運用者を助け、伴走するために。 – アクイジオジャパン 村上和也氏 #State-of-AdOps Vol.12


「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

※過去の記事はこちらから。

第12回目は、デジタルマーケティングの運用管理プラットフォームを提供するカナダの Acquisio と日本のアイレップの合弁企業である株式会社アクイジオジャパンで取締役を務めていらっしゃる村上和也(むらかみ かずや)さんに、運用型広告の現状や今後の展望について忌憚のないお話をお聞きしました。


# インタビューは 2014年8月某日に行われました。


広告運用を理解したプラットフォーム


●まずは、村上さんが現在のお仕事に就かれるまでの経緯と具体的な業務内容を教えて下さい。

アクイジオジャパンの村上と申します。システムエンジニアを経て2006年にアイレップに転職し、約8年間一貫してリスティング広告に代表される運用型広告に携わっています。

アイレップに転職した当初は広告運用のアカウントストラテジストとして、様々な業種の様々な規模のアカウントを担当してきました。

アカウントストラテジストとして3年ほど経った後、アイレップの社内でリスティング広告の研究開発を担うR&Dチームの立ち上げメンバーとして異動し、モバイル広告の研究や、リスティング広告のアカウント設計やルールの整備など、実践的な研究開発機関として仕事をしてきました。

当時のR&Dチームのミッションにはリスティング広告の自動入札ツールの導入も含まれており、その経緯で様々な自動入札ツールの評価や活用を進めてきました。


●そこからアクイジオジャパンにはどのような経緯で参画されたのですか?

参画はアクイジオジャパンの立ち上げと同時です。先ほど申し上げた、リスティング広告で多くの自動入札ツールを取り扱っていく中で、実際の広告運用にあまりマッチしない機能や、ツールの設計そのものが現場の運用に則していないものがあることが分かってきました。そういうツールを使わざるをえない場合、機能的な部分を自社開発することで補ってきたのですが、それが繰り返されていくとどうしても利用するアプリケーションが増えてしまい、理想の状態になかなか近づけないというジレンマにありました。

そこで、現場の運用に適した統合的な運用プラットフォームを作っていこうという機運が社内で高まり、Marketia(マーケティア)という構想が立ち上がりました。2010年から2011年にかけてのことです。

マーケティアの開発にあたっては、単なる自動入札ツールではなく、統合的な運用プラットフォームを作りたいという構想だったため、パートナーとの協業と、ゼロからのスクラッチ開発とを組み合わせながら試行錯誤しながら進めていました。

モックアップが出来上がった頃、現株式会社アクイジオジャパンの社長である井上が視察に行った ad:tech New York で Acquisio(アクイジオ)の紹介を受けました。井上は帰国後すぐ、マーケティアの開発構想を考えていた私の元に来て、驚いたように「ぜひ見ておいてもらいたいツールがある」と話し、テレフォンカンファレンスを設定したのが、アクイジオとの出会いでした。

いえ、正確に言えば、その時点でアクイジオとの出会いは2回目でした。数年前に私は、アクイジオの紹介を受けており、思想の端々は良かったのですが、必ずしも使い勝手の良いツールでなく、Yahoo! JAPAN という日本での重要なパートナーとの接続がされておらず、取扱いを見送った経緯があります。そのため、その当時は実はあまり期待せず、カンファレンスに参加しました。ところが、そのカンファレンスで彼らのツールを見せてもらったところ、我々の作ったモックアップと多くの部分で非常に似ていたのです。アクイジオ自身が広告運用を行なっている会社からスタートしていることもあってか、ユーザーインターフェースから運用をしっかり理解した上で構築されているプラットフォームにグレードアップしており、マーケティアの構想とも非常に近いものを感じたため、協業を決意しました。

そこから日本で合弁会社を作ることになるまでは急ピッチで進めてきました。アクイジオと初めてミーティングしたのが2013年の8月で、その年のクリスマスにアクイジオジャパンがスタートしているので、都合4ヶ月でさまざまな準備をしたことになります。

アクイジオジャパンは、アイレップとアクイジオの共同出資で立ち上げたジョイントベンチャーですが、法人としてアイレップからは独立して、オフィスも完全に別に設立し、運営しています。我々は、アクイジオ自体は、この運用型広告の業界で改善に取り組んでいる多くの方々に貢献すべきツールである、と捉え、他の広告代理店様にも活用して頂きたいと考えているためです。このツールを広めることをミッションとして、私もアイレップから転籍しています。


運用者の悩みを解決したい


●一人の運用者として、アクイジオを推進する理由は何でしょうか?

根底にあるのは、運用者が直面している課題と、今あるツールとのギャップを埋めたいという想いです。私は広告代理店にいた人間ですので、運用者の悩みは肌で感じています。先ほど申し上げたような、ツールの設計そのものが現在の広告運用に則していないものがあると分かったときに、ツールと運用者のギャップを埋めるソリューションがあるのであれば、それを提供していきたいと思っています。

例えば、あるアカウントでルールベースの自動入札を設計したとします。ある程度汎用性のあるロジックであれば他のアカウントに適用し、共有のナレッジにしていきたいと思うものですが、普及しているツールにはそういった機能はなかなかありません。レポートを共有したいというニーズでも同じです。

アクイジオには、そういった実際に運用していると欲しくなる「(一見)ささいな」機能が数多く揃っています。ツールの設計に運用者の目線が反映されているので、現場で苦労している運用者の助けになると思っています。


●他には具体的にどのような機能があるのでしょうか?

日本の、特に広告代理店においては、運用の中で多くの時間を予算管理業務にかけざるを得ず、課題に感じてらっしゃる場合がございます。予算管理機能があるツールは他にもありますが、ある程度大規模なアカウントでないと予測機能がうまく働かないことが多いため、予算規模の小さなアカウントではなかなか使えないことが多いです。その点、アクイジオは人間の手では達成し難いほどの予算着地率を実現してくれます。

アクイジオでは入札&予算管理(Bid & Budget Management)という機能があり、予算規模の小さな案件でも利用が可能です。2014年8月の時点では AdWords に対応しており、今後 Yahoo! JAPAN のスポンサードサーチにも対応予定です。どうしても予算管理の必要性から月末に集中する確認作業も、この機能で補完することが可能になります。


●自動入札ツールというと、大規模案件で使うものという認識がありますが、そうではないということでしょうか?

そうですね。実際に米国市場では、アクイジオは SMB(中小企業)向けのツールとしても標榜しているところがあります。

アクイジオが得意な領域はリスティング広告ですが、他にも、データを取り込むためのコネクターが充実しており、DSP やその他様々なデータをつなぎあわせて統合的に管理することが可能です。


自らに「ここまで」と線を引かないこと


●統合マネジメントツールの導入で、うまくいく企業とそうでない企業が分かれる印象があります。両者に明確な違いはあるのでしょうか?

私達のお客様である代理店にお伺いしてきた中で実感していることは、代理店のご担当者が「現状をよくしたい」と真剣に考えていらっしゃる場合は、導入が前に進みやすいです。労働集約型になってしまいがちな運用型広告の構造を変えたいですとか、システムを漫然と導入するのではなく、最適なサービスを提供するには、現状のワークフローをどう変えていくべきかと考えている方がご担当者ですと、導入が目的ではなく運用のフェーズに乗るので、活用につながっていくように思います。

その逆で、単純に「楽になるから」というだけでシステムを導入しようとすると、運用に乗りにくいかもしれません。先述の入札&予算管理(Bid & Budget Management)のような自動化機能はもちろんあるのですが、代理店様の強みを発揮しやすいように様々な機能があるので、「その代理店様である理由」を、ツールを通じて構築して頂くお手伝いができればと思っています。


●統合マネジメントツールを使っていく環境において、運用担当者に必要な知識やバックグラウンドはあるのでしょうか?

運用はこの分野の価値そのものなので、いわゆるテクノロジーの知識、分析の知識、マーケティングの知識、いずれも不可欠だと思います。マーケティングというと大げさですが、シンプルに言えば、ユーザーが何を考えて、何を欲しているのかを読み取り、どういう情報を提供できるかを考えて広告を運用する能力ですね。

違う言い方をすれば、そういったことを考えながら仕事をしないと、楽しくないですよね。楽しくないから続かなくなりますし、細部へ気が回らず、大雑把にまわして終わってしまいがちなのかなと思います。マーケティングへの興味がないとできない仕事かもしれません。

あと少し障壁が高いのか、テクノロジーに対して「これ以上はいいや」と、どこかで自分で線を引いてしまうと非常に勿体ないと思うことがあります。例えば、「タグが入っているので計測できる」というところまでに留まってしまい、それがどういう仕組みで動いているのかを知ろうとしない、といったことです。Javascript という単語は知っていても、それがどういう挙動で計測につながるのかには興味が及ばない。

もし興味があって、ある程度の知識があれば、このタグを少し工夫すると、実はこういうターゲティングもできるのではないかと新しい施策が考案できたり、すぐ消えていってしまうフラッシュアイデアを本当に形にできたりするのではないかと思います。例えば、「これから Cookie が使えなくなるかもしれない」といった議論があったときにも、何が影響を受け、何が影響を受けず、どう対応すべきか、また代替としてどのような技術があるのかに想像が及んだり、先回りして顧客と議論したり提案することができます。

みんながみんな技術的なバックグラウンドがあるわけではないので個人差があって当然ですが、興味さえあれば詳しい人に聞くことも出来ますし、一緒に仕事をしていく上で新しいアイデアを生むことができると思います。ほんの僅かの差、知ろうとする姿勢(知的好奇心)がこの分野で競争力を高めていく上で大事なのではないかと思います。

このように、マーケティングとテクノロジーが個人の中で融合することが、本当に面白い世界を生み出せることにつながるため、今後そういう人材へのニーズが増えるし、何よりもその人たちは本当に楽しい仕事ができる世界になるのではないでしょうか?


●そういう人をどのように見出していくべきなのでしょうか。もしくはどうしたらそうなるのでしょうか。

業界全体がもっと魅力的にならないといけないのかなと思っています。代理店でも採用や教育は難しいと悩んでいらっしゃるケースが多いと思います。

アクイジオがそこで貢献できることは、オペレーションを手漕ぎからエンジンへ変えていくことです。手漕ぎからエンジンに変われば、当然動かす人に求められる能力や職務が変わってきます。

求められる職務が変わっていく中で、根っこの仕組みを知っている人は、変化においてステップを踏んでいきやすいと思います。エンジンが搭載されたことによって運用者の職務を奪うのではなくて、運用者がより職務の幅を広げていきやすくすることに繋がるのかなと考えます。


運用者がちゃんと評価される環境に


●運用型広告の今後とご自身のキャリアについてお聞かせ下さい。

私自身、代理店で仕事をしていく中でずっと「頑張っている人を助けたい」と思って仕事をしてきました。現場の運用者は本当に頑張っているので、ソリューションで彼らを助けられないかと。

繰り返しですが、運用型広告というくらいですから運用が価値なので、運用している人がちゃんと評価される仕組みを作らないといけません。運用者の市場価値が上がっていかないと、言葉は悪いですが使い古されて辞めてしまう人が出てきかねないと思っています。この業界にいるといろんな経験ができて成長できる、そういう環境にしていくことに少しでも貢献していきたいと思っています。

あと、運用型広告はオペレーションの視点からコンサルティングの視点へ移行すると考えます。コンサルティング、というと捉えようのないイメージがありますが、これだけたくさんのデータが取れる世界なので、データをより高度に分析して、効果的だったりチャレンジングな施策を創作して、次のアクションへフィードバックしていく力を付けなければいけません。例えば、検索であれば検索クエリがユーザーのモチベーションを表わしているように、データという宝がたくさん眠っている世界なので、その宝をうまく活かして企業の発展に貢献できる仕事だと信じています。


●本日は貴重なお話、ありがとうございました!


アクイジオジャパン株式会社
http://www.acquisio.co.jp/

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AdMarkeTech.(アドマーケテック): 運用者を助け、伴走するために。 – アクイジオジャパン 村上和也氏 #State-of-AdOps Vol.12
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