2014年1月27日月曜日

Ad Ops Summit 2013 から学ぶ広告運用に必要なこと


高まる運用者の需要

LUMAscapes の Display Landscape や Chiefmartec の Marketing Technology Landscape に象徴されるように、アドテクノロジー/デジタル広告業界のプレイヤーは年々増加し、情勢は常に複雑に変化し続けています。

デマンドサイドである広告主、サプライサイドであるパブリッシャー、そしてその間をつなぐ製品やプラットフォーム、広告会社やトレーディングデスクなど、数多くのステークホルダーを巻き込んで、変化は年々加速しているように思います。


2000年代初頭に検索連動型広告が登場してからは、アウトプットや運用方針から遡及的にキャンペーンを設計し、リアルタイムに反映される結果を判断しながら改善を早いサイクルで繰り返していく、いわゆる「運用型広告」が伸びていきました。その運用型広告の伸長にともなって、デジタル広告の技術は進化し、広告のエコシステムを形成するプレイヤーの種類や数は日増しに増えてきています。

一方で、プレイヤーの数が増えれば増えるほど、実際に広告を運用する実務者が把握しなければならない範囲は増大し、技術の進化とプレイヤーの増加に比例するかたちでキャンペーン複雑さは増します。複雑さが増せば増すほど簡易化や自動化という誘惑に駆られますが、簡易化や自動化は、複雑さを受けとめた上で細部にわたる設計や調整を行なわないと実現できず、口で言うほど簡単な作業ではありません。

RTB によって取引そのものはどんどん自動化されていく傍らで、複雑化・多様化する各種システムを理解し、それらを組み合わせてキャンペーンの全体設計や詳細設計、分析の結果を施策に落とし込める運用者の需要は年々高まっています。今後ますますデジタル広告の主役となっていく運用型広告において、キャンペーンの成否を分けるのはシステムではなく、それを使う人だと言えるのではないでしょうか。


IAB Ad Operations Summit という場

様々なメディアに様々なデバイスを通じて配信される広告を適切に運用していくことは容易ではありません。多くの場合、運用者へかかる負担やプレッシャーは大きく、トレーディングデスクや広告代理店であればまだしも、孤独な中で複雑な状況に直面しているしている運用者も多いと思います。

そのような状況の中で、IAB は近年、広告運用に対するイベントや資格に力を入れています。2013年10月には広告運用者向けの認定プログラム「IAB Digital Ad Operations Certification」をスタートさせ、運用者の環境整備をバックアップしているほか、年々複雑化する運用型広告の業務を俯瞰し議論する場として 2008年から「Ad Operations Summit」という、広告運用者向けのイベントを開催しています。


AdOps Summit Overview
http://www.iab.net/events_training/2013/adops/overview



少し前ですが、2013年11月に「Ad Operations Summit 2013」が開催され、様々なディスカッションが行われました。当日モデレータを務めたトレーディングデスクを提供する Operative の CEO である Lorne Brown が、ブログで当日の振り返りを記載していますので、この記事から今後の広告運用に必要なことを読み取っていきたいと思います。


Photo: IAB Ad Tech & Data Leadership (http://www.iab.net/ad_tech_data_leadership)


The New Age of Ad Ops | The Op-Ed
http://theoped.operative.com/the-new-age-of-ad-ops-key-takeaways-from-iabs-ad-operations-summit-2013/



3つの現実

アドテクノロジーはディスプレイ広告の改革と同義に捉えられることが多く、これまで多くがデマンドサイドの話が中心でした。近年、Publisher Trading Desk などの新しい事業モデルなどを含め、サプライサイドであるパブリッシャーの動向に注目が集まっています。

Lorne が、モデレートを始める前に以下の3つの現実に注目したいと述べたのも、そういった背景が関係していると思われます。

"New competition is forcing publishers to create new business models"
新たな競争は、パブリッシャーに新たなビジネスモデルを要請している。

"Publishers continue to lag in the ad tech arms race"
パブリッシャーはアドテクの陣取り合戦から引き続き遅れている。

"Innovation and complexity driven by buy-side ad agencies have diluted the publisher’s ability to think strategically about strategy and organizational structure"
バイサイドの広告代理店が進めてきたイノベーションと複雑さによって、パブリッシャーが自らの事業を戦略的に考える能力が弱まっている。


Ad Ops is Now All Ops

広告運用者は既に「広告」の範囲を越え、関係するすべての役割の運用をまかなう必要が出てきています。

実際、運用型広告の重要性が高い現場では、顧客の実質的なインターフェースを運用者が務めたり、システムの管理やベンダーとのやり取りは現場にいる運用者でないと適切に実務が回せない、というケースが多いように思います。以下 Lorne の文章を引用します。


"The ad operations role has evolved tremendously. Simply among those who took part in the session, we generated a list of 20 responsibilities that now fall onto ad ops. It’s no longer just about doing QA, inventory management, trafficking, reporting and, campaign management. Ad ops now has direct responsibility for technology, vendor management, creative and developers, yield management, programmatic, block lists and change management around new sales structures, ad technology and processes."
広告運用という役割は途方もない発展を遂げました。この間のセッションに参加したメンバーで数えただけでも20ほどの広告運用の職責を挙げることができます。広告運用はもはやQA(品質保証)、在庫管理、広告取引、レポートやキャンペーンマネジメントだけに留まらず、テクノロジーそのもの、ベンダーマネジメント、クリエイティブや開発、イールドマネジメント、プログラマティック、ブロックリストの作成や営業の組織編成、プロセス管理などあらゆる分野に直接的な責任を負っています。


"We even heard that some companies are moving account management functions into ad ops to create a more “Technical Account Manager”. If that weren’t enough, there’s cross functional roles around creative, sales operations, product packaging, measurement, training all other groups, billing, closing the books, profit, costs of goods sold, partner and reach extension enablement. This progression can’t be ignored; CEOs must equip their businesses with the tools that will help their ad ops team have a greater organizational impact by driving profitable revenue."
幾つかの企業は「テクニカルアカウントマネージャー」職を作るため、アカウントマネジメントの機能を広告運用の組織に移管させているようです。それで充分でなければ、クリエイティブ、セールスオペレーション、製品パッケージや測定、他の部門へのトレーニング、請求管理、決算処理、利益管理、パートナー管理などの他部門も巻き込んだ部門横断的な役割になります。この変化は看過できません。経営者は運用者が組織の中でインパクトを出せるようなツールを準備すべきです。


広告運用チームはビジネス戦略への理解が欠かせない

このように、広告運用者が All Ops として企業の経営のあらゆる部分での重要さを増してきていることから、企業のビジネス戦略への理解が重要(Ad Ops Teams Need a Deep Understanding of Business Strategy)だということが強調されています。


"In order to perform at maximum efficiency, the CEO and CRO must educate ad operations leaders on the company vision and the revenue goals over the next three to five years."
パフォーマンスと効率を最大限に活かすためには、広告運用のリーダークラスの人材に企業のビジョンやゴールを伝えることが重要です。


広告運用者に求められる役割が変化している以上、ビジネスの全体戦略に運用者の関与は必須だとLorne は語ります。


自動化の力を過小評価しない

広告運用の進化と複雑化の代償として、マニュアル(手動)作業とそれに伴う時間が増大し、戦略的な仕事やクライアントに向けた仕事に純粋に時間を割くことが難しくなっているようです。実際、多くのトレーディングデスクは様々なプラットフォームやシステムに関わるため、内部的な業務が肥大する傾向にあります。

"Clearly, the evolution of ad ops carries with it an underlying need to alter the number of time-consuming manual processes that detract from the ability to focus on strategic or client-focused activities."

「All Ops化」している Ad Ops にとって、キャンペーンマネジメント以前に、様々なプロセスにおける事務作業のコスト肥大が問題であることが多いのは、洋の東西を問わないようです。

適切なパートナーを見つけ、テクノロジーによって内部作業を自動化し、本来の価値創出に向ける時間を捻出することが重要です。それは一般に言われる「運用は自動化して企画や設計に時間を割け」といった類の言説とは似て異なる意味になるのではないでしょうか。


運用者に投資しよう

重要性を増している広告運用/運用者に投資するのは、マーケティングにある程度以上投資している企業であれば、至極当然な流れなのかもしれません。人への投資とシステムへの投資、どちらも大切になってくるのではないでしょうか。


"Ad operations employees have an average shelf life of about 15 months per hire. Be prepared to set these hires up for career advancement and promotion opportunities in order to avoid turnover."
広告運用に従事する社員の平均寿命は15ヶ月と言われています。勤続期間を引き上げ、退職を防ぐためには、広告運用がキャリアとして認められ出世の可能性があるという状況を作る必要があります。


"The importance of ad operations, and the complexities around it, will only continue to grow. It is, therefore, incumbent on companies to invest in the right tools to enable and empower ad operations teams to be one of the most efficient, revenue-driven areas of their business."
広告運用の重要性と複雑さは引き続き増していきます。だからこそ、広告運用チームを後押しする適切なツールやシステムこそが、ビジネスにとって最も効率がよく次の成長につながる投資先なのです。


運用者のキャリアの確立と業務環境の整備は、マーケットの成長に欠かせない要素だと思います。admarketech.は今年も「State of AdOps」シリーズなどを通じて、運用者にフォーカスを当てていきたいと思います!



2014年1月7日火曜日

2013年にモバイル広告はどれだけ伸びたのか?


#あけましておめでとうございます。2014年もよろしくお願い致します。

例年、年末年始はその年のトレンドを予測する記事が増えます。一方で、前年に見立てた予測に対して現実はどうだったのかを振り返る記事は、その予測ほど多くはありません。

このブログでも、2013年の最初の記事は海外のオンライン・マーケティング市場の予測記事をまとめたものでした。そこで、2014年の予測をする前に、2013年の最初の記事から1年経って、実際はどうだったのか少し振り返ってみたいと思います。


海外の市場予測から浮かび上がる2013年のオンライン・マーケティング5つのトレンド
http://www.admarketech.com/2013/01/2013prediction.html


昨年の記事で、海外のメディアの多くは以下の5つを予測していました。
予測1. モバイルの完全な離陸
予測2. ソーシャルメディアの計測と連携の強化
予測3. 地方/中小企業(SMB)市場の伸長
予測4. マーケティング施策の精緻化と、統合分析の本格化
予測5. 分析系人材採用とプライバシー問題の加熱

これらの予測の多くは実際に起こったように思います。予測2.は Universal Analytics の本格稼働や Facebook Exchange の伸長などが代名詞となりましたし、予測5.のような分析計人材については日本でも毎週のように記事が書かれ、7月にはデータサイエンティスト協会が発足するなど、まさに市場が加熱していたような印象です。

以下では、上記の中でも比較的定量的に把握ができそうな「予測1. モバイルの完全な離陸」について、もう少し細かく振り返ってみたいと思います。


現実が予測を追い抜いたモバイル広告

1年前の記事では、以下の eMarketer の記事を引用して、2013年のモバイル広告の成長を紹介していました。

New Forecast: US Mobile Ad Spending Soars Past Expectations – eMarketer Newsroom


これによると、2013年の米国のモバイル広告の市場規模は43.1億ドル(約4,500億円)と予想されています。2012年対比で65%増という見込みです。

しかしながら、昨年末(2013年12月)に発表された最新の米国モバイル広告市場規模は、以下のように上方修正されています。

Most Digital Ad Growth Now Goes to Mobile as Desktop Growth Falters - eMarketer


更新された上記の表では、2013年の米国のモバイル広告市場規模は96億ドル(約1兆円)となり、2012年対比で120%増(2.2倍)ということになっています。

比較元の2012年も26.1億ドル→43.6億ドルと17億ドルほど上がっていますが、2013年はそこからさらに2倍以上成長したことになり、2012年時点での予測を遥かに上回るスピードで伸びていることが分かります。計測の元データが若干違う(前回予想では email と lead generation が含まれていない)ことを差し引いても、現実が予測を追い抜いてしまっているようです。

この表がさらに衝撃的なのは、2016年にはモバイル広告がデスクトップ向け広告に規模としてほぼ並び、2017年には逆転すると予測していることです。これまで予想より早くモバイルが成長していることを考えると、あと2−3年も経たないうちにインターネット広告を巡るデバイスの風景はガラッと変わってしまうのかもしれません。


モバイルでも検索が牽引

急速に伸びているモバイル広告の内訳はどうなっているかというと、やはり検索が一番手に挙げられるようです。

これも同じく eMarketer ですが、2013年の8月に発表されたモバイル広告のフォーマット別予測によると、2013年時点でモバイル広告の50%強は検索連動型広告が占めており、その比率は若干変化するものの将来に渡って高い比率を保つことが予測されています。


Mobile Gains Greater Share of Search, Display Spending - eMarketer


モバイル広告の市場規模については調査会社各社で微妙に予測が違っていますが、検索連動型広告が高いシェアを占めることについてはほぼ同じような予測を立てています。上記の表では2013年のモバイル検索連動型広告は約43億ドルとなっていますが、モバイル広告費を約70億ドル規模とややコンサバに予測している Forrester Research でも検索は約38億ドルほどと見込んでおり、eMarketer より検索連動型広告の比率を高く見積もっています。

IAB はデバイス別にフォーマットの比率を発表していませんが、IHS の発表資料を見るに、アジアは50%弱、米国は55%程度と見るのが妥当のようです。

↑クリックすると拡大します

[PDF]www.iab.net/media/file/GlobalMobilePresentation2013FINAL.pdf



デバイスの伸びによって変わるユーザー行動

「スマートフォンやタブレットの台数が増えている」という事実は今さら言うまでもないですが、スマートデバイス・モバイルデバイスの普及による消費者行動の変化は顕著に起こっています。

以下のインフォグラフィックはそのいくつかの例が挙げられています。

Infographic - People Shopping on Mobile Devices Visit More Sites Than Those on a PC - Velvet

モバイルデバイスでは、PCと比べて2倍、Eコマースのサイトに訪問しています。


必ずしもショールーミングばっかりしているわけではなく、むしろ家でこそ探しています。


モバイルではブランドサイトを見てクーポンをゲットし、PCではレビューを見ます。


モバイルコマースはわざわざ指摘せずとも確実に生活に浸透してきていますが、インターネット広告費の2割のシェアを持つ小売(Retail)業界がこれを黙って見ているわけはありません。


リアルタイムにあらゆるデバイスに情報を届けることは、ユーザーのタイミングに合わせて情報を提供することを可能にします。商品リスト広告が2013年にモバイル対応したように、商品情報そのものが広告になりうる時代において、モバイルへの対応は小売にとって既に必須事項のようです。

これまではエンタメなどの一部の業界に出稿が偏っていると言われていたモバイル広告ですが、小売をはじめとした主要な業界もユーザー行動の変化に合わせたモバイルデバイスへの対応を加速させていくと思われます。

2014年も、これまで以上に市場の伸びと進化が感じられる1年になるのは間違いありません。引き続きモバイルを巡る状況はウォッチしていきたいと思います!



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