リスティング広告をもっとクールな仕事にしていきたい – アナグラム 竹内まさる氏・田中広樹氏 #State-of-AdOps Vol.13


「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

※過去の記事はこちらから。

第13回目は、リスティング広告運用では今や最も有名な会社の一つであるアナグラム株式会社で広告運用の現場を牽引している、竹内まさる(たけうち まさる)さん、田中広樹(たなか ひろき)さんのお二人に、運用型広告の現状や今後の展望について、忌憚のないお話をお聞きしました。


# インタビューは 2014年8月某日に行われました。


正しいことで世の中に影響を及ぼしたければ、それなりの規模でやらないとダメだ。


●まずは、お二人が現在のお仕事に就かれるまでの経緯と具体的な業務内容を教えて下さい。

竹内:アナグラムの竹内です。アナグラムでは、弊社でお預かりしているアカウントの構築から運用までを見る、広告運用全体の責任者を務めています。チームメンバー、社内では「クルー」と呼んでいますが、彼ら彼女らと共にお客さまに成果をお返ししながら、クルーのみんなのスキルアップも同時に実現していくことがミッションです。

現在は23歳で、1年間大学を休学していたので実はまだ大学4年生です。アナグラムには、2012年の夏から参加しています。3年ほど前にTwitterを通じて自分と同じような年齢の人が既に事業をしていることを知って刺激を受けたのですが、多くの学生がやっているソーシャルメディア関連の仕事ではなく、堅調に伸びてきているSEMをやろうと、最初はアナグラムとは別の企業で初めてSEMに触れました。

独学で学んでいた時に参考にしていた「SEM-LABO」という代表の阿部のブログでアナグラムが社員を募集していることを知って、インターンとして働けないかと直談判して、その後社員に登用してもらい、今に至ります。

田中:アナグラムの田中です。アナグラムでは、リスティング広告の運用をしながら、社内のインフラやレポート整備など、クルーがお客さま以外のことで余計な時間を使わなくて済むように支援することを役割としています。

もともとはNHKで放送のエンジニアだったのですが、テレビがアナログから地上波デジタルに移行することで、元々やりたかった放送系の仕事が減ることが分かった段階で、今後30年間もやりたい仕事ができないのであれば自分の興味が湧くような別の仕事をしてみたいと思い、ウェブの業界に転職しました。

2009年にリスティング広告の代理店に入社し、3年ほどリスティング広告の運用や自動入札ツールをはじめとするソリューション周りの導入支援などを経験したあと、縁があって代表の阿部に声をかけてもらい、2012年の1月にアナグラムに社員第一号として入社しました。


●アナグラムさん、ここ最近急拡大している印象があります。

田中:アナグラムが阿部の個人事業から会社としてアクセルを踏んでいく少し前のタイミングで二人とも入社し、3人で業務展開をしていました。今は社員が二桁になったので、ずいぶん増えたなあという印象です。

竹内:気付いたら増えていましたね。以前浅草橋にオフィスがあった頃はもっとマイペースで仕事をしていたように思いますが、阿部がどこかで「正しいことを世の中に広めるには、それなりの規模でやらないとダメですよ」と言われたみたいで(笑)、私も「そうだそうだ」と煽ったせいか、事業のスピードがそのあたりから急に変わったように思います。


10人の頭で、1つのアカウントを見る


●お二人とも他社でリスティング広告を経験した上でアナグラムに参加されていますが、他の会社とアナグラムが違うところってどこでしょうか?

田中:他の代理店さんでも似たようなところは多いと思うのですが、前職では一人で何十アカウントも担当することが常態化していました。寝ている間も休みの日でも常に広告は出ていますし、どうしてもすべてのお客さまへ対応することが難しくなりますので、常にストレスに晒されているような状態になります。「こんなに厳しい業界なのか…」と途方に暮れたこともありました。

一方で、アナグラムであれば、一人で担当するお客さまがある程度絞られるので、1社1社にじっくりと対応することができます。また、周りにプロフェッショナルが多いので、そばにいながら学ぶことができるのは大きなメリットだと思います。

竹内:私も、田中さんと同じく学びが多い環境があることがアナグラムの良さの一つだと感じています。以前から実施しているグロースハックという取り組みがいい例ですが、10人の頭で1つのアカウントを分析したり構築するような試みなので、1人では思いつかなかったアイデアが生まれたりしますし、それだけさらに成果が上がっていく可能性があります。様々なアカウントやビジネスを見る機会に恵まれるので、トレーニングの効率としてもいいと思います。

あとは、その副次効果としてかもしれませんが、業務効率がよくなるので文化的な時間に帰宅できることでしょうか(笑)。

田中:確かに、早く帰れますね。広告代理店の場合、終電で帰るような場面も多いと思いますが、アナグラムでは残業はかなり少なく、定時に帰ることも多いです。

個人ではなくチームで成果を上げるためのグロースハック


●それは一般的な広告代理店からしたら夢のような環境ですよね。ぜひその秘訣を教えて下さい(笑)

竹内:いくつか挙げられると思いますが、まず、「責任の取れる範囲でのみお仕事をお受けしている」のが大きいと思います。他社さんと比較しても、一人が担当するアカウント数は少ないと思います。その分じっくり対応することができます。

田中:よく「PPPPPDCA」なんて言いますが、プランニングにちゃんと時間をかけます。先ほどのグロースハックもしかりですが、しっかり考えぬいた上でアカウントを構築すれば失敗するリスクを抑えられますし、運用もスムーズに軌道に乗ります。

竹内:コミュニケーションを促進するような制度があることも一因かもしれません。社員にはランチ代が支給されるのでみんなで一緒に出掛けることも多いですし、協力する文化がありますね。あと、なるべく上司から先に帰るようにしているのも大きいかもしれません。帰りが早いぶん朝が早いと言われることもありますが、9時までに出勤なので特別朝が早いわけではないです。


ルールを知らないと、戦えない。


●では、少し話題を変えて、リスティング広告とテクノロジーについてお聞きします。リスティング広告に代表される運用型広告は、技術の進化によって自動化できる部分とそうでない部分がはっきりしてきたように思いますが、そのあたりのバランスはどう捉えていますか?

田中:リスティング広告の機能自体が複雑になっているので、人間の頭では追いつかない領域まで達してきているように感じています。プラットフォーム側はテストを繰り返しながらよかれと思って機能をリリースしているはずなので、それを使う使わないは別として、「どういう意図でこの機能があるのか」「どういった仕組みでこの機能は動いているのか」を理解する姿勢が運用担当者には必要だと思います。

新しい機能が出たら、その仕組みや目的を明確に理解した上で使うか使わないかを判断する。その「判断ができること」が非常に大切だと思います。リリースされた機能を無批判にすべて使う必要はないですし、テクノロジーに依存するのではなく、理解した上で寄り添うことが重要だと感じています。

竹内:弊社では新しい機能を積極的に試すことが多いのですが、必ずしも毎回よい結果が出るとは限りません。ただ、試さないと理解できないですし、ナレッジとして溜まっていかないので、今後もお客さまと一緒にトライできる環境づくりを進めていきたいと思っています。


●新しい機能や仕組みが出てきたときは、どのように対応していますか?

竹内:大抵の場合、田中さんが噛み砕いて分かりやすく説明してくれます(笑)。背景や仕組みを理解したうえで、私が現場に浸透させていくことが多いです。

田中:しつこいようですが、知ろうとする姿勢が大事だと思います。「あれ、結構いいらしいよ」と誰かが試すのを待っているのではなく、自分で仕様を理解して、どう設定するとどうなるのか、どういう場面ならフィットするのか、仮説を立てながら自分で試すことですね。「新機能が出ました!」と機能だけを提案してもあまり意味はないですから。


●技術的なバックグラウンドを持たない人も多いと思いますが、まずはどういったところから学んでいくとよいと思いますか?

田中:リスティング広告であれば、まずはヘルプに目を通すことでしょうか。ヘルプはリスティング広告におけるルールブックのようなものなので、新機能やテクノロジーの議論をする前に、ルールを知っておくことが大事だと思います。新しい機能が出た時には、ヘルプを読むだけではなく、ルールをちゃんと理解した上で新しい機能がルールの上でどう作用するのかを確認する、といったイメージです。

もちろん、情報処理のバックグラウンドはあるに越したことはないかもしれません。ただ、順位や課金のような根本のルールは変わりませんから、まずはその根本を正確に掴まないと、テクノロジーの理解だけがあっても、戦えないと思います。

ヘルプ以上のことは世の中に書いてありませんので、ルールを知ることが本質を知ることにつながると思います。その上で、ノウハウやテクニックを乗せていけばいいのではないでしょうか。

竹内:最近はリスティング広告関連ブログも増えてきたので、新機能をレビューしたような記事も多くありますが、単にそれを鵜呑みにするのではなく、自分たちで確かめる習慣をつけるようにしています。

間違った理解のまま発信しないように、アナグラムのブログでもしっかり確かめてから記事にするようにしていますね。

田中:最近は、お客さまとの定例会で月次のご報告だけをすることは少なく、タグマネジメントやアクセス解析など、技術と関わりのある話に時間を割くことが多くなってきました。この仕事は、「リスティング広告のコンサルティング」から、「ウェブ戦略のコンサルティング」のようになるのではないかと思っています。


リスティングを、もっとかっこいい仕事にしたい


●リスティング広告の今後について、展望などがあればぜひ教えて下さい。

竹内:リスティング広告がインターネット広告の中心的な役割であるのは変わらないと思いますし、我々もそこを強みにしていくのは変わらないと思います。

あとは、パイの奪い合いをするのではなく、市場を拡げていく役割を担いたいと思っています。もうすぐリリースになるIMACARA(イマカラ)のように、店舗型ビジネスの力になることもできますし、スマートフォンを利用した集客としても、リスティング広告はまだまだ多くの可能性があるはずだと思っています。

IMACARA(イマカラ) 店舗型ビジネス向けの集客支援サービス


●個人として今後の目標があればお聞かせ下さい。

田中:リスティング広告が来年どうなっているかすら分からないほど、最近は進化のスピードが早まっていると思います。クルーのみんながキャッチアップできるように、社内ではなくお客さまにちゃんと向き合えるように、主に技術面で引き続きサポートしていきたいと思います。

竹内:求められた成果を出していくだけでなく、ご担当者さまが昇進されたり、お客さまのビジネスが弊社とのお取引を通じて伸びていくお手伝いをしていきたいと思っています。

また、リスティング広告は10年以上成長し続けている分野にも関わらず就業環境があまりよくなく、人が集まってくるような状況にないのではないかと感じています。就職希望の学生がひっきりなしに集まってくるとか、あの業界にいけば輝けるらしいとか、とにかく、リスティング広告をもっとクールな、かっこいい仕事にするために、出来る限りの貢献をしていきたいと思っています。


●本日は貴重なお話、ありがとうございました!


アナグラム株式会社
http://anagrams.jp/


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AdMarkeTech.(アドマーケテック): リスティング広告をもっとクールな仕事にしていきたい – アナグラム 竹内まさる氏・田中広樹氏 #State-of-AdOps Vol.13
リスティング広告をもっとクールな仕事にしていきたい – アナグラム 竹内まさる氏・田中広樹氏 #State-of-AdOps Vol.13
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