コロナ禍でEコマースのプラットフォームに起こった変化とは? 〜アマゾンとグーグルの動きから



ショッピングの起点としてのAmazon


コロナ禍によってEコマースの総流通量が全世界的に増えています。そして、その恩恵は(情報流通の胴元である)大手プラットフォームが優先的に享受しているようです。

CivicScience が2020年5月に行ったサーベイによると、回答した 2,200人の米国人の約半数(47%)が Amazon をショッピングのスタートページとしているとのこと。



リンク:CivicScience | Most Americans Still Start Product Searches on Amazon Before Google

この調査は定期的に行われているもので、2019年に行われた前回の調査もほぼ同じ割合だったようです。

つづいて、以下はパンデミックの影響でオンラインでの買物が増えた/減ったと回答した人のグラフです。いずれの場合でもスタートページは Amazon になっています。



調査の実施が2020年5月ということは、コロナウイルスの影響が十分に社会に浸透したあとのユーザー行動が反映されているはずです。その前提で上記のグラフを見てみると、コロナ後に買物の量や頻度が増えた人の多くが Amazon を起点にしており、2020年の春以降の流通総量が Google やその他のサイトと比べて大幅に増えている(≒差がついている)ことが伺えます。

また、買物が増えていない(あるいは減っている)人も含めて大多数の人が Amazon をショッピングの起点にしているという事実は、Amazon が確立しているショッピングポータルとしてのブランド評価の証左だといえます。アマゾンプライムがない生活は考えにくいという人も多いでしょう。


アルゴリズムで強化補正されるアマゾン広告


大多数の人が Amazon をショッピングの起点にしているという事実は、連動してアマゾン広告自体の強化へとつながります。

一般的に、広告とオーガニック(SEO)のメカニズムはそれぞれ完全に独立していて連動しないものです(抽象度を上げればもちろん連動しますし、実務でも動的検索広告等は違いますが、あくまで「仕組み」として)。

一方で、Amazon では売上がオーガニックのアルゴリズムに大きく影響します。端的にいえば、(関連性が高いという前提で)売れている商品はサイト内では目立つように表示されます。

アマゾン広告は売上を伸ばすように設計されており、広告の投下によって売上が伸びると、そのまま自社商品が合法的にAmazon内で上位表示されることにつながります。

これは今まで常識とされてきた広告とオーガニックの関係とは異なるゲームです。(広告とオーガニックは担当が分かれていることが多い)

Amazonを起点にしてショッピングを完結するユーザーが増えれば増えるほど、企業がアマゾン広告を使うインセンティブに繋がり、相対的に Google に費用を投下するインセンティブは下がります。

広告売上だけでみればグーグルの方が桁違いの規模を誇るにもかかわらず、アマゾンの台頭を恐れているのはこれが理由です。

Amazonのアルゴリズム概要
参考:Marketing on Amazon in 2020 [Report] | State of Digital



ショッピングタブの無料開放で逆襲を図るグーグル


Googleは2020年4月に、Googleショッピング上で商品を無料でリスティングできるサービス(Surfaces across Google)を年内に全世界で適用できるように進めると発表しました。


リンク:List your products on Google Shopping for free - The Keyword

Googleショッピングへの商品の掲載は、マーチャントセンター経由での広告出稿がこれまでの前提でした。

しかしながら、コロナ以降さらに勢いを増すアマゾンへ対抗策を出す必要があることや、ロックダウンによって窮地に陥ったブランドや小売店を見過ごすとグーグル経済圏でのエコシステムが崩れることなどから、(米国とインドのみだった)無料化の施策を一気に推し進めたものと考えられます。

無料化によって Amazon を最優先として位置づけている企業に、「Googleショッピングにも商品を展開してみよう」というインセンティブを与える狙いもあると思われます。

アマゾンは2020年3月に、物流拠点(フルフィルメントセンター)での需要の高い商品の出荷を一時的に優先する(他の商品は倉庫受け入れを制限する)措置を行いましたが、これによって「フルフィルメント by Amazon(FBA)」に依存している生活必需品以外のマーチャントは在庫や配送が滞り、ほかの物流機能をもたない企業は短期的に危機に陥りました。

こういったことから、アマゾンに依存しすぎることをリスクだと感じた事業者に向けて、グーグルは Shopify と連携したカートプログラム「Shopping Actions」や、Paypal等の決済サービスと連携したマーチャント支援など、矢継ぎ早に強化してくるはずです。


インスピレーションはGoogle、すぐ買うならAmazon


2019年に行われた Episerver の調査では、すでに買うものが決まっている場合は、Amazon/Google のどちらでも購買行動の起点になりうるが、インスピレーションを求めている場合は Amazon よりも Google にアクセスする可能性が高いという結果が出ています。


リンク:Who is winning the shopping search race — Amazon or Google? – RetailWire


グーグルがEコマース分野でアマゾンの後塵を拝するとなると、採るべきは2番手の戦略です。たとえば、アマゾンでは得られないショッピング行動へのインサイトを提供するというのは一つの方向性として考えられます。

Googleショッピングの無料化で顧客基盤が広がれば、「アマゾンにはない広範なデータの提供」と「他のグーグル製品へのデータの応用」の2つを同時に満たすことができます。

2020年5月に発表された Rising Retail Categories(急上昇している製品カテゴリを表示する機能)や、小売関連のレポートフォーマットの拡張などはその典型的な例のひとつではないかと思います。

リンク:Changes in Consumer Behavior: Rising Retail Categories - Think with Google

リンク:Analyze retail category performance across Google Ads Search and Shopping campaigns

パンデミックはプラットフォームの争いを強制的に次のステップへと移行させました。今後はさらに新機能や製品の発表ペースも上がってくると予想されますので、情報は逃さず活用していきたいですね!

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AdMarkeTech.(アドマーケテック): コロナ禍でEコマースのプラットフォームに起こった変化とは? 〜アマゾンとグーグルの動きから
コロナ禍でEコマースのプラットフォームに起こった変化とは? 〜アマゾンとグーグルの動きから
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