ローカル在庫広告のパートナー企業の買収
2020年1月14日、Googleはアイルランドに拠点を置く Pointy を買収したと発表しました。Pointy は店舗在庫をオンラインで推定するシステムを提供している会社で、Google の O2O の仕組みの一つであるローカル在庫広告の提供パートナーでもあります。
リンク:Helping local businesses showcase products online with Pointy
ローカル在庫広告の提供パートナーと書きましたが、これは具体的には 2018年6月に発表されている Local Feed Partnership Program(以下:LFPP) のことを指します。
LFPPとは、2013年に提供が開始されたもののイマイチ波に乗り切れていなかったローカル在庫広告や、同時期に発表された Local Catalog Ads(カード形式で店舗在庫を表示する広告)を促進するために、 POSデータや在庫データを提供する企業と Google Merchant Center(GMC) とを連携させるプログラムのことで、そのデータ提供企業の一社が Pointy でした。
リンク:New innovations remove friction from discovering products in store and online
LFPP がその後どれくらい機能したのかは(日本での提供は結局なかったので)結局のところ不明ですが、あれから1年半後に最終的に買収に舵を切ったということは、提携を続けるよりも自社提供の方が早いという判断だったのでしょう。
仕組みに唯一無二性があるPointy
Pointy のユニークさについては他のメディアが詳しいので詳細は割愛しますが、ざっくりいえば、「バーコードスキャナーに差し込むハードウェア」および「POSシステムにインストールするアプリ」のいずれかを通じて実売ベースでデータを把握する仕組みを提供している企業です。
Pointyは在庫の仕入れについてのシステム的な接続はせず、実売データの統計からその時点の在庫数を割り出すように機械学習を使ったアルゴリズムが強みのようです。
これだけ書くと「在庫情報なのにそんなざっくりでええの?」となるんですが、おそらく一点物のマニアックな製品というよりも、消費財のようにある程度まとまった数の流通があるアイテムを想定しているのだと思います。在庫管理や売上の把握だけを目的としたシステムではなく、トランザクションデータと商品データが即時的にインターネット上でデータベース化されることによって、広告や分析のような他の用途への転用も提供価値の一部として想定されていたと思われます。
LFPP への参加によって、Pointy を利用するローカルの小売事業者には Googleの検索結果(ナレッジパネルやGoogleマップ)やローカル在庫広告への掲載というそれなりに強いインセンティブが働いていたと考えられますし、それはすなわち地元のパパママショップに Amazon の搾取から逃れる方法を提供するという Pointy の存在価値ともリンクしていたはずです。
ですが、ご存知のとおり近年の Amazon のメーカーや小売事業者の囲い込みの勢いはすさまじく、今や EC上でのモノを探すときの第一想起は完全に Google から Amazon に転じてしまった雰囲気すらありますので、Google としても背に腹は代えられないということだったのかもしれません。
ローカル在庫データの今後
Googleは、Pointyの買収によって O2Oコマースの利便性を向上させ、Amazon に対峙するための武器を強化することを目指していると思います。
今回の買収と同時にモバイルでのショッピング表示にも変更があるというアナウンス↓が出ていますが、これらは一連のコマース強化施策の流れの中で相互につながっている出来事です。モバイルにプッシュされる店舗候補が増えたりするだけで、単純に利便性は高まりますよね。
リンク:Google Introduces a New Shopping Section in Search Results - Search Engine Journal
以下は勝手な想像ですが、Pointy と GMC とがシームレスにつながることでローカル在庫データは今までより構造化が進むと思われますし、エンジニアリングリソースの提供によってPOSデータのパートナー連携の開発スピードも上がるのではないかと思います。
ローカル在庫広告自体の収益は Google 全体からするとまだまだ微々たるものですが、世の中の買い物の大半はまだ物理的な店舗で行われていますので、現在の比率の方がおかしいと考えるのが自然でしょう。Pointy だけのカバレッジに頼るのは限界がありますので、アプリによるサードパーティPOSシステムとの連動を促進していくパートナー営業も強化されるのではないかと期待します。
ローカル在庫データが広告やオーガニックで当たり前に出てくる世界がそれほど遠くない未来に実現するといいですね。(日本ではどうなるか分かりませんが…)
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