AdMarkeTech. Monthly 2019年9月/September 2019
毎月のニュースをまとめて取り上げる【AdMarketech. Monthly】。
ブログで取り上げなかったものの、注目に値する記事をかんたんなコメント付きでご紹介します。
2019年9月は、Facebookの方で更新しているWeeklyをサボリ気味だったのでピックアップ数が少なめですが、面白い記事が多かったです。気になった方はリンク先もぜひご一読ください!
▶Rolling out first price auctions to Google Ad Manager partners
Google のパブリッシャー向けプラットフォーム Ad Manager(旧 DFP) が、年内には完全にファーストプライスオークションに切り替わるとのアナウンスがありました。
Unified Pricing の発表以降、大手パブリッシャーからの反発が強く、はっきり言って紛糾しまくっていたので、記事からは、その後の粘り強い交渉を通じて諸々の条件をすり合わせしていった経緯が伺えます。ビッドシェーディングを安定化させるため?に制限していたフロアプライス設定の上限を100→200へと増やしたのもその一環かと思います。
ファーストプライスオークションでは「取引の透明性」と「パブリッシャーの収益向上」が常套句ですが、プレイヤーによって明暗は分かれそうです。経過を注視していきたい事案ですね。
▶Why Technology And Data Assets Should Not Be Owned By Your Agency | AdExchanger
広告主に向けて「テクノロジーとデータ資産を代理店に所有させるべきではない理由」と題した記事。
もっとも説得力のある理由として、昨今の大手広告会社によるデータ関連企業の買収が、クライアントの利益の最大化という観点からは利益相反にあたるのではないか、というものです。「お前んとこ使わなあかんやんけ」ということですね。
ただ、本質的な理由はもう一つあって、それは以下の言葉に集約されています。
In a nutshell, a fast-changing world requires data agility. And therefore it seems more reasonable to rent rather than buy data whose value can disappear quickly.
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端的に言って、急速に変化する世界では、データの俊敏性が求められます。つまり、価値がすぐに消えてしまう可能性のあるデータを購入するよりも、レンタルする方が合理的だということです。
このあたりは「APIエコノミー」の有用性とも通じる議論です。所有よりも共有、統合よりも疎結合にこそ価値が出てくるという考え方は、ネットワークで常に繋がり続ける社会において、非常に理に適っていると思います。だからこそ、大手広告会社は、介在価値を出すという目的においてプラットフォームを志向するのかもしれません。
▶Sponsored Display | Amazon Advertising
アマゾンの Sponsored Display のベータ版が公開されました。
発表の段階(2019年9月)ではアメリカ限定ですが、近いうちにグローバル展開されるようです。しかしこれはエグい。他のプレイヤーを沈黙させにきた感があります。
これまでは世界最大のECモールと決済の仕組みを持ちながらほぼ購買データのみでサードパーティDSPとして製品を切り出していたので、個人的にはずいぶんと悪手ではないかと思っていましたが、今回は2018年9月に発表したサービス統合(AMS|AMG|AAP → Amazon Ads)のアウトプットとしては王道かつ適切で、かなり筋のいい打ち出し方だと思いました。
特に、今回のキモである「同一のプラットフォーム」で「オーディエンス/プロダクトカテゴリごとに配信先のプレースメントを内外に分ける」というアプローチは、自前で出口まで持っていて、かつトップシェアを誇るAmazonでないと踏み込めない仕様だと思います。デマンド側(マーチャント側)は特に設定周りを意識することなく、シームレスに配信可能な領域が広がります。
クリエイティブは当然のようにダイナミックで、かつAmazonの外側の枠に配信される広告は基本的にAmazonのリターゲティングオーディエンス(決済もAmazon)が対象になるので、予測CVRはおそらく高くなります。想定されるCVRが高いとオークション上のeCPMでは他の動的リタゲ製品よりも競争優位性が上がるため、ある程度の規模と予算のある広告主であれば無双化しちゃうような気がします。
プレースメント先の広告枠でも、今後はPMP以外はヘッダービディング化していくとなると、優先順位がつけられていたパブリッシャー側のメディエーションによる不利もどんどんなくなっていくので、環境としても追い風でしょう。(うーん、考えれば考えるほど、エグいなあ!)
▶Google's Ad Business Undergoes Massive Reorganization | AdExchanger
Googleの組織再編についての記事。非常に面白かったです。
Walled Garden と揶揄され、モノポライゼーションへの批判が絶えないGoogleの広告事業ですが、検索やYouTube等の自社プロパティ以外の外部ネットワークは、外部からは驚異に映っても内部的にはサードパーティゆえに最後の出口のコントロールが難しい、微妙な位置づけの分野になります。
収益構造でみても、売上構成比率が全体の14%まで下がっているため、組織上の重要性は低下(リスクは上昇)しています。
組織再編では、4つの同心円で事業が表現されているらしいのですが、ポリシーやセキュリティ等のリスク対策を円の最も外側に位置づけているそうです。リスク対応とコア事業が何かということを明確にメッセージとして伝える組織変更なんだと思います。
以上、今月の【AdMarkeTech. Monthly】でした!
なお、毎週のニュースは【AdMarkeTech. Weekly】としてFacebookページにアップしています。よろしければご覧ください。
それでは、来月もお楽しみに^^
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