ショッピング広告にユーザー投稿写真が追加
2019年7月頃より、Googleショッピングの各商品ごとのユーザーレビュー内に、ユーザー自身が投稿した写真が掲載される仕様になっています。(2019年8月時点で米国のみ)
リンク:New Google Shopping program enables customer photos to show with their product reviews - Search Engine Land
投稿される写真は、ユーザーがGoogleショッピングに直接アップロードするのではなく、提携しているレビュープロバイダー(2019年8月現在は、Yotpo、PowerReviews、Bazaarvoice、Influenster の4社)に投稿されたユーザーの写真が広告主の商品とマッチングし、 Googleショッピングへ自動的に展開される仕様になっています。
具体的には、商品画像に加えて、商品の詳細ページでユーザーレビューと並んで以下のように表示されるようです。
口コミがビジュアルで強化される
UGC(User Generated Contents)が購買行動に強く影響を与えていることは今やわざわざ説明するまでもありませんが、そういったユーザー主導のコンテンツの中でも、従来の5段階評価や口コミテキスト以上に、ユーザー自身が投稿した写真や動画といった視覚的な情報は、ソーシャル上でのインタラクションを通じて購買行動に強く影響を与えています。(テキストよりもポジティブな影響が多く、直感的で拡散されやすいのも特徴です)
今回のユーザーレビューのプロバイダーの1社である Yotpo の調査によると、77% の購入客は、意思決定の際にメーカーの用意した写真ではなく、ユーザーの投稿写真を参照しているとのこと。
Yotpo のページでは、"Authentic(オーセンティック)" という形容がされていますが、つまりは、プロが用意したオフィシャルな宣材写真よりも、実際に購入あるいは利用しているユーザーの写真のほうが "本物" で "信憑性が高い" と判断され、購入の意思決定に強く影響しているということになります。
今後、ショッピング広告に視覚的かつ影響力のある UGC が増えていくことは、単なる商品スペックの確認以上の情報が Google で取得できることになります。自社のプロパティ上で詳細な情報を閲覧するようなユーザーパスが増えてくれば、その後の何らかのインタラクション(クリック or 購入)も増えて利益が出ますので、Google にとっても非常に重要です。 UGC を情報検索の一連のフローの中に正しく配置していく努力は、プラットフォームの生命線とすら言えるのかもしれません。
商品を知る【起点】をめぐる争い
2019年4月に 「Amazonの広告検索が急増し、Googleの優位性を脅かしている」 と題された WSJ のコラムは、大きな話題を呼びました。世界最大の広告会社 WPP の Amazon広告の取扱額の75%が、Google からの予算シフトだというものです。
リンク:Amazon’s Rise in Ad Searches Dents Google’s Dominance - WSJ
見出しとしてはセンセーショナルですが、WPP が扱う Amazon広告の総量は、2017年の1.5億ドルから2018年には2倍の3億ドルに上昇しているものの、対する Google広告 は WPP の取扱だけで少なく見積もって30億ドル以上とされています。 仮に Amazon広告の 75% が丸々 Google広告 からのスライドだったとしても、その額は2.25億ドルになりますので、取り扱い全体の7%程度となり、数字上の影響は現時点では軽微でしょう。
では、なぜこれが話題になったのかというと、仮に、Amazon の台頭によって(Googleが懸念している)商品検索の入口が Google から Amazon へと完全に切り替わってしまうと、一度決まってしまったユーザー行動はあとから覆すのが難しく、現在の地図が大きく塗り替わる可能性を秘めているからだと思います。Google にとっても、中長期的にボディブローのように収益にダメージをおよぼすことは間違いありません。
たとえば、Amazon広告 のコンバージョン率は Google のショッピング広告の3倍前後あると言われており、この差は商品を検索する目的のユーザーがどちらに集まっているかを如実に表しています。
また、調査会社の Jumpshot は、2018年には Amazon が商品検索の出発点として Google を上回ったというレポートを出しています。以下のグラフでは、2015年から2018年の3年間で、商品検索という分野に限り、Amazon と Google のシェアが逆転したことを示しています。
ここ数年は Instagram などソーシャルアプリでの購買活動も急速に普及し、一部の過剰な SEO による検索結果の満足度低下等の影響もあってか、(絶対的な地位は引き続き確保しているものの)相対的に商品検索における Google の優位性は下がりつつあるのは否めません。さまざまなプロパティを横断し、検索経験を向上していくことによるマインドシェアの奪還は Google にとって急務だといえるでしょう。革命的とも言える変化が起きている EC の分野で Amazon の後塵を拝することになると、将来の成長性に強く影響するため、Google はなんとしても避けたいはずです。
2019年2月には、米国でマーチャントセンター内のフィードデータも自然検索および画像検索の表示対象とする(=ショッピング広告への配信有無を問わない)ようになりましたが、これもブランドや小売側の間口を拡げて商品情報を登録する優先順位を上げてもらう(そして結果として取り扱いが充実する)ことを狙っていると考えられます。そして、ショーケース広告のディスカバー配信(2019年8月時点で米国のみ)など、配信面を広げていくことでタッチポイントを増やす施策も同時に行っています。
リンク:Googleマーチャントセンターの無料化から考える、商品情報をめぐる争いと、これから | AdMarkeTech.(アドマーケテック)
購入を前提にして製品を探すときに、Amazon で探すのか、Google で探すのか、この起点の違いは両者の収益に大きな影響をもたらすはずです。コマースの分野で入口をどう支配していくのか(出口は決済と物流でしょうか)という争いは、今後も注目に値すると思います。
そして、それらのプラットフォームを利用するブランドにとっても、数あるプラットフォームをどう選択し、どう活用するのかが、そのままブランドのポジショニングに表れるのではないでしょうか。大手と対峙するのか、囲われるのか、あるいはニッチを目指すのか。ブランドの哲学というか、生き方のようなものが問われているのだと思います。
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