ディスプレイ広告の進化というか環境の変化はかなり急速に進んでいて、かつ分かりにくい部分も多いので混乱している人も多いと思います。僕もその一人です。
そこで、ちょっと前の記事ですが、様々なオンラインメディアのデータを繋げるプラットフォームを展開している The Trade Desk のCEO Jeff Green 氏が、ディスプレイ広告の中でもホットトピックであるリターゲティング広告の未来について語っていましたので、理解の一助になればと思いご紹介します。
ちなみに、リターゲティング広告というとGoogle のリマーケティング広告が真っ先に浮かびますが、Jeff が語っているのはもう少し上流からというか、リターゲティングに限らずディスプレイのマーケットで起こっていることを俯瞰した上で、警鐘や助言と捉えるべき言葉になっています。
参照元:
リターゲティングの未来について知っておくべき5つのこと:
5 Things You Should Know About the Future of Retargeting
ページごとの広告枠は増えない
現在のオンライン広告が抱える問題の一つに、新しい広告在庫が無限に作られていくことが挙げられます。
高速道路の脇に設置するような屋外看板はアホみたいにお金がかかりますし、高視聴率のTV番組のスポット枠は限られています。ネットではそんなプレミアム枠はない一方で、もしあなたがオンラインメディアの媒体社に勤めていて、売上を伸ばしたいと思っていたら、新しいユーザーやよい広告を獲得するために必死に努力よりは、ページに広告枠を増やしたほうが簡単です。広告在庫は媒体社であれば無限に作ることができます。
ただ、間違ってはいけないのは、賢い媒体社は、新しい広告在庫をアドネットワークやエクスチェンジに安売りして溢れさせるのではなく、自社メディアのユーザーにフォーカスすべきであり、自社メディアの広告に適切な価格をつけるべき、つまり効率の良いマーケットプレースを作るべきだということです。市場がいまよりさらに成熟すれば、自然とサプライサイドとデマンドサイドのバランスが取れてくるでしょう。そのとき、溢れた広告在庫は見るかげもなくなってしまうと思います。
RTBはリターゲティングの主役になる
言わずもがな、DSP(Demand Side Platform) は十分なリーチを抱える大手のアドエクスチェンジにつながり、特に地域ターゲティングのような様々な方式に対応しながらリターゲティング広告を拡大させるはずです。いいDSPはレーシングカーや質の良い医療器具のようなもので、いい広告在庫とそうでないもの、高いものとお買い得なもの、貴重なものと残りかすとを的確に見分けることができます。
「人」がもっとも重要
DSPを考える上でもっとも見過ごされがちなのが、人です。株式仲買人、外科医、そしてレースカードライバー(※)は、みな彼らが使うツールより大事です。RTBでもそれは一緒。
”右に倣え”が信条の企業は、広げるだけ広げてあとは神頼みのようなアドエクスチェンジの広告在庫を買っていて、彼らはパフォーマンスや効率を軽視し、サイトの閲覧者にできる限りのインプレッションをまるで絨毯爆撃のように出しています。それは短期的には成功するかもしれませんが、長い目で見るとうまくはいかないでしょう。広告主がDSPのできることとすべきことを理解し利用してもっと洗練されていけば、おのずとフォーカスすべき人々の動きが見えるようになるでしょう。
素晴らしいトレーダーはツールの使い方を熟知しているのでキャンペーンを作ることも壊すこともできます。よいドライバーとよい車がセットでないとレースには勝てませんが、トロフィーは常にドライバーに授与されます。これは広告代理店にとっては未来を見つめる上で福音ではないでしょうか。アドエクスチェンジの世界では、よいトレーダーがこれまで以上に必要とされるからです。
(※)DSPを医療器具やレースカーと唱えた比喩に対応しています
トレーニングも同じように重要
ディスプレイ広告を扱うのはかんたんではありません。
現在のDSPの立ち位置は代理店にとっては微妙かもしれませんが、そうしている間にも、いくつかのDSPは代理店のメディア担当者をトレーニングするより早く、直接広告主にアプローチを始めています。これは、彼らのような積極的なDSPは未来の広告代理店になりうる存在であるという、多くの業界人への本質的な警鐘だと捉えるべきでしょう。そのような積極的な動きを見せないDSPも、広告代理店内に優秀な担当者を育成するためのトレーニングにはフルコミットしており、中にはRTBをしっかり使うために他のチャネルも含めた分析のトレーニングを提供しているところもあります。
自社データは競争上最重要
ランディングページにタグを設置してウェブサイトを訪問したユーザーにリターゲティングを仕掛けるのは難しいことではありませんが、ディスプレイの市場は日増しに競争が激しくなっているので、広告主や広告代理店はインプレッションごとの価格を市場に委ねるだけでなく、自社データを利用して意思決定や最適化する必要があります。
例えば、どの製品が過去にもっとも買われていて、どうしたら広告クリエイティブでそれを補完することができるのかを考えたり、製品やサービスの購買サイクルに合わせてCPMをいくらまで出すべきか、もしくは一日あたり何回まで消費者にメッセージを伝えるべきかなどです。
The Trade Desk を利用する広告主は自社の顧客のデータを意思決定の最上位に置いてマーケティングを行なっていますが、それでも、手許にある大量のデータを触り始めたばかりです。ある広告主は「私は自社データのプロバイダになれるよ」と仰ったのが印象的でした。そのとおりだと思います。
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以上です。どれだけツールや環境が進化しても、人が重要というのは今までもこれからも言われていた通りですね。今は環境変化の過渡期ですが、過渡期を見つめてその中で仕事ができる僥倖を感じつつ、ポジティブな未来を信じて頑張っていきたいものです。
なお余談ですが、Jeffは以下のようにも言っています。
1年前、ディスプレイ広告のテクノロジーに関する質問で最も聞かれたのは、「RTBの展望を理解したいので教えてくれないか?」だったのですが、現在ではその質問は「どうやってDSPのエキスパートを雇うか育てたらいいと思う?」に変わっています。
時代は、確実に、進んでいますね。
See also: The Trade Desk www.thetradedesk.com/
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