックです。「The Beginner’s Checklist of What To Do in the First Month of Your AdWords Optimization」の3回のシリーズで書いた内容をまるごと(つまり1ヶ月分)インフォグラフィックにしていますので、かなり長いです!どうぞ!

>The Ultimate Checklist on How to Optimize Your Google AdWords Campaign in the First Month – An infographic by the team at WhiteSharkMedia.com AdWords Blog



(5)日本語のチェックリスト各種

日本語のチェックリストは少ないのですが、アナグラムさんが Google のドキュメントを翻訳した「広告文改善のための10のチェックリスト」や、ドキュメントが充実している AdWords ビジュアルナビの「効果改善チェックシート」が便利だと思います。

アナグラム株式会社 | クリックを呼ぶ広告文: 広告文改善のための10のチェックリスト

効果改善チェックシート - AdWords ビジュアルナビ

効果改善チェックシート(応用編) - AdWords ビジュアルナビ



以上です。なにか新しいものが見つかれば、このページで随時紹介していきたいと思います。

大きく複雑なアカウントになればなるほど、チェックリストだけで改善できるほど単純な世界ではなくなりますが、「忙しくて手が回らない」とか「引き継いでから事故が多発」みたいな状況では、チェックリストは大きな威力を発揮します。

いいドキュメントが適切に活用できれば、日々のワークフローは確実に改善するはずです。自社でのチェックリスト作成のご参考になれば幸いです!


2014年10月3日追記:
Google から、年末に向けてのEコマース向けチェックリストが出ていました。(リンクはPDF)
services.google.com/fh/files/misc/holiday-shopping-checklist.pdf




2014年9月30日火曜日

運用者を助け、伴走するために。 – アクイジオジャパン 村上和也氏 #State-of-AdOps Vol.12


「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

※過去の記事はこちらから。

第12回目は、デジタルマーケティングの運用管理プラットフォームを提供するカナダの Acquisio と日本のアイレップの合弁企業である株式会社アクイジオジャパンで取締役を務めていらっしゃる村上和也(むらかみ かずや)さんに、運用型広告の現状や今後の展望について忌憚のないお話をお聞きしました。


# インタビューは 2014年8月某日に行われました。


広告運用を理解したプラットフォーム


●まずは、村上さんが現在のお仕事に就かれるまでの経緯と具体的な業務内容を教えて下さい。

アクイジオジャパンの村上と申します。システムエンジニアを経て2006年にアイレップに転職し、約8年間一貫してリスティング広告に代表される運用型広告に携わっています。

アイレップに転職した当初は広告運用のアカウントストラテジストとして、様々な業種の様々な規模のアカウントを担当してきました。

アカウントストラテジストとして3年ほど経った後、アイレップの社内でリスティング広告の研究開発を担うR&Dチームの立ち上げメンバーとして異動し、モバイル広告の研究や、リスティング広告のアカウント設計やルールの整備など、実践的な研究開発機関として仕事をしてきました。

当時のR&Dチームのミッションにはリスティング広告の自動入札ツールの導入も含まれており、その経緯で様々な自動入札ツールの評価や活用を進めてきました。


●そこからアクイジオジャパンにはどのような経緯で参画されたのですか?

参画はアクイジオジャパンの立ち上げと同時です。先ほど申し上げた、リスティング広告で多くの自動入札ツールを取り扱っていく中で、実際の広告運用にあまりマッチしない機能や、ツールの設計そのものが現場の運用に則していないものがあることが分かってきました。そういうツールを使わざるをえない場合、機能的な部分を自社開発することで補ってきたのですが、それが繰り返されていくとどうしても利用するアプリケーションが増えてしまい、理想の状態になかなか近づけないというジレンマにありました。

そこで、現場の運用に適した統合的な運用プラットフォームを作っていこうという機運が社内で高まり、Marketia(マーケティア)という構想が立ち上がりました。2010年から2011年にかけてのことです。

マーケティアの開発にあたっては、単なる自動入札ツールではなく、統合的な運用プラットフォームを作りたいという構想だったため、パートナーとの協業と、ゼロからのスクラッチ開発とを組み合わせながら試行錯誤しながら進めていました。

モックアップが出来上がった頃、現株式会社アクイジオジャパンの社長である井上が視察に行った ad:tech New York で Acquisio(アクイジオ)の紹介を受けました。井上は帰国後すぐ、マーケティアの開発構想を考えていた私の元に来て、驚いたように「ぜひ見ておいてもらいたいツールがある」と話し、テレフォンカンファレンスを設定したのが、アクイジオとの出会いでした。

いえ、正確に言えば、その時点でアクイジオとの出会いは2回目でした。数年前に私は、アクイジオの紹介を受けており、思想の端々は良かったのですが、必ずしも使い勝手の良いツールでなく、Yahoo! JAPAN という日本での重要なパートナーとの接続がされておらず、取扱いを見送った経緯があります。そのため、その当時は実はあまり期待せず、カンファレンスに参加しました。ところが、そのカンファレンスで彼らのツールを見せてもらったところ、我々の作ったモックアップと多くの部分で非常に似ていたのです。アクイジオ自身が広告運用を行なっている会社からスタートしていることもあってか、ユーザーインターフェースから運用をしっかり理解した上で構築されているプラットフォームにグレードアップしており、マーケティアの構想とも非常に近いものを感じたため、協業を決意しました。

そこから日本で合弁会社を作ることになるまでは急ピッチで進めてきました。アクイジオと初めてミーティングしたのが2013年の8月で、その年のクリスマスにアクイジオジャパンがスタートしているので、都合4ヶ月でさまざまな準備をしたことになります。

アクイジオジャパンは、アイレップとアクイジオの共同出資で立ち上げたジョイントベンチャーですが、法人としてアイレップからは独立して、オフィスも完全に別に設立し、運営しています。我々は、アクイジオ自体は、この運用型広告の業界で改善に取り組んでいる多くの方々に貢献すべきツールである、と捉え、他の広告代理店様にも活用して頂きたいと考えているためです。このツールを広めることをミッションとして、私もアイレップから転籍しています。


運用者の悩みを解決したい


●一人の運用者として、アクイジオを推進する理由は何でしょうか?

根底にあるのは、運用者が直面している課題と、今あるツールとのギャップを埋めたいという想いです。私は広告代理店にいた人間ですので、運用者の悩みは肌で感じています。先ほど申し上げたような、ツールの設計そのものが現在の広告運用に則していないものがあると分かったときに、ツールと運用者のギャップを埋めるソリューションがあるのであれば、それを提供していきたいと思っています。

例えば、あるアカウントでルールベースの自動入札を設計したとします。ある程度汎用性のあるロジックであれば他のアカウントに適用し、共有のナレッジにしていきたいと思うものですが、普及しているツールにはそういった機能はなかなかありません。レポートを共有したいというニーズでも同じです。

アクイジオには、そういった実際に運用していると欲しくなる「(一見)ささいな」機能が数多く揃っています。ツールの設計に運用者の目線が反映されているので、現場で苦労している運用者の助けになると思っています。


●他には具体的にどのような機能があるのでしょうか?

日本の、特に広告代理店においては、運用の中で多くの時間を予算管理業務にかけざるを得ず、課題に感じてらっしゃる場合がございます。予算管理機能があるツールは他にもありますが、ある程度大規模なアカウントでないと予測機能がうまく働かないことが多いため、予算規模の小さなアカウントではなかなか使えないことが多いです。その点、アクイジオは人間の手では達成し難いほどの予算着地率を実現してくれます。

アクイジオでは入札&予算管理(Bid & Budget Management)という機能があり、予算規模の小さな案件でも利用が可能です。2014年8月の時点では AdWords に対応しており、今後 Yahoo! JAPAN のスポンサードサーチにも対応予定です。どうしても予算管理の必要性から月末に集中する確認作業も、この機能で補完することが可能になります。


●自動入札ツールというと、大規模案件で使うものという認識がありますが、そうではないということでしょうか?

そうですね。実際に米国市場では、アクイジオは SMB(中小企業)向けのツールとしても標榜しているところがあります。

アクイジオが得意な領域はリスティング広告ですが、他にも、データを取り込むためのコネクターが充実しており、DSP やその他様々なデータをつなぎあわせて統合的に管理することが可能です。


自らに「ここまで」と線を引かないこと


●統合マネジメントツールの導入で、うまくいく企業とそうでない企業が分かれる印象があります。両者に明確な違いはあるのでしょうか?

私達のお客様である代理店にお伺いしてきた中で実感していることは、代理店のご担当者が「現状をよくしたい」と真剣に考えていらっしゃる場合は、導入が前に進みやすいです。労働集約型になってしまいがちな運用型広告の構造を変えたいですとか、システムを漫然と導入するのではなく、最適なサービスを提供するには、現状のワークフローをどう変えていくべきかと考えている方がご担当者ですと、導入が目的ではなく運用のフェーズに乗るので、活用につながっていくように思います。

その逆で、単純に「楽になるから」というだけでシステムを導入しようとすると、運用に乗りにくいかもしれません。先述の入札&予算管理(Bid & Budget Management)のような自動化機能はもちろんあるのですが、代理店様の強みを発揮しやすいように様々な機能があるので、「その代理店様である理由」を、ツールを通じて構築して頂くお手伝いができればと思っています。


●統合マネジメントツールを使っていく環境において、運用担当者に必要な知識やバックグラウンドはあるのでしょうか?

運用はこの分野の価値そのものなので、いわゆるテクノロジーの知識、分析の知識、マーケティングの知識、いずれも不可欠だと思います。マーケティングというと大げさですが、シンプルに言えば、ユーザーが何を考えて、何を欲しているのかを読み取り、どういう情報を提供できるかを考えて広告を運用する能力ですね。

違う言い方をすれば、そういったことを考えながら仕事をしないと、楽しくないですよね。楽しくないから続かなくなりますし、細部へ気が回らず、大雑把にまわして終わってしまいがちなのかなと思います。マーケティングへの興味がないとできない仕事かもしれません。

あと少し障壁が高いのか、テクノロジーに対して「これ以上はいいや」と、どこかで自分で線を引いてしまうと非常に勿体ないと思うことがあります。例えば、「タグが入っているので計測できる」というところまでに留まってしまい、それがどういう仕組みで動いているのかを知ろうとしない、といったことです。Javascript という単語は知っていても、それがどういう挙動で計測につながるのかには興味が及ばない。

もし興味があって、ある程度の知識があれば、このタグを少し工夫すると、実はこういうターゲティングもできるのではないかと新しい施策が考案できたり、すぐ消えていってしまうフラッシュアイデアを本当に形にできたりするのではないかと思います。例えば、「これから Cookie が使えなくなるかもしれない」といった議論があったときにも、何が影響を受け、何が影響を受けず、どう対応すべきか、また代替としてどのような技術があるのかに想像が及んだり、先回りして顧客と議論したり提案することができます。

みんながみんな技術的なバックグラウンドがあるわけではないので個人差があって当然ですが、興味さえあれば詳しい人に聞くことも出来ますし、一緒に仕事をしていく上で新しいアイデアを生むことができると思います。ほんの僅かの差、知ろうとする姿勢(知的好奇心)がこの分野で競争力を高めていく上で大事なのではないかと思います。

このように、マーケティングとテクノロジーが個人の中で融合することが、本当に面白い世界を生み出せることにつながるため、今後そういう人材へのニーズが増えるし、何よりもその人たちは本当に楽しい仕事ができる世界になるのではないでしょうか?


●そういう人をどのように見出していくべきなのでしょうか。もしくはどうしたらそうなるのでしょうか。

業界全体がもっと魅力的にならないといけないのかなと思っています。代理店でも採用や教育は難しいと悩んでいらっしゃるケースが多いと思います。

アクイジオがそこで貢献できることは、オペレーションを手漕ぎからエンジンへ変えていくことです。手漕ぎからエンジンに変われば、当然動かす人に求められる能力や職務が変わってきます。

求められる職務が変わっていく中で、根っこの仕組みを知っている人は、変化においてステップを踏んでいきやすいと思います。エンジンが搭載されたことによって運用者の職務を奪うのではなくて、運用者がより職務の幅を広げていきやすくすることに繋がるのかなと考えます。


運用者がちゃんと評価される環境に


●運用型広告の今後とご自身のキャリアについてお聞かせ下さい。

私自身、代理店で仕事をしていく中でずっと「頑張っている人を助けたい」と思って仕事をしてきました。現場の運用者は本当に頑張っているので、ソリューションで彼らを助けられないかと。

繰り返しですが、運用型広告というくらいですから運用が価値なので、運用している人がちゃんと評価される仕組みを作らないといけません。運用者の市場価値が上がっていかないと、言葉は悪いですが使い古されて辞めてしまう人が出てきかねないと思っています。この業界にいるといろんな経験ができて成長できる、そういう環境にしていくことに少しでも貢献していきたいと思っています。

あと、運用型広告はオペレーションの視点からコンサルティングの視点へ移行すると考えます。コンサルティング、というと捉えようのないイメージがありますが、これだけたくさんのデータが取れる世界なので、データをより高度に分析して、効果的だったりチャレンジングな施策を創作して、次のアクションへフィードバックしていく力を付けなければいけません。例えば、検索であれば検索クエリがユーザーのモチベーションを表わしているように、データという宝がたくさん眠っている世界なので、その宝をうまく活かして企業の発展に貢献できる仕事だと信じています。


●本日は貴重なお話、ありがとうございました!


アクイジオジャパン株式会社
http://www.acquisio.co.jp/



2014年9月29日月曜日

ショッピング向けAdSenseが拡げる、商品リスト広告(PLA)の可能性


商品リスト広告(PLA)へ予算をシフトする大手広告主

2012年に本格的にスタートした商品リスト広告(以下:PLA)は、ほんの僅かな期間でEコマースの検索連動型広告において主役とも呼べる位置にまで急成長しました。

2014年初頭に「2014年末までに、Eコマース事業者が PLA に割り当てる広告費は、検索連動型広告の予算総額の3分の1に達するだろう」という Marin Software の予測が出ていましたが、今ではその予測を上回るほどドラスティックに予算配分を変更している企業も多いのではないでしょうか。

参考:2014: Year of Google Product Listing Ads | Marin Software


実際、Adgooroo が60,000クエリを元に調査した 2014年第二四半期(4−6月)の広告主別のデータによると、広告費上位のEコマース事業者は、その広告費の過半を PLA に割り当てているという驚くべき結果が報告されています。


参考:Top Paid Search Advertisers Spent 63% of Budget on Product Listing Ads | Adgooroo


eBayの判断に学ぶ、大規模Eコマースの広告運用トレンド」という記事でも触れていますが、2012年まで実に2億近くのキーワードを入稿していたeBay(↑の表で6位)が、2014年では完全に振り切って予算の大半を PLA に割り当てているという事実が、Eコマースの広告運用のトレンドを如実に表していると言えるのではないでしょうか。

ちなみに、3位の Amazon がまったく PLA を利用していないのには、PLA が Amazon の商品検索広告 Amazon Sponsored Products と完全に競合するため、マーチャントセンターにデータを開示していないからだと思われます。


Eコマースリスティングの主役は PLA へ

上位の広告主の状況が示すように、PLA の市場規模も順調以外の何者でもない勢いで成長を続けています。

RKG が発表した2014年第二四半期(4−6月)のレポートによると、PLA の Bing版である Bing Product Ads を含む商品フィード広告費は、前年同期比で72%増加しており、急成長した2013年から勢いはまったく衰えないまま伸長を続けていることが分かります。Bing Product Ads が正式に開始したのは2013年の第三四半期からなので、実質このデータは PLA のみのデータだと捉えて問題ないと思います。

参考:Google Sees Overall Growth Accelerate in Q2, Yet Still Has Opportunity to Expand PLAs - RKG


PLA はこれまで、通常の検索連動型広告と比べてクリック率やコンバージョン率が高く CPC が低いという、ROI で判断したときに優位性があるという理由で伸びてきていました。

実際、Marin Software がつい先日(2014年9月)発表した白書「THE 17 TRENDS, PUBLISHERS, AND BEST PRACTICES EVERY RETAILER NEEDS TO KNOW」でも、2013年1月から2014年6月までの1年半の計測期間を通じて、常に PLA の方が通常の検索連動型のテキスト広告のクリック率を上回っていることが示されています。

参考:The 17 Trends, Publishers, and Best Practices Every Retailer Needs to Know | Marin Software


一方で、最近の調査では、PLA の CPC に関してはもう以前ほど割安感はなく、ほぼテキスト広告と変わらなくなってきているという結果も出ています。

これは、前述の広告主の広告予算比率が示すとおり、Eコマース事業者が ROI の見合わないキーワードの予算を PLA にシフトしていることで、PLA のオークションプレッシャーが高まるのと同時に、相対的に検索連動型広告のキーワードのBroad Terms(一般ワード)比率が下がり、 Branded Terms(社名キーワード)の比率が高くなることで、以前より両者の CPC が拮抗してきていることを示しています。

参考:Google Sees Overall Growth Accelerate in Q2, Yet Still Has Opportunity to Expand PLAs - RKG


もちろん、PLA のコンバージョン率は引き続き高いため、通常のテキスト広告より ROI に貢献しやすい状況は継続しています。言い換えれば、PLA は社名ワード以外ではほぼ最優先の施策になってきた、ということになるのかもしれません。


「効果が良い」以外の成長ドライバー

PLA が急成長している理由は、効果だけでなくその仕組みにもあるという点も忘れてはいけない事実です。

PLA はプロダクトフィードをもとに自動的に広告が生成される仕組みのため、マーチャントセンターと商品データベースのつなぎ込みさえできれば(および適切な中間処理ができれば)、Eコマースリスティングの運用で企業を悩ませてきた「キーワード数が肥大しがちで、入れ替わりが激しい」「そのため、広告費以外の部分で運用コストが非常に高い」という問題も同時に解決できるという利点があります。

PLA が登場する以前は、システム投資が可能な一部の大きなショッピングサイトや、サードパーティツールを利用する広告主以外では、キーワードや広告入稿等のオペレーションの自動化は難しかったのが実情でしたが、PLA や DSA(動的検索広告)など、フィードデータやクローリングによる広告作成技術の進歩・多様化によって、ヘタなマニュアル運用よりも場合によっては精度が高く、広告効果も高い配信が可能になりました。

PLAを始めとした新しい広告配信方法によって、最大手の広告主以外でもデータベースやウェブサイトと連動した広告の利用が急速に進むことになり、結果的に運用の効率化にも結びついていると考えられます。

実際、2014年8月に行われた、米国を含む主要5カ国の大規模Eコマース事業者(従業員が200人以上)240社を対象にした Forrester と Google の共同調査によると、自社のリスティング広告運用を半分もしくはそれ以上自動化している企業は全体の 75% にも及び、完全自動化している 8% の企業を含めると、全体の8割以上が運用の大半を自動化しているという調査が出ています。


参考:think.storage.googleapis.com/docs/faster-pace-for-retail-paid-search_research-studies.pdf


何を「自動化」と呼ぶのかは企業によって違いがあると考えられるものの、「マニュアル部分が多いが一部自動化している」という企業も全体の 16% あることから、広告技術を活用した運用自動化は、煩雑になりがちなEコマースリスティング広告において、既にトレンドというより常識に近いレベルだと言って差し支えないと思われます。

ここで重要なのは、「自動化だから人手が要らない」ということではなく、自動化の促進によって、手動で行う仕事が高度化(上流工程へのフィードバックや、分析の多様化)し、マニュアル作業の重要性が一層高まっているということだと思います。自動化が進めば進むほど、仕組みを理解して適切な意志決定ができる人材の市場価値は以前より高まるものと考えられえます。


PLA の抱えていた広告在庫問題

急拡大する PLA の需要を支えるため、Googleは、モバイルPLA の展開や、PLA が表示されるクエリの閾値の調整、ローカル在庫広告の展開など、様々な対策を短い期間で立て続けに行なってきました。

しかしながら、PLA はあくまで検索連動型広告であるため(ディスプレイの場合は「動的リマーケティング」)、コマーシャルクエリと呼ばれる購買意向がある程度見込まれる検索クエリの回数がそのまま広告在庫数になります。購買に繋がる検索数が増えない限り、どこかで規模の拡大が頭打ちになってしまう構造です。

検索連動型広告には、Coverage(カバレッジ:検索クエリに対して広告が表示される割合)と Depth(デプス:検索クエリに対して表示される広告の本数)という概念がありますが、PLA は商品情報を表示する広告である以上、広告表示はコマーシャルクエリに限るため、カバレッジは極端には増やせません。そのため、これまでは Depth にフォーカスが当たっていました。

これはつまり、どうすれば検索体験を損なわずに PLA の広告ユニットを増やせるのか、という工夫が必要なことを意味します。PLA は画像や価格などの商品情報を検索結果に表示する広告であるため、テキスト広告より検索結果に表示面積が必要です。通常のテキスト広告より Depth に制限があるということです。

表示面積を広げすぎて検索結果の画面が商品画像で埋め尽くされるようなことになってしまうと、検索エンジンそのものの利便性が損なわれ、ユーザーが離れてしまう危険性があるため、表示面積とユーザーの利便性を損なわないギリギリのバランスで検索結果を表現するために、これまで Google は短い期間でさまざまな表示形式の変更をテストしていました。

例えば、Carousel(カロウセル)というヘッダーロールテストは、まさに Depth を増やすために行われていたと考えられます。

参考:PLA-carousel | CPC Stragegy


広告在庫を拡張する「ショッピング向けAdSense」

表示面積の少ないモバイルデバイスの急速な伸びも PLA の平均Depth にマイナスインパクトがあるため、拡大する PLA の成長率を維持するためには、表示形式以外での広告在庫の増加こそが差し迫った重要な課題だったと推測できます。そこで2014年9月に登場したのが、「ショッピング向けAdSense」と、「PLA の検索パートナーへの拡大」です。



参考:Google Brings PLAs To Third-Party Sites Like Walmart.com


このショッピング向けAdSense(AdSense for Shopping)は、リテールサイトに特化した AdSense の新しいユニットで、PLA のみこの枠のオークションへ参加することができます。

リリースにもあるように、AdWords の広告主は、ショッピングキャンペーンの設定で「Google 検索パートナー」が有効になっていれば、ショッピング向けAdSense のあるサイトでのサイト内検索をしたユーザーに広告を表示することができます。AdSense側からすると、検索向けAdSense の PLA 版ということになり、既に存在している動的リマーケティングはコンテンツ向けAdSense に表示されますので、フィードを利用した広告が出る枠としては、それぞれ棲み分けることになります。

ショッピング向けAdSense があるサイトは、2014年9月のリリース時には Walmart.com しか公開されていませんし、参加するにはフォームから申請する必要があるため、普及しているコンテンツ向けAdSense のように大小さまざまなサイトが大量にあるというよりは、一部のショッピングモールや比較サイトなどが中心になると考えられます。


参考:Inside AdWords: Extend the reach of your Product Listing Ads to qualified shoppers


通常のテキスト広告と同様、パートナーでの表示結果は品質スコアに影響しないという旨がリリースには明記されていますので、品質の計算はGoogleプロパティのみで行われることには変わりがないようです。また、通常の検索連動型広告と同様に、個別の検索パートナーごとの結果を確認することはできません。


一般には、「サイト上の広告枠=ディスプレイ広告」として認識されており、アドテクの話題はディスプレイ広告のターゲティングに偏りがちですが、サイト内検索にはユーザーのその瞬間の興味が明確に現れていますので、興味関心をわざわざ類推するよりも関連性の高いターゲティングが可能です。ショッピングサイトの収益化にとってもプラスに働くことが期待できると考えられます。

ショッピング向けAdSense は、PLA を利用する広告主が増加し、広告在庫を拡げる必要に迫られたからこそ出てきた仕組みだと思います。ショッピング向けAdSense によって、商品情報の活用性はますます拡がっていくと同時に、商品情報の活用がEコマースのマーケティングにおいて非常に重要なカギを握ることが改めて明らかになったような気がします。

商品フィード広告の進化はこの2年ほどで急速にその速度を上げています。引き続きこの分野には注目していきたいと思います!



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