商品リスト広告のセミナー資料と、ちょっとした補足



先日(2013年12月10日)に行われたフィードフォースさん主催のセミナー「Google商品リスト広告の最適化ノウハウを大公開」でお話しさせて頂く機会を頂きました。

(スライドをつくってから気付いたのですが)40分という短い時間の中で言いたいことすべてを伝えるのは難しかったのと、配布資料を作らなかったためご不便をお掛けしてしまったので、セミナー資料を Slideshare にアップロードしました。せっかくなので、流れに沿って少しだけ補足ができればと思います。




「商品リスト広告」の前に

何を話そうかなと考えたときに、いきなり商品リスト広告の概要を説明する前に、この広告が出てくるに至った背景を説明しようと思いました。商品リスト広告の最適化や活用方法については検索すればたくさん出てきますし、このブログでも以前に触れています。利用が進めば、今後はもっともっと色々な記事が出てくるはずです。

探せば出てくる情報をそのまま伝えただけではわざわざ足を運んで下さる方にお土産が作れない。そこで、他の人があまりしなさそうな話をしたいなと思いました。あとは、勉強や仕事、なんでもそうだと思いますが、単に問題の解き方を暗記していくのと、設題のルールを把握した上で解くのでは、その後の応用や類推で大きな違いが生まれますし、なにより後者の方がやっていて楽しいと思います。

そこで、スライドの3つのパートのうち、最初のパートで「知ってても商品リスト広告の効果は別に上がらないけど、知ってた方があとあと効いてくるかもしれない話」をしました。


Froogle について

Froogle は2002年にスタートした Google の商品情報検索です。スライドにもあるとおり、約2年間のベータのあと残念ながら放置され、2007年に Google Product Search に名称変更、その後の2010年のマーチャントセンターと Google Shopping の開始、2011年の商品リスト広告の開始(日本では2012年)につながっていきます。商品リスト広告のご先祖様みたいな存在です。

Froogle は、Google の通常の検索と同じように、クローラーを走らせて、いろんなサイトに点在する商品情報をインデックスし、Froogle 上で検索結果として表示するというものでした。この発想自体は Google にとって自然なものだったと思いますが、幾つか問題がありました。




例えば、データの鮮度の問題。2002〜2003年当時はまだ グーグルダンスが健在であり、徐々に Everflux だ フレッシュクロールだと言われていた時期なので、Google のクローリングの精度も頻度も、今とは比べ物にならないほど低い時代でした。そのため、表示された情報が古かったり、既に売り切れていることがよくあったようです。

もちろんクローリングだけでなく、当時からデータフィードをマーチャントから受け入れる機能も用意されていましたが、Froogle のユーザー数自体が限定的でしたし、企業側も今ほど商品データを自由に扱える環境になかったため、この仕様が小売企業に普及することはありませんでした。

名寄せ(aggregation)の問題もあります。同じ商品でも、キー項目となりうるIDや商品名がサイトごとに微妙に違って管理されていることはよくあります。あるサイトでは「ABC-001 リストバンド」と登録されているものが、「ABCー001 リストバンド(◯◯社製)」と登録されているような感じです。これは、人間の目で見れば同じ商品だと認識できますが、機会が読み取るときにはまったく違うものになります。

これらを全部別々のものとしてリストしていくと膨大な量となって一覧性が損なわれるため、Froogle のように情報を集約するサイトでは、これらの情報を同じものとして認識させるための処理が必要になるわけですが、どうしても Google だけがそれを担うのでは限界が出てきてしまいます。

そこで、マーチャントセンターという Google が用意した商品データベースに企業側からデータを格納してもらうというアプローチに切り替えました。JANコードなどの共通の仕様があれば名寄せはスムーズですし、鮮度の担保や審査もしやすくなります。商品を親のキーにしてメーカーや店舗名が紐づくので、横断検索や比較もしやすくなります。

2012年に発表され、今月(2013年12月)には日本でも始まった「Google Trusted Stores」プログラムのように、商品だけでなくショップ自体を評価することも、データベースの管理が強固になることで実現できるようになりました。





ユニバーサル検索と商品情報表示オプション

ところで、いくら商品データベースが整備されたとしても、商品情報検索をするユーザーが増えないと、マーチャント(小売企業)側にとって Google にデータフィードするメリットがありません。Froogle にしても Google Product Search にしても、そこが弱みでした。普段使っている検索の画面からわざわざ商品検索用のエンジンに移動して改めて検索するようなユーザーはそれほど多くはなかったからです。

そこで、Google はこれまでのテキスト情報だけの検索結果から一歩進んで、商品情報や動画、地図や画像など、あらゆる情報を一つの検索結果に表示するユニバーサル検索を提供するようになりました。明らかに商品情報を探しているような検索クエリであれば、Product Search の内容を検索結果の一部に表示する仕様です。広告側でも、AdWords の検索連動型広告では商品情報表示オプションとして広告に商品情報をプラスボックスで表示することができるようになりました。

ユーザーに使うエンジンを選ばせるのではなく、知りたいものを察知して検索結果を適切な情報レイアウトにして表示することで、結果的に商品情報の表示機会も増え、小売企業にとってマーチャントセンターにデータを送るメリットをつくりだしたのです。



フラグメンテーションとデータフィード

このあたりからはスライドのままなのですが、メディアやデバイスのフラグメンテーション(断片化)の上昇カーブは、そのまま小売企業にとってデータフィードの必要性のカーブになると思います。断片化しているので一つ一つの接触面積は小さくなりますが、サボっていると総接触面積が減っていってしまう。逆にリアルタイムに情報の同期が確保できれば(さらに言うならそれぞれに情報の届け方を工夫できれば)、接触面積を増やすことができます。

接触面は、比較サイト、商品情報サイト、検索、ディスプレイ広告、ECサイト、ショッピングモールなど、たくさんあります。見るデバイスもマルチスクリーンです。たくさんの接触面のうち、検索についての対策が、商品リスト広告です。




データフィードについては、手前味噌ですがこのスライドにより詳細が網羅されています。このセミナーでも幾つか同じスライドを利用させてもらっていますし、論旨としてはまったく同じです。




商品リスト広告の概要と考え方

3つのパートのうちの真ん中にあたりますが、ここはほぼスライドのまま話しています。

商品リスト広告を実施するうえで最初かつ最大のわかりにくいポイントは、商品ターゲットだと思います。AdWords の運用に習熟されている方にとっては当たり前のような話でも、そうでない方にとってはどうもモヤッとして分かりにくい、というのがこの商品ターゲットなのではないかと思い、通常の AdWords の機能を分解して、商品リスト広告の場合と比較してみました。




AdWords に限らず、リスティング広告の最小ユニットは「ターゲット」と「広告」と「リンク先」です。検索連動型であれば「ターゲット」は「キーワード」になりますし、ディスプレイ広告であれば「コンテンツ」や「プレースメント」や「オーディエンス」になります。

「商品リスト広告はキーワードがない」と言いますが、もう少し細かく言えば、「キーワードや広告やリンク先として機能する情報がみんなマーチャントセンターに入っているので、商品リスト広告では商品ターゲットを使ってその情報の仕切り方を指定する」といった感じです。これさえ押さえておけばあとは特に難しくないと思います。



海外事例について

最後のパートは、アメリカの CPC Strategy という会社の事例を利用させてもらいました。CPC Strategy は太っ腹なので、個人情報等のフォーム入力の必要なしにホワイトペーパーがダウンロードできます。興味ある方は以下からご覧ください。

White Papers | CPC Strategy
http://cpcstrategy.com/resources/white-papers/




この事例が面白いなと思ったのは、いい話じゃなくて悪い話が書いてあることです。事例というと成功事例ばかりが出てきやすいですが、商品リスト広告に慣れてくると陥りやすいワナがしっかり提示されていたので、参考になればと思いました。

検索連動型広告でも、1広告グループ1キーワードにこだわり過ぎてマネジメント不可能な状態になったり、地域ターゲットを細かく分割しすぎて逆に表示機会が減ってしまったりといった陥穽をたまに見ることがありますが、そんな感じかなあと思っています。

ところで、この事例では AdWords の話がメインになっていますが、商品リスト広告で一番大事なのはフィードの中身と正確性です。言い換えれば、フィードさえちゃんとしていれば、AdWords の商品ターゲットは全商品指定にしておいても何となくそれっぽい結果が出てしまうことが多いのも(今のところ)、AdWords 側の運用があまりフォーカスされない理由かなあと思うことがあります。



商品リスト広告の今後について

2013年は商品リスト広告のリリースラッシュの年でした。ここ最近のどの広告商品よりもアップデートが多かったのではないかと思います。

2014年もその勢いはおそらく変わることはないと思います。既に公表されている範囲だと、ショッピングキャンペーン(Shopping Campaigns)がスタートすることが先日発表されています。

Introducing Shopping campaigns: a better way to promote your products on Google
http://adwords.blogspot.jp/2013/10/introducing-shopping-campaigns-better.html



AdWords とマーチャントセンターの管理がしやすくなるほか、現在はかゆいところに手が届いていないレポーティングなども強化される予定なので、マーチャントセンターのデータマネジメントのみならず、AdWords の管理にもスポットが当たることになるのではないかと思います。

商品リスト広告のみならず、動的リマーケティング、ローカルストアフロント(Storefront)など、Google だけでも商品データの活用は今後も広がっていくと思います。個人的にもっとも楽しみにしているエリアです。



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